Leaf K.O.F大会第十回 投稿者:岩下 信


       Leaf K.O.F大会/第十回『残虐な瞳・前編』

試合終了後、俺達はまだ、気がつかないあかりを休ませる為に、控え室
へと移動した。

「やるじゃない!あんた達。」
志保がいきなり部屋に入ってきて、俺達に言った。
「まさか、あかりがこんなに強かったなんて、意外だったわ。」
志保が腕を組み、考え込むような仕種で続ける。
「これは、番狂わせだわ。なにしろ決勝であんた達と当たるんだから…。」
「おい、志保。」
「なによ?」
「あかりが今、寝ているんだ。少し、静かにしてくれ。」
俺は一人で延々としゃべり続けそうな志保に言った。
「えっあかり、まだ起きないの?」
志保が意外そうな顔で俺に言った。
「あぁ、こいつ、無理してたからな…。」
俺はあかりの方を見て言った。
「……そっか、じゃああんまりうるさくしても悪いわね。」
志保は俺の言葉におとなしく従う。
…俺の時は無理矢理起こしたくせに……。
「ところで、志保。お前今確か『決勝で当たる』って言わなかったか?」
「言ったわよ。」
「『言ったわよ』って…お前ら、勝ち抜いて来ているのか?」
俺が志保にそう聞くと腰に手を当てて、睨む様な目つきで言い返して来た。
「あのね、ちゃんと大会の様子を見ていなさいよ。次の準決勝戦は私たちがでるの!」
「…お前らって、そんなに強かったのか……。」
「あたり前よ!私達のチームには、『無敵の宮内』さんが居るのよ。」
…確かにレミィが居るなら、大概の相手だったら倒せるだろう。あの、
壊れたレミィに勝てる奴はなかなか居ない。
「それに、こっちには『委員長』事、『保科』さんが居るのよ。彼女の
"委員長キック"は強烈なのよ。これで、次の試合もいただきって言った所かしら。」
志保は片手を顔に当て、不敵な微笑みを浮かべて俺に言った。
「委員長も居るのか。」
けども、まぁよく委員長をチームに入れられたものだ。
たしかに委員長も独自の関西弁のノリで強そうだ。
「まぁこれで優勝は私達の手にあると言ってもいいんじゃないかしら。」
志保はすでに優勝したかの様に勝ち誇って言った。
「そして、私はLeaf世界の最強の女王として、人気を取り戻すのよ。」
「…お前、人気なんてあったのか…。」
どすっ!
「うっさいわねー。いいの、細かい事は!。」
志保は俺のみぞおちに蹴りを入れて言った。
「つっ…志保、テメー……。」
俺はかがんでみぞおちを押さえて志保を睨み付けた。
さっきの戦いで受けた傷まで痛み出す。
「あっそろそろ試合のお時間ね。じゃあねヒロ。決勝で会いましょ。」
志保は片手を上げ、部屋を出ていった。

…あいつ、俺達の戦いをちゃんと見ていないんじゃねーのか?
第一、 あいつらが俺達に勝てる訳ねーじゃねーか。
……まっ、あいつらが勝ち進んできたって事は相手に恵まれていたんだろうな……
俺はみぞおちを押さえながらそんな事を考えていた。

「…………。」
さっきまで俺と志保のやり取りを何も言わずに見ていた先輩が話し掛けてきた。
「『大丈夫か?』って?あぁなんとか…あのヤロー、覚えてろよ。」
おれはみぞおちを押さえたまま体を起こした。
「…………。」
そして、先輩はいきなり変な事を言った。
「『嫌な予感がする』って?いったい誰の事?………えっ『志保達の事』?」
こくり……。
先輩はうなづく。
「どういう事?」
「…………。」
「『志保達が危ない』って?」
こくこく……。」
先輩は悲痛な顔でうなづいた。

俺は先輩にまだ寝ているあかりを頼むと、会場へと足を運んだ。
さっきの先輩の『志保達が危険』という言葉が気に掛かったからだ。
会場へ向かう途中、何度も声を掛けられた。
決勝進出チームの一人として、だいぶ有名になったようだ。
うざったくもあるが、こういうのも悪くはないな…。
などと考えながら歩いていると、
「あの…藤田さん…でしょうか?。」
見れば、短い髪に度の強そうな眼鏡を掛けた女の子が声を掛けてきた。
「そうだけど……何か用?。」
「あのっ、一言お礼が言いたくて…。」
「お礼?」
俺は聞き返した。
「はい、藤田さんのおかげで、香奈…太田さんが元に戻ったんです。
それでお礼に……ありがとうございました。」
ぴょこんと頭を下げて相手の女の子は言った。
「…………。」
いきなりお礼を言われて俺は戸惑った。
「それじゃあ、失礼します。」
そう言うと女の子は廊下を駆けていった。
『…よくわかんねーけど、まっいいか。』
俺は再び会場へと歩きだした。

