リレー小説第一弾第五回 投稿者:岩下 信


リレー小説『主人公達の断末魔』第五回、「目標は鶴来屋!」

「あれっ?ワタシ、何していたんダロ?」
雀を追っていたレミィはハンターモードから我に返り、あたりを見回して言った。
見ればどこかの山奥の山道。
人影などある筈も無かった。
「……どうやって、みんなのトコロに戻ればいいカナ……。」
しばし考え込むレミィ。
だが、次の瞬間、
「『下手な考え休むに似たり』ネ!とりあえず歩いてみまショ!」
ぱぁっと晴れやかな顔をして、レミィは山道を歩き出した。

「Brand New Heart 今ここから始まる……」
のんきにどこかで聞いた事のある歌を歌いながら山道を進むレミィ。
この様子だと、自分が道に迷っている事などまったく気にしていないだろう。
レミィの進行方向は、鶴来屋とまったく正反対だった……


そのころ、柳川は鶴来屋に向かって跳躍していた。
湧き起こる興奮を押さえながら……
『柏木耕一…今日がお前の命日となるであろう……』
木々の間を擦り抜けるように飛びながら鶴来屋を目指す柳川。
その時、山道を歩く金髪の女の子が目に入った。
『…獲物…』
柳川の本能が考えるより早く足をその女の子に向けていた。
「くくく…狩りの時間だ……」
柳川は低く笑うと女の子の側に降り立った。


「せんぱーい!どこに行くんですかぁ〜」
梓の後を追いかけるかおり。
『しつこい奴……』
梓は心の中で舌打ちしながらかおりから逃げていた。
鬼の力を使って逃げているのに、かおりは梓を見失う事無く追いかけてくる。
…もしかしたら、かおりも『鬼の血』を引き継いでいるかも知れない…
梓の頭に馬鹿な考えがよぎる。
その時、梓は「同族の気配」を感じた。
『…まさか…本当にかおりは…』
足を止め、かおりの方に向きかえる梓。
「はぁはぁ…せんぱ〜い………ひいっ!」
梓に追いついたかおりは梓の顔を見た瞬間、息を呑んだ。
梓の目は赤く光り、かおりを睨むように見詰めている。
しかも、梓から、冷たい殺気をかおりは感じた。
「あっ…あの…先輩?」
梓の様子を見て慌てるかおり。
『…そんな訳ないか…だったら今のは……!!』
かおりの様子を見て「鬼の気配」はかおりではないと確認したその時、
再び「鬼の気配」を梓は感じた。
「そっちか!」
気配の方へと走り出す梓。
「あぁ…待って下さ〜い〜。」
一瞬、梓の殺気に一歩引いていたかおりはすぐに梓の後を追い始めた。

「ダレ?」
レミィは急に上から降りてきた男に驚いていた。
眼鏡の奥の瞳がまるで獣のように光っている。
男と目が合った瞬間、レミィは
「獲物…ネ…。」
と小さくつぶやいて再びハンターモードに突入した。
それを見て、目の前の男が嬉しそうに薄笑いを浮かべる。

梓は「鬼の気配」がする方向へと飛び出した。
そこには見覚えのある男…柳川と金髪の女の子が居た。
『こいつは……』
柳川と対峙した梓は冷や汗が出るのを感じていた。
「ひいっ!」
すぐ後ろで、梓に追いついてその光景を見たかおりが息を飲んだ。

そのころ、鶴来屋では……
「ここだ……。」
浩之が揺れの原因ではないかと思われる部屋の前にたどり着いていた。
その部屋のドアには『面会謝絶』と書かれた札がぶら下がっている。
「ますます、怪しいな…あかり、そー思わねーか?」
浩之は後ろを振り返りあかりに言った…がその場所にあかりはいない。
見ればあかりまだ浩之に追いついていなかった。
「……あかり、何を…あぐっ!」
浩之があかりに文句を言おうとしたその瞬間、勢いよくドアが開き浩之の後頭部を直撃した。
そのまま、床に伏す浩之。
「あっ浩之ちゃん、大丈夫?」
ようやく追いついたあかりが倒れている浩之にあわてて駆け寄る。
「……つっ…痛って〜。」
後頭部を押さえながら立ち上がる浩之。
「何なんだよ一体……。」
そう言って開け放たれたドアに目をやる浩之。
その視界に入ったものは……

一方鶴来屋ロビーでは…
世間話に興ずる志保と雅史。
そして、そこになぜか志保と話が合った小出由美子が加わっていた。
しかも、由美子にお茶までごちそうになる二人。
志保と雅史の頭の中にはすでに当初の目的が失われている。
二人ともおしゃべりなタイプなので話が途切れる事が無かった。
雅史は段々退屈になってふと、玄関の方へ視線を走らす。
その時、雅史の視線に一人の少女が視界に入った。
その少女は顔立ちはいいものの、すごい目つきをしていた。
『…なんか、不自然だな…』
雅史はそう思い、その少女を見ていた。
「ちょっと雅史、何しているのよ。」
志保がよそ見をしている雅史に言う。
「いや…ちょっとね…」
「?」
志保は雅史の視線を追うとその先に一人の少女が目に入った。
「何?あの子…ちょっとおかしいんじゃない?」
「やっぱりそう思う?」
「えっ何?どうしたの?」
二人の視線を追い、由美子もその少女に気がついた。
「…確かに、ちょっと様子が変ね。」
「……なにか匂うわね…。」
志保はいつのまにか手帳を手にして、立ち上がった。
「「えっ?」」
志保に聞き返す二人。
「追いかけてみましょ、なんか起こりそうだし…。」
と言うと志保は走り出した。
「まっ待ってよ志保。」
後を追う雅史。
「…あわただしい子達ね。」
由美子も苦笑しながら後を追った。

