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英語のビジネス書

2005/1/14改訂


America On Line


Kara Sisher著
Times Business(Random House)刊
1998年
定価$25
ISBN0-8129-2896-2

一部でサイバースペースのゴキブリと呼ばれながらも、いまやアメリカ最大のインターネットアクセスプロバイダーとなった、America Online社の歴史を描いたものです。

副題はながく、How Steve Case Beat Bill Gates,Nailed the Netheads, and Made Millions in the War of the Web、というもの、内容をかいつまんでいえば、そういうことでしょう。

プロローグで、いきなりスチープ・ケースに対するビル・ゲーツの挑戦的な言葉がでてきます。おたくの20%を買うことも、全部を買うこともできる。あるいは、我が社がこの業界に参入して、おたくを潰すこともできる。1993年5月11日のことです。

今日AOLは、この業界最大手となり、AOLより先行していたProdigyもCompuserveをもAOLは超えている一方で、ゲーツのMSNは苦戦しているようです。

会話というか、メッセージの内容が過激なセックス論議である場合、削除するという方針だったProdigyのユーザー数ががどんどん後退したのに対して、チャット、書き込みその他でずっと自由だったのが、AOLの成長の原因一つだというようなことが、Burn Rateに書いてありますが、かなりな程度当たっているようです。

創業当初のころや、大苦戦しているところは、真面目に読んだのですが、後半はとばし読み。それでも、品位法廃止への戦いには感心します。アメリカの業界も偉いのですが、政府に対して独立している雰囲気の裁判所がまた偉い。さすが宗主国はわれわれとは違います。裁判所がたまには機能を果たしているという、うらやましい話。

churnつまり、新規ユーザーの乗り換え率というか、歩留まりの悪さについての記述を読んだあとで、日本の大手パソコン通信会社の幹部の言葉「月に4万人加入しても、3万人が脱退するという」現状というのを読んで、いずこも同じと感じたものです。あちらAOLは1000万人を越えており、日本の大手は260万人程という数字で、人口サイズで考えても、日本における普及率まだまだなのですけれども。

2000年3月、翻訳「AOL」が刊行されています。

(2000年3月12日追記)

Amazon.co.jpで購入することが可能です。
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Apple


Jim Carlton著
Times Business(Random House)刊
1997年
定価$25
ISBN0-8129-2851-2

Apple The Inside Story of Intrigue, Egomania, and Business Blundersというのが表題です。
まさに真実は小説より奇なり。実話ゆえに、シリコンバレーの企業ではたらく青年群像を書いた小説を4冊読むより、ずっと迫力があります。
4冊の小説に描かれていた、

などが、180人にのぼる関係者とのインタビューに基づいて事細かに描かれています。
その点、インテル社の内情を描いた『インサイド・インテル』の場合、(著者がいっているように)インテル社の圧力のせいで、関係者とインタビューがきわめて困難だった、というのとは対称的。
悲しいことに、まるで、10年以上前に書かれた本Fumbling the Futureの改訂版のようにも見えました。
World Wide Developers Conferenceでの1984のコマーシャルを使ったQuickTimeデビューの鮮やかさ、技術部門のとりまとめであったRoger Heinenの突然の辞任など、自分でもわくわく、はらはらしながら見ていた事件、イベントが鮮やかに書かれています。そこで、細かく書きすぎで、ポイントがぼけているという書評もあります。

辞任した秋のSeybold ConferenceにMicrosoft幹部として登場したRoger Heinen-この部分の記述は本書にはありませんが、Macintoshユーザーが大半の会場はブーイングで騒然となりました。彼の講演が始まるや、退場者続出。Roger Heinenにとっては針のむしろだったはず。こんな目にあっては、とうていMicrosoftで仕事は続けられまいと観客の私は思ったものです。案の定、Roger Heinenは引退したままで、本書の為のインタビューにも対応していません。なぜ突然辞任したのか、個人的には一番知りたい所だっただけに残念。

雑誌ワイアード日本語版98年3月号Vol.4.03で、早くもこの本の抄訳が紹介されています。
早川書房から98年5月に刊行されると「ワイアード日本語版98年4月号」にありました。

追記:98年9月に早川書房から「アップル」として翻訳がでています。英語版にはない17章が追加されています。
(98/9/28記)

Amazon.co.jpで、書評を読んだり、本を購入することが可能です。
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Burn Rate


