交錯その参 投稿者:岩下 信


                 『交錯』第三章・接触・後編

叔父の車に乗り込んだ僕たちは宿泊先である『鶴来屋』へと向かった。
しばらく走ると、この街並みにそぐわない巨大なビルが目の前に現れた。
「ほら、あれが『鶴来屋』だ。」
叔父が巨大なビルを指して教えてくれた。
「あれが……ですか…。」
僕は巨大なビルを見て、つぶやいた。
あそこに本当に泊まるのか……
なんだか信じられなかった。

車が玄関に着くと、僕は叔父にお礼を言い車を降りた。
瑠璃子さんがそれに続く。
叔父を見送ると、僕は鶴来屋のビルを見上げて思わず、
「おおきいなぁ……。」
とため息をこぼした。
「そうだね、長瀬ちゃん。」
瑠璃子さんも同じように見上げて言った。
玄関を入ると何十人もの従業員が僕らを出迎えた。
「……………。」
僕はその様子を見て、無言で立ち尽くしてしまった。
「どうしたの?長瀬ちゃん。」
瑠璃子さんが僕の袖をくいくいっと引っ張ってきた。
『いや、緊張しちゃったよ。』
僕は電波で瑠璃子さんに答えた。
それを聞くと瑠璃子さんはくすくすと笑った。
従業員の壁を抜け、ロビーに出る。
そこに、先に来ていた月島さんが居た。
月島さんは僕らに気がつくと、手を挙げて僕らに合図を送ってきた。
「やぁ、瑠璃子に長瀬君。待っていたよ。」
月島さんはにこやかに僕らを迎えてくれた。
「どうも、今着きました。」
「遠いところ、ご苦労だったね。まずは部屋に行って、休もうか。」
月島さんは、僕らを部屋へと案内した。
部屋につくと、月島さんは僕らにお茶を入れてくれた。
僕らは一息つくと、月島さんが調べた事について聞いた。
「ん、伝説にあった鬼の事なんだが、これが驚いた事に実在してい
たらしい。単なる山賊の集まりだと思っていたんだけどね。」
「えっ鬼は実在していたのですか?」
僕は思わず聞き返してしまった。
「うん、しかも、その鬼の角っていうのが『雨月寺』に奉ってあるというんだ。
明日はそこに行こうと思う。」
「それは見ものですね。」
「まぁ、今日のところは他にする事がないから、ゆっくりと休んでもらおうかな。
そろそろ、食事の時間だし。」
月島さんはそう言ってお茶をすすった。

食事も終わり、僕らは温泉を堪能すると、早めに床に就いた。
布団に包まり、僕は今日、駅で受信した電波の事を考え始めた。
あの電波は一体何だったのだろう。
こちらに電波を返してくる事が出来る奴が居るのが信じられない。
それに、奴は"狩猟者"という言葉を口にしていた。
『狩猟者か……。』
何の事だか検討もつかない。
ひとつだけ分かる事は『狩猟者』と言うのは普通の人以上の力を持つという事だけだ。
僕は考えながらも長旅の疲れから眠りに落ちていった。

                                           続く……

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                 訂正とお詫び
前回の書き込みでもしかしたら違っているかも知れないので
訂正を入れておきます。
長瀬の叔父の名
   長瀬源二郎→長瀬賢次郎
上記の通りです。
尚、正しい『長瀬刑事』の名前を私は知りません。
どなたか知っていたら教えてください。
ご迷惑をおかけしました。(^^;)

あと、前回。改行指定をまたまたミスってしまいました。
ご迷惑をおかけしております。

                                          岩下 信