TBSラジオ「アクセス」
放送日:2001-08-15
筆記:いとう
今週のゲスト:
イントロダクション
小島さん :よろしくお願いします。あらやだわ、なんかこうやって正面きって、えー、真正面から視線をあわせてお話するの、初めてじゃございませんか、もう。
宮台さん :初めてですね。私、光栄ですね。あの、カリスマアナウンサーの前にいて、ほんとたいへん緊張したしております、はい(笑)。
小島さん :どんなアナウンサーなんですか。ないジャンルですね。カリスマって(笑)。
宮台さん :いやいやいや、パーソナリティがいなくてもひとりでも全部出来るという、、はい(笑)。
小島さん :いやいや、もうほんとに私、蛇ににらまれた蛙のようでですね、えー、宮台さんの目ってのは5秒以上見るとですね、そっちの世界に連れていかれちゃうんですよ、恐いですねー、もー(笑)。
宮台さん :あーはっ、はっ。レクター博士じゃないんですから(笑)。
…自殺動機・原因の統計について…
宮台さん :そうですね。ところがまずその前に少しね、お断りしておかなければいけないのは、あのー、自殺のね、その動機を統計的に集計するのって、非常に難しいんですよ。

でー、まずお亡くなりになった、つまりもういらっしゃらない方だから、えー、まあ遺書や証言などからですね、動機を構成するわけなんですよね。で、ところが、これはあの、医学的な常識ではあるけれども、その自殺をされる方のかなりの方がね、実はうつ病あるいはうつ状態といわれるような状況に陥っていましてね、で、本人がそのー、うつ状態で何を考えていようが、たとえば、抗うつ剤を処方したりすると一挙に、あのー、自殺をしたいという願望が減ってしまったりするわけです。

で、そうするとですね、たとえば、経済的な問題あるいはさまざまね、悩み、その病気の悩みがあってうつ状態になっているのか、あるいは、うつ状態になっているから、えー、普段は気にしないような問題を気にして、たとえば、経済問題や病気の問題を気にしているのかってことはよくわからないんですね。だからまず、その自殺の動機についてのこうした統計は、基本的には眉唾、あまりまにうけないで考えたほうがいいというふうには一般的には言えますね。
…うつについて…
宮台さん :あのー、具体的に言うとね、たとえば、あのー、うつ状態にある人をね、そのカウンセリングによって元に戻すということによってもたしかに自殺動機を抑止できますが、その抗うつ剤を処方するだけでもね、その簡単に自殺動機をあのー、無くすことができるわけですね。そうするとそのときに、その抗うつ剤をね、そのー、わりあい簡単に処方することができるようなシステムになっているかどうかっていうのが非常に重要な問題で、このアメリカやヨーロッパに比べると、その日本ではね、たとえば、心理療法士、つまりお医者さんの資格のないカウンセラーなどが、えー、うつ病治療をしたり、そのためのそのー、薬をね、まあ、処方したりすることができない、非常に遅れたシステムにありますよね。

あともう1つ、非常に分かりやすい例をいうと、あのー、日本では、都市と農村でいうとねその、昔、あのー、都市の方がね、自殺する人が多い、あるいは自殺っていうのは、文明国で多くなるんだっていわれてた時期があります。たとえば北欧諸国なんかの方が、日本よりも自殺者が多かった時代もありますが、今はそのー、アメリカ、ヨーロッパに比べて日本は自殺率っていうのは、もう倍以上なんですね。世界で最も高い。

でー、これ、よく見てみるとですね、その動機とは別に都市と農村でいうと農村、しかも、過疎地帯の老人の自殺率がやはり非常に多いんですね。ていうことは、これはつまり、あのー、動機分析は横に置いて、やはり、農村の方が実はうつになりやすい。で、さらにそのー、独居、つまり一人暮らしの老人とその家族と一緒にいる老人でいうと、昔はね、そのスウェーデンなんかを引き合いに出して、独りでいる老人が孤独で自殺しやすいだなんて言われてたけども、これも統計的には全く嘘で、家族と同居する老人の方が自殺率が高いんですよ。

でー、要は、あのー、都市化や郊外化、つまりね、コミュニケーションの形態が変っている中で、その外見上はね、昔ながらのその田舎的、農村的な生活があるという、そのねじれの中で、たとえば自分の心がうまく打ち明けられないとかね、あの、非常に濃密な人間関係の中で、かえって孤独感が高まるとかね、でー、要は、その僕たちの心の中のあり方が変ってしまっているのに、えー、都市に比べると農村の方がね、その新しい、そのー、まあ成熟社会に相応しいね、人間の心のあり方に対応するような、たとえば、ファシリティーズとか、施設も無ければ、コミュニティーもない。

