『アスカ・・・・あのときの事、覚えてる? ねえ、アスカ・・』




僕の隣にはアスカがいる。

僕の胸に顔を寄せて、アスカがいる。



『ほら、あの日の事・・・』



この話をすると、アスカはいつも照れ隠しにそっぽを向くんだ。

ほら、今日もそう。アスカ、寝たふりなんてしてたって駄目だよ。ねえ、アスカ・・・







































あの日、朝からアスカはちょっと変だったよね。

だって、いつもなら起こさないと起きてこないのに、その日は僕よりも早く起きてたんだもん。

『あれ、早いんだ、なんかあったの?』

って僕が聞いたらアスカは

「あたしが早く起きるのがそんなに珍しい?」

って口をとがらせてたよね。

でもその後、朝ご飯の片づけまで手伝ってくれた。

今だから言うけど、僕はあのときちょっと怖かったんだ。

だって・・・・ねえ。あのときのアスカがそんな事するなんて、なにか企んでるんじゃないかなって。

ああ、アスカ、怒らないでよ。





そのあと学校に行くときも、ちょっとアスカは変だったよね。

いつもみたいにぺらぺら喋らなくて、考え込んだりしてた。

『アスカ、どうかしたの?風邪でもひいた?』

って僕が熱を見ようとしたらアスカは

「平気よ!」

ってまた怒ったよね。

僕はそれを聞いて、大丈夫だなって思ったんだ。そのときは。





学校に行ってからもなんかソワソワして、委員長とヒソヒソ話ばかりしてた。

僕が近くに行くと

「アンタはあっちに行ってなさい!」

って怒鳴られたっけ。

あのときは、ちょっと寂しかったんだよ。アスカ。





その日は用事もなかったから、学校が終わってからまっすぐ家に帰るつもりだったんだ。

『アスカ、帰ろう』

って言ったらアスカは

「たまには一人で帰りなさい!」

ってあっさり言ったじゃない?

僕はあのとき、また何かアスカを怒らせちゃったかなって真剣に悩んだんだよ。ほんとに。

『アスカ・・・』

って僕が言おうとしたら

「もう、早く帰りなさいったら帰りなさい!」

ってまた怒られちゃったよね。

仕方がないから、僕はトボトボ一人で帰ったんだ。

あの帰り道は長かったなぁ。

なかなか家に辿り着かないんだもんね。

アスカと一緒ならあっという間なのにね。

僕はあのとき初めて、アスカがいる事が僕にとって大事な事なんだって解った気がしたんだ。

だから余計に、寂しくなった。


アスカが隣にいなかったから。





その日、アスカはなかなか帰ってこなかった。

8時を過ぎても、帰ってこなかった。

ミサトさんは暫くネルフに泊る事になってたから、僕はずっと一人でアスカの帰りを待ってたんだ。

あ、ペンペンもいたっけ。

でもあの日はペンペンもずっと寝てたなぁ。

だから僕はつまらないテレビなんか見ながら、アスカの帰ってくるのをずっと待ってたんだ。

『なにやってんだよ・・・すっかり冷めちゃったじゃないか・・・』

ってブツブツ言ってた頃、やっとアスカが帰ってきたんだよね。

僕は文句の一つも言ってやろうと思って、玄関に走ったんだ。


でも、僕は何も言えなかった。


なぜって?




だって、アスカはそのとき、すごく奇麗な顔をしてたから・・・・




だから僕は怒るのも忘れて、アスカの顔をじっと見詰めちゃったんだ。

でもアスカはそんな僕には気付かない様子で、悪びれもせずに

「ごめ〜ん、遅くなっちゃった」

って笑ってたよね。

僕はあの時のアスカの顔を見て、すっかり怒る気にならなくなっちゃって、何故かニコニコ笑っちゃったんだ。

何故かって?



さあね・・・



とにかく僕は、アスカの笑顔が見られて嬉しくなっちゃたんだよね。あのときは。

もう、それだけで全部許せちゃったんだ。



でも・・・それだけじゃなかった。



アスカってずるいよね。

完全に不意打ちだよ、そんなの。反則だよ。

アスカは後ろに隠してた箱を僕に差し出して、こう言ったんだ。



「ハッピバースデー、シンジ!!!」



って。



僕は何も言えなかった。

まさか僕の誕生日をアスカが知ってたなんて・・・夢にも思わなかったから。


僕が惚けてるとアスカは

「ケーキだから一緒に食べよ!!」

って極上の笑顔で僕に言うんだもんな。

ずるいよ、アスカは。

ほんとにずるいよ・・・・





夕ご飯をちょっと暖め直して食べて、それからお茶を入れていよいよケーキ。

僕が箱を開けようとしたとき、アスカはちょっとだけ恥ずかしそうにしてたっけ。

僕は『?』って思ったんだけど、そのまま開けた。


そしたら・・・


クリームと苺がたっぷりのった、ちょっと可愛いデコレーションケーキが出てきたんだ。

そしてクリームの上には「Happy Birthday Shinji!」ってチョコレートで書いてあった。


それだけでも嬉しかったのに・・・


でも、それだけじゃなかったんだ。



僕はてっきりお店で買ってきたんだと思ってたんだけど、ちょっと違う。

ほら、お店で買ったやつってお店のロゴが入ったセロファンみたいなのがくっついてるじゃない?

それがなかった。

そして良く見ると、ちょっとだけ不格好だったりしてたんだ。



『これ、もしかして・・・・・アスカが作ったの・・・・?』



僕は何故か、恐る恐る聞いちゃった。

そしたらアスカは、



「・・・・そうよ」



とだけ言って、そっぽを向いちゃったよね。


僕は何も言えなくなった。

まさかアスカが、僕にケーキを焼いてくれただなんて、信じられなかったんだ。


僕は・・・・涙が出てきた。


嬉しいときにも涙って、出るんだよね。



その僕を見てアスカは


「な〜に?そんなに感動したの?」


ってケラケラ笑った。


僕はそれがまた嬉しくって、また涙が出てきたんだ。

本当に、本当に嬉しかったんだよ、アスカ。


あの時のケーキの味は、一生忘れられない。絶対に。



だって、アスカが初めて僕にくれたプレゼントだもんね。






・・・思えばあのとき以来、僕はアスカに捕まっちゃったのかもしれないね。









やっぱりずるいよ、アスカは。







































ほら、アスカ、なに寝たふりしてるんだよ。


ねえ、アスカ・・・




・・・今日は僕の誕生日。


そして、もうひとつの記念日にもなったんだ。


えっ、何の記念日かって?


それはね・・・・









アスカの薬指を見れば解るよ・・・・
















・・ほら。僕があげたダイヤが光ってる。

























アスカ・・・・ありがとう・・・



















僕は本当に幸せだ。
















アスカと出会えて、幸せだ。













アスカと暮らせて、幸せだ。













アスカ・・・・ありがとう・・・・














アスカ・・・・























あっ













んくっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






























はぁ・・・・・・・




































アスカぁ、また不意打ちしたね!










なに笑ってるんだよ!












やっぱりアスカはずるいよ・・



































惣流アスカラングレー






僕の大事な人。






初めて会ったのは、船の上だったね。






オーバー・ザ・レインボー






今想うと、アスカにぴったりの名前だったね。






やっぱり、運命だったのかな。






ねえ?アスカ。






ね、アスカ?




















アスカ・・・・



















・・大好きだよ・・・・







































6月6日






今日は僕の誕生日













そして













僕とアスカの

















Anniversary――――































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