別に何気ない日常。
…だって日の常って書いて日常と読むわけだから。
何か変な事が起こるはずが無いのは確か。
合ったら文頭で「非日常」と記すべきであって。
記すべきで
あって。
本日もまた、そんな「非日常」では無い故に退屈を持て余す六人が生徒会室に入り浸っているのは
仕方の無いことであった。
「暇ぁ〜…っ」
「…悠理。ソレ、今日で既に37回目ですわよ?いい加減耳にたこですわ」
ぱらぱらぱら、と。
「暇」に対してきっぱりと突っ込みを入れた大和撫子風の少女が持つ本のページが
窓から吹き込んでくる風に意味も無く捲れて行く。
しかし、そんな台詞ごときで黙るような性格の持ち主ならば。
態々一日中暇という単語の回数を数えていた
意外と怖いこのお局様と渡り合える等出来るはずが無く。
やはりというかなんと言うか、悠理と呼ばれた少女は
相変らず黙る気配は見せることは無くて…。
「だって野梨子―…本当なんだから仕方ないだろー?」
―最近本当に何も無くて。
「体鈍っちまうよぉーっ!!」
ジタバタと言う擬音語が見事なほど当てはまる動きに付け加え
室内に響き渡る耳をツンざぐような其の少女の声色。
ソレに対して思わず眉を顰めて見せるのは…。
先ほど言の葉を紡いだ大和撫子な少女の近くに座り
一生懸命マニキュアを塗り直している少女と
(と言っても、風貌から少女というより女性と言った方が相応しいかもしれない)
其の近くの壁に凭れかかり、携帯電話に甘く愛の言葉を囁いている美青年で。
相変らず。
風は心地良く。
心地良く…。
「ちょっと悠理っ!!静かにしなさいよっ!アンタの馬鹿でっかい声のお陰で塗る場所はみだしちゃったじゃないっ!!」
「そうだよ悠理っ!!僕今昨日会った女の子と話してる最中で…え?あ、小百合ちゃん?ごめんごめんー。ちょっと周りが煩くてさぁー…。」
「えぇいっ!!可憐っ!!美童っ!!お前らあたいが暇だって嘆いてるのに其の対応はなんだよっ!!」
片方は言いたいことだけ言って。
もう片方はさっさと携帯電話に向き直る仕草に対し。
大変お冠なのは先ほどから叫んでいる悠理其の人。
はっきり言って八つ当たりそのものなのだけれど。
本人は至って気にしている様子も無いらしく…。
というより、気付けて居ないという方が正しいのだが。
ソレに対して答えるのは、
鬼のような形相をして何か叫ぼうとする二人の声ではなく。
至って静かな
「悠理…。いい加減になさい。八つ当たりは見苦しいですよ」
けれど有無を言わせぬ
絶対零度の声色。
空は
抜けるように
青く。
窓越しでも解るほど
「せ…清四朗―…。だってさぁ…」
透明で。
「大体そんなに暇なら今から授業に出てきたらどうです?」
―こんな所でサボってないで。
パサリ、と。
手元の新聞に目を通しながら。
至って冷静に言の葉を紡ぐ完璧人間。
簾た前髪が吹き抜ける風に靡くけれど。
本人は別段気にした様子も無く、誰とも目を合わさないまま活字を追いかける仕草。
「えぇーっ!?や、やだよぉっ!!皆サボってるのにあたいだけ教室戻るなんてさぁっ!」
自分の事は棚に上げて、
さも悠理だけが惡いという言い草に対して微かにたじろぎながら、むっすぅ、と頬を膨らませそう自己弁論をするも、
やはり清四朗と呼ばれた青年は気にした様子も無く、
次の面に向って手を動かす始末。
只今丁度三時間目の途中。
授業は十五分ほど前に始まった。
つまらないから今日の授業はふけようと言ったのは名だたる財閥の一人娘、剣菱悠理(けんびしゆうり)。
それに賛同したのは何時ものこのメンバー。
母親はお茶の家元で父親は日本画家という純和風…だけれど以外と気が強く何事にも手厳しい白鹿野梨子(はくしかのりこ)、
家が病院で父親が天才外科医とまで言われた菊正宗家長男、裏表の顔を使い分け人の弱みを握るのが得意な清四朗(きくまさむね せいしろう)、
趣味は玉の輿に出来るような男を物色という、天性的な美貌を傘に日々美しさを追求する、ジュエリー「アキ」の一人娘、黄桜可憐(きざくらかれん)、
自他共に認める女たらし、世界の恋人と言っても過言では無いほどどこの国にも女が居るスウェーデン大使の息子、クォーターの美童グランマニエ(びどうぐらんまにえ)、
そして。
「そうピーピー喚くなって…。お前トラブルメーカーなんだから其の内嫌でも何か事件起きるさ。」
そして。
窓枠に腰掛けつつ窓の外を物憂げに眺めつつも、このメンバーの中で唯一優しい声をかけてやった
警視総監の息子の癖して暴走族やヤクザに顔が利く、メカが得意な松竹梅魅録(しょうちくばいみろく)。
やっぱり魅録だけだよアタイの事解ってるのはぁ、なんて。
犬がご主人様に甘えるように縋ってきた悠理を、魅録は慣れた手付きで制しつつ。
やはり、視線は悪魔で外へやっているこの青年。
けれど、実際のところ他のメンバー同様、悠理の「暇」に飽き飽きしていたのかもしれないというのは、直ぐに見当が付く事であって。
其の知らぬは当人だけという言葉がシックリ来る今の悠理の様子に思わず他のメンバーは小さく噴出す事は誰も咎められる事の出来ない現象であった。
けれど。
「…んぁれ…?」
ケレド。
「…どうした?悠理。」
窓枠に座っていた魅録にあやされる様にしていた悠理がフイに顔を挙げ
窓の外に身を乗り出して。
「いや…。なんか正門の所に人が…」
そんな台詞を言うのは、流石に他のメンバーでも想像出来なかった事な訳で。
思わず、悠理以外の五人は顔をあわせた後。
バタバタと窓際に歩を進めたのは、
それから数秒後の、話…。