2005/1/26
『ゲームとしての株式投資』
第4回 システムトレード
下浦一宏
こんにちは、下浦@トレーディング研究家です。前回、ハイリスクの仕手株について紹介しましたが、その対極にある投資方法が今回ご紹介する「システムトレード」です。システムトレードは米国などで普及しており、専用ソフトなども販売されているようですが、簡単なシステムであれば表計算ソフトでも実現可能です。
http://www.pylonsoft.com/?vc=0402016
http://www.tradestation.com/default_2.shtm
▼ 仕手性と合議性
少数の人間の意志によって、株価が上下する銘柄を仕手株と呼ぶ。東証1部の仕手銘柄は、株価200円前後、資本金数十億円以下の業績のパッとしない会社が多い。それが突然上がり出すので、株価収益率(PER)などを勉強した人が、「この株価は割高だ」と考えて空売りを入れてしまうのが仕手筋の狙い目である。
結局株価は何で決まるのか? 小型株の株価というものは、資金力さえあれば、企業業績とは関係なく、いくらでも操作する事が可能である。その意味で新興市場の銘柄などは全て仕手株と考えて良い。少数の意志によって株価が上下する性質を「仕手性」、反対に多数の意志が反映されるものを「合議性」と呼ぶ。
ネットトレードが普及する利点として「合議性」が強調されている。多数の人が価格形成に関与する事により、より適正な株価が形成されるという理屈である。ただこれが真実かどうかは証明されていない。資金力のある人の意志に従った方が、個人で戦うよりも利益が得られる可能性もある訳である。実際、投資顧問会社の指示通り売買する人も存在する。
これは情報社会の根幹に関わる問題でもある。インターネットが普及して、個人の意志を直接反映させる「直接民主制」になると、より良い政治が実現されるという夢があった。現実には情報社会においても政党政治は崩れそうにない。
▼ デイトレードとシステムトレード
仕手株を主戦場とするデイトレーダー達は、常に神経を張りつめている必要がある。いつ、どの銘柄が動くかわからない。個人の監視能力には限界があるので、彼らは仲間を募って共同監視したり、チャットを使ってリアルタイムに情報交換したり、銘柄監視システムを開発して警報を鳴らしたりしている。
従って、初心者がデイトレードに挑戦する事は余りお勧めできない。長期的にみて個人では太刀打ちできない領域に入りつつあると思う。神経を張りつめる負担は多大なものがあるし、トイレにも行けない状況に陥る。「大きな利益は望まないが、もっと確実にやりたい」という要求が当然出てくるであろう。それに応えるのが「システムトレード」である。
「システムトレード」は、あらかじめ決められたルールに従って、機械的にトレードを行う方法である。ルールは過去の株価データから導き出す。ルールを決めた後は、何も考えず、毎日ひたすらサイコロを振るだけである。
テクニカル指標を用いた複雑なルールを工夫しても良いが、エクセルを用いた簡単なシステムも有りである。具体的には、エクセルにYahoo! のサイトなどから、過去の株価データ(始値、高値、安値、終値)を1年分コピー&ペーストする。
ここからがルールを見つける作業である。例えば、ある銘柄では、終値が始値よりも低くなる傾向を見つけたとする。その場合、寄付きで売って、引けに買い戻す作業を繰り返す。エクセルを使える人であれば、最適な損切りレベルを決定する事も可能であろう。また関数を使えば、日々の期待値や標準偏差を求める事もできる。たとえその期待値が、0.3%という僅かなものであっても、1年間(250日)繰り返せば、資金を倍にする事が原理的には可能なはずである。
ただ、雨の日も、風の日も、ルールを信じてひたすらサイコロを振り続けるのは、デイトレードとは別の意味での精神力を要求されるし、ルールは市場の歪みを利用しているので、多くの人が同じ事をやり出せば歪みが解消されて、発見したルールが無効となる危険性もある。
デイトレードにせよ、システムトレードにせよ、何らかのルールを決めて、日々着実に実行しなければ、なかなか相場でメシを食っていくのは難しい事は確かである。
プロフィール
下浦 一宏(しもうら かずひろ)
トレーディング研究家