分散型電源は間違いである。

By KAZUHIRO SHIMOURA

Mar. 3, 2000

 

最近、燃料電池やマイクロタービンなど、分散型電源が脚光を浴びている。電力会社自身が分散型電源の普及促進を図る会社を設立したりしている。しかし、これは技術的にみても、経営的にみても誤りであると思う。

 

分散型電源には太陽や風力など、自然エネルギーを使う物と、ガスなどの燃料を使って消費地の近くで発電するタイプがある。私が疑問に思うのは後者のタイプであり、その代表が燃料電池とマイクロタービンである。

 

分散型電源のメリットとして、発電時の廃熱を利用できるので総合的エネルギー効率が向上する事、巨大な送電設備が不要となる事、発電設備が分散するので信頼性が向上する事、などが指摘される。以下はそれらに対するコメントである。

 

1.分散型発電装置は効率が低い

 電気と熱の需要比率は変化するが、分散型電源はそれに追従できないためどちらかを捨てる結果となる。ガスの送出や漏れによってエネルギーが失われる。新鋭火力の発電効率は50%を越えており、ヒートポンプなどと組み合わせれば送電ロスを考慮しても集中電源方式のほうが高効率となる。

 

2.分散型発電装置はコストが高い

 分散化すれば発電機などのスケールメリットが働かないため、単位出力あたりの装置コストは高くなる。また運転保守に要する人員も100キロワットの分散型電源の方が、100万キロワットの発電所に比べて圧倒的に不利である。

 

3.分散型発電装置は信頼性が低い

 発電機単体の信頼性、周波数等の電気の品質は、規模が小さくなる程低くなる。分散型では系統と連系してバックアップをとらなければ点検保守の度に停電する事となる。ガス供給系統は巨大ガス基地から集中的に配管されており、発電機だけ分散化しても意味が無い。大規模地震時の復旧でもガスの方が大変である。

 

4.分散型発電装置はエネルギー源の多様化に対応できない

現在電力会社は、原子力、火力(天然ガス、石油、石炭、他)、水力、等多様なエネルギー資源を利用している。これらの比率は時代とともに大幅に変化しており、あらたな技術開発や資源開発の成果を反映するとともに、エネルギーセキュリティーの面でも有利となる。例えば発電における石油依存度は1973年の石油ショック時の70%から、現在では10%程度に低下している。

 

 これらの点はガス会社も認識しており、それゆえ彼らも電力事業への進出を画策しているのであるが、電力会社の経営陣が分散型電源に過剰反応を示すのは電力システムへの認識不足によるのであろうか?


http://www2.enecho.go.jp/energy/graph/e02-06.html


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