「美浜の会ニュース」No.47(1998.12.16)より


12月4日 東電とのプルサーマル討論会
「東電はつまみ食いだけはやめて欲しい」
市民の追及でプルサーマルの抱える問題点が噴出

  「東電はつまみ食いだけはやめてほしい」。青森から駆けつけた市民側パネリスト平野さんの声が定員500名を大きく上回る880名が埋め尽くした会場に響いた。
 東電と市民とのプルサーマルについての公開討論会が12月4日、東京国際フォーラムで行われた。討論会において東電は、プルサーマルの問題を、これが環境汚染を引き起こし大量の核廃棄物を生み出す「再処理」と一体のものであることを無視し、単なる燃料の種類の相違だけの問題に限定し、メリットだけを「つまみ食い」して言いくるめようとした。しかし市民側の会場と一体となった追求はそれを許さなかった。
 市民側パネリストは@「ウランの有効利用のため」という東電の説明がでたらめなことAプルトニウムは「資源」などではなく、放射能汚染を引き起こし核兵器の材料にもなり、今では処理処分に困る厄介な廃棄物でしかないことB東電の計画が「プルトニウム余剰対策」にもならず、再処理・プルサーマルが全く必要のないことC海外では撤退が相次ぎ、特にBWR原発でほ安全性が実証されていないこと、を明らかにした。
 さらにプルサーマルの影に横たわり、東電が決しして「食わない」核廃棄物の問題に焦点があてられると、プルサーマルの抱える矛盾がー気に露呈した。
 市民側パネリストのー人は東電がプルサーマルを急ぐ背景に、福島第U原発で溢れそうになっている使用済み核燃料を青森に押しつける必要があることを指摘し、青森県知事の受入条件をのむためにブルサーマルを推進していることを明らかにした。
 これを受けて登壇した平野さんは「ウランの使用済み燃料をどう始末していくのかが解決できずに新しいプルトニウム使用には絶対入るベきではない」と主張。東電に対し、核のゴミの「発生者が、発生者責任を考えないで『国で検討してますので‥‥』というが、そういう逃げだけはやめてほしい」と発言し、会場から大きな拍手を受けた。また、原発からの廃棄物の処理処分が全く決まっていない中で、核廃棄物が次々と青森に送られている現状について「使うのは都会で、後始末をするのは地のはてで暮らしている人たちという感覚でよいのかをもういっペん、電気を大きく消費されている人たちにお考えいただきたい」と首都圏の私達にも訴えた。さらに、再処理・プルサーマルが、さらなる核廃棄物を生み出し、使用済みMOX燃料という、使用済みウラン燃料と比べても放射能・発熱量が大きいこれまた厄介な核のゴミを生み出すことを指摘。後始末の問題をさらに先送りするものとして明快に批判した。
 討論、会場からの質問においては、東電が回答に窮する場面が続出した。プルトニウムの余剰が問題であるならなぜ再処理をストップしないのか?なぜ福島でこのような公開討論会を開催するようにとの市民の要請を拒否しているのか?ウランの有効利用を唱えながら回収ウランを使用しないのはなぜか?3番目の質問について東電は、「経営的判断」と返答。だったらプルサーマルも「経営的判断」で中止できるのでは?と尋ねても返答はなかった。
 前半は東電の説明が延々と続き会場は静寂を保っていたが、討論に入り、東電が議論とは無関係な話を始めると「話をすりかえるな」「もういいよ」との声があがり、最後は完全に市民側が会場の空気を支配し、市民側のペースで追求が続いた。会場は7割ほどが東電の動員と見られる背広姿で埋まっていたが、中には市民側の発言に「そうだよな」と拍手を送る人もあった。
 首都圏ではプルサーマルを知らないという人がほとんどで、「合意形成」などない状態でプルサーマルが見切り発車されようとしている。この点について市民側パネリストは「がまんがならない」と発言。会場からは、情報公開をきちんとした上で、こうした討論の場を持つよう求める声があがった。東電推薦の司会の中村浩美氏も今回の討論会が第一歩にすぎないと発言、会場もそう感じたのではないだろうか。


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