Leaf K.O.F大会第二十一回『導かれし者達』 『決勝戦、最終戦藤田浩之Vs橋本 、レディーゴーッ!』 アナウンスの高々な声とともに歓声が沸き起こる。 それを合図にして、俺達は互いに飛び出した。 「ぬおぉぉぉぉぉぉっ!」 橋本先輩が手にしていた奇妙な刀を振りかぶる。 「甘いぜっ!」 俺はその一筋をかわすと、橋本先輩の腹をめがけて拳を繰り出す。 ぱしっ! 俺の繰り出した拳を橋本先輩が刀を手にしたのと逆の手で押さえる。 「くっ!」 俺は橋本先輩の手を振り解こうと手を引いた。 が、橋本先輩の手は俺の手を捕らえて放さない。 「くくっ、藤田ぁ…これで逃げられないぞ…」 不気味な目のまま、橋本先輩が俺に言いながら刀を振りかぶる。 『腕輪よっ!』 俺はとっさに腕輪に命じた。 腕輪から橋本先輩の顔を嘗めるように炎が迸る。 「ぬおっ!」 橋本先輩は俺の手を放すと後ろへと飛び、炎を避けた。 そして、俺も一歩退くと、体制を整える。 「…面白い、面白いぞ!」 橋本先輩はにやりと笑うと再び俺に向かって飛び出す。 「させるかよ!」 飛び出してきた橋本先輩を身を引いて避け、そのまま利き腕をすばやく橋本先輩の 首筋へと打ち込む。 「ぐっ!」 一瞬、呼吸が詰まった為、体を折る橋本先輩。 その隙を見計らって、そのまま肘を背中へと落した。 「あぐっ……。」 苦しそうに息をする橋本先輩。 『そのまま、立ち上がるなよ…』 俺は体勢を崩す橋本先輩を見ながらそう念じていた… しかし、橋本先輩は立ち上がって来た。 「ふふ…許さん…許さんぞっ!」 先輩は声高に叫ぶと刀を正面に構えながら飛び込んできた。 「ちぃっ!」 舌打ちをして俺はそれを避ける為に一歩下がる。 「甘いぜっ!」 俺の動きを読んだ橋本先輩がさらに飛び込んでくきた。 …このままでは避けられない… 俺の背筋がぞくりと冷たくなる。 「死ねっ!」 橋本先輩がそのまま刀を突き出して来る。 「うおぉぉぉぉっ!」 俺はとっさに出された刀に向かって手を振り落とした。 ぱしっ! 突き出された刀は、俺が放った手刀で軌道がずれ直撃は免れたものの、 俺の脇腹をかすめる。 「ぐっ」 切られた所を押さえながら、俺は横に飛び間合いを取る。 「…こうでなくてはな…」 俺を見て、橋本先輩がにやりと笑った… 同時刻、会場内通路にて… 「くっくっくっ…リネットよ…こちらへ来い。」 梓達の目の前に居る男が言う。 「…何の事だよ…あんた、一体何者なんだ?」 「…アズエルか…相変わらずうるさい奴だ…」 梓の言葉を受け男が言う。 「…梓お姉ちゃん…」 すっと梓の後ろに隠れる初音。 「…楓、こっちへ来るんだ。」 梓が楓へと問い掛ける。 「………………。」 しかし、楓は梓の言葉に答えない。 「おいっ!どうしたんだ!?楓っ!」 梓が楓へと問い掛ける。 それでも、楓は無言だった。 「…てめぇ…楓に何をした?」 梓が怒りをあらわにして男へと問い掛ける。 「…なるほどな、エディフィルは『楓』という名なのか…」 男が楓を見つつ、つぶやいた。 「…訳の分からねぇ事を言っていないで、こっちの問いに答えてもらおうか?」 梓が、怒りながらも静かに男へと問う。 「…アズエル、貴様には用が無い…」 男が興味なさげに言う。 「だからといって、『はい、そうですか』って引けないね。」 「では、力ずくででもといったら?」 男がにやりと笑いつつ梓に答える。 「…あんた、死にたいらしいな…?」 梓が、鬼の力を解放しながら男へと問う。 「…くっくっくっ…アズエル、この私を殺すだと?」 ひと笑いして、男が言い放った。 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 男の言葉を聞き、梓が飛び出す。 もちろん、鬼の力を解放してだ。 梓は力をこぶしへと乗せて、男に飛び掛かる。 「食らえっ!」 梓が、声と共に男へと突きを放つ。 「…ふん…」 梓が繰り出した拳を片手でいともたやすく受け止める男。 「なっ…」 その動作を見て、梓の表情が凍り付いた。 「この私を、それだけの力で倒そうというのか?」 にやりと笑いながら男が言う。 「…手加減するんじゃなかった…」 梓が一歩引いて間合いを取りつつ、悔しそうにつぶやく。 