えー、昔ながら、その生まれ育った時にまわりにいた連中とずーっと一緒にいつづけるというような、そういう環境、でそれがね、たとえば、えー、今まで、俺は他人に言わなかったけど、こんな悩みがあるんだとかね、ほんとはこんなことが言いたかったんだっていうことを、たとえば都会だったらね、打ち明ける人間いっぱいいるけど、田舎だと、かえって、昔から自分を知っている人間ばっかりなんで、それが言えないとかね、で、まず、こういう都市農村問題も、この背景、つまりうつの背景にはあると思われますね。
カウントダウン・トゥデイ
10位 - 大リーグ日本人3選手そろい踏み。野茂投手とイチロー選手が3度目の直接対決。12ポイント
…「イチロー、野茂の直接対決を両者が無関心を装っていた」という記事に対し、小島さんの、もともと2人は無関心だったのかもというコメントにつづけて…
宮台さん :いやそうですね、うん。これはちょっと主観的すぎますね。どうでもいいと思っているかもしれない、ほんとに(笑)。
9位 - 来年の国公立大学試験、理工系学科で受験科目増加へ。 31ポイント
宮台さん :うーん、あのねー、これは動機がよく理解できるわけですよ。よく言われているようにね、たとえば、医学を志しているのに生物学をやってきていないとかね、あのー、そういう奇妙な学生たちがいっぱいいるので、あのー、こういうふうに科目を取り揃えて受験してもらおうと。でもね、これ2つの意味で根本的に間違っている部分が僕はあると思うんですね。

まず1つは、あのねー、入試科目の問題じゃなくって、もともと、その僕の言葉で言うと、そのつまり動機付けのシステムにね、問題があって、あのー、どういう理由で何を志望しているのかっていうことについてね、その日本の学生さんたちってあまりに漠然としているんですよ。たとえばね、小さい時から、たとえば、若い時分からね、その体験学習をして、医学やりたいとか、経済学やりたいとか、弁護士やりたいとか、いろんなものをやりたいというふうにたとえば思っていたら、そういう動機付けが強ければ、必ずそれのために必要な科目っていうのをやるはずなんですよね。でも日本の場合、たまたま偏差値足りてるとかってそういうくだらない理由でね、何かを志望するっていうことがあまりに多すぎるっていうポイントが1つ。

あともう1つはね、これ皆さんご存知ない方多すぎるんだけど、理科系、文科系っていう部分にはね、区分は欧米の大学には無いんですよ。でー、これはね、その特に僕のように社会科学やってる人間には深刻でね、その社会学をやってる、経済学をやったりする場合にはね、数学の知識ってのは必須なんですよ。ところが、文科系にね、これが区分されちゃっているせいで、こうした社会科学を学ぶために必要なね、数学の基礎知識をもっていない学生さんたちがあまりにも多いわけ。だからね、たとえば、ポリティカルサイエンスであろうがね、そのソーシャルサイエンスであろうが、これ、あのー、要するにナチュラルサイエンスと同じように、やっぱり、数学絶対必要な学問なんですよ。ですから、サイエンスなのか、あるいはその、たとえば、アンソロポロジーなのか、まあ人間学ですよね、あるいはそのー、要するに文学なのか、まあそういうことによって、その数学が必要かどうかってことを区分するの意味あるけども、文科系か理科系かということによってね、その科目が配当されているっていう今のあり方は、きわめておかしい。まあ、これはね、その明治維新以降の、そのー、官民一体となった、追いつき追い越せっていうね、あのー、文部政策の歴史が背景にあるんだけど、それにしても、ちょっとねー、時代遅れ過ぎて話にならない。
8位 - 参議院選挙をうけ政党助成金再交付。大勝した自民党は2 億7千万円のアップ。32ポイント
宮台さん :あのー、政党助成金、すごい巨額ですよね。でー、そのー、欧米と比較した場合ねー、日本に特有の奇妙さがあります。それはね、政党助成金、これ税金から交付されているものなんですが、その税金を使って、その巨額のお金をね、その代理店に払って、政党が広告をやっているということなんですよ。で、その広告は単なるイメージ戦略のために使うお金なんですね。で、その政治のためにお金を使っているとは、きわめて言いがたいところがある。

で、たとえば、アメリカなどでもですね、その政党は広告をやりますけれども、それはその税金は使ってません。えー、基本的には、税金とは別のルートで、集めたお金でそうしたものを支出しているんですね。だからこのへんについてはね、やはりそのー、税金の使い道として、その広告に使うということでいいのかどうかということはね、国民的な議論をまずする必要がありますが、その前にちょっと我々、無知すぎますね。こういう制度を持っているのは先進国で非常に珍しいです、はい。
7位 - 大阪教育大付属池田小学校の仮設校舎が今日完成。37ポイント
宮台さん :あの、この問題についてはね、あさってかな、しあさって発売される、サイゾーという雑誌でね、宮崎哲弥さんと僕が、そのM2対談で、そのかなり詳しく、言及しています。で、これ一見もっともらしく見えますけども、これにもですね、非常に大きな問題があります。

たとえば、PTSD。つまり、犯罪によるですね、その後遺症のことなんですが、PTSDケアについてはアメリカ、ヨーロッバ先進国ですけれども、えー、学校で事件が起こって、たとえばコロラド州デンバーで起こった事件なんかもそうですけども、乱射事件ですね。その校舎を取り壊すとか、校舎を変えるというふうなですね、えー、政策を取っているところはないです。でー、これはねー、そのなぜ奇妙なのかというと、もともとPTSDケアっていうのはね、要するにその事件を起こったことを忘れろっていうことじゃないんですよ。だって大事な友達を失ったことを忘れちゃいけないでしょ。で、憶えておいて、しかも憶えているにもかかわらず、前向きに前に進んでいけるように心の体制を組みなおすことがPTSDケアなんですね。

