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すれちがう恋 僕は毎朝同じ車両の同じ場所に乗る。通学時間の1時間。 ラッシュの電車 調布駅で毎朝すれちがう女性。 行く方角が違う二人は、車窓越しに毎朝顔を合わせている。 彼女との間は約1メートル でも、その1メートルは 心を通わすには距離が有りすぎる。 名前も知らない窓越しの彼女に いつしか僕は心を寄せるようになった。 たぶん彼女も僕に気が付いている でも、声を交わす事はない。 僕が微笑みかけると 彼女も微笑んでくれる。 何度かレポート用紙に 携帯の番号を書いて彼女に見せるけど 電話がかかってきたことはない。 卒業して銀行に就職した。新宿支店に配属になる。 学生の頃より20分はやい電車に乗るようになった。 彼女の顔を見なくなって1年 無我夢中で働く僕にとって1年は短かった。 いつしか、僕の背広姿も板に付いてきたようだ。 今朝は自宅から笹塚支店へ直接出張 いつもより10分遅く家を出た。 乗り換えるために明大前で特急電車をおりた。 向かいのホームには 僕を見てそっと微笑でいる彼女がいた。 |
