渡辺巌  もと国際稲研究所部長 200年7月初稿
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2004年7月12日から番目の訪問者です

世界の稲と米

30億の民を養う多様な稲の育て方と米の利用法

INePict1 IRRI RICE and Banaue
左図 IR8 (左)とその両親;背の高い Peta(中央)と背の低い DgWg (右)
右図:フィリッピンルソン島山地バナウエの棚田

なぜ稲や米の話か


(1993年の不作で戦後始めて外国から米が輸入された。 なかでもタイ米の評判はよくなかった) これらの疑問への回答は こちら

日本人が米を食わなくなった

戦前の最高は年一人精米で平均160キロ(1日3合)でしたが、戦後は1960年頃で120キロ、いまでは60キロ弱(1日1.1合)です。
でもアジアの人はもっと沢山食べています。
 図1:日本人の米消費量の変化 図2 アジアの国の米供給量(一人あたり年間精米キロ 1998~2001年の平均): FAO統計

稲はアジアの作物で、国内自給が 中心

世界の3大穀物は稲、コムギ、トウモロコシで、現在世界でそれぞれ6億トンくらい生産されています。いずろも毎年ほぼ同量生産されています。 1960年と比べると、2002年でほぼ3倍の生産量になっています。この間、人口はほぼ倍になっています。 
しかし、穀物の一部が家畜の餌になっていることや、分配の不均一のため、いまだに穀物食料が足りない地域があります。

稲の9割はアジアで栽培されています。 この傾向は過去20年くらい変わりません。一方、コムギやトウモロコシのアジアでの栽培は近年増えているものの、全体の3〜4割です。
現在、生産された米のうち、外国貿易にまわるのは全生産量の6〜7%にしかすぎません。
稲は基本的に国内自給の作物です。

なぜ稲はアジアで栽培されてきたのでしょうか。

米の生産

米の主な生産国と生産量の変化

年生産量に比例する大きさで主な国の米(もみ換算)を表示すると図3のようになります。

 図3:世界の主な米生産国
(四角の面積は年間生産量に比例、FAO統計 1999~2003年の平均)
中国:1億8千万トン、インド:1億2千万トン、日本は9番目で千百万トン
(もみ換算で、日本では玄米換算なので1.3倍するともみ換算になる)

このところ生産量は伸びています。

 図4:世界の主な国地域の米生産の年次変化
(1961年を100とした指数、FAO統計)

緑の革命の成果

アジアでは栽培面積の拡大の余地はあまりがなかったので、このような生産の増大は主に面積あたりの生産量(収量)の伸びによっています(アフリカは主に栽培面積の拡大)。 このような収量の増大は” 緑の革命”の成果だとされています。

熱帯アジアの在来の稲品種は背が高く、肥料をやると、背丈がさらに伸びて、倒れてしまいます。 また雨季の終わりの秋ころに収穫できるように、秋口になって日が短くなると、穂がでるようなものも(感光性という)ありました。
これを改良して、背が低く、倒れにくい、収量の高い熱帯稲品種が作られました。 地上部の重さが同じなら、改良品種はもみ/茎葉の比が大きいので、それだけ沢山のもみが収穫できます。
また生育期間も120日〜100日と短く、雨季だけで2回栽培できるようになりました。 もっとも有名なのは国際稲研究所 (International Rice Research Institute, IRRI)が1963年に発表した IR8です。(ページはじめのの 左図

しかし、一部の灌漑施設の整った条件のよいところを除いて、改良高収性品種の栽培だけでは、簡単にはいきませんでした。 でも1970年台から1980年台に各国で収量の増加が現れてきました。
各国政府の稲作の基盤整備(灌漑しせつ、生産資材供給、普及活動、信用制度、国内市場開拓など)が進んだからです。 1980年台にはアジアの主な国では基本的には米の自給ができるようになりました。  詳細

小さな稲が大きなアジアを作る
(初代国際稲研究所所長チャンドラー博士の言葉:背の低い稲がアジアの米の生産を増やし、大きなアジアをつくるだろうという意味で実際そうなり、アジアは経済成長を続けています)
I稲はちいさく
左図:ノーベル平和賞受賞者 コムギの育種 ボーローグ博士(左)、日本賞受賞者 稲の育種 クッシュ博士 
 右図:タイのバンコックの繁華街

