宮殿相続人(97/0429)


この宮殿に関してはイギリスでは王室の次に位置する貴族であるとの高木信一さんの説明にあった。長男でないチャーチルは、侯爵の地位を継げなかったが、結果世界的に有名になったのである。領地を見下すようにお城は聳えている。高台に聳えているわけでもないのに周囲を睨みながら建っているのである。それなりの見物料を払って、宮殿の居室を拝観する。部屋ごとにガイドが立って。装飾品の説明やここが何の為の部屋なのか、静かな軟らかい英語で説明する。中国からの皿、日本からの壺、美術品を世界各国から集めるのに情熱を燃やしたイギリス人の姿が良く解る。チャーチルの眠ったベッド、服それらが良く保存され、感心するより、私なんかには気持ちが悪くなる。人の過去、特に幼少時代をここまであからさまにされてはあの世で安眠出来ない。静かに放っておいて欲しいものだというのは、無名で貧乏人のひがごとか。

最近岩波新書で、黒岩徹さんと言う人が書いた『イギリス式人生』が出た。
読んで見ると、イギリス人はお化けが好きで、お化け見学ツアーだのお化け見学古家一夜体験会を催し、それが盛況との記述があり、ラコックのホテルで出現するお化けは人に危害を加える為に出没するのではない。人を楽しませる為に出てくるのだと解った。ならばハムレットの父親の亡霊はどちらなのか。それは後にして。

このブレナム宮殿について書かれた箇所に、この城の跡取り息子はブラッドフォード子爵であるが、この人は大変な出来損ないで、警官襲撃、飲酒運転、麻薬所持、等等で監獄入りを繰り返し、相続権を取り上げられてしまったということが書いてあった。宮殿に住んでも誰彼にジロジロ見られているのだから、監獄と変わりないじゃないかと思うが、何しろ建物だけでも160億円する宮殿を相続するしないという問題なのである。

「面白い事が書いてあるよ。これ読んでみないかね」
こうウチの陽子さんに言うと、

「あ、それ高木信一さんがちゃんと説明したじゃない。アンタ何聴いているの。人の言うこと全然聴かないんだから、本読んで知ったことしか信用しないんだから。そのような生活態度は間違ってるのじゃない」

すみませんでした。

しかし宮殿も監獄も一緒だという着眼点は我ながらよろしい。