光ファイバー中の光ソリトン(孤立波)のシミュレーション例です。ソリトンは特別な波形の安定性を有する非線形パルスであり、1834年にイギリス人ラッセルが運河に生じたソリトンを馬で追いかけたのが最初とされていますが、それより7年前にソリトンの崩壊を描いた日本人がいます。

1973年、当時ベル研究所にいた長谷川晃氏らは光ファイバー中にもソリトンが生じ得る事を理論的に導きました。しかし当時の光ファイバーは損失が現在の数十倍もありソリトン通信の実用化は疑問視されていました。

その後ファイバーの損失は大幅に低下し、1988年頃から光信号を直接増幅できる光ファイバ増幅器が実用化され、光ソリトン通信は実用化一歩手前の段階にあります。特に超長距離通信に適しており、21世紀の地球村を支えるインフラとして、阪大等を中心世界中で研究されています。

(参考)大越孝敬著「光ファイバ通信」岩波新書(1993)

These simulations indicate soliton propagation in optical fiber.

10ps width optical pulse is transmitted through real (loss = 0.2dB/km)

and ideal (loss-less) fiber for 400 km.

Nonlinear Schrodinger equation is solved by the split step Fourier method.

N = 1 soliton in real fiber ( D = 0.2ps/nm/km, P = 11.2mW )

10psの光パルス(20ギガビット相当)が手前側から伝搬していく様子です。減衰を補うため50km毎にファイバ増幅器を用いています。この様な方式で1万kmを超える伝送が 可能です。

N = 1 soliton in ideal fiber ( D = 0.2ps/nm/km, P = 4.38mW )

減衰の無い理想ファイバではファイバの分散性と非線形性の釣り合いによりsech ^ 2 のパルス波形を保ったまま伝搬させることができます。

N = 2 soliton in ideal fiber ( D = 0.2ps/nm/km, P = 17.52mW )

理想ファイバで入力パワーを増加させていくと固有値の個数に対応した周期構造が現われます。この例の場合ソリトン周期は約200kmです。 

N = 3 soliton in ideal fiber ( D = 0.2ps/nm/km, P = 39.42mW )

パワーを上げるとさらに複雑な周期構造が現われます。

N = 3 soliton in ideal fiber ( Contour Plot )

上図を等高線で描いたものです。

Caluculated by Kazuhiro Shimoura with Mathematica Ver.3 ( 1997.8.13 )

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