Leaf K.O.F大会/第六回・『願い』 三人目の相手がリングに上がって来た。 青い髪をしたショートの女の子。 そして、何故かその相手から、今までみたいな殺気は感じない。 『第三戦、月島瑠璃子VS来栖川芹香、レディ・ゴー!。』 アナウンスが試合開始を伝えた。 私はとっさに『電壁』を張る。 けれど、相手はただ、微笑みを浮かべているだけだった。 私は困惑した。 『何故、攻撃してこないの?』 私は正直にそう思った。 「私はあなたに勝てないから。」 相手が不意に口を開いた。 「どういう事かしら?」 私は相手に尋ねる。 「そう、私はあなたに勝てないの。長瀬ちゃんを倒したんだもの、私にはそこまでの力はないの。」 相手はくすくすっと笑いながら、言った。 「では、何故あなたは此処に居るの?」 私は相手に聞いた。 「私は、救いたいだけ…でも、長瀬ちゃんが居ないと出来ないの …だから、あなたたちにお願いする事にしたの。」 「何を…ですか?」 「あの人、まだ苦しんでいる。苦しい、苦しいって泣いてる。」 「誰の事…ですか?」 「あなたは気づいているはず、力を使い、心を閉ざしているお兄ちゃんを…。」 「……その『お兄ちゃん』は電波を使えるの?」 相手はこくりとうなづいた。 私の占いに出てきた『毒電波』の使い手とは、先ほどの『長瀬』という人ではなく、 相手の口にしていた『お兄ちゃん』の事なのかも知れない。 そして、占いではこの人を止めないと大難が訪れるという事だった。 「…分かりました。」 私は静かに答えた。 私がこの大会に参加した理由に当てはまるからだ。 「約束したよ。」 相手がすっと私のほうに手を伸ばした。 「………?」 私はその意味が分からなかった。 「…指切り、しないの?」 相手は無邪気に微笑んで言った。 こくり……。 私と相手は指切りをした。 「それじゃあ……。」 相手はそう一言言い残すとリングから降りて行った。 先程より静まり返っていた会場に、 『…月島選手、試合放棄につき、WINNER来栖川芹香…… TH・来栖川チームの勝利…です。』 アナウンスが響いた。 ・ 「なんだぁ…。」 俺は意識を取り戻した。 体がだるく、ひどい頭痛がした。 「…………。」 目の前に先輩の心配そうな顔があった。 「よぉ先輩。えっ気がつきましたかって?…あぁ、…体のほうはどうでもないかって? …そうだな、少し頭が痛む程度かな…。」 「………。」 「それは、よかったって……あっそう言えば。『長瀬』の野郎はどうした。」 「………。」 「えっ試合はもう終わったって。」 こくこく………。 「そうか、負けちまったか……。」 俺がそう言った時、扉が開いて、あかりが部屋に入ってきた。 「あっ浩之ちゃん。起きたんだ。」 「おぉ、あかり。おめーは平気なのか?」 あかりは俺の言葉に首を傾げる。 「えっ私?何ともないけど……どうしたの浩之ちゃん?」 「えっ……。」 「あっそうそう、浩之ちゃん。私たちの次の試合、明日だって。」 「はぁっ?…俺達負けたんじゃ……。」 俺はあかりが何を言っているのか分からなかった。 「あっそうか…浩之ちゃんは寝てたから知らないんだ。 あのね、来栖川先輩の活躍で私たち勝ったんだよ。」 「……ホント?先輩。」 こくり………。 先輩が頬を赤らめてうなづいた。 「すごかったんだよ、浩之ちゃん。先輩の活躍。」 あかりがまだ興奮覚めやらぬといった感じで言った。 それから俺はあかりから先輩の武勇伝(?)を散々聞かされる羽目となった。 −同時刻・会場内別室にて− 「やっぱり、勝ち進んで来たようだね。長瀬クンに勝つなんてあのチーム、ただ者ではないようだな。」 人の良さそうな笑顔を絶やさぬ男が言った。 「…たいした事無いだろう。次に当たる『柏木家』の者に倒されるのがオチだ。」 「そうだな…。」 「何、仮に『柏木家』の者に勝ったとしても、我々にかなう筈が無い。」 眼鏡をかけた青年が、続けた。 「さぁて、どちらを狩れるのか、楽しみだ……。」 クックックッ…といった風に眼鏡の男が笑った。 続く・・・ =============================== 次回予告 浩之たちの次なる相手は『人』では無かった。 鬼人化した柏木一族の前に、あかりの力が 発動する。 次回、『風神・発動!』 「えっ次ぎは私なの?」(あかり) 「いいかげん、活躍せいっ!」(浩之) ぺちぃっ 「あっ………。」(あかり) お楽しみに! ================================ お待たせいたしました。ここにLeaf K.O.F大会第六回をお送りします。 ご感想やご意見などございましたら、お聞かせください。 でわでわ 岩下 信 P.S >久々野 彰様へ 「自虐の歌」、耳が痛いです。あぁ思い当たる節が・・・