73期有志による教育問題を考える"Project-K"の第三回セミナー報告 「公立中学校の現状と課題−保護者の信託に応える学校であるためにー」 聖教学院特別顧問 石井重光氏 2004年9月11日(土) 北野高等学校同窓会館3階ホール 教育問題を考える「PRJ−K」の第3回目の講演者として、石井重光先生から、16年の英語教師、11年の教育委員会、9年間の校長としての体験に基づいたお話を伺うことが出来ましたのでご報告いたします。総合司会は林 貞三さん、開会の辞は京都大学大学院教授 梶本興亜さん、討論司会は山田功生さん(いずれも73期)にお願いしました。 1.ベビーブーマーによる教員の年齢構成のゆがみ(人口統計を見て) 生徒数はピーク時の半分となり、先生は40歳以上が81%に達している。これにより、若い教師には狭き門となり、その結果、小学生は祖父母に近い先生と相対している。また、「宿直」や「一杯飲み」がなくなって、先生間のガス抜き不足やコミュニケーション不足となってきた。小学校では「声の大きい女の先生に引きずられる」、「男の先生に黙って従う」等あいまって、新しいものが生まれない指導構造となっている。 ![]() ![]() 2.ゆとりの教育と「選択学習」と「総合学習」 文部科学省は「過度の受験競争の排除」の名のもと、実は労組対策で「ゆとりの教育」を92年に打ち出した。土曜日を休校としたために、カリキュラムや学校運営にかえってゆとりがなくなってしまった。 かつては土曜日は、半ドンの開放感があり、遅れを取り戻したり、クラブ活動に充てたり、ホームルームを開催できた。「行き場のない生徒」が増えているのも問題である。 主要教科の英数国も週5時間が3時間と減ったため、教科書も教室で満足に読めない。ここでも、「黒板を写すだけ」のシラケ現象に結びついている。 東京都では石原知事が「日比谷の復活」、「5日制の廃止」を打ち出している。私立校では、平日休みのやりくりで労働時間問題は巧みに解決している。 「総合学習」は牛の目玉の解剖や、綿菓子作り等経験により、「生徒の目が輝く」参加型が本来の目的であるが、時間不足で、例えば、修学旅行の広島訪問を「世界平和のありようを考える」等のイベントとすりかえざるを得なくなっている。 土曜休日はアンケートでは賛成が多いが、実際には「塾通い」に振り変わっている。 3.不登校問題について 統計上、不登校生徒は小学校2000人、中学校9200人程度とされているが、実際にはもっと多いと思う。 彼等は大半が休みたくてそうしているのではない。自分の意思とは別に、人前に出たくない何かによって、まず、便所にこもり、その後、部屋にこもってしまう。 どう接すればよいか?「こちらからやってやる」ではなく、「一緒にやろう」の姿勢で臨む必要がある。英語学習で言えば、かたかなで読めるようしてあげる。出来れば、誉める。先方から「もっと教えて!」という意欲を引き出す。こうしたサイクル作りが重要である。 4.何故犯罪に走るのか? これは学校だけの問題ではなく家庭に原因があり、そこを解明する必要がある。 「命の教育や性教育」はやり易いが、「道徳教育」は難しい。すぐ切れる子はどこかで「リセット可能」と考えているフシがある。取り返しのつかないこともあることを悟らせることが大事である。これらのバックアップとして「地域の組織」に期待するところは大きい。一度危機を乗り切った子供の「自走力」はとてつもなく大きい。ボランテア活動をする場合、「エキスパート、インテリ」の雰囲気を出せば彼等は逃げ出すだろう。目線を合わせていくのが大切と思う。 5.主なQ and A Q1.地域差はあるか? A1.まさに千差万別である。 Q2.中学は「読み書きと算盤」を重視した方が良いのでは? A2.高校選抜教科としては主要教科で十分という有力な意見がある。 Q3.年齢構成のアンバランスが教育の大きなゆがみを作っているのでは? A3.確かに一般企業ではアンバランス部分は臨時雇いで埋めると思う。今後、義務教育費が地方行政に 降ろされた場合、どうバランスよく配分されるかも心配である。 Q4.若い教職員が採用されないとますます活力が失われるのでは? A4.その通り。最近は狭き門だが、「生徒対応力」を基準に若干増加させつつある。 Q5.ヤンチャな子供達をクラブ活動に誘導できないか? A5.良い方法である。今はサッカー部が多い。一般的に楽をしたがる傾向にある。 Q6.「道徳教育」の中身はなにか? A6.文部科学省は「環境、人の道」をVTRで見せるがこの方式は評判が悪い。人権教育がわずかに 成功の部類にはいるのかもしれない。 Q7.塾との連携は? A7.塾は様々で、商業主義が多い。判った時に子供は変わる。そのために地域との連携を模索中だが、 池田小学校殺傷事件で頓挫している。 (久保記) |