Leaf K.O.F大会その八 投稿者:岩下 信


             Leaf K.O.F大会/第八回『激闘の果てに』

「なぁ、先輩。」
『何でしょうか?』といった風に先輩は俺を見た。
「倒れた相手、死んでいるのか?」
「……………。」
「えっ『生きてる』って?…でもさ、確かあかりの力が相手を貫いたような気がしたんだけど…。」
「……………。」
「『風神の力は一時的に切れますがすぐにその傷はふさがる』って?…俺の炎みたいな物か…。」
こくり………。
先輩はうなづいた。
どうやら相手は生きているらしい。
そんな会話を先輩としていると、今まで微動だにしなかった相手が起き上がった。
「つっっ…あーあ、やられちまったか…。」
などとぶつぶつ言いながらリングサイドに戻っていく。
「ごめんね。」
その背中に向かってあかりが一言謝る。
すると相手は、
「気にすんなよ、あんたが私より強かったって事だからさ。怨んじゃいないよ。」
あかりの方を見て、一言そう言うとリングを降りて行った。
…なんか、かっこいいぞ……

続いて、次の相手がリングに上がってきた。
おっとりとした感じがするお姉さんタイプの女性だ。
しかし、この女性も先ほどの相手と同じ力を持っているのだろうか…
外見からは想像がつかない。
『第二戦、柏木千鶴VS神岸あかり、レディ・ゴー!』
相手を観察しているうちに試合が始まってしまった。
あかりは前の戦いの時と同じように"風神"の力を発動させた。
相手はと言うとあかりの様子を見ているだけだけだ。
「?」
"風神"の力を発動させ終わったあかりが相手の様子を見て、戸惑っている。
「神岸さん、あなたの力は巨大ですが、私にはかなわないでしょう。」
相手があかりに話し掛けた。
「無駄な争いは望みません。どうか棄権して下さい。」
「えっ………。」
「どうしても、ということであれば、神岸さん。」
「はい……。」
「あなたを…殺します。」
相手がそう言った瞬間だった。
ごおぉぉぉ……
すさまじい冷気と鋭い殺気が相手から発せられた。
ひゅぉぉぉぉ…
そして、相手の周りに砂埃が舞う。
先ほどの相手とは比べ物にならない程の殺気だった。
それを見て、あかりは俺達の方を振り向いた。
顔には困惑の表情が浮かんでいる。
それを見て、俺はどうしていいかわからなかった。
確かに今まで化け物を相手にしてきたが、今回はレベルが違いすぎる。
あかりの身を思うなら棄権させたほうがいいかもしれない。
「…………。」
そんなあかりを見て、先輩はあかりに何かを言った。
「えっ…そうですか…わかりました。」
あかりは先輩の言葉を聞くと、相手に向きかえった。
そして、又、何か分からない言葉をぶつぶつと言い始めた。
すると、あかりの周りの風が一段と激しくなる。

「先輩、あかりに何ていったの?」
「…………。」
「『"風神"を完全に開放すれば勝てる』って?…本当かよ。」
こくり………。
先輩は強くうなづいた。
先輩はそう言っているものの、俺は一抹の不安を感じた。