「…今日こそは、あの偽善者を血祭りにしてやる。」
その時、薄笑いを浮かべながら初音は社長室を目指していた。
「あれを使えばあの偽善者でもひとたまりもない…」

それから数分後のロビーでの事…
「…あの……。」
性格反転初音を追う楓の前に一人の男が立ちふさがっていた。
「お主、お嬢様を見なかったか!?」
そう、彼女の足止めをしているのはセバスチャンだったのだ。
彼は迷う事数回、ようやくロビーに辿り着き、そこで誰かまわず声をかけまくっていたのだ。
当然、楓は何の事か分からず、無視しようとしたが、セバスチャンに回り込まれ逃げ出せないで居た。
『仕方がありません』
楓は目の前のセバスチャンに申し訳なく思いながら右手を振りかざした。
次の瞬間、楓の右手がセバスチャン目掛けて振り下ろされる。
ぶん!
楓の右手は空を切り裂いただけに過ぎなかった。
「!…何をするか、この小娘!。」
セバスチャンは楓の攻撃を避けると一喝する。
「…すいません…先に行かせて下さい。」
一言言うと、楓は初音の消えた方へと足を向ける。
「待てぇ〜い!」
その楓をセバスチャンは呼び止める。
「…時間が無いのです……。」
振り返って楓はあの冷たい目つきでセバスチャンを睨む。
「今の無礼、許さん!」
楓の目に怖じ気つく事もなく、セバスチャンは楓目掛けて突撃する。
「どうなっても、知りませんよ……」
楓はそれを見ると再び右手を振り上げた……

「なんか、ロビーが騒がしいわね。」
綾香と葵が階段からロビーに出ようとした時の事だった。
綾香がロビーの騒がしさを感じて言った。
「そうですね…あれっ?あの人、どこかで見たような……。」
葵が騒ぎの中に居る一人の男を見て言った。
「……あの馬鹿……行くわよ!葵!。」
綾香が騒ぎの中で一人の少女に向かって拳を繰り出しているセバスチャンを見て、駆け出す。
「えっ?あの……分かりました。」
綾香に続いて葵も駆け出した。

その頃、祐介達の部屋では……
「はいっお茶です。」
「ありがと、マルチちゃん。」
沙織はマルチの入れてくれたお茶を飲んで一息ついた。
「…それにしても、近頃のメイドロボの技術の進んだものだ。」
マルチを見て、拓也が感心して言う。
「そうですね…耳の飾りが無ければ人間の女の子と見分けが付きませんよ。」
祐介がそれに答える。
「あの…それでこれからどうしましょう?」
二人の会話を聞いて瑞穂が祐介に聞いた。
「うーん…まずはここで何が起こっているのか確かめないと…」
「そうだね。下手に動いて巻き込まれては困るからね。」
「あの…ここでなにか起こっているのでしょうか?」
二人の会話を聞き、マルチが尋ねる。
「…うん、何かが起こっているのには間違いがない。その証拠に君が瞬間移動をしているじゃないか。」
マルチに答える拓也。
「…そうですね…すいませんご迷惑をおかけして…。」
うな垂れてマルチが言う。
「いいのよ、気にしなくても。」
沙織が太陽のような笑顔で言う。
その時、平和な時は終わりを告げた。
「…長瀬ちゃん…何かが来る……。」
瑠璃子が祐介の服のすそを引っ張りながら言った。
「………何も感じないんだけど……。」
祐介が答えたその時、あたりの空間がぐにゃりとむ歪み、とある一点に
向けて空間そのものが吸い込まれるようになった。
「何だ!何が起こっているんだ!」
拓也が大声で言う。
「いやぁぁぁ…電波はいやぁぁぁぁーー!」
沙織が毒電波と勘違いして叫んだ。
「きゃあぁぁぁぁ…。」
瑞穂も訳が分からず叫んでいた。
「…………。」
相変わらず動じない瑠璃子。
「あわわわわわ………。」
パニックを起こすマルチ。
そして、彼らは吸い込まれるように消えた。
後に残ったのは無人の部屋だった。

「!先輩、何かが来ます!」
事務室を目指していた琴音が芹香に言った。
「……………。」
「『何でしょうね?』ですか…」
こくこく………
二人の目の前の空間が歪み、その中から何かが近づいてきていた。
その人影とは……

                                 続く!! 
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〈後書きという名の悪あがき・・・〉

お久しぶりです。岩下です。
どうにかリレー小説のほうも上がりました。
K様・rune様・久々野様。いかがだったでしょうか?
私が書くとこんな物になりました。
先に書かれた方々の面汚しになっていなければいいのですが…
とりあえず、バラパラだった登場人物をまとめてみました。
考えてみれば、次に書く人の事を何も考えていなかったような…
続きを書かれる方、本当に大変でしょうがよろしくお願いします。

ネタばらしや裏話などは次の機会に・・・
では、失礼します。