ところが、日本の場合、その同じ校舎を使うと思い出すから、えー、校舎を変えてくれっていう、で、大臣がそれに媚びてですね、その新校舎建築とかっていうことを言っちゃったんですね。で、これはねー、その、忘れろってことなんですよ。で、日本ではね、これこの問題に限らないんだけど、何か問題があるとみんなで盛り上がって、一生懸命忘れましょう、忘れましょうと言うんですね。で、これをみそぎ体質って言うんですけれども、まあ、日本に伝統的な1つのあり方だけれども、これはねー、その科学的なPTSDケアとは全く別のことです。大事なお友達のことを忘れちゃっていいんですか。で、実際にね、校舎の移転のことについても、古い校舎の取り壊しについては、思い出のいっぱい詰まった校舎を、壊すことについては反対だって言っているね、子供や、その親御さんたちもいっぱいいるわけですね。だから、このね、PTSDケアと忘れることを同一視するような日本人のみそぎ体質は、まず何とかしないと、えー、これはですね、これからあとでおいおい語るような、その、さまざまな政治問題も含めてね、忘れて済むっていう問題じゃないんだから、えー、ちゃんとしてくれっていうふうに僕は思いますね。
6位 - エイズウィルスを精液から取り除き、体外受精に成功。 42ポイント
宮台さん :これはね、まあ、雌雄、男女産み分けにも使われている方法ですよね。つまり、比重を使った分離ですね。あとまあ、その、やはり、あのー、酸性に対する強さによってもね、そのー、男女の産み分け、つまり、XY遺伝子を持つ、えー、そのYをもつ遺伝子とXをもつ精子を分離できたりするんですが、さっき、そのー、スタッフとお話している小島さんの声を聞いて、小耳にはさんだんですけれども、、
小島さん :なんですか。なんですか。
宮台さん :男女産み分けをさせてくれって立場なんですか、小島さん。
小島さん :え、私ですか。いや、男女産み分けの本ていうのがですね、あったんですよ、本屋さんに。それで、、、
…小島さんが、本屋で「男女産み分け」に関する本を見つけ、その本の内容説明につづけて…
宮台さん :パーコール法が一番ね、確実なんですよ、ね。あ、そういう方法の問題ですか、はいはい。あのー、僕はね、一般的な産み分け賛成反対の問題かと思ったんですよ。僕は産み分けは反対なんですね。でこれは、その簡単に言えば、人口政策上の問題で、あのー、たとえばね、これちょっと日本の場合どうなるかわからないけれども、たとえば、儒教的な伝統の強いような文化があったりすると、男女産み分けが可能になったら、そのおおかたの親がね、男の子を産もうとするわけですよ。でー、日本でもね、これから、えー、まあ、2世代少子家族、まあ核家族といってもですね、子供が二人じゃなくて、一人になるっていうときに、じゃ一人ならどっちが欲しいかっていう場合に、もしかするとですね、産み分けが可能になってしまうと、性別が偏ってしまう可能性がありますよね。
…小島さんの読んだ本によると、かわいいのと将来自分達のことをケアしてくれるという理由で女の子を産み分けたいという夫婦が多いことについて…
宮台さん :かわいいにしても、ケアにしても、単なるエゴじゃないですか、親の。
小島さん :なんか、昔は、そのー、えーっと、跡取り息子にしたいとか、家を絶やしたくないという理由で、男の子を産みたいという産み分け志望と、、、
宮台さん :そしたら、公共性のある動機だけどね(笑)、うーん。
小島さん :最近は、その産み分けの相談で病院に来る夫婦は、わりとその女の子を産みたくて、えー、来る人っていうのが増えてるそうです。
宮台さん :やっぱり、じゃ、やっぱ産み分けは禁止です(笑)。絶対ダメです。そういう理由であれば、はい。
小島さん :ははっ(苦笑)。まあでも、あのほんとに、あの病気、男の子にだけこう遺伝していく、えー、病気を持っている家系とか、、、
宮台さん :それは当然だし、たとえば、もう3 人生んでずっと女の子だった、次男の子を欲しいとかね、そういう場合に限っては僕もありうるかなと思いますけれどね、うん。
小島さん :えー、まあこれもまた、これだけで、あのバトルトークのテーマになり得ますので、、
宮台さん :はははっ(笑)。それやりましょう。
小島さん :その時はぜひ、宮台さん、いらしてください。
5位 - 小田急百貨店の社員が38万人のカード会員名簿を横流し。 64ポイント
宮台さん :あのーですね、この秋にも成立しようとしている、個人情報保護法という法律が、まさに、こういう名簿業者の情報のね、横流しなどを取り締まるという法的目的のためにですね、成立しようとしてるんですが、ちょっとこの問題、みなさんちょっと関心もって欲しいのはね、その個人情報保護法、今のところの原案では、個人情報取り扱い業者の中にマスコミも含まれていて、つまりマスコミと名簿業者がいっしょくたになってですね、規制対象になるという、そういう話になっているんですね。

これは元を、えー、正せばっていうかですね、そのー、これはなにがきっかけになっているのかっていうと、えー、森元首相の、その買春疑惑報道、ならびに、えー、中川元官房長官の、その、まああ(苦笑)、愛人スクープ。えー、これに対して、その怒り心頭に走った、その自民党の議員さんたちがですね、当時、あのー、作ろうではないかって言った個人情報保護法をこれを使って、そういう政治家スキャンダルに対するですね、まあ、スクープ報道を取り締まれないかっていうことを言い出したのが、法律の方向が捻じ曲がるきっかけだったんですね。

