Leaf K.O.F大会その七 投稿者:岩下 信


        Leaf K.O.F大会/第七回『風神・発動』

「志保ちゃんニュース!聞いて聞いて、次のあんた達の対戦相手、決まったわよ。」
俺達の静かな時間がこうして終わった。
けたたましくドアが開くと同時に志保が部屋の中へ入ってきた。
「…んだよ、うるせーな。」
うるさい志保に向かって俺は文句をたれた。
「うるさいとは何よ。せっかく情報を持ってきたっていうのに。」
志保は俺を睨んで言った。
「あのな、もう少し静かにできないのかよ。」
「いちいち、うるさいわねー。このやられてばっかの役立たずが。」
「なっなんだと!」
「まぁまぁ志保も浩之ちゃんも押さえて、押さえて。」
あかりが険悪になった俺と志保の間をなだめに入った。
「で、志保。次の私たちの相手って?」
あかりがいいタイミングでフォローを入れる。
「そうっそーなのよ。次の相手ってすごいのよ。今までの試合、すべて一人で勝ち抜いているのよ。」
「えぇっ!?」
あかりは驚いたらしく素っ頓狂な声を上げた。
「しかも、ほとんど秒殺じょーたい!こいつはただ者ではないわよ。
浩之、これは棄権したほうがいいかもよ。」
志保は最後の一言を強調して言った。
「…そんなにすごい奴なのか?」
志保は無言でうなづいた。

明けて次の日。
俺達の試合となった。
昨日、志保から聞いた情報によると相手はただ者ではないらしい。
だが、よく考えてみれば、俺達が今まで戦ってきた相手もただ者ではなかった。
今回もそのパターンだろう。
そんなことを考えながら試合会場へと向かった。
会場に入ると歓声が俺達を包み込んだ。
昨日の試合で優勝候補のチームを倒したものだから知名度が上がっているらしい。
現に昨日、廊下を歩いているだけで数え切れないほどの人から声を掛けられた。
花道を通ってリングサイドへと進む。
「期待してるぞ。」「一発かましてやれ。」等と勝手な歓声が飛んでくる。
俺はその歓声を無視してリングサイドに落ち着いた。
続いて、相手チームが入場してきた。
俺と同年代らしい女の子が一人と俺より年上っぽい野郎と女性の三人組だ。
相手の入場で更に会場は沸いた。
『お待たせいたしました。これより準決勝戦 第一試合、"痕・柏木チー
ム"VS"TH 来栖川チーム"の試合を始めたいと思います。両チーム、
一人目の選手を出して下さい。』
アナウンスがそう言った。
「……………。」
「えっ『今回はどうするのですか』って…そうだな…俺はちょっと疲れているからな……。」
「………。」
「えっ『私もまだ疲れが残っている』って」
こくこく………。
先輩はうなづいて答えた。
「うーん、あっそうだ。あかり、お前まだ出ていなかったよな。」
「えっ…うん、まだだけど。」
あかりは急に話を振られて戸惑ったように答えた。
「ちょうどいい。あかり、お前が一番手だ。」
俺はあかりにそう言った。
「えっ?私が?」
「そうだ。よしっ行ってこい!」
俺はあかりの背中をぽんっと叩いて言った。
「うっうん、分かった。」
「……………。」
「あっ先輩、『よろしくお願いします。あの力を使えば勝てます。』
…ですか、分かりました。じゃあ行ってきます。」
あかりは先輩と俺に言うとリングへと上がった。
その手にはしっかりと『くま』の人形が抱かれていた。
相手も順番が決まったらしく、一人目がリングに上がった。
ショートにヘアバンドをしたボーイッシュな女の子だ。
『あかりじゃ、ちょっと役不足かもな……』
見るからに運動神経が良さそうな相手と見るからに鈍そうなあかり。
あかりの初戦としては荷が重すぎるかも知れない。
そう考えて、少し後悔しているうちに、
『第一戦、柏木梓VS神岸あかり、レディ・ゴー!』
試合が始まってしまった。

