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3DS
■3DSってなに?

3DSとは、3つのDすなわち Dental Drug Delivery System (デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)の略称です。むし歯の主な原因菌であるミュータンス菌を直接除菌する、根本的なむし歯予防法です。
2002年に国立感染症研究所(武内博朗ら)が発表した技術で、従来にはなかった新しいプラークコントロール法です。

■その原理と方法は?

3DSは、ミュータンス菌が歯面にしか定着できず、他の口腔細菌の多くは歯面にも口腔粘膜にも定着できるという、いわばむし歯菌の持つ弱点を利用した除菌法です。歯面だけに薬剤を作用させれば、むし歯の原因菌を集中的に除去できるというわけです。
但し、ミュータンス菌は歯面上に強力な細菌の膜(バイオフィルム)を形成しており、バイオフィルム上に薬剤を塗布しても内部には浸透せず、またすぐに唾液によって希釈・拡散してしまいます。


〈口腔の化学療法を困難にする要因〉
上)  細菌は歯面上に頑固な膜(バイオフィルム)を作り、薬剤が浸透しにくい
下) 唾液が薬剤の有効濃度を低下させる
よって、3DSは次の二段階の方法で行います。

1. バイオフィルムをPMTC(歯科衛生士による専門技術と器具による徹底的な歯の清掃)などで物理的に破壊

2. 個人別に歯列にフィットしたトレー(ドラッグ・リテーナー)を用いて薬剤を歯面に集中輸送


この方法を用いれば、唾液に希釈されることなく、安全で確実に薬剤を塗布することができます。薬剤を変えればむし歯菌だけでなく、歯周病関連菌の除去にも応用でき、口臭予防にもつながると考えられます。
3DSにより歯面上に健全な口腔細菌叢が定着する
■3DSの流れ

1. 唾液検査

  唾液を採取し、ミュータンス菌や他の口腔細菌の数や全体の中での比率などを調べ、正常値と比較して除菌が必要かどうか判断します。
  当院では、口腔内全体にむし歯菌の占める割合がわかる潟rー・エム・エル(BML)の検査システムを採用しております。

ガムベースを5分間噛み、ロート付きの試験管で唾液を採取します。

採取した唾液にpH試験紙をつけ、pHを測定。
チェックシートにpH判定結果や問診・調査事項を記入後、潟rー・エム・エルに送付します。

 
2. 診療方針の説明

  検査の結果、ミュータンス菌などのむし歯原因菌の検査値が高いと判明した場合は、十分に説明を行ない患者さんの理解と同意を得た上で、3DSによる除菌を決定します。

3. ドラッグ・リテーナーの作製

  患者さん個人の歯列の形態に合わせたカスタムメイドのトレー(ドラッグ・リテーナー)を作製します。


 ドラッグ・リテーナー
 左は簡便法、右は薬剤スペースを色分けして
 ツートンカラーに作製したもの
4. バイオフィルムの染色

  歯面に強固に付着している細菌の膜(バイオフィルム)を、染色液を使って
染め出します。染色は、3DSを行なううえで極めて重要なステップです。



  上下片顎ずつ十分に染色剤を塗布

4. バイオフィルムの物理的除去

バイオフィルムの除去法には (1)ハンドクリーニング、 (2) PMTC、(3)エアーアブリージョンの3つの方法があります。除去する部位によって3方法を使い分け、歯科衛生士が徹底的に清掃を行ないます。

(1) ハンドクリーニング
  ハンドブラシ、
フロス、歯間ブラシ、舌クリーナーなどを用いて歯間部、隣接面、歯周ポケット、舌背など、軟組織と歯の周辺のバイオフィルムを除去します。


(2) PMTC (Professional Mechanical Tooth Cleaning)
    専用の研磨剤や器具を用いて機械的に歯面清掃を行ないます。主に表面積の大きな部位のバイオフィルムを徹底的に除去し、薬剤を作用しやすくします。
 


(3) エアーアブリージョン
   PMTCでは除去できない、修復物の間隙などのアンダーカット部のバイオフィルム除去に適しています。
PMTC後 エアーアブリージョン後
6. バイオフィルムの化学的除去
  歯列にドラッグ・リテーナーと薬剤を用いて、化学的な除菌を行ないます。

ドラッグ・リテーナーに
薬剤を注入
デンタルフロスで歯間に
薬剤を送り込む
ドラッグ・リテーナーを
装着、5分間薬剤を作用させて除菌
7. ホームケア
  このあと約一週間、家庭でのケアを行ないます。
○歯ブラシはミュータンス菌の再感染防止のため、新しいものと交換します。
○3DS実施の直後は糖類を控えるようにします。
○1日1回、寝る前のブラッシング後、ドラッグ・リテーナーにホームケア用の除菌ペーストを入れて5分間装着し、歯の表面に作用させます。これを次の3DSまで、毎日行ないます。

8. 再度3DS
   約一週間後に再度、機械的・化学的除菌処置を実施します。

9. 効果の判定
   約50〜60日後に、二度目の唾液検査を行ないミュータンス菌の菌数をチェックします。基準値をまだ上回るようであれば、3DSをもう一度実施します。

10. メンテナンス
  約6ヶ月の間隔で定期検査を行ない、PMTCなどによるメンテナンスを継続します。

☆子供をむし歯から守るために☆

むし歯の原因になるミュータンス菌は、まだ歯の生えていない赤ちゃんのお口の中には存在しません。ツルツルした面にだけくっつく性質を持っているため、歯が生えるまではくっつく場所がないのです。この細菌は、赤ちゃんに一番近い人から感染します。赤ちゃんとのスキンシップや、同じスプーンや箸を使った食事などで、唾液を介して感染するのです。特にWindows of infectivity (感染の窓)と呼ばれる生後19ヶ月から31ヶ月の間、1歳から2歳半くらいの時期に感染することが多いといわれます。

ただし、
感染を恐れてスキンシップまで避けるというのは大間違い。お母さんのお口の中の善玉菌をお子さんに移してあげることも必要です。善玉菌が住み着いてしまうと、今度はむし歯菌が感染しにくくなります。

要は、感染しやすいといわれる
1歳から2歳半の時期にむし歯菌がうつらなければ、その後いくら唾液と接触したとしてもむし歯にはならないのです。

問題はお母さんのお口の中のむし歯菌の量です。妊娠中は不規則な生活や偏食、つわりなどでどうしてもオーラルケアがおろそかになり、お口の中が汚れやすい状態になります。また、治していないむし歯があると益々ミュータンス菌が増加します。むし歯があればまず治すこと。唾液検査を受けて、むし歯菌の比率が多ければ3DSを行なって除菌しておきましょう。できれば妊娠前から定期的に歯科検診を受けておくとよいでしょう。
3DS - 最強のむし歯予防法