でさらに、そもそも個人情報保護法の必要性というのは、もともとですね、えー、第145回通常国会というところで、まあ、通信傍受法が成立したときに、えー、与党3党、当時は自公保でしたけれどもね、あの、自自公でしたけれどもね、その公明党が付帯条件として、えー、行政が持っている情報を国民が知ったり、訂正できる、まあ、自己情報訂正権っていうふうに言いますが、そうしたものをね、えー、きちんと明記した法律を作る、まあ、そういう意味での個人情報保護法、えー、行政の個人情報をですね、我々はちゃんとチェック出来るという意味での法律を作れという話だったのが、いつのまにかですね、えー、名簿業者だけを、民間だけを規制する法律に捻じ曲がってしまったっていう経緯についてもね、えー、みなさん、ちょっとよく頭において欲しいと思いますね。これは明らかに背後に政治的な利害があるということですね。えー、ということでございます、はい。
4位 - 小泉内閣の5閣僚が8月15日の今日、靖国神社を参拝。79 ポイント
宮台さん :えーっとね、この問題については、僕、様々な論壇誌を読んでみて、右の意見も左の意見も見ましたたけれども、えー、論理的な筋においては、ほとんどみな全滅してますね。えー、あの間違った筋でものを考えています。でー、この問題はね、そのー、まず、伝統的なね、その政教分離、つまり憲法20条問題、玉ぐし料訴訟などで問題になっていたような、えー、政教分離問題ということと、あともう 1つの柱としてね、えー、最近話題になっている、そのA級戦犯合祀問題っていうのがあるんですね。で、それぞれについてどう考えるかということですけれどもね、まず、あのー、靖国神社がA級戦犯を合祀していますが、これは正しい、当たり前です。なぜかというと、靖国神社は、えー、占領軍の命令によって1宗教法人になったわけですね。でー、靖国神社は1974 年まではですね、国家護持を狙うためのですね、まあ、あの運動をやっていた。つまり、えー、戦前と同じようにですね、まあ、国営神社に近いようなかたちにして欲しいということだったんだけれども、この74年にね、えー、国家護持法案ていうのが、そのー、長年の懸案だったんだけど、これ廃案になりまして、でー、それでですね、靖国神社が方針転換をして、もう国家護持をあきらめて、で、78年の合祀祭というところでですね、えー、A級戦犯の合祀を決めたんですね。1宗教法人なんだから、えー、それを政府が規制したりすることはもともとできない話ですね。

でー、次に、政治家が戦没者を慰霊すること、これはOKに決まってるんですよ。えー、どこの国でもやっていますよね。そのアメリカのアーリントン墓地を、えー、歴代の大統領は必ず、えー、まあ、訪問してます、まあ、参拝をしていますし、えー、ドイツの、最近で言えば、ノイエヴァッフェですけれどもね、あのビットブルク墓地などを歴代の、えー、ドイツの首相はですね、その必ず、えー、訪れて、まあ慰霊をしています。ですから、戦没者の墓地をですね、首相が慰霊することもいいに決まってるんです。

で、問題は3番。戦犯が、合祀された、墓地を出すね、参拝するのはいいかどうかという問題、これは国際標準的にはNGなんですね。つまりよくはないんです。えー、なぜかというとですね、実はその−、どの戦争に負けた国も、まあ、講和体制、敗戦後のですね、復興に関わる講和体制の枠組みっていうのがあるんですね。で、ドイツにおいても日本においても、えー、国民は悪くないと、えー、戦争を指導した1部の人間に責任があるというふうに責任を押し付けて、で、そのかわり、まわりの人間たちは、えー、その責任追求がちゃんと済んだら、えー、復興を助けてあげましょうねという、まあそういうですね、講和体制の、これフィクションですよね、ほんとはね。それでしかし、フィクションを受け入れて、えー、つまりそれが講和体制を受け入れるということだけども、それでドイツも日本も戦後復興を遂げているわけですよね。

でー、サンフランシスコ講和条約っていうのは、GHQの解散した52年、 1952年にまあ発行するけれども、こん中には、韓国と中国入っていないんですね、相手国に。えー、しかし、たとえば、72年の日中共同声明でのですね、中国側の戦時賠償放棄は、日本がサンフランシスコ講和体制を受け入れて、えー、戦争を起こしたのは、一部の、その戦犯が悪いんであって、日本人全体は悪くないんだっていう、そういうフィクションにもとづいて戦時賠償を放棄して中国人民を説得したんですね。でー、もしですね、その1国の首相が、その戦犯が合祀された墓地を参拝するということになると、これはフィクションであれ何であれ、その講和体制に対する挑戦になるんですよ。でー、そうすると当然のことながらですね、えー、戦時賠償放棄を宣言してしまった以上いまさら請求することはできないが、同程度の負債をこれから日本に負ってもらおうというふうなね、国民世論が中国や韓国に高まっても、これはどうしようもないんですね。

