「初ない」発売記念(ってもう遅いって!) 投稿者:岩下 信


「初音のないしょ!」発売記念小説
                 『想い…』

大学の期末試験も終わり、後は来期を待つだけとなった。
俺はバイトをしながらのんびりと休みを謳歌していた。
そんなある日の事。
ピンポーン、ピンポーン………
いきなり、玄関のベルが鳴った。
『誰だよ、まったく……』
昼寝の邪魔をされ、俺は面度臭そうに玄関へと行く。
新聞勧誘やセールスマンだったら怒鳴りつけてやろう……
俺はそう決めて、ドアを開け、
「誰?。」
と玄関の前に立っている人影に声を掛けた。
「お兄ちゃん!よかったぁ〜居たんだ。」
聞き覚えのある声。
そこに立っていたのは初音ちゃんだった。
「はっ初音ちゃん、どうしたの?」
俺は目の前に立っている初音ちゃんに聞いた。
「うん、耕一お兄ちゃんに会いたくなって、お泊りしに来ちゃった。」
初音ゃんはにっこりと微笑んで言った。
うーん、いつ見ても初音ちゃんは可愛い。
しかも、『会いたくなって来た。』とは、なんともうれしい事じゃないか。
とは言うものの、千鶴さん達は初音ちゃんがこっちに来ている事を知っ
ているのだろうか?後で初音ちゃんに聞いてみよう。
「そうか、とりあえず入んなよ。」
俺はそう言って初音ちゃんを部屋へと入れた。

「お邪魔しまーす!」
初音ちゃんの元気な声が俺の部屋に響く。
初音ちゃんの一言で俺の部屋が明るくなったような気がした。
だが、初音ちゃんは俺の部屋を見て、玄関で立ち止まって入ろうとしない。
「…どうしたの?」
「…お兄ちゃん…お部屋掃除してる?」
「あっ………。」
俺は部屋がひどく散らかっている事に気づいた。
考えてみれば最近、部屋を片づけた覚えがない。
「いや、その、何だ……はははは……。」
俺は冷や汗をかきながら、話をごまかす事にした。
・
・
・
それから、俺と初音ちゃんは部屋の掃除をする事になった。
「お兄ちゃん、これは捨てていいの?」
「あぁ、講義のプリントか…いいよ、捨てちまって。」
「うん、分かった。」
こんな感じで部屋の掃除が進んで行く。
部屋も片付き、掃除も終わろうとした時に事は起こった。

「お兄ちゃん、この辺にある雑誌を片づけておくね。」
初音ちゃんが部屋の片隅に無造作に積んである雑誌に手をかけながら聞
いてきた。
『…雑誌?最近、買った覚えは…』
「うん、多分要らないやつだと思うから、いいよ。」
俺は初音ちゃんの方を向いて答えた。
「……………。」
すると、初音ちゃんは一冊の雑誌を手にして固まっている。
その手にしていた雑誌はいわゆる18禁・その手の雑誌だった。
「!!…初音ちゃん、こ、これはね、その……。」
俺はその光景を見て、慌てて弁解を始めた。
「…お兄ちゃんのえっち……。」
初音ちゃんがこちらをちらりと見て、か細い声で言った。
初音ちゃんの顔が赤くなっている。
「いや、だから、そのっ、あれだ。ダチが勝手に置いていったやつだか
ら、気にしないで…あはははははは。」
俺は初音ちゃんの手から、雑誌を奪うように取ると、その手の雑誌を慌
ててごみ箱に捨てた。
『しまった…あの中にはお気に入りのやつもあったのに…』
俺は少し後悔をした。
だが、初音ちゃんに嫌われずにすむ事を考えれば、このくらいの代償は
いざ仕方ない。
「…お兄ちゃんが買ったんじゃないんだ…。」
初音ちゃんは俺の言葉を聞き、ほっとした様に言った。
……どうにか誤魔化せたようだな………
俺も初音ちゃんと同じようにほっとした。