Burn Rate

Micael Wolff著
Simon & Schuster
1998年
定価$25
ISBN0-684-84881-3

題名のバーンレートは、研究社ビジネス英和辞典によると、"(資本)燃焼率《新設企業がみずからの営業活動によるキャッシュフローが入り出す前に経費支弁のためにベンチャーキャピタルを消費する率》"とあります。

ジャーナリストが、Internet本(NetGuide)で成功して、コンテンツの会社Wolf New Mediaを作ります。ハイテクスタートアップ企業の常として、当初の運転資金集めに奔走します。

現代版ゴールドラッシュの狂乱の中、どのように会社を公開して大金を得ようかと、大企業と交渉を進めます。有名人となった彼は、あちこちのセミナーで講演し、資金集めのための催しで、会社の売りこみをはかりますが...。(ねずみ講というか、バブルというか。)Wired、Time Magazine、CMP、Amertech、Washington Post等との関わり合い、交渉の様子を赤裸々に書いています。

結局はインターネットは電話と同じ通信インフラにすぎず、メディアではないのではないか、という認識に至ります。そこで、もともとのジャーナリストに戻ることになります。

ところで、AOLの実態は、CB無線、つまりチャット、しかもSEX関係がメインなのだ、というのにはびっくり。(某大手パソコン通信に加入していても、チャットというのが、どうも訳がわからず、結局メール以外使わなくなった私も、なんとなく想像がつく気がします。)

Microsoftすらも結局同じ失敗の道をたどる、というのが著者の意見です。彼らも自分がしてきたのと同じ失敗をたどる、と言えるのは、実体験したからこそ言えるのだと。

The First Twenty Million is Always the Hardestの著者、Po Bronsonが裏表紙に、推薦?の宣伝文句を書いています。真実は小説より...ということでしょう。雑誌、本、新聞、テレビといった旧来のメディアとインターネットの関係に興味をお持ちのかたには、ヒントの山の本かも知れません。
本のフォローアップとして、burnrate.comというサイトがあります。

(1998.7.12記)

今日本屋さんを覗いたら、徳間書店から、「回転資金」という題名で、この本の邦訳がでていました。

(1999.2.25記)


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Business Widsom of the Electronic Elite


Electronic Elite

Geoffrey James著
Times Business(Random House)刊
1996年
定価$25
ISBN0-8129-6379-2


1996年秋、San Francisco Seybold Seminar & Conferenceの書店で、著者サイン会をしていました。表紙裏をみると、まさにそのSeybold Seminarの創始者、ジョナサン・シーボルト氏も推薦の言葉を書いているのです。好奇心にかられ、著者がいなくなってからこっそり購入。(署名は入っていました。)帰路読み始めたところ止まら(=寝られ)なくなりました。
題名の通り、アメリカの代表的な今をときめくハイテク企業の幹部の言葉を通して、ハイテク企業の風土、経営方針をまとめたもので、日本とは違う、かなうわけがないと納得。今流行のディルバートの漫画まで入っています。
たとえば第8章は、企業が該当する産業分野、その企業体質、自分自身、そして自分の影響力について、どれほど情報社会の波に洗われているか、用意ができているかを採点し、個人的にどうすればよいのかを考える通信簿になっています。どんな自己採点結果になったかはちょっと公開では書けませんけれど、なかなかするどいツールです。
第10章は電子メールの活用の勧めですが、電子メールを導入すれば自動的に成功するわけではないと、全社的に電子メールを活用しながら没落していった会社を具体的にあげて説明しています。

文字通り、面白くためになる読みやすい本だと思います。
(1997.4.14記)

日経BP社から、『生かし合う企業 vs 殺し合う企業』今日は競争し明日は手をつなぐ論理、という書名、仁平和夫訳で 、97/9/12に刊行されました。
1600円(1997.10.11記)

Amazon.co.jpで購入することが可能です。
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Fumbling the Future


How Xerox Invented Then Ignored, the First Personal Computer

Fumbling the Future Douglas K. Smith, Robert C. Alexander共著
William Morrow and Company, Inc.(オリジナル版)
復刊版刊行はtoExcel1
1988年刊(復刊は1999/5)
定価$18.95(当時も今も)
274ページ
(ISBN0-688-06959-2 当時)
ペーパーバック版はISBN1583482660

長いこと絶版でしたが、同じPARCの開発をテーマにしたThe Dealers of Ligtningの刊行に刺激されてか、出版社を変え、ようやく復刊となりました。