でー、まあ、あのー、こういう問題について考えるときに僕がよく言うのは、狭量な国粋主義は愛国の体をなすかっていうね、問題があるわけですね。でー、要するに、えー、これドイツでも日本でもその問題になったことだけれども、狭量な国粋主義はかえって国益を侵害する。愛国の体をなすふるまいというのはね、えー、特に政治家の場合には、政治共同体、つまり国家の利益を考えることですからね、そういう意味で言うと、えー、ある種の精神主義的なね、えー、構造による、そのー、たとえば、経済的な不利益、政治的な不利益、文化的な不利益というのはやっぱり我々はかなり敏感にならなければいけないということですね。

で、あともう1つ、その極東軍事裁判がね、不公正だったっていう説があります。これは不公正だったに決まってるんですよ。戦勝国が敗戦国を裁くんですからね。だから具体的に言えばね、そのー、ここで、あのA 級戦犯っていうのは7人がいるわけだけどもね、これ、国際法違反のみならず、合法的な戦時行為も含めて戦犯っていうふうにされているんですね。で、これは不合理に決まってるし、なおかつね、その当時文官であった、そのー、広田こうき元首相がね、A級戦犯になってるわけですよ。で、当時の日本の政治力学を見れば、文官である首相に戦争を指導したり、・・・なんかを動かしたりする力はなかった。で、これは完全に誤判だというふうにいえますから、極東軍事裁判は不公正に決まってるんですよ。

しかし、残念ながらですね、っていうか幸いながらかもしれないんだけれども、えー、サンフランシスコ講和条約に調印する時に、その極東国際軍事裁判の結果を受け入れるという約束を日本は国際的に、というよりも条約当事者たちにしているわけですね。えー、不公正であろうがなんであろうがそれを承認して、その講和体制ということで、あのー、みんなに一致協力してもらって日本を助けてもらおうじゃないか。で、もしですね、この極東軍事裁判の不公正を理由に、そのなんだかんだとごちゃごちゃ言うんであれば、当然のことながらこのサンフランシスコ講和体制をひっくり返さなきゃいけないんですね。で、そうすると、我々はすでにその講和体制を前提にして、戦後の繁栄を築いている、その前提そのものをひっくり返すということになります。つまり、我々はもはや技術的にふまえてしまっている前提だから、今さらそれはできない相談なんですね。で、もしそれをもしやるとすると、それは単なるいいとこ取りだけをするエゴイストということになります。戦後講和体制を受け入れたので、今の繁栄があってですね、まあ表現の自由やらなんやらかんやら、えー、まあ冨の蓄積の自由やらがある。えー、その前提そのものをひっくり返す覚悟があってですね、えー、極東軍事裁判の不公正ゆえに、えー、サンフランシスコ講和体制をひっくり返せとまでいうのかどうかということですね。不公正なのは当たり前なんです。
…小島さんの、国家関係に対して感情論が弊害を引き起こしているという、コメントにつづけて…
宮台さん :おっしゃる通りですね。今から、8 、9年前ですけれども、ドイツ、やっぱコール大統領のときに、あのアメリカのですね、レーガン大統領がドイツのビットブルク墓地を訪問してしまったんですね。これはねー、戦犯じゃないんだけど、その無名戦士の墓で、エスエスのー、ナチスのエスエスの隊員たちがね、合祀されていることが後にわかったんですね。で、それでアメリカでもドイツでも本当に大問題になっちゃって、えー、まあ、それが理由でドイツではですね、あのー、外国の賓客をはビットブルク墓地ではなくって、その新しいこの墓地として、ノイエヴァッヘというところをね、えー、まあ訪問するようになったっていう、そういう国際的なね、まあみなさん常識的として知っておいていただきたい事情もあります。
※ コール大統領はコール首相の間違いと思われます。
3位 - 尼崎市小1男児遺体遺棄事件。県警が自宅から血痕を発見。 80ポイント
…コメント無し…
2位 - 黒磯の誘拐事件。女の子は無事保護。犯人が解放か。92 ポイント
宮台さん :うーん、でも、解放されてよかったですけれども、目的はなんだったんでしょうね、これはねー。
1位 - わが国がアジアに苦痛を。戦没者追悼式で小泉総理が歴史認識に踏み込む。129ポイント
宮台さん :はい、えーっとですね、あのー、さっき言ったサンフランシスコ講和条約の相手方にはですね、狭い、狭義の、まあ連合国しか相手方になってなくてですね、アジアの国々は入ってないんですね。ですので、そのアジアの国々に対してどういう態度をとるのかということが、そのー、要するに、持ち越されてしまったということがあるんですね。でー、この問題を考えるときにも、まさに先ほど申し上げたね、その狭量な国粋主義は愛国の体をなすかということが重要なんだけれども、あのー、今ですね、その国益を考える時には、まずその、経済的国益と政治的国益が実はかなり一体になったポイントがあるんですね。でー、たとえば、このグローバリゼーション、要するに、アメリカニズムだけども、これがどんどん支配的になっていく中で、各国がどういう態度を取るのかということが今迫られている。で、EUはヨーロッパ経済圏というのを作ろうというふうになっているわけですね。経済ブロックを作ろう、アメリカブロックに対してEUブロックを作ろう。で、それに対して、アジアもですね、アジアブロックっていうのを作らないとこれは大変なことになる可能性があるんですね。