部屋の掃除も終わり、落ち着くと、初音ちゃんがお茶を入れてくれた
目の前にはにっこりと微笑んだ初音ちゃんが座っている。
「ごめんね、本来なら俺がもてなさなきゃいけないのに。」
「いいんだよ、お兄ちゃん。いきなり来た私がいけなかったんだから、
それにね…。」
「?」
「あのね…私、お兄ちゃんの為に何かするのが好きだから……。」
初音ちゃんは消えそうな声で俺に言った。
顔が真っ赤になっている。
……なんて、いい子なんだろう……
俺は感動した。
うーん、憎まれ口しか叩かない梓に初音ちゃんの爪のあかでも煎じて飲
ませてやりたいもんだ
「……………。」
初音ちゃんは真っ赤になってうつむいている。
「……………。」
俺もあまりの嬉しさに言葉をなくしていた。

無言の時が数分過ぎた頃、沈黙が電話によって破られた。
「あっ電話だ。」
初音ちゃんがびっくりして声を上げた。
そんな初音ちゃんの反応に少し笑いながら俺は電話を取った。
「もしもし、柏木です。」
『あっ耕一さんですか?』
「あっ千鶴さん。」
千鶴さんからか…という事は初音ちゃんがこちらに来ている事を知って
いるのだろうか?…ちょうどいい、聞いてみよう。
『あの、初音はもう、そちらに着きましたか?』
「えっあぁ居ますよ。替りましょうか?」
どうやら初音ちゃんが来ている事は知っているらしい。
『いえ、無事ならいいんです。耕一さん、いきなり初音がお邪魔して、
すいません。事前に連絡するべきだったのですが……』
「いえ、別にいいんですよ。俺も退屈していたところだし…」
『初音の事よろしくお願いします。』
「はい、いいですよ。」
『それでは…』
千鶴さんからの電話は切れた。
「今の電話、千鶴お姉ちゃんから?」
初音ちゃんが聞いてきた。
「そうだよ。」
「やっぱりね。」
初音ちゃんが案の定といった感じで言った。
…なんか、打ち合わせでもしているみたいだな…

その後、俺達は夕食の材料を近所のスーパーへ買いに行った。
初音ちゃんが『夕食を作る』と言ったはいいが、何しろ俺の家の冷蔵庫
にはまともなもんが入っていない。
まぁ大体一人暮らしの野郎の部屋なんてのはこんなものだ。
…特に俺はずぼらな方だからな…。
「ねぇお兄ちゃん、何が食べたい?」
スーパーで買い物をしている時、初音ちゃんが話し掛けてきた。
「うーん…家庭的なモノがいいかな?」
「じゃあ、肉じゃがとか作ろうか?」
「あっそれいいね。」
「うんっ!じゃあそれにするね。」
初音ちゃんと俺はスーパーの中を回り、必要なものを買い揃えた。
スーパーでの買い物を済ませ、その帰り道で、初音ちゃんがいきなり腕
を組んできた。
「?初音ちゃん、どうしたの?」
「…お兄ちゃん、嫌?」
初音ちゃんは俺を上目づかいに見て言った。
…そんな目をされたら何も言えなくなるじゃないか…
「別に。」
初音ちゃんの視線を感じながら、俺はそっぽを向いて答えた。
その言葉を聞き、初音ちゃんはにこっと嬉しそうに笑った。
「ねぇ、お兄ちゃん、こうしているとなんだか新婚さんみたいだね。」
初音ちゃんは嬉しそうに言う。
「あぁ、そうだね。」
俺はただ一言そう答えた。
…なんだか、今日の初音ちゃんは大胆だな…

今日の夕食は華やかなものとなった。
いつもは、インスタント食品か外食だったので、久々の家庭料理。
しかも、初音ちゃんの手作りとくれば言うことはない。
梓仕込みの料理の腕は賞賛に値する。
俺は初音ちゃんの笑顔を見ながら、料理を完全に平らげた。
「どう?美味しかったかな?」
初音ちゃんがお茶を入れながら聞いてきた。
「あぁ、もしかしたら梓の奴より上手いかもな美味かったよ。」
俺は正直な感想を述べた。
「やだ、お兄ちゃん誉め過ぎだよぉ…。」
とか言いながらまんざらそうではない表情で答える初音ちゃん。
照れているのか少し、頬に紅がさしている。
「お世辞じゃないよ。」
俺は初音ちゃんが入れてくれたお茶をすすりながら言った。
「ふふふ、ありがとう。」
初音ちゃんはにこっと微笑みながら言った。
…こんな娘が彼女だったらなぁ…