試合開始と共にあかりが奇妙な言葉をぶつぶつ言い出した。
すると、手に抱かれていた『くま』の人形が白く輝いて、ふわっと宙に浮いた。
「………先輩。あかりに何の力を与えたの?」
俺はその光景を見て、先輩に聞いた。
「……………。」
「…『"風神"の力だって』?」
こくり…………。
また、非常識な事が起ころうとしているらしい。
いいかげん慣れっこになってしまって、驚くのもいまさらといった感じになってしまった。
だが、非常識な事はそれだけではなかった。
相手の周りの雰囲気がガラっと変わり、目が赤く光りだす。
相手の殺気が俺のところまで伝わってくる。
しかも、相手の足がリングの石に少しずつ埋まって行く。
その上、相手の手には鋭い爪が生えていた。
「なんだよ…これ…」
俺は思わずつぶやいてしまった。
これまでとは段違いにすさまじい力が対峙していて、二人の間に砂煙が舞う。
俺はあかりが相手の殺気に怖じ気ついているのではないかと心配になってあかりの方を見る。
すると、あかりは怖じ気づくどころか、相手をしっかりと見つめていた。
普段のあかりからは想像できない表情に俺は背筋が寒くなった。

「ちぇすとぉぉぉぉぉーーーー!」
相手が先に仕掛けた。
ぶんっ
あかり目掛けて鋭い一撃が飛んで行く。
「くまちゃん!」
爪が振り下ろされる瞬間、あかりが叫んだ。
ぱきぃぃぃん………。
相手の腕があかりの目の前で止まる。
「!?」
相手が一瞬、何が起こったのか理解できずに動きが止まった。
だがすぐに相手は後ろへと飛び、間合いを開ける。
よく見れば、あかりの目の前にすさまじい気流が生じている。
「………。」
「えっ『風壁』だって?」
こくり………。
先輩がうなづく。
「うおぉぉぉぉぉぉーーー。」
再び相手が仕掛ける。
だが、あかりの『風壁』にはまばれて、鋭利な爪はあかりの目の前で止まる。
相手はすぐに間合いを取った。
その瞬間を狙ってあかりが仕掛けた。
「くまちゃん、今よ!」
『くま』の人形からいくつもの白く光る刃が飛び出し、相手に向かって行く。
ズォォォォォォォ………。
「!!」
相手はそれに気づくと、人間の限界を超えた動きですべての刃をかわした。
「にっ…人間じゃねぇ…。」
俺がつぶやくのと同時に、
「やるわね……。」
と相手がつぶやくのが聞こえた。
相手が体勢を立て直している瞬間、再びあかりが仕掛けた。
シャァァァァァァァ……。
今度は複数の刃が時間差で相手に届くようなパターンで向かって行く。
「ちぃっ!」
相手は何とか刃の嵐をやり過ごそうと上に飛んだ。
今まで相手が居た場所に、激しい気流の乱れが生じる。
たんっ。
相手は着地すると同時に、
「しゃぁっ!」
と短く吠えると、攻撃の際に消えた『風壁』の隙を狙って仕掛ける。
しかし、あかりが相手の爪が届く瞬間に再び『風壁』を展開する。
パキィィィィン………。
相手の爪があかりの『風壁』に耐え切れなくなり音を立てて割れた。
「ぐぁぁぁぁぁぁ」
相手は折れた爪を押さえて叫んだ…いや、正しくは吠えたというほうが正しい。
「ごめんね…くまちゃん!」
相手の隙を見て、あかりが仕掛けた。
一本の刃が相手を貫いく。
どさっ。
相手はそのままリングに倒れた。
『WINNER、神岸あかり!』
アナウンスがあかりの勝利を告げた。

                                               続く……

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    次回予告
          あかりの次なる相手はさらなる力を持つ者だった。
          絶え間なく襲い掛かってくる爪にあかりは苦戦する。
          激戦の後にリングにたっていたのは?
          次回、『激闘の果てに』
                  「あかり、お前って………」(浩之)
                  「えっ何?(にっこり)」(あかり)
                                                お楽しみに

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     お待たせいたしました。ここにLeaf K.O.F大会本編の
     第七回をお送りします。
     今回はあかりが活躍しました。
     でも、このあかりの強さって卑怯なような・・・・
     これは、作者の独断により、決定しました。
     あとは梓ですね。
     梓は惜しくもあかりに負けてしまいました。
     梓ファンの方々、ごめんなさい。
     でも、こうしないとストーリーが進まないんですぅぅぅ(マルチモード)
      心ひろきファンの方々のご理解をよろしくお願いします。

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