で、経済学には比較優位学説っていう定説がありますよね。で、これは簡単に言えば、えー、得意な、つまり、得手なね、財に特化して貿易をすべしと、えー、そうすると、各国の福利厚生水準、効用が最も上がるということなんですね。ところがこれ大問題がありましてね、あの比較優位な品目を独占する国があったらどうするのか、どんな品目でも、そのー、それが得意だっていう国が現れてくる。たとえばアメリカが典型だけどもね、そういうふうになってしまったらですね、他の国々は経済的に、したがって、政治的にも非常に弱い立場に立っちゃうんですね。で、そうすると、要するに、地域経済圏、つまりブロックを作ってブロック単位でね、比較優位品目を増やしていくっていうことをやらないと当然対抗が出来ないわけです。で、これは、その国際的な、国際経済の面でもそうだし、国内でもね、たとえば、えー、国際的にはブロック制というのが重要になるし、国内的にはね、その道州制ですよね。要するに、弱小自治体を強い自治体と合併して、国内を4ブロックぐらいにするんだって、これもね、あのー、政治的な問題であるようにみなさん考えているけども、その背後には経済的なファクターがあって、そうしないと地方は都市部に対抗できないわけ、なんですね。

で、さて、そういう意味で地域経済圏っていうのをこれからね、作っていかなくてはいけないっていうときに、えー、そのー、たとえば、アジアブロックという経済圏の中で日本がどういう立場をとれるのかということがね、非常に重要なポイントになってきてる。で、戦後ドイツっていうのは、結局ですね、あのー、政治的には譲りに譲って、そのヨーロッバの経済ブロックの中で、そのー、強固なイニシアチブを取るということを目標にしてやってきて、今、EUの要になってるんですね。日本は全くそういう問題について、すごく短期的な感情論ばっかり先行させたことをやってきていたので、今や、たとえば地域経済圏にしたって日本は蚊帳の外、もう中国が中心になるに決まってるわけですね。で、その時に、えー、つまり、えー、我々がね、いわゆる謝罪問題っていってきたことがどう意味をもつのかってことがわかってくるはずなんですね。えー、もう一度言いますが、狭量な国粋主義は愛国の体をなしえたのかどうかをみなさんよく考えていただきたいというふうに思いますね。
バトルトーク - テーマ「自殺者が3年連続で3万人を越える。あなたの心の中にも自殺の選択肢はありますか」
…小島さんの、うつ病になると死にたくなるのですか、という質問に対して…
宮台さん :そうです。まあ、あのー、誰もがということではないけれども、重度のうつ病になればかなりの確率でそうなりますよね。でー、さっきそのー、薬によって処方する場合とね、そのカウンセリングによって、まあ、直す場合と2つのやり方があると申しましたけどね、ちょっと科学的な根拠を少しみなさんにお分かりいただきたいんだけれども、今から10年前だったら、心身問題、あるいは心脳問題といった、今だったら脳内環境問題というふうに言うと思うんだけれども、たとえばですね、その、明るいことを考えてね、わくわくして興奮したりすると、脳のド−パミン濃度っていうのが増えるんですよ。神経伝達物質の濃度が増えるんですよね。

でー、しかし、逆にたとえばですね、ある種の、まあ薬を服用することによって、つまり体内に入れることによって、そのドーパミンの濃度を増やすと考え方がどんどん明るくなって前向きになってわくわくするんですね。おもしろいですよね。その心の中の状態によって脳内環境変わる、脳内環境変わると心の中の状態も変わる、実際にはそれがね、循環的な、つまりサイクリックな関係になっていて、えー、明るいことを考える、ドーパミンが増える、ますます明るいことを考える、で、逆の場合には逆の回転が進むということなんですね。だから明るいことを考えるようにカウンセリングしても、そのサイクリックな動きの中に影響を与えられるし、たとえばドーパミンなら、ドーパミンの濃度を増やすとかね、神経伝達のあり方をより活発にするっていうふうなね、医療措置を施すことによっても、明るいことを考えるようになってというふうになったりするんですね。どちらもある意味では、機能的に等価なんです。

