Leaf K.O.F大会外伝 投稿者:岩下 信


              Leaf K.O.F大会外伝/それぞれの出発

        【今回は番外編。本編に入る前のお話です。】

        「月島 拓也君だね。」
        僕は学校の帰り道にいきなり見知らぬ男から声を掛けられた。
        「そうですけど…あなたは?」
        眼鏡をかけた神経質そうな男が僕の目の前に立っている。
        「俺は柳川と言うんだ。」
        「で、どうして僕の名を知っているのですか?」
        僕は柳川と名乗った男に聞いた。
        「君を知らない奴は少ないよ。妹を襲い、心を閉ざして『毒電波』
        を操る『雫』における名悪役の君をね。」
        微かな微笑みを浮かべて柳川という男は僕に言った。
        「……なぜ、そのことを知っている……。」
        僕の事を言い当てた相手に、僕は警戒して電波を集め出した。
        「まぁ、そう殺気立つな。いい話を持ってきたのだから。」
        僕の殺気立った気配にも動じずに柳川は続けた。
        「俺は君をスカウトしに来たんだ。近々、『Leaf visual novel』
        シリーズにおいて、「F.O.F」大会という異種格闘技戦が行われる。
        その大会の参加チームの一員として君を迎えたいのだが…。」
        「?何だそれは……。」
        僕は警戒したまま答えた。
        「いわゆるすべてのV.Nの登場人物が参加する筈の大会だよ。
        これはチャンスだと思わないか?」
        「?」
        「君は確か、『長瀬祐介』と電波対決で敗れていたね。
         …長瀬と再戦をしてみたいと思わないか?」
        「……………。」
        「いわゆる雪辱戦だよ。君は長瀬が憎いんじゃないか?」
        「……………。」
        「まぁ、この大会の試合だったら思う存分痛めつけられると思うよ。
        悪い話だとは思わないんだが…。」
        「……わかりました。その前に柳川さんの話を聞かせてください。」
        僕は警戒を少し解いて柳川に言った。
        「…いいだろう…。」
        そう言うと柳川は自分の参加の理由を話し始めた……。

        「えっ月島さんが消えたって?」
        瑠璃子さんから連絡を受け、僕は思わず聞き返してしまった。
        「うん、お兄ちゃんが又、どこかへ行っちゃっの。」
        「いったい何処へ…。」
        「お兄ちゃんの様子が何か変だった。以前のお兄ちゃんに戻っちゃったみたい。」
        「何だって!」
        僕は瑠璃子さんの言葉に驚いた。
        確か、僕は月島さんのトラウマを開放した筈だ。
        なのに又、以前のようになるとは……。
        「長瀬ちゃん。」
        「えっ何?」
        「これ、お兄ちゃんの部屋にあった。」
        瑠璃子さんは一枚の紙を僕に差し出した。
        「Leaf K.O.F大会の案内?」
        何だろうこれは……もしかしたら、月島さんはこれに参加するつもりではないだろうか……。
        「瑠璃子さん、僕たちもこれに出よう。もしかしたら月島さんはこれに参加しているかも知れない。」
        「わかったよ、長瀬ちゃん。でも、もう一人居ないとチームにならないよ。」
        瑠璃子さんに言われて始めてその事に気づいた。
        『あと、一人か……。』
        その時、僕の頭に一人の女の子が思い浮かんだ。
        「新城さんに頼んでみよう。あの子なら多分OKしてくれる筈だ。」

        「えー何それ、お祭りなの?」
        とある日の体育館の中、バレー部の練習の合間を見て、僕は新城さんに例の件を話した。
        「うーん、異種格闘技戦だからね。お祭りとはちょっと違うと思う。」
        「で、何で祐君はそれに出るの?」
        「うっ…それは…。」
        僕は新城さんに訳を話すかどうか迷った。
        なにせ、新城さんの記憶は僕が電波で消しておいた。
        月島さんの事を話せばあの忌まわしい記憶が戻るかも知れない。
        だと言って話さなければ新城さんは納得してくれないだろう。
        …仕方がない。
        僕は新城さんに事情を省きながら説明した。
        ・・・・・・・・・・・・
        「うーん、何となく分かったような分からないような…でも、他ならぬ祐君の
        頼みだったらいいよ。私にまっかせなさい!」
        新城さんは胸をポンと叩いて言ってくれた。

        とにかく、新城さんの説得は成功した。
        これでこちらのチームはそろった。
        後は大会が始まるのを待つだけだ。
        何しろ、月島さんの動きはまったく分からない。
        無駄に動くのは得策ではない、僕は何となく直感で月島さんがこの大会に
        参加するのではないかと感じた。

        僕が体育館から出ると、
        「ゆっ祐介さーん。」
        と声を掛けられた。
        見ると瑞穂ちゃんが僕を呼びながら走ってきた。
        「あっ瑞穂ちゃん。どうしたの?」
        「はぁはぁ……かっ香奈子ちゃんが又居なくなっちゃったんです。」
        瑞穂ちゃんの顔が青ざめている。
        「えっ?」
        月島さんだ。
        月島さんが太田さんを連れ出したんだ。
        「どうしましょう、祐介さん。」
        瑞穂ちゃんは取り乱して僕に言った。
        「…落ち着いて瑞穂ちゃん。」
        「はっはい。」
        そう言うと瑞穂ちゃんは深呼吸をした。
        「瑞穂ちゃん。」
        「はい?」
        「太田さんは多分、『K.O.F』大会に出るんだと思う。」
        「えっ…なんですか?それは。」
        「なんか、異種格闘技戦が行われるらしい。僕もそれに出るか
        ら、太田さんを見かけたら連れ戻してくるよ。だから……。」
        「私も行きます。」
        瑞穂ちゃんは僕の言葉を遮り毅然として言った。
        「えっでも……。」
        瑞穂ちゃんが僕をまっすぐに見つめている。
        この娘はこうなったら何を言っても無駄だ。
        「…わかった。でも、僕らはもう、チームを組んでいるから…。」
        「じゃあ、私にお手伝いをさせてください。
         …いいんです。私は運動が苦手なので、試合には出れませんから。」
        瑞穂ちゃんはそう言うと、微笑んだ。
        「じゃあ、お願いするよ。」
        「はいっ」
        瑞穂ちゃんは返事をするとにっこりと微笑んだ。

        しかし、月島さんは太田さんをも巻き込んで、何を企んでいるのだろう。
        僕らは月島さんの暴走を止めるために会場へと出発した。

                                                            【終わり】

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           いかがだったでしょうか。今回は「K.O.F.」の番外編と言う事
           で、『雫』のメンバーが参加するまでのいきさつを書いてみました。
           「本編の方を早くだせ。」と言われてしまいそうですが、急に
        このネタ
           が頭の中に浮かんできて、こちらを一気に書いてしまいました。
           今回は『雫』のキャラしか書けませんでしたが、時間があれば、
           『痕』や『to heart』の方も書いてみたいと思っています。

           では、ご感想やご意見などございましたらお聞かせください。

                                                 でわでわ 岩下 信