大麻取締法改正に向けての請願法活用の勧め


 私は、今日までの27年間に多くの大麻取締法違反事件を担当してきました。しかし裁判では、大麻についての具体的な被害が何ら明らかではないのに、大麻が有害であるという一方的な先入観でもって大麻の有害性を認定するという状況が続いています。そこで、私は大麻取締法の運用の改善と改正を求めて、関係当局に対して請願を行いました。大麻の有効利用に関心のある多くの心ある方が、それぞれの創意工夫によって、請願運動を展開して欲しいと思います。



2001年(平成13年)12月3日
丸井 英弘(弁護士)


1。私は1975年に初めて大麻取締法違反事件を担当して以来、今日までの27年間に多くの大麻取締法違反事件を担当してきましたが、裁判では、大麻についての具体的な被害が何ら明らかではないのに、大麻が有害であるという一方的な先入観でもって大麻の有害性を認定するという状況が続いています。

2。また、大麻の種と茎を有効に利用したいということで大麻の栽培免許を申請しても、免許の欠格事由がないにもかかわらず、社会的必要が無いなどとして栽培免許が認められないという現状が全国的にあります。

3。私達はこの国の主権者であります。その主権者の幸福追求権を保障するための手段として法律がありそれを運用するのが全体の奉仕者たる公務員の役割ですが、現在の日本の状況は、国民が行政の客体たる地位に甘んじており主権者たる実質が無くなっています。問題がある法律であっても、その法律を万能視して、その批判をすること自体を許さないという風潮があります。例えば大麻取締法違反事件で「大麻に害はない。むしろ有益である。」などと本人が自分の体験に基づいて本当のことを話すと「反省をしていない。」などと検察官や裁判官から指摘されますので、真実が話せない状況にあります。
 しかし、憲法では、その第16条(請願権)で次のように規定しています。
「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」
 さらに請願法第5条では、「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。」と規定しています。
 そして、憲法第12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」と規定していますが、この国民の不断の努力の一つが請願権の行使であると思います。
 また、弁護士法第1条(弁護士の使命)では、 「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」と規定していますので、法律制度の改善に努力することは、弁護士の使命でもあります。
 そこで、私は大麻取締法の運用の改善と改正を求めて、憲法第12条・16条、請願法、弁護士法第1条に基づいて、関係当局に対して請願を行いました。

4。この請願は、単に行政当局に政策の変更をお願いするものではありません。また、単に請願書を行政当局に提出するということで事足りるものではありません。憲法上の請願行為は、主権者として具体的な政策決定過程に参加をするものであり、その内容を社会一般に公開して多くの人の意見を聞きながら具体的な政策の変更を求めるものです。従って、請願行為を請願運動として社会的に展開する必要があると思います。大麻の有効利用に関心のある多くの心ある方が、それぞれの創意工夫によって、請願運動を展開して欲しいと思います。



<目次>