ところが薬の処方についていうとですね、そのー、医師免許の無い人間がそれを処方していいかどうかということについてはね、これ、医者とか医師会の権益の問題になるので、えー、これをね、そのゴーサイン出すかどうかっていう政治家の判断の背後に、非常に巨大な利権がうごめいていたりして(笑)、でー、問題はそこから先は政治問題になるんですね。で、日本はその意味では非常に遅れている。
1人目:神奈川県、佐々木さん(50歳)自殺の選択肢無し。 5年くらい前に会社の元の直属の上司が突然自殺。会社経営が苦しくなり自殺したのではないか。
…佐々木さんの、自殺をしないようにするにはどうすればいいか、というコメントにつづけて…
宮台さん :あのー、佐々木さんね。僕、先ほど、佐々木さんのおっしゃったねー、あのー、要はですね、結構、大企業のトップがですね、経営責任を追及されないで、そのー、国からね、こー、お金入れてもらったりとか、あるいはその政策的に借金を棒引きしてもらったりとかっていうことを平気でやってるじゃないですか、日本はね。でー、最近そういうことをやるようになったということを、みなね、やっぱりよく観察してね、そのー、もっと無責任なヤツがのうのうと生きているじゃねーかっていうふうに、やっぱ思えるようになることって大事かもしれませんね、ほんとにねー。
(略)
宮台さん :うーん、そうですね。これもね、あのー、もうちょっと、その皆さん慎重に考えていただきたいんだけれども、確かにあのー、会社経営が苦しくて、で、自殺されたんだろうけど、それが動機かどうかっていうのはね、ほんとはよく分からないんですね。自殺の動機って、あまりみなさん単純に考えないほうがいいので、そのへん慎重にしていただきたいというふうに思いますね、はい。
2人目:Kさん(53歳)自殺の選択肢有り。約1年前にリストラにあい、現在求職中。今後の家族の生活を支えるには、生保の保険金目当てに自殺も考えている。
…電話のKさんの、再就職が難しい現状の説明に対して…
宮台さん :あのー、今、あの収入がゼロでいらっしゃるということなんですけれども、えーっと、具体的には、あのー、どういうふうにして生活していらっしゃるんですか。生活保護とか、あるいは、、、
…Kさんの、自宅があるので生活保護は受けていない、という返答に対して…
宮台さん :そのー、あのね、あのー、自宅を処分されるというおつもりは今の段階ではないんですか。
Kさん :ホームレスになれということですかね。
宮台さん :いや、というよりも、あのー、要するに生活保護を受けられてですね、で、その中で、あのー、まあ、えー。
Kさん :住むとこはどこに住めば。
宮台さん :うーん。
Kさん :そこまで、切迫ね、あのー、宮台先生もそこまで切迫された状況っていうのはお分かりにならないと思うんですよね。
宮台さん :はい。
(略)
宮台さん :あのー、Kさんね。あのー、まあそのー、窮地に陥いってない人間にはね、窮地に陥っている人間のことは結局は分からないだろうと言われればそれまでなんだけれども、えー、あのー、ただですね、そのー、学問の中でも、社会科学の中でも自殺の研究って昔からあって、まあ100年ぐらいの伝統があってね、そのー、急に貧乏になってする自殺っていうのは昔から知られるタイプの自殺なんですよ。でー、結局ね、そのー、僕は自殺全面否定論ではないので、自殺選択肢はあるわけですよね。つまりあのー、今までのですね、ある種の生活のプライオリティーを、その枠組みをね、維持して、えー、何とかしない限りね、自分の尊厳は保てないっていうふうに思う場合には、たしかに自殺という選択肢は出てきますよね。
Kさん :あの、物理的に活用できるということですよね。
宮台さん :そうですよね。でー、しかし、そのー、たとえば、ちょっと抽象的に言わせていただけるとね、たとえば生活保護を受けて、生活保護の枠の中で生活できるような場所に引っ越すなりなんなりしてですね、場合によってはその家族がその中で、そのー、まあある程度、まあばらばらになったりする可能性もある、そこまで含めたですね、なんとかやりくりできるような、えー、体制にですね、まあ簡単に言えばグレードダウンをするわけですよね。でー、それでも、そのー、生き残って、サバイバルしていくということが重要だという、そういうプライオリティを取るかどうかということなんですよね、うーん。
Kさん :即時に対応できるかということと、あちらこちらからも、えー、借り入れということもしてますのでね、そうすると結局のところですね、えー、もう直面してにっちもさっちもいかないていう状況になったときにですね、やはり体を張るということがですね、家族を守る責任じゃないのかなということですよね。
宮台さん :うん、ただね、・・・な状況で、何度も何度も自己破産してね、たしかにしんしょの秘密、プライバシーとかっていうのは保護されなくなるけれども、でー、そういうふうにして、何とか生き延びるという選択をされてる方もいらっしゃるわけですよね。その場合にしてもですね、たとえば自己破産するときに、その失う尊厳っていうのはもちろんあるわけでね、やっぱりそこでもプライオリティの問題なんで、あのー、どうしてもですね、あのー、窮地に陥ったときには、そのー、当たり前のことだけども、そのフレームを変えない限り、選択肢ってなくなっちゃう、場合によっては死ぬしかなくなっちゃうということになっちゃうんですよね。だからできるだけ、まあ、今申し上げられることは、まあフレームを変えて、優先順位を変えて。
Kさん :要するに、視点を変えてということですね。
宮台さん :そういうことですね。
…ケイさんの、家族から生活の責任を取って欲しいと言われていることに対して…
宮台さん :うーん、そういう家族であれば、むしろですね、あのー、出家ではありませんけども、そんなものは家族ではないというふうに宣言して、あのー、ご自分でね、その新しく、そのー、まあつまり、人間関係っていうレベルでね、その人間関係そのものが僕は病理的だと思うので、あのー、何とかのかたちで・・・・ほうがいいんじゃないんでしょうかね。
(略)
宮台さん :でも、責任を取ってくださいって言ったってですね、KさんがリストラされたのはKさんの責任ではないわけですから。責任を取る必要が全くないんですよ、えー。
(略)
宮台さん :いや、家族っていうのは誰かメンバーが窮地に陥ったらね、相互扶助をするというのが家族の倫理だと思うんですよ。でー、確かに状況がいいときは大黒柱におんぶにだっこでいいけれども、そうでなくなったらね、その自分・・・は自分で稼ぐっていうふうにやっていただくしかないですよ、えー。
3人目:東京都、Sさん(35歳)自殺の選択肢無し。人間関係のトラブルで5年程前に失踪。その時は自殺も考えたが現在は結婚して家を購入。
宮台さん :Sさん、ひとつだけ、あのー、質問がございます。あのね、あのー、失踪された時に、残していらっしゃったお友達とかその両親とは現在、あのー、ご連絡とっていらっしゃったりするんでしょうか。
Sさん :友達はあのー、まだ連絡できてません。でー、あのー、両親、あのー、親とは、あのー、結婚するときに紹介して、、、、
…Sさんの、新しい環境でやり直しが出来た、という話をうけて…
宮台さん :いや、感動しました。
(略)
宮台さん :まあ、先進各国に関していうとね、安楽死、あるいは尊厳死というかたちでね、まあ昔は自殺と呼ばれたものの 1種だけれども、これを認めるという動きが一部で出てきていますよね。でー、日本でもですね、まあ東海大学事件といわれるものの判決を機にですね、安楽死3条件というのが出されていて、もう余命が短い、えー、もう1つは絶えがたい苦痛がある、そして本人がそれを希望しているという3条件があれば、安楽死OKであるというふうなですね、判決を出したりしていますよね。

