クリスマス小説 投稿者:岩下 信


柏木家物語・それぞれのクリスマス

12月24日。
隆山の街はクリスマスソングが流れ、いつもより賑わっていた。
無論、柏木家とて、例外ではない。
柏木家の台所では、ケーキ作りに励む梓と初音の姿があった。
「初音、そこのクリーム泡立てておいて。」
「うん、分かった。」
シャカシャカと音を立ててボールにクリームが泡立つ。
「ねぇ梓お姉ちゃん、耕一お兄ちゃん何時に来るの?」
「んっ夕方ぐらいだってよ。」
梓がスポンジケーキを切りながら答える。
「そっか、喜んでくれるといいな……。」
初音は泡立てをしながらつぶやいた。

その頃、楓は梓に頼まれていた買い物をしていた。
いつもより騒がしい街並み。
それに刺激されて楓の気持ちもどこか浮かれていた。
特に耕一とまた会える事が何よりもうれしいのだろう。
いそいそと買い物を済ませて、帰り道の途中の楓の上から白いものが落ちてきた。
「…雪………。」
それに気づくと楓が空を見上げて、小さく声を上げた。

時を同じくして鶴来屋の会長室で、千鶴は網の目を数えていた。
『耕一さん、喜んでくれるかしら……。』
お世辞にも奇麗とは言えない代物を彼女は編んでいる。
想いを込め、一つ一つの網目を編んで行く。
いい加減肩がこり始めた時、千鶴はふと外を見た。
「あっ………。」
ちらちらと舞い下りる白い様精達にしばし千鶴は見とれる。
「…ホワイト・クリスマスね。」
千鶴の口からそんな言葉がこぼれた。つぶやいた千鶴の表情はとても優しかった。


「おーい、そっちの盛り付けはどうだ?」
「……いいみたいですよ……。」
「梓、これはどこに置けばいいのかしら?」
「あぁ、そこに置いといて。」
「千鶴お姉ちゃん、その包みは何?」
「うふふ、内緒。」
居間は楓の手により奇麗に飾られ、そのテーブルには梓と初音の作った料理が所せましと並んでいる。
柏木家の姉妹は準備が終わると、各々の定位置につき、主賓の来るのを待った。

待つ事数十分。
玄関のチャイムが鳴る。
「おっ来たな。」
梓が待ちかねたように立ち上がる。
「そうみたいだね。」
続いて初音も席を立つ。「さっみんなでお迎えしましょう。」
千鶴も腰を上げた。
「…………。」
楓は微笑んで無言で立ちあがる。

玄関には、大きな荷物を持った耕一の姿があった。
どたどた…と音がして、梓がまず玄関に着く。
続いて初音、楓、千鶴という風に玄関の耕一の目の前に現れる。
耕一はみんなの顔を見ると微笑んで一言言った。

「メリークリスマス!!」

                                完

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   メリークリスマス!
   というわけで、お久しぶりの岩下です。
   クリスマスネタ・・・というわけで、柏木家の何気ない日常のヒトコマを
   お送りしました。
   
   では、又の機会にお会いしましょう!

   スペシャル・サンクス=kao様