 図5:世界の主な国、地域の米収量の年次変化
(ヘクタールあたりの”もみ”トン数、FAO統計)

国の稲作収量のベストテン

1999~2003年の平均収量のベストテンです。面積が小さければ、高い収量が記録されやすいので、百万ヘクタール以上の稲栽培面積を持つ国だけについてのベストテンは右の表です。
もみ収量 
トン/ヘクタール
栽培 百ヘクタール以上もみ収量 
トン/ヘクタール
エジプト9.17 アメリカ合衆国 7.14
オーストラリア9.15韓国6.5
ギリシャ7.48 日本 6.44
スペイン7.34 中国 6.2
アメリカ合衆国7.14 インドネシア 4.41
ペル-6.62 ベトナム 4.37
韓国6.5 ミヤンマー 3.48
日本6.44 バングラデシュ 3.39
ウルグアイ6.38 フィリッピン 3.18
中国6.2 ブラジル 3.18


稲と米の多様性

世界で作られている稲と食べられている米は多種多様です。

IneFig6 African rice varieties
左の図はアフリカタンザニアの一枚の田からみつかったいろんな稲の穂です。

多様性 D iversityは

 種と品種 C ultivar の多様性

食用に供されている稲の種はアジアの Oryza Sativa と西アフリカの Oryza glaberrima です。

(注)最近、両種をかけ合わせることに成功しました。この交雑稲はネリカといわれ、西アフリカで栽培が広がっています。

Oryza Sativaは以下の3つの亜種に分けられています。

名前別名 特徴 主な分布域
ジャポニカ 温帯ジャポニカ穀粒は短く、米質はやや粘る 北東アジア
ジャバニカ熱帯ジャポニカもみにノゲがあり、穂が大きく、穂数は少ない 熱帯アジアの島々の山岳地帯
インディカ インディカ穀粒は長く、米質は粘らない 熱帯アジア、インド亜大陸

(注)ここで示した特徴は主に栽培されているものの例で、各群の間の変異の幅は大きい。穀粒の形だけで間違いなく、群分けすることはできない。

国際稲研究所では世界の熱帯稲と野生稲の10万近い系統を保存しています。 日本の稲の系統は独立行政法人 農業生物資源研究所が保存しています。

 生育環境(生態) E cology の多様性

稲の育つ環境を4区分すると
IneFig7 Riceecologyareas
それぞれの面積の分布は左の図のようになります。
灌漑された水田からの稲の生産量は全体の7割になります。
アフリカと中南米では陸稲の割合が多くなります。


 アジアの主な国の4種の稲生育環境面積の分布の推定図は下図のようです。

Inepict4アジアの4種の稲生育環境面積の分布

 タイ、ラオス、カンボジアなどでは灌漑水田の割合が少なく、収量が低いままです。

 天水田

水の供給はお天道様たより のところ。 大きな河の周辺では比較的水の供給が安定しているところもあるが、雨季と乾季が交互するモンスーンアジアでは降雨始めの時期と降雨量の年による変動は大きく、稲の生産量は大きく変動する。東北タイやインドのベンガル地方は代表例。
生産量の変動がおおきいと、農民は生産のための投資を手控える。それぞれの過酷な環境に適した在来稲かその改良品種が栽培されています。
収量はせいぜいヘクタールあたり3トンくらい。
天水田でも、比較的水の供給が安定しているところ、例えば、ミヤンマーのイラワジデルタや山間部の棚田地帯のようなところもあります。

Ine fig8  Northeast Thai field
左図:東北タイの雨季
右図:東北タイの乾季、土はからから。植物は枯れている。

 深水水田


Ine fig9   Deepwaterarea
タイの旧都アユタヤの北のチャオフラヤ河の周辺には雨季深水になったときでも育つ特異な深水稲 または” 浮き稲”が栽培されている。 はじめは陸稲のように畑に種をまく。雨季になり河の水かさがますと、田んぼの水深が徐々にふえてくる。稲の茎は水深の増大に伴って、延びていくので、稲の葉先は常に水の上にでるようになる。 雨季がおわって水がひいてから収穫する。
茎が長くなるので、もみ/茎葉の比は小さく、収量は1〜1.5トンくらい。
 なお深水常習地帯では浮き稲でなく、水に1週間くらいかぶっても、生きている品種や海岸近くでは塩類に強い品種も栽培されています。

