全電化都市構想

by  KAZUHIRO SHIMOURA

Mar. 16, 2000

 

最近、全電化住宅とか、全電化マンションが増えてきている。調理や風呂など、従来ガスが使われてきた領域にも電気が普及し、安全性やクリーンさをアピールしている。同時に電気があれば日常生活に必要なエネルギーを全てまかなえる事を証明している。

 

電気は、照明、熱、空調、動力、情報等、あらゆる用途に利用できる極めて応用範囲の広いエネルギーである。また、発電においても、水力、火力(石炭、石油、天然ガス)、原子力、自然エネルギー(風力、太陽、地熱)等、非常に多様なエネルギー源を活用できる。

 

エネルギー輸送の点でも電気は優れている。ヨーロッパでは国境を越えた送電網により電気がやりとりされているし、富士山の頂上まで電線を引っ張ることも可能である。大規模地震においても電線の復旧の方が、ガス管の復旧よりも容易である。

 

21世紀に日本が直面する最大の課題は、化石燃料、特に石油の枯渇であると予想される。実際、原油価格はジリジリ上昇しているし、21世紀初頭に石油危機がやってくる可能性さえある。石油が止まれば物流が止まり、生活が停止することになる。その備えは全く不十分である。

 

そこで思いつくのが、都市機能のすべてを電気エネルギーをベースとして構築する「全電化都市構想」である。これが実現すれば、たとえ石油の供給が断たれても文明を継続できる。実際、発電における石油の比率は、1973年の70%から、原子力の普及などにより現在では10%程度まで低下している。

 

一つのビル内の全電化は既に実現されている。高層ビルでは高速エレベータが移動手段である。ただ現状では、ビル間の移動や物流全般において、石油資源に多くを依存しており、同時に交通事故と大気汚染をもたらしている。これらは来世紀には持ち込みたくない悲劇である。

 

石油に依存しない都市システムを構築する事は、安全保障上も極めて重要である。第二次世界大戦に日本が巻き込まれた直接的原因は軍部の台頭であるが、背景には石油の供給が絶たれた事があった。人間は自らの生存が脅かされない限り、集団で他人を殺戮したりはしないものである。逆に生命の危機に立てば何でもする可能性がある。

 

安全でクリーンな全電化都市の実現こそ、我々が、未来の世代のために果たすべき最大の責任ではないだろうか?

http://dieoff.org/page140.htm


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