Leaf K.O.F大会第九回 投稿者:岩下 信


          Leaf K.O.F大会/第九回『火神・解放』

「あかりっ!」
俺は倒れたあかりへと駆け出した。
「おいっ!大丈夫か?返事をしろっ!」
ぐったりとしているあかりに声をかける。
だが、返事は返ってこない。
「……………。」
「『気を失っているだけ』だって?」
俺のすぐ後ろに先輩が立っていた。
「……………。」
「『精神的な疲労だからすぐ気が付く』って…。」
先輩の一言に俺は胸をなで下ろした。

…まったく、無理しやがって……
こんな気合を見せられちゃ、こっちの立つ瀬がないぜ…。
あかりの横顔を見ながら俺は思った。
「…………。」
「えっ『"次の選手をだせ"ってアナウンスが言ってる』って?」
こくこく……。
「そうか、…じゃあ、あかりの奴を頼んだぜ。」
俺は先輩にそう言って、リングの中央へと向かった。
「…………。」
そうな俺を先輩が呼び止める。
「…何?先輩。」
「……………。」
「『"火の腕輪"の力を最大まで使ってくれ』って?」
こくり………。
「でも、今まで俺は"火の腕輪"の力を使ってきたんだぜ。これ以上は…。」

先輩の言うことには俺はまだ"火の腕輪"の力の半分の力も使い切っていないと言う事らしい。
その後、先輩は"火の腕輪"の完全に使う方法を教えてくれた。
とはいっても使い方自体にはそんな変わりはない。
ただ、念じるだけではなく、火の腕輪に『命ずる』と言うことらしい。
よく分からないがイメージを"火の腕輪"に伝えるとそのとおりの攻撃・防御が出来ると言う事だった。

「大体分かったよ、先輩。じゃあ、言ってくる。」
「…………。」
『お気をつけて』と先輩が俺に言った。

相手もリングに上がって来た。
相手は最後に残った野郎だ。
多分、この相手も前の二人のように恐るべき力を持っているのだろう。
俺が勝てる保証はどこにも無い。
…でも、やらなければならない。
あかりの努力が無駄にならないように…
俺はそう思い、体にぐっと力を入れた。

『第三戦、"柏木耕一"VS"藤田浩之" レディ・ゴー!』

アナウンスが響く。
試合開始だ。

試合開始の合図と同時に相手の体がビクンっと震え、周りの空気が変化していった。
「グルルルルル……。」
いきなり、獣みたいな唸り声が聞こえる。
「!」
俺はその様子を見て、恐怖に凍り付いた。
相手の体が化け物のように変化してゆく。
全身の筋肉が盛り上がり、手からは鋭い爪が生えてゆく。
その変化は先ほどの二人とは比べ物にならない。
「ばっ…バケモン…。」
俺の口からうめくように言葉が出た。
相手の体はさらに変化を続ける。
メキメキメキメキメキ……
音を立てて全身が2倍・3倍と膨れ上がる。
ピシッ
相手の足もとの石に亀裂が入った。
「ど…どうなってるんだよ!」
俺は恐怖のあまり叫んだ。
夢でも見ているのではないか?
非常識な戦いが続いたといっても限度ってもんがある。

「グォォォォォォーーーー。」
相手が吠えた。
その咆哮はもはや人間のものではなかった。
そして、ひと吠えすると相手は素早く上に飛んだ。
「!!」
その様子を唖然と見ていた俺は慌てて迎え撃つ姿勢をとる。
相手の爪が向かってくる。
無駄だしと分かっていてもやらないよりはマシだろう。
"腕輪よ!俺を守れ!"
『腕輪に命じてください。そうすれば腕輪の完全な力を使えます。』
俺はさっき先輩に言われた通りに、そう腕輪に命じた。
ゴォォォォォォォ……
俺と相手の間に炎の壁が生まれる。
「グァァァァァァァーー。」
突っ込んで来た相手は思いもよらぬ炎の壁にモロにぶち当り悲鳴を上げた。
「グ、グオォォォォーーー。」
一瞬、相手は引いたものの、すぐに体勢を立て直し再び吠えて向かってきた。
俺は又、同じように炎の壁を張った。
ゴォッ!
むわっとする熱気が俺の頬に当たる。
今までの戦いの中では感じなかった熱気だ。
この壁だったら、相手もそう簡単には仕掛けられないだろう。
俺はそう考えた。
だが、その考えはすぐに打ち消された。
シュォォォォォォ……
俺の炎の壁が相手の鋭い一撃に切り裂かれた。
「!!」
ザシュッ……
続いて、相手の一撃で生じた風圧で俺の胸が裂けた。
じわりと血が溢れ出す。
「痛っ……。」
俺は胸に走る痛みで一瞬体勢を崩す。
「グォォォォォォォォーーーー!」
相手が俺の隙を見逃す訳もなく、黒い疾風となって俺を狙う。
「ちぃっ。」
俺は相手に向けて炎の玉を飛ばす。
しかし、相手は俺の攻撃をいともたやすく交わすと、俺の懐へと入って来た。
『やっやられる!』
俺は殆ど反射的に再び炎を出した。
「グアアァァァァ……。」
運良く相手に直撃したらしく、相手が悲鳴を上げた。
だが、相手は炎を受けながらも鋭い爪を俺に向かって振り下ろす。
ザクッ!
俺は再び胸に痛みを感じた。
相手の爪によって俺の胸に五本の傷が走る。
しかし、それは致命傷とはならなかった。
運良く当たった炎で相手の手元が狂ったからだ。