 陸稲

東南アジアの山岳部では焼き畑耕作が広くおこなわれている、 林を焼いたあとの畑では陸稲が栽培される。 やはり、天水なので、乾燥による被害がでやすく、陸稲の収量は低い。もみでヘクタールあたり、1〜1.5キロくらい。
OKABO Yakihata and Pao farm

 穀粒の多様性 G rain

稲の穀粒の大きさや、色も多様です。

北アジアでは米粒の長さと幅の比が2前後のものが多いですが、タイだと、この比は2から4くらい までばらついています。インドでは3〜4くらいが主体です。大きさも一粒20〜40mgの幅があります。

モミの表面のいろも赤、紫、黒です。玄米の表面の色も赤、紫、黒といろいろです。 ただ米粒の芯まで着色しているのはありません。

 食品 Food の多様性

米質(粘っこさ)

お米の味はいろいろな要因(粘っこさ、芳香、固さ、とくに冷えたときの など)に支配されます。 なかでも粘っこさ は一番日本人が気にすることです。
粘っこさ はまたいろいろな要因できめられますが、一番大きく影響するのは 米粒デンプンのなかの アミロースというデンプンの含量です。

世界の米食民族が好むお米の粘っこさはかなり違っています。

米の好み
もち系統(アミロース5%以下)
  ラオス、北タイ
やや粘る(アミロース15〜20%)
  日本、韓国、台湾、エジプト
中間(アミロース20〜25%)
  ベトナム、カンボジア、ミヤンマー、
インドネシア、フィリッピン、南中国
粘らない(アミロース25%以上)
  インド、スリランカ、パキスタン

北タイやラオスでは主食にもち米をたべます。 ”おこわ”みたいに、手でつまみ、つぶしてまるめて食べます。
エジプトでは日本人技術者が米作を導入、指導したため、ジャポニカ系統が消費されています。

 Amylosecontent Fig11
米のアミロース含量の国別分布
(平均値+標準偏差)
このような , 国、地域の好みの違いは図で示すように市場で売っている米のアミロース含量が違っています。

稲と米、米と飯、飯とごはん

日本語では植物の呼び名は稲、子実はもみ、もみすりしたのは、玄米、精白したのは(白)米、炊いたのは飯 と名がちがってます。
飯はごはん といい、食事一般を指します。 アジアの米食国でも、このような区別を別な言葉で表しています。 フィリッピンやインドネシアでは、炊いた(煮た)米のことは同時に食事一般をさしています。 米食をしないイギリスの言葉の英語ではすべて RICEです。(下表参照)
英語では牛肉にいろんな名前がありますが、日本語ではすべて牛肉です。 食文化のちがいが名前に現れています。

日本 イネ モミ コメメシ
韓国 Pyo Pyo Ssal Pap
中国 Dao(稲) Dao Mi(米)Fan(飯)
インドネシア Padi Padi BerasNasi
ミヤンマー Zaba Zaba Hsan Htamin
ベトナム Cay Lua Thoc Lua GaoCom
ラオス Tan Khao Khao Puak Khao San Khao Suk
カンボジア Demsro Ankor Samrop Ankor SamrethBay
フィリッピン Palay Palay BagasKanin
英語 Rice Rice RiceRice

多様な米の加工食品

 米加工法   pict5
北東ー東南アジアの米食国では米のいろんな加工食品が発達してきました。
大きく分けてウルチ系統とモチ系統があります。
うどん系統: 南中国、インドシナ半島などでは米粉から作った”びーふん”うどん が発達しています。(ベトナムのホー、ベトナム春巻きの皮も米粉からつくります。これを刻んでホー にします(写真参照)
どういうわけか日本では米粉の”うどん”は発達しませんでした。
モチ米を植物でくるんだのは日本では”チマキ”です。 これも東南アジアで広くつくられています。 たいていはココナツミルク、砂糖、香料などをいれたお菓子として食べられています。くるむ葉はバナナの葉が多いようです。(フィリッピンのプトー)
モチ米をこねた”餅”も作られますが、これもお菓子のような利用です。 米からの酒も各地で作られます。多くはコウジを使っています。
日本酒以外はモチ米を使います。(中国の紹興酒、ルソン島山岳民族) 日本酒はウルチと粒コウジ(他の国では粉コウジ)を使う、独特なものです。

ベトナムの加工食品”  width=326  height=260 ><BR CLEAR=


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