で、ところが、そのー、オーストラリア北部準州などではさらに条件を緩和していて、えー、耐えがたい苦痛が無くても余命が限られていれば本人の意志で死ぬことが出来るというかたちになっているし、まあアメリカでもね、まあミネソタ州とか、まあ1部の州では、またオーストラリアと違って、えー、余命が短くなくっても絶えがたい肉体的の苦痛がある場合には本人の意志で死ぬことが出来るっていうね、そういう法律を通してしまったりしてるところもあります。ということで、全体としてですね、あのー、死の自己決定権っていうふうに今言われますけどね、自殺の権利のようなものを認めるという動きも一方であるんだけど、ただですね、あのー、逆の動きもあってね、いろんなドキュメンタリーがすでに日本でもオンエアされてるから見たことがあると思うんだけども、あのー、実は、えー、たまたまそうやって安楽死に失敗して生き残ったところ、肉体的な状況が変わってですね、たとえば新しい薬ができるとか、新しい方法が生まれるというかたちで、あー、死ななくてよかったというふうになることがある。

で、これはね、肉体的苦痛だけの問題じゃなくてね、経済的状況にしても何にしても、あともうほんの少し耐えれば状況が変わって、えー、死ぬ理由が無くなる可能性があるんですね。でー、まあたとえば、宮崎さんなんかは宗教的な理由もあって、宮崎哲弥さんなんかは絶対反対とおっしゃってるけれども、えー、そうした宗教的な理由をおいても、状況というのは、やっぱり万物は流転するというかたちで変わりうるものだから、状況が永久に変わらないんだったらですね、もう死ぬしかないっていうふうに断言することができるんだけど、その絶対変らない状況なのかってことをね、断言できない場合にはやはり自殺という選択肢は場合によっては、えー、短見すぎるというかですね、そういうふうな、まあ恐れもあるということですね。
…電話のやまもとこうじさんの、救急医療医という立場から自殺は絶対ダメ、という話につづけて…
宮台さん :まあ、実際にね、あのー、今おっしゃっていただいたように、たとえばお医者さんは救急医療という場でですね、そのいろんな体験を積んでいらっしゃるわけですよね。実際には、どういう体験をしてきたのかということは、その人のフレームをある程度決めますよね。だからその意味で言うと自分がそういうたまたまフレームを持っているのは、たとえばさっき言った脳内環境が悪いからもしれないし、自分の経験がある方向に偏っているからかもしれないし、逆にいえば、
小島さん :今は自分にとって死しかないのだって判断するのは、今までの自分の経験でしか判断できない、、
宮台さん :そういうことですね。ただフレームも取り替えられるかもしれない、体験次第でということなんですね。
…imodeのひろこさんの、父が4年前に多額の負債を返済するために自殺した、という話につづけて…
宮台さん :はい、あのねー、企業経営者の自殺についてね、心の弱さばっかり日本では問題になるけれども、実は日本のね、経済システムの根本的な問題というのがあって、それを誰も指摘しないのでここでちょっと申し上げますよね。えー、日本の金融機関、銀行には、事実上予審のシステムがありません。アメリカやヨーロッパの銀行はたとえばそのー、お金を貸すときにですね、日本だったら土地本位制っていうけど、土地担保持ってるかだけ、で、個人補償っていってですね、えー、生命保険入らされて、で、死んだらそれで弁済するという、個人補償というものと、土地担保っていうものをもとにして、貸すんですね。でー、これは事実上予審していないのと同じなんです。でー、アメリカの銀行、ヨーロッパの銀行はそうではなくて、事業内容を審査してアイデアがあれば金を貸す、しかも、個人補償というシステムを取らないんですね。で、逆にいえば、日本のようなシステムであればね、最終的に死んで保険で返そうという選択肢がでてきてしまう、こういう、その経済システム、あるいは銀行のね、そのなってなさっていうものを実は非常に大きな問題として指摘したいですね。
(略)
宮台さん :やっぱりね、そのー、さっきのSさんの話、僕、感動的だったんだけど、あと人間の尊厳っていうのは人間関係の中にあるじゃないですか。だから農村の自殺が多くなっちゃうんですね。その人間関係の中でメンツがあるからフレームを変えられないわけですよ。だったら人間関係そのものを全部変えてしまうという選択肢もね、頭においていただきたい。