「グルルルル………。」
相手は十分過ぎる間合いを取ると威嚇するように唸った。
多少は俺の炎に警戒しているのだろう。
化け物と言っても生物は生物だ。
本能的な『火に対する恐怖心』は拭い切れないらしい。
相手が間合いを保ったまま動かないので、俺はここぞとばかりに反撃を仕掛けることにした。
"腕輪よ!奴を貫け!"
腕輪に命じた。
ゴォウゥゥゥゥゥ…………
腕輪から激しく燃え盛る炎が飛び出し、地を這うように何本もの炎の筋が相手へと向かう。
ヒュッ!
相手はそれらを上に飛んで避ける。
そして、そのまま俺へと爪を振りかざして向かって来る。
「うらぁっ。」
俺はそれを見ると再び炎を放つ。
空中ではさすがの化け物でも、避けることは出来ない。
相手は俺の炎に包まれた。
「グオオオォォォォォォォォ。」
相手は吠えながら失速し、そのまま落ちる。
ドサリ。
炎に包まれたままリングをゴロゴロとのたうちまわる相手。
「終わったな。」
俺は切り裂かれた胸を押さえながらつぶやいた。
肉の焼けるいやな匂いがした。
今回は幻覚の炎ではなく、実体を持つ炎が出たからだ。
あかりが第二戦で相手を実際に切り裂いたのと同じだ。
俺が腕輪を本格的に使ったからだ。
もう、決着はついたであろうと考え、俺は炎を消した。

しかし、その次の瞬間、恐るべき光景を目にした。
ひどい火傷を負って相手は立ち上がったのだ。
「グォッ…グォォォォォォーーー!。」
相手はぼろぼろになりながらも俺を睨んでいる。
「………うっ嘘。」
俺の口から驚愕に震える言葉が出た。

俺の炎じゃあいつを倒せないなかよ……。
だとしたら、俺ではあいつを倒せない?
そんな………。

俺が呆然としていると、相手は一つ鋭く吠えると俺に向かって来た。
俺はすぐに炎の壁を展開する。
切り裂かれるのは分かっていたが、けん制ぐらいには役に立つ。
さっきと同じように相手の手元が炎で狂い、致命傷だけは避けることが出来た。

それからはその繰り返しだった。
俺には相手の攻撃から身を守るしかない。
だが、いつまでも受けに回っていてはいつか殺られる。
俺の体は限界に近づいて来ている。
『くそっ、あかりみたいに俺にもっと力があれば……。』
俺がそう思ったときだ。
腕輪をしている腕が燃えるように熱くなった。
さっきまではそんな熱さは感じなかった。
ボオォォォォ……
腕輪を中心に、炎が大きくなる。
「グルゥ……。」
相手がその変化を感じ取り、動きが止まる。
ズオオォォォォォォォォ……
その炎は周りの空気を吸い取り巨大になって行く。
「うわあぁぁぁぁーー。」
俺はその熱さに耐え切れずに叫んだ。
そして、膨れ上がった炎は相手に襲い掛かる。
相手はそれを避けきれずに再び炎に包まれる。
「グォォォォォォォォ………。」
相手は巨大な炎に包まれて吠える。
俺はその様子をただ、呆然となって見ていた。
相手はどうにか炎から逃れようとして、動き回る。
「これが…俺の力か…よ。」
俺はつぶやいた。

やがて相手は動かなくなった。
すると、今まで燃え盛っていた炎がすうっと消える。
相手は炎が消えても動かなかった。
そして、その数十秒後、
『WINNFR 藤田浩之! "TH来栖川チーム"の勝利です!決勝戦へのチケットを手にしました!』
アナウンスが俺達の勝利をつげた。
そのアナウンスを聞くと、今まで静まり返って俺達の戦いを見ていた
会場の観客から声援と拍手が沸きあがった。
 
                                             続く……

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次回予告
            浩之達は決勝の相手の視察のため、もう一つの準決  
            勝を見に行く。
            そこで目にしたものはボロポロにされる志保達の姿だった
             次回『残虐な瞳』
        
            「許せねーよ。あいつら・・・。」(浩之)
            「・・・・・・・・・・・・・・・。」(芹香)
            「ひどい・・・。」(あかり)
 
                                             お楽しみに

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     ほんと、お待たせいたしました。
     今回は長く間が開いてしまいましたが、ここに、
      Leaf K.O.F大会第九回をお送りします。
     ご感想・ご意見をお待ちしております。
 
     今回は書くのに結構時間がかかりました。
     ふたりの力のバランスがその理由です。
     はぁ、どうにか山場は越えられたみたいです。
   
     多分、次は早いと思いますよ。・・・多分・・・・

      でわ、また次回のときに・・・
                                  スランプぎみだった岩下 信

       P.S
    >久々野 彰様
       「デンパマン」第一部終わっていたのですね。
       続くのですか?私個人としては続きを楽しみにしている
       のですが・・・・
       それに、私個人のディレクトリーを作って下さっているなん
       てなんていい人なんでしょう!
       ありがとうございます。

    >ARM様
      歯の治療、大変でしたね。お大事に。
      そういえばマルマイマーシリーズ再開しましたね。
      いつも楽しませていただいてます。
 
    >アルル様
      「あかり128%バーニングトースト」
      おもしろそうなので、楽しみに待っています。