小高い山の上,瑠璃子は長く続けた電波集めを止めた。 魚眼レンズ越しの光景ような頂上の広場は,電波を集めるには最適の場所だ。 用を終えた彼女は家に向かっていた。 木の葉が作った光の網は,彼女を包み込んでいた。 公園の出口・・・ある程度の車通りのある道に出てきた瑠璃子は, ボールを追いかけ,今にも飛び出さんとしている中学生くらいの少年に気がついた。 近づくタイヤの狂音には,全く気付く気配が無い。 走っても間に合わない。瑠璃子はこれを,”力”で止めるべきだと判断した。 幸いにも周囲に人気はない。彼女は急いで彼に「止まる」電波を送った。 事実,彼は止まった。車はクラクションを鳴らし猛スピードで少年の目の前を走り抜けた。 トンットンットントントトタタタタ・・・ ボールは跳ねる事をやめ,なんとか反対側にたどり着いた。 少年は助かった。瑠璃子は安心した。 しかし,その安心は,走り抜けた車が見えなくなるより早く消えて失せた。 ・・・少年は,瑠璃子を,見ていた。 ――僕は,なぜ止まったんだ?!―― ――何か,頭を走った物はなんだ?!―― 周囲に人気はない。それならば,彼を止められたのは瑠璃子しかいない。 しかし,その瑠璃子は遠く離れている。 少年は,瑠璃子が何らかの力を持っている,という事を考え,信じ込んだ。 その事を瑠璃子が感じたかどうかは分からない。 しかし,瑠璃子は,心を氷柱で貫かれた様な気分を味わっていた。 瑠璃子中学生の頃の話である。 例の事件――祐介が瑠璃子と「別れ」,そして「再会」したのは, そんな事が有ってから3・4年後の事だ。 瑠璃子はその事を忘れていた。 ・・・しかし,少年――高校生になったその男は,決してその事を忘れてはいなかった。 彼は,とにかく周囲の人間にふれてまわった。 家族・・・には話しにくかったのだろう。友人,彼女,その他大勢に話した。 当然,そんな事をすぐに信じるほどの”ばか”はいない。 「冗談だと思って笑われるのがオチだった」,というやつだ。 彼は,自分でも不思議なその現象を理解できず,ついに自分でも疑い始めていた。 そして,最後に,冗談として家族にその事を話したのだ。 しかし最後に話した家族――父親は,顔をピクリともさせずに彼を正面から見据えていた。 その眼は,狂気の色を持っていたのかもしれない。 父親は,「電波」の存在を知っていた。それを操る人間の存在の可能性も・・・。 父親は恐れていた。 前々から聞いてはいた電波が,自分の息子に干渉した。 ・・・電波使いは存在したんだ! 祐介・瑠璃子の2人の電波資質者の存在が彼に知れたのは, それからしばらくたって,彼が瑠璃子たちを再び見掛けた時からだった。 彼は感じたのだ。そして,隣を歩く祐介の素質も見抜いた。 彼は思った。 他にこんな事に気付く人間がいようか? 電波をこの世から消す仕事は,電波をより強く感じる事の出来る自分しか出来ない。 彼の名・・・元宮健一の名は, 電波弾圧同盟(DDD)会長として,多くの人間に知られていくのである。 −−−−−−−−−−−−−−−−−− もう全部かいてます。中途半端に長いんで,二つに分けました。 本来ならレスを書くのですが,人様に何か言える立場ではないので, どうかご容赦下さい。象と蟻は会話できまい。 前のやつ削除したい。 そのうち私小説とか書いて良いですか(半嘘)