この分野の本としては非常に古いものです。実際に読んだのは1989/2/18。前年シカゴのComdex見学に出かけたおりに書店で見つけたものでした。XeroxのStarの素晴しさに感動していても個人購入は不可能、1987年にようやくMacintosh SEを買ったばかりの身、副題に誘われたのです。「とりこぼした未来」、あるいは「つかみそこねた未来」ということでしょうか。期待に違わない素晴しい内容の本で、コンピューター産業のすごさの核心をかいま見たような気になりました。とはいえあまり古い本ゆえ忘却のかなたに消えてしまうはずでした。ところが最近出版されている多くのコンピューター関係の本に参考書として載っているのです。例えば、

といったものの巻末に、参考書としてこの本があがっています。 (その一方、しばらく原書は絶版、入手困難だったというわけで)ごく簡単にご紹介しておきます。
コマーシャル、マーケティング(情報のアーキテクチャー)、リサーチ(Alto創造)、ファイナンス(Alto却下)マーケティング(コピアーの再評価)、リサーチ(孤独な収穫)の6章構成で、Xeroxはなぜ世界最初のパソコンを開発しながらも、コピーのメーカーという評価しか得ていないのかという内幕を説明しています。最初のコマーシャルの章は、三問のクイズで始まります。

  1. 一番長く続いたパソコンのテレビコマーシャルシリーズはどこの会社のものか?
  2. 一番創造的なパソコンのテレビコマーシャルは?
  3. 一番最初のパソコンのテレビコマーシャルは?
    というのです。

もちろん、最初の答えはチャプリンのIBM、二番目の答えは、1984のスーパーボールの合間に流されたAppleの有名なコマーシャルです。そして、たいていの人が間違える最後の問題の答、実はXeroxなのです。 Altoパソコンの、アイコンによる分かりやすいGUI、ワープロソフト、イーサネット、ページ記述言語搭載のレーザープリンタといった画期的な技術を1979年に現実化しながらも、ゼロックスはAltoのマーケティングを推進しないことを決断します。真実は小説よりも奇なり。革新的な技術者と、そろばん勘定が得意な保守的な経営者との軋轢の記述については、上記のOrganizing Geniusも本書を参照しています。Business Widsom of the Electronic Eliteとは対極の経営者像です。完成していない製品を、薄氷を踏む思いで展示会でデモをする光景も、人ごととは思えません。読みながらあちこちでため息がでました。日本語翻訳が出なかったのがつくづく残念。今の日本企業は、当時のXeroxの経営にも及ばない実態というのも悲観的すぎるとは言えないような気がします。

エピローグは圧巻。登場人物の1988年1月現在の所在リストで、下記はその一部

アメリカのコンピューター産業隆盛の源流は、Altoを開発したこのXerox PARCにあることがよくわかります。

(1997.7.21記 )

Amazon.co.jpで購入することができます。

まったく同じ話題を扱った本Dealers of Lightningが1999/4に出版されました。

(1999.5.3追記 )

とうとう翻訳が刊行されました。

「取り逃がした未来」世界初のパソコン発明をふいにしたゼロックスの物語
ダグラス・K・スミス+ロバート・C・アレキサンダー著 山崎賢治訳
ISBN 4-535-55435-8
2415円
日本評論社
2005年1月17日発売 原書刊行から17年! それでも色褪せない名著。

(2005.1.14追記 )


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Net Gain


Net Gain coverJohn Hagel III、Arthur G. Armstrong共著
Harvard Business School Press 刊
$24.95
ISBN 0-87584-759-5

マッキンゼー社のコンサルタントの二人が書いたもの。
Hagelは、シリコンバレー駐在。
Armstrongは、ニューヨーク本社。

インターネット上での事業展開方法についての考察。
Webサイトを開設して、短期間で収入をあげるというのは困難であることを、マイクロソフトですら立ち上がるまでには時間がかかったと、新技術の立ち上がりの例をいくつもあげています。
いきなり儲けるというのではなく、戦略的に段階をおってすすめる具体的な方法を説明します。

Seybold San Francisco 97のセミナーで、人気サイトGeocitiesの社長の説明を聞いていたところ、本書の戦略によく似た図を使って話をする部分がありました。「これはNet Gainの図によく似ているが、私のオリジナルだ。」という話を聞いて感心。 このGeocities、これはなかなか画期的な発想と思ってセミナーから帰った翌朝、日本版Geocitiesたちあげの記事が日本の新聞に掲載されてました。電撃的。
Webサイトで実際にビジネス展開をしようという方には、参考になると思います。
(1997.10.19 記)

