ヘンテナ・アンテナの作成
目的(背景)

Top

移動運用で使える簡単な430MHzのヘンテナ・アンテナを作成し、性能実験を行う。

方法(課題)

Top

下図のようなオーソドックスなヘンテナ・アンテナを作成する。
エレメントは銅鉄線(全長93cm)を使い、同軸ケーブル(50Ωの不平衡ケーブル)で平衡アンテナに給電するため シュペルトップ(Spertopf)バランを作成し給電する。

下図はシュペルトップ(Spertopf)バランの詳細図


経緯(シュペルトップの理論的考察)

Top

平衡-不平衡バラン(同軸型)はシュペルトップ(Spertopf)またはバズーカ(Bazooka)とも呼ばれ、ヘンテナ・アンテナは 平衡アンテナの為、同軸ケーブルから給電する場合、平衡-不平衡のバランを必要とする。
下図に示す電流分布のアンバランスの発生はこの漏洩電流によるもので同軸ケーブルから電波が発射されさまざまな機器障害を発生させる。



なぜバランが必要か?

  • 電波の飛びがおかしい
  • フィーダの長さや引き込み状態を変えるとSWRが悪くなったり良くなったりし、マッチングが取りにくい。
  • TVI、FM−I、AMP-Iが起こる。
  • 上記のような複雑な悪影響を取り除くためにバラン(Balun:Balance to unbalance)変換装置が必要になる。


  • そこで、下図に示すようなシュペルトップ(Spertopf)バランを作成しその効用を確認する。


    LC並列共振トラップが給電点に入った状態になり漏洩電流が阻止されることを確認する。
    経緯(ヘンテナの理論的考察)

    Top

    下図はヘンテナの概観図です。L1とL2の2つのループが存在し、L2はショートスタブとしての機能を持ち、A,B 点を上下することでマッチングをとることができる。


    ショートスタブとは

    λ/2以下のフィーダをスタブ(Stub)と呼んでおり、L2のループ部分がスタブ部分に該当します。オープンスタブとはこの給電部を除いた L2ループ部分の長方形の長辺の中心あたりが切り離された状態を(銅鉄線を切り離した)オープンスタブと呼んでおり、上図のように 切断されていない状態をショートスタブと呼んでいる。
    上記ヘンテナのショートスタブはλ/4(位相が90°)以上ありL1部分のエレメントの長さが変化してもマッチングが取れそうである。

    結果

    Top


  • シュペルトップ(Spertopf)バラン


  • シュペルトップ(Spertopf)バランを装着した時と未装着の状態で送信機出力を変えSWRの値の変化を確認する。


    1ワットでSWRを1.0になるまでヘンテナのマッチングを取り、同軸ケーブルなどの外部環境を変えずに トランシーバの出力を5ワットに切り替えた時のSWR値は2.5から3に変化した。又、同軸ケーブルを振らしたりすると SWRが変化する。

    シュペルトップ(Spertopf)バランを装着して同様の操作を行うと、5ワット時のSWRは1ワット時のま変化せず、同軸ケーブル を振ってもSWRの変化は微小(感覚的に1.0付近で動いたかなという程度)であった。

    このことから、バランを装着しないときの同軸ケーブルからの漏洩電流(電波)が結構大きいことが分かる。シュペルトップ(Spertopf) バランが機能していることが感覚的に理解できた。


  • ヘンテナの指向性に付いて


  • ヘンテナはショートスタブを持ったループアンテナで8の字型(ダイポールと同じ)の指向特性を有していることを ループ面を回転させる事でトランシーバのSメータの値の変化で確認する。

    入感する局を選定(QTHとかアンテナ等のQSO情報をワッチしながら方向など事前に確認)し、その方向がループ面になるように 回転させSメータが最大になったところから、±90°回転さしたときSメータが9〜0と変化するのでヘンテナに指向性 があることが確認できる。反対(裏面)でも同じ結果となつた。


    下写真は実験で使用したヘンテナとSWR計

    携帯のカメラで撮ったためピンボケしている。今後、移動運用に使えるよう線材や組立容易性などを考慮して再作成した時にでも 写真を入れ替えます(^_^)

    考察

    Top


    基本的にヘンテナは1波長+αのループアンテナでマッチングにショートスタブを持ったアンテナと言えるだろう。形状から 2〜3dbの利得がありそうで、縦長で水平偏波、倒した状態で垂直偏波となり、ループアンテナの特性を備えている。
    交信中に垂直系と八木系のアンテナでヘンテナを立てたり、倒したりする事で受信感度が変わる事で確認できた。

    ヘンテナはダイポールアンテナよりエレメントが長い分利得が上がり、下側ループ部分(スタブ)で多少8の字特性パターンが 扁平になつているようで、利得を多少得ているようだ。
    近くの局などは受信感度がS9からS3と変化するがS0とはならず、ダイポールのような8の字型の指向特性とは多少異なつて いるようで、スタブ部分が指向特性に影響を及ぼしている事が想像できる。(8の字の交点部分が広がったようなイメージで指向性アンテナ で良く言われるサイドのキレという点では良くないようである)

    いずれにせよ、指向性があるということは不要電波(ノイズ等)をカットでき交信には重要なファクタである。 仮に3dbの利得があるとすると、送信機出力1ワットでヘンテナアンテナを使う事で2ワット出力したのと同じ効果 (3db=2倍)が得られる。受信時も同じで2倍耳がよくなる。(ゲインが2倍となる為、受信感度が上がる)

    ヘンテナの幅(図ではλ/6部分)を狭くするとインピーダンスが低くなるようで、ショートスタブ部分を上下に移動させ 調整する必要があった。これは、縦の部分(図ではλ/2部分)が近づく為に低くなるようである。
    八木アンテナなどに見られる、反射部(リフレクター)とか導波部(ディレクター)の位置関係で放射器(ラジエータ)の インピーダンスが変化するのと同じ現象のように思われる。(位相差などの影響か)


    形状や寸法などあまり正確でなくても、簡単に作成できマッチングが取れるし、様々な形状のアンテナや空中線を作成する 者にとつてさまざまな想像力を醸し出してくれるアンテナであると思う。