事件の社会に対する影響は?-
危険性がある。容疑者と同世代の人たちには彼をダーティ・ヒーローとして見ている人がいる。
メディアの影響はあった?-
「引金」としては機能していたかもしれないが、「火薬」がつまってなければ「弾丸」は出ない。
アメリカではホラービデオなどの規制は厳しいが残虐な事件は非常に多い。
中学校の教室の現状は?-
非常にストレスの溜りやすい状況になっている。理由は、
- 一緒にいる必然性がない他人同士がつめこまれている「満員電車」のような状況。(かつては既に地域社会で一緒にいる者同士の集まりだったので、問題なかった。)
- 教師が勉強の評価だけでなく「こころの評価」の権限を持たされてしまった(93年あたりから)ため、生徒は教師の視線に対しても従順にふるまわなくてはならなくなった。
ストレス下ではちょっとしたことでイジメのようなことが起こりがち。「同調圧力」がかかりやすい状況ができている。下手に自己主張してしまうとイジメられてしまうので、生徒は教室の雰囲気に溶け込んだ「透明な存在」にならざるをえなくなっている。
なぜ中学生か?-
中学生には逃げ場がないから。中学生の場合、学校での評価が家や地域に帰ってもついてまわる。高校生ならば学校でも家でも地域でもない空間(ストリートとか)で、「透明な存在」から自分を取り戻すチャンスがあるが、中学生はそういうチャンスに乏しい。
「透明な存在」と殺人の関係は?-
痛みや苦しみに接することで、現実感を取り戻すことができる。殺人の場合もあるし、自殺(未遂)の場合もありうる。
先生が悪いのか?-
そうは言えない。劣悪な環境では先生もキレそうになっている。1 クラス 40 人もいるのは先進 国では日本だけ。
親が悪いのか?-
そうは言えない。ニュータウン的な地域社会では親も同調圧力に屈伏する「透明な存在」になりがち。
バーチャルリアリティは危険?-
微妙な問題。学校での拘束時間が長過ぎるので、学校での現実感の希薄な「透明な存在」から実在する「濃い自分」を取り戻すのに、ビデオやアニメなど虚構の空間に逃げがちなのは確かに問題。
しかし、今現在そういう空間になんとか居場所を見つけて救われている人がいる以上、ビデオやアニメが問題だと言うのは彼らを追いつめてもっと危険なことになってしまう。
つきつめると何が問題なのか?-
形にこだわるコミュニケーションが問題。形だけキレイなコミュニケーションが、現実を覆い隠し、人間の暗黒面についてのコミュニケーションができなくなる。
形にこだわりすぎない、ある程度ルーズなコミュニケーションのほうが、肝心なところがちゃんと伝わるのではないか。
処方箋は?-
例えば以下のようなもの。
- クラス制度の見直し、個人カリキュラム制度の採用など。
- 学校の中に生徒の逃げ場を確保する。(現状では先生には職員室という逃げ場があるのに生徒にはそれがない。)
処方箋通りになぜ処方されないのか?-
すでに実験的に運用されているケースもあるが、実際には、
- 生徒に先生を選ばせると自分が選ばれないのではないか、という先生の側の不安。
- 学校がちゃんと押しつけてくれないと偏差値が下がるのではないか、という親の側の不安。
など、大人たちの抵抗が障害になっている。