「…ふっ全力だったのだろう?」 「なんだって?」 男の冷めた笑いを込めた一言に反応する梓。 「はっはっはっ…では、本気で来てもらおうか…」 そう言った瞬間、辺りの空気が震え出した。 「…あんた、やっぱり人じゃないね…」 男から発せられた気を受けつつ、梓が言う。 「…そうだ、お前達と同じ、エルクゥだ。」 男が力を解放しつつ、梓に答える。 人間の形は崩れていないが、手から鋭い爪が伸びてゆく。 そして、冷たい殺気が梓に向けて放たれている。 「くっ…」 梓はその殺気に思わずたじろいだ。 「…邪魔をするなら…狩るのみよ。」 男が梓に向かって飛び出す。 「ッ!!させるかぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!」 時を同じくして、梓も飛び出した。 二人が重なったその時、 ばしゅっ! 肉を切り裂く音が聞こえてきた。 「ぐっ…」 梓は膝を付くと、男を見上げた。 梓の胸に横に三本の赤い筋が走っている。 「ふっ…やはり、アズエルはこんなものだったな…」 膝を付く梓を見下ろして男が言い放つ。 「…ぐっ、やるじゃないの…」 梓が傷を押さえつつ、立ち上がろうとしたその時、男の手が梓へと唸りを 上げて迫っていた。 「!」 どごぉっ! …どんっ! 「ぐはっ…」 男の拳の直撃を受け、梓の体が後ろへと吹っ飛び、壁へと叩き付けられる。 「ち…畜生…」 ずるずると崩れ落ちる梓。 「…ふん、邪魔をするからだ…」 その様子を見つつ、男がつぶやくき初音のほうへと目をやる。 「っ!!」 男ににらまれ、びくっと震える初音。 「ほぅ…リネットはまだ力に目覚めていない様だな…」 「や…止めろ…まだ、初音は…」 梓が男の言葉に反応して言う。 「うるさい奴だ…エディフィル、アズエルを黙らせておけ…」 「はい、ダリエリ…」 男の言葉にうなづくと、楓は梓の腹に一発拳を見舞った。 「ぐっ…か…楓…」 それに驚愕の表情で梓が答える。 「…さぁ、来いリネット…今回は役に立ってもらうぞ…」 男が初音へと一歩踏み出す。 「……。」 あまりの出来事にどうして良いか分からずに立ち尽くす初音。 「…そうだな、まずは覚醒させるのが先か…」 初音の様子を見て男がつぶやく。 「…な…何?」 「思い出すのだ…自分が何者であったのかを…」 男の目が紅く光り出す。 「あっ…」 その眼光を受け、初音が小さな声を漏らす。 「あ…ああ…あぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!」 だんだん声が大きくなると共に頭を抱えてうずくまる初音。 「ふふふ…」 その様子を笑いながら男が眺めていた。 しばらくして… 頭を抱えてうずくまっていた初音が静かに頭を上げる。 「ふふ、リネットこちらへと来い…」 頭を上げた初音に声を掛ける男。 初音は…こくりとうなづくその男にしたがった… 「は…初音まで…一体、どうなっているんだっ!」 梓が崩れたままの姿勢で叫ぶ。 「ふ、これで仕掛けは揃った…さあ、見えようぞ次郎衛門…」 男が笑いながら低くつぶやいた。 「行くぞ、エディフィル、リネット…」 「「はい…」」 その場を去る男の後に楓と初音が続く。 「初音…楓…」 その場に残された梓がつぶやく。 「…耕一たちに…知らせないと…」 一部始終をただ見ているしかなかった梓がゆるりと立ち上がり、ずるず ると壁を伝いながら歩き出した… Leaf K.O.F大会第二十一回『導かれし者達』〜終わり〜 ===================================== どうも、岩下です 前回からどれだけ経っているか筆者も分からないほど間が開きましたが、 ここにLeaf K.O.F大会第二十一回をお送りします。 ようやく、執筆が出来るほどに余裕が出来てきました。 今後はあまり間を空けない様にして行きたいと思います。(^^; この、Leaf K.O.Fを初めて見る方もいらっしゃると思いますが、 前回までの分は図書館に保存させていただいていますので、お手数ですが、 そちらをご覧になっていただければ幸いです。 では、今回はこの辺で失礼します…