日経BP社から、『ネットで儲けろ』ネットゲインという名前で訳が出ています。
(1997.11.17 記)


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On the Firing Line


On the Firing Line Gil Amerio、William L. Simon著
Harper Business
1998年
定価$25
ISBN0-88730-918-6

My 500 days at Appleという副題。

CEO在任時代の500日間の経緯を語ったものですが、少し前にでた、Jim CartonのAppleと併せて読むと「藪の中」。

「シェークスピア作品のような物語ですが、悲劇か喜劇かは、読者自身が判断されることです。」というのですけれど。最後で、本人は、悲劇でも喜劇でもなく、ロマンスだといっています。冒険小説ということなのでしょうか。

章の題は、シェークスピア作品にかけているようです。第一章は「冬物語り」、第四章は「大あらし」と「Brave New World」(登場人物のせりふと、ハクスリーの素晴らしい新世界をかけているのでしょうか)第五章は「冬物語り」、第十一章は最後の審判(マクベスから)そして第十三章が「To Be or not to Be」Soralis、Next、Beどれを後継OSに選択するかという話の題名としては絶妙! 第十四章は「空騒ぎ」

Steve JobsやJean-Louis Gasseeについては、いずれも厳しい書き方をしています。魑魅魍魎の世界? Jim Cartonについても、よくは書いていません。
お勧めといっても、あまり楽しく読める本ではないようです。(スカリーが好調の時に書いたOdysseyを読んだ頃は、未来はもっと明るくなるように思えたものでした。)

8月にソフトバンクから日本語訳「アップル薄氷の500日」が刊行されました。ISBN4-7973-0615-7 2400円
(1998/8/5追記)

Amazon.co.jpで購入することが可能です。
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Where Wizards stay up late


Where Wizards stay up late

Katie hafner & Mattew Lyon著
Simon & Shuster刊
1996年
定価$24
ISBN0-684-81201-0


副題はThe Origin of the Internet
1994年9月、 ARPANET25周年を祝うべく各地から中年、熟年の男性たちがボストンに集まってくるところから始まります。また、インターネットの母胎となったARPANETは、アメリカの戦略として、核攻撃にも耐えうる べく開発された、というふうに理解されているが、それは主要マスコミによって流布された誤解だとあります。 Timesにそうした主旨の記事が掲載された時に、その主役の一人ボブ・テーラが、誤りをただすべく編集者あてに投書をしたにもかかわらず、それは受け入れられませんでした。実際の歴史は、本書のなかで詳細に語られています。
一章で、実験心理学者のリックライダーが、なぜ国防総省で働くようになるかという経緯がわかります。就任初日、あっという間に、膨大な研究予算が獲得できてしまう光景描写があります。
たしかにポール・バランが、戦略上、攻撃にもろい中央集権的な電話網のかわりに、分散処理によるデジタルネットワークの必要性を言い出し、執拗にその設置を主張したのは事実であっても、この案は長いことお蔵入りになっていたのです。AT&Tを説得しょうと試み ますが、それ以前に自分の勤務先RANDの同僚の説得すら困難なことに気がつくのです。AT&Tは、バランは、そもそも電話システムについておよそ何もわかっていないという結論をだすにいたります。これだけバランが無知であれば教育してやるしかないのだと。 五年ほど頑固に活動したバランも、ついには静観状態にいたります。その直後1965年の秋にイギリスでドナルド・デービスが、ほぼ同じアイデアを生み出します。バランが、戦略上から発想したのに対して、デービスの場合、戦略とは全く無関係でした。先に発想したのはバランでも、Packet Switchingという用語はデービスのものです。
主要大学のコンピュータを接続するため、その処理専用の装置として別途interface message processos(IMP)を作り出すというアイデアが生まれ、この装置購入の競争入札が実施されます。 ボブ・テーラは、1967年に始めてポール・バランと出会います。それ以降、バランは非公式なコンサルタントのような役割を果たします。それまでボブ・テーラの頭には、核戦略というシナリオはありませんでした。競争入札用の資料は146 社に送られ、てっきり大手軍需産業のレイセオンが受注するかに思えたところに、突如マサチューセッツの小さなコンサル会社Bolt Beranek and Newman 社(BBN )が落札します。 このニュースを知った議員エドワード・ケネディは、Interfaith Message Processorの受注を祝う電報を送ります。精鋭たちによる綿密な提案書作成によって受注した同社では、 無理な日程の中を、題名通り天才たち(IMP guys)が夜を徹してハード、ソフトの開発にかかります。
五章では、ビント・サーフも登場。ネットワークプロトコルを取り決める方法としてRFCの第一号が、1969.4.7に発行されます。 1969.10.1 スケジュール通り、IMP 第二号がSRIに到着。第一号が入ったUCLAとの間で、始めて実際のコンピュータ間の通信が実験されます。 1971年秋ICCCの催しとして、ワシントンのヒルトンホテルで、運用デモが公開され、Packet Switchingの実用性が認識されるようになります。Ethernetは、インターネット拡大の上で、大いに貢献したわけですが、これが開発された経緯部分についてはFumbling the Futureにかなり依拠しています。(原理のたとえには、そのままの引用もあります。)以下E-mail, newsgroupなどが次々に開発されてゆきます。
IMPを開発したBBNが、インターネットルータービジネスにでそこねたというのは大きな皮肉ですが、開発者のなかには、ぜひ進出すべきだという声をあげた人もいたのに、営業、マーケティング部隊が、ありえないとしてつぶしたのです。これも、Fumbling the Futureを想起させます。低落傾向の事業にたいする起死回生策として、BBNが主催したこの1994年9月の記念パーティの記述で終わります。元社長スティーブ・レビーの挨拶が本質をついています。いわく、優れたリーダーシップと、十分な資源と、余りに多くのプロジェクトが影響を被る愚劣な官僚主義を回避できれは、素晴らしいことが短期間になしとげられるという例です。
出席者にだれがいたかも重要だが、出席していない人はだれかも重要だとあります。ビル・ゲーツは招待されながら断ったのだそうです。そして、ティム・バーナーズ・リーも、マーク・アンドリーセンも、インターネットの基本構造を作ったわけではないということからでしょうか、招待されていません。何よりも驚くことに、核戦争に耐えるシステムを発想した本人、バランが招待されていません。本書は、インターネットの出生にまつわる暗い噂を消すためにかかれたのではないかという、せこい疑念が消えないのは私の人格が悪いのでしょう。
(1997.8.16)