俺が会場に着くと、会場は沸いていた。
さすがに準決勝ともなると、盛り上がるのだろう。
俺は運良く前のほうに空席を見つけ、そこに席を取った。
もう、両チームとも入場を済ませていた。
弓道着姿のレミィ・いつもの制服姿の委員長と志保が見える。
対する相手は、眼鏡をかけた、神経質っぽい野郎と先日、いきなり声をかけてきた「月島」
とかという野郎・そして…げっ…橋本先輩が居る?
なんだか、訳が分からない組み合わせだなこりゃ…。
などと考えているうちに、試合が始まった。

『準決勝戦・第二試合"柳川混合チーム"VS"TH長岡チーム"の試
合を開始いたします。第一戦、"柳川祐二"VS"保科智子"レディ・ゴ
ー!。』
アナウンスが声高く、試合開始を告げた。
「先手必勝やぁーーーー。」
委員長が先手を取った。
「うりゃぁぁぁぁーーー。」
委員長の足蹴りが柳川を捕らえる。
柳川は不敵な微笑みを浮かべたまま、それを避けようとしない。
どすっ!
見事に委員長キックが柳川の腹に決まった。

…ありゃ、まともに受ければ、ダメージでかいぞ。

だが、柳川は委員長キックを受けても、不敵な微笑みを崩さずに立っていた。
そんな柳川を見て、委員長の顔が引きつる。
「…そんな…うちの蹴りが利かん相手なんて……。」
その委員長のつぶやきを聞き、柳川が笑った。
「はははは……『狩猟者』の俺にそんなのが利く訳ないだろう!。」
そう言うと、柳川は蹴りを放ったまま固まっている委員長の足をつかんで振り下ろし、
リングに叩きつけた。
ばぁん!
「うっ…。」
衝撃音と悲鳴が重なる。
「さぁ、楽しませていくれよ………。」
柳川の目が、燃えるように赤くなった。
殺気が相手から吹き出し、冷たい空気があたりに舞う。
…前の相手と同じだ。俺達が戦った『柏木家』の人たちと同じ目を柳川はしていた。
これは志保達が勝てる相手ではない…
委員長はそのまま動かなかった。
口の端からは血が流れている。
柳川が委員長の襟をつかもうとした瞬間、
『保科選手、試合続行不可能として、WINNER柳川祐二!』
アナウンスが第一戦終了を伝えた。
そのアナウンスを聞くと、
「ふっ運が強い雌だな…。」
と言うと、委員長に背を向けた。

…なんだよあいつは……
委員長が床に叩き付けられたその一撃で勝負はついていたじゃないか。
それをまだ続けようとした…あいつはいったいどういうつもりだ?

その光景を見て、志保は固まっていた。
「ちょっ…ちょっと…。」
俺と志保の距離は数十メートル。
俺からでも志保の体が震えているのが分かる。
そんな志保の肩をレミィがポンっと叩いて、
「ノープロブレム。私が出るネ。シホは下がっていて…。」
「ちょっと…今の見ていなかったの?あんなの相手にしたら……。」
志保は慌ててレミィを止めようとする。
「フフフ……久々に狩りがいのある獲物に巡り会えたネ。ワタシ、楽しみヨ。」
レミィの目があの『壊れた』目になった。
「レッツ・ハンティング・タイム・ネ。」
レミィは嬉しそうにリングへと上がって行く。
「………。」
志保はレミィを止めることも出来ずにその様子を眺めているだけだった。

                                            続く……。

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  次回予告
        壊れたレミィに柳川が襲い掛かる。
        強靭な爪に切り裂かれるレミィ。
        その時、浩之が目にしたものは?
  次回・『残虐な瞳・後編』
         「レミィィィィーーーーー!」(浩之)
 
                                         お楽しみに!

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    お待たせいたしました。ここにLeafK.O.F大会の第十回を
    お送りします。
    今回、書いていたら、長くなったんで、前・後編に分けさせて
    いただきました。
    しばし、後編をお待ちください。

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                                              でわでわ、岩下 信