「んっ・・・・・」





いつのまにか眠ってたわね。





シンジの胸の中にいたんだからしょうがないかな。





シンジの心臓の音が聞こえる・・・気持ちいい・・・もう少しこうしていよう。










「プレゼント」


Anniversary


Asuka’s heart














『アスカ・・・・あのときの事、覚えてる? ねえ、アスカ・・』





あのとき?シンジとの思い出なんて、数え切れないほどあるわよ・・・

でもシンジがあのときの事って言うと、決まってあの話なのよね。





『ほら、あの日の事・・・』





またあの話するの?もう・・・聞くたびに恥ずかしくなるのよ・・・知らない!





そう言って聞かないフリしてたけど・・・自分でも思い出したわ。





そう、二人にとって忘れられないあのときの事・・・・













































その日は前の夜から眠れなかったの、変に緊張してたのよね。

いつものアタシらしくなかったわ。





結局じっとしてられなくて、

早めにベットから起き上がってシャワー浴びたの。





シャワーからあがったら、シンジがアタシ見てびっくりしてた。





『あれ、早いんだ、なんかあったの?』って、

シンジが言うから、ちょっとムッとして、





「私が早く起きるのがそんなに珍しい?」って怒っちゃった。





まったく、誰のせいで眠れなかったと思ってるのよ。





朝ご飯食べた後、片づけを手伝ってあげたの。そしたらシンジが、





『今日はめずらしいね、何かいい事でもあったの?』って。





「そりゃあ・・・いや、何でもないの!いいじゃない、たまには。」





ついばらしちゃうところだったわ、だったらいつも通りにしてれば

よかったんだけど、





今日は特別な日だからね。





学校に行く途中もずっと考え事してたわ。

作るのはケーキって決まってたんだけど、どんなケーキにするか

迷ってたのよね。チョコレートケーキがいいかしら、それとも

意表を突いてチーズケーキにするとか。アイスケーキなんかも面白そうね。



でも問題はちゃんと作れるかどうかなのよね、

ヒカリが手伝ってくれるから大丈夫だと思うけど、

はじめてなのよねケーキ作るの。頭痛いわ。





『アスカ、どうかしたの?風邪でも引いた?』





シンジがあたしの様子がいつもと違ったから声をかけたんだけど、

余計なお世話って思って、





「平気よ!」





って、また怒っちゃった。今日はけんかしたくないのにな。





学校では休み時間のたびにヒカリと今日の事で話し合ってたの。





「なににするか決めた?アスカ。」





「うん、いろいろ考えたんだけど苺のショートケーキにしようかとおもって。」





「いいわよ、じゃあ帰りに材料買って家で作りましょう。」





「うん!」





『二人でなに話してるの?』





「アンタはあっちに行ってなさい!」





あぶなかったわ。なんでいちいちかかわってくるのよ。