晶文社から刊行された、浜野保樹教授の『極端に短いインターネットの歴史』の後書きにも、優れた参考書として、この本があげられています。
(1997.11.17)

うかつで気がつかずにいましたが、アスキーから2000年の夏邦訳が出ています。三年待ちました。

(2000.12.12追記)

Amazon.co.jpで購入することが可能です。


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Webonomics


webonomics Evan I. Schwartz著
Broadway Books刊
1997年刊
定価$25.00
244ページ

ISBN0-553-06172-0

1996年2月号のWiredに載せた記事、「Advertizing Webonomics 101」が好評だったので、それを核にして拡張したという本だそうです。広告業界からは、あまり強烈すぎるという苦言もあったようです。多くのインタビューにもとづいた議論ゆえ、業界に不利な記述があっても、反論はしにくいでしょう。
具体的な成功、失敗実例満載、ともかく仕事でWebに関与している場合、気になる話題の連続。クレジットカード以外の支払いシステムはうまく行かない。マイクロペイメントなど成立しない。といった大胆な断定にも、なるほどと納得する説明があります。
拙訳を引き合いに出すのは恐縮ですが、「成功する為のインターネットビジネスバイブル」や、「Webマスターバイブル」(いずれもソフトバンク刊)を思い出しながら読みました。特に後者は、Fedex、Amazon.comその他、とりあげられているサイトがかなり重複しています。とはいえ、視点はかなり違うので、両方読んでも決して無駄にはなりません。Windowsや、Mac OSのように、こうしたビジネス書も、世界同時発売になる日を期待したいものです。ところで、183-185ページの項は、Language is a virus。グーテンベルクの印刷機の発明によって、書物といえばラテン語だけという世界が様変りして、さまざまな世俗の言語の本が普及したのと同様のことが起きるだろうとあります。
つい「多言語主義とは何か」にある西垣教授の懸念を連想します。ニール・スチーブンソンのSnow Crashにも、言語はビールスだ、というような言葉があったような記憶があります。著者による本書タイトル通りのホームページWebonomicsもどうぞ。
(1997.5.28記 )

1998/6に翻訳が出ています。


(1998.6.29記 )

Amazon.co.jpで購入することができます。


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