夕食も終わり、後片付けを済まして、俺達はテレビを見る事にした。
バラエティー番組を見て、無邪気に笑う初音ちゃん。
その横顔を見ながら、ふと、浮かんだ疑問があった。
『今日の初音ちゃんはなんかおかしい。』
腕をいきなり組んできたり、『新婚さんみたい』と言ったり、普段の初音
ちゃんからは想像できない行動を取っている。
………………………
「お兄ちゃん、どうしたの?」
俺が初音ちゃんの顔をみつめながら考えていると、視線に気づいた初音
ちゃんが不思議そうに聞いてきた。
「いや、何でもないよ。」
「そう?…あっこのタレント面白いよね。」
「そうだね。」
それから、俺と初音ちゃんは終始テレビの話題で盛り上がった。
……俺の気のせいだろう……

夜も更けて、俺達はそろそろ寝る事にした。
初音ちゃんを予備の布団に寝かせ、俺はいつもの布団に入った。
「お休み、初音ちゃん。」
「うん、お休みなさい。」
電気を消す。
俺の部屋はワンルームなので別々の部屋には出来なかった。
すぐ側で初音ちゃんが寝ている。
……………………。
何考えているんだ俺は……
邪な考えが頭の中に浮かぶ。
いかん、相手はまだ15歳じゃないか。
…俺は……。
「お兄ちゃん、寝ちゃった?」
いきなり、初音ちゃんが話し掛けてきた。
「いや、まだだよ。」
俺は答える。
「ねぇお兄ちゃん…………。」
「なんだい?」
「………そっちに行ってもいい?」
「えっ!?」
初音ちゃんの思わぬ発言に、驚いた。
「…………。」
その一言から初音ちゃんは黙り込む。
「…………いいよ。おいで。」
しばらくの葛藤後、俺は言った。
ごそごそと動く音に続いて、初音ちゃんが俺の布団に入ってくる。
そして、いきなり初音ちゃんは俺に抱き付いてきた。
「!!!!」
あまりの事態に俺の頭は混乱する。
初音ちゃんが俺に抱き付いてきた?一体これはどうした事なのだろう。
次の瞬間、俺の頭に強い一つの感情が入り込んだ。
それは……好き……いや、愛しているという感情だ。
『私たち、エルクゥの血を引くものは、お互いにテレパシー能力がある』
楓ちゃんがそのような事を言っていたのを思い出した。
とすると、これは初音ちゃんからのものだろうか?
「初音ちゃん………。」
「…お兄ちゃん……。」
俺は初音ちゃんの想いを受け止めた。
初音ちゃんを抱きしめる。
触れ合う二人の体。
優しさと、温もりが伝わってくる。
「お兄ちゃん…私、お兄ちゃんの事が…好きなの。」
「…今、分かったよ、初音ちゃん。」
「梓お姉ちゃんにも、楓お姉ちゃんにも、千鶴お姉ちゃんにも、お兄ち
ゃんを渡したくない……。」
「…俺も初音ちゃんの事が……。」
そのまま、初音ちゃんを抱きしめた。
偽りはない。
俺は素直な感情をそのまま初音ちゃんに伝えた。
「お兄ちゃん………。」

言葉はなく、俺達はお互いの温もりを感じながら眠りに落ちていった

次の日、初音ちゃんは帰っていった。
次の休みにはこちらから会いに行こう。
…バイト代、貯めないとなぁ……
                                                    END
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   どうも、お久しぶりの岩下です。
   今回はちょっと変わったのをアップしてみました。
   久々にこういうのを書くと、恥ずかしいものです。
   しかも、オチがないし・・・文才ないなぁ相変わらず。
   初音ちゃんファンの皆様ごめんなさいm(_)m
   ではでは、今度はLeafK.O.Fでお会いしましょう!

                              壊れ始めた岩下 信

   P.S
      久々野 彰様
      すいません。私の名前は『いわした しん』と読むんです。