「……しかたがありません。苦しまないように一撃で終わらせましょう。」
相手はそう言うとゆっくりと構えをとった。
あかりはその様子をただ、見つめている。
「しゃあ!」
次の瞬間、相手はそう短く叫ぶとあかりに仕掛けた。
−速い!−
相手の姿が消えたと思うと、すぐにあかりの目の前に現れ、鋭利な刃物と化した爪が振り下ろされた。
「あかり!」
俺は思わず叫んだ。
先ほどの相手とは比べ物にならない速さだ。
あかりが避けられる筈も無い。
ぶんっっ
相手の爪が振り下ろされた。
「あかりぃーーーー。」
俺の叫びが会場に響いた。
だが、相手の爪が振り下ろされた先に、あかりの姿はなかった。
「!?」
相手が見失ったあかりの姿を探す。
見ればあかりは相手のすぐ後ろに立っていた。
「ごめんなさい、私は引く事はできないの…。」
あかりはそう相手に言った。
ごぉぉぉぉぉぉ……
あかりを中心に激しい風が沸き上がる。
「!!」
相手はあかりの姿を捉えると、すぐに仕掛けた。
ぶんっ
爪が鋭いうなりを上げながらあかりに向かって行く。
きぃぃぃぃぃん………。
鋭い金属音みたいな音がして、相手の爪はあかりの目の前で弾かれる。
相手はそのまま一歩引くと、あかりを見据えた。
その表情には驚愕が浮かんでいる。
「先ほどの言葉、そのままお返しします。」
あかりはそう言うと相手に仕掛けた。
ずぉぉぉぉぉぉ………
あかりを取り囲むように風が集まり、それは段々と大きくなってゆく。
「……。」
相手はあっけに取られていたが、すぐに体勢を立て直す。
「くまちゃん、今よ!」
次の瞬間、あかりの周りに集まった風から鋭い輝く刃が生まれ、一気に相手に向かって飛び出した。
「ちいっ。」
相手はそれを見て、避けるために上へと飛んだ。
それを見ると、
「くまちゃん!」
とあかりが叫んだ。
すると、その刃が相手を追うように上へと伸びる。
「何ですって!!」
相手が驚きの声を上げた。
相手は向かってくる刃を避ける事が当然出来るわけもなく、もろにそれをくらった。
ばしゅっ
肉を切り裂くいやな音が聞こえた。
ぱぁぁぁぁぁぁぁ…
血しぶきが一瞬だけ舞う。
あかりの攻撃が相手を切り裂いた。
相手が落ちてくる。
たんっ
だが、信じられないことに、相手はしっかりと着地をした。
「さすがですね。ですけど、この程度では私を倒せません。」
相手は再びゆっくりと構えを取った。
切られた部分が痛むのか、左手で腹部を押さえている。
「…次で、終わりにします。」
「………。」
今度はあかりが驚愕に震えていた。
「しゃっ!」
短く叫んだ相手は黒い疾風となってあかりを襲う。
「きゃっ!」
目の前に迫った相手を見て、あかりは身を強ばらせた。。
ざくっ
相手の爪が振り下ろされ、いやな音がした。。
赤い滴が辺りに飛び散った。
…あかりが…切り裂かれた…?
「あかりーーーーーー!」
俺は目を閉じて無我夢中で叫んだ。

パラ……
相手の攻撃で生じた風に赤い髪がいくつか舞った。
恐る恐る目を開けると、あかりは立っていた。
無意識のうちに、"風壁"を展開したのだろう。
相手の爪はあかりをかすめただけだったらしい。
「くっ…。」
相手が悔しそうに唇を噛んでいた。
ポタ……
相手の体から血が落ちている。
どうやら、"風壁"を切り裂いた際に傷を負ったらしい。
相手は肩で息をしていた。
「ここまでの…ようです…ね…。」
相手は途切れ途切れに言うとその場に膝をついた。
先ほどのあかりの攻撃の傷と今、"風壁"を切り裂いた時の出血が効いているらしい。
「…あなたの……勝ちで…す…。」
相手はそのまま崩れた。

あかりはそれを見ると、俺達の方を振り返り、
「やったよ。勝ったよ。」
と一言、言った。
「よくやったな、あかり。」
俺はやさしく声をかけた。
見ればあかりもあちらこちらに小さな傷を負っていた。
激しい戦いのためか、疲労が色濃く顔に出ている。
「ありがと、浩之ちゃ……。」
そこまであかりが言うとがっくりとリングに倒れた。

『両者、ノックダウン。』
アナウンスがそう告げた。
会場の観客から拍手が振りそそいだ。

                                      続く

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   お待たせしました。ここにLeafK.O.F大会第八回をお送りします。

   今回は時間が無いのでコメントなし、ということでご勘弁を…

   あっそう言えば、メール・復活しました。
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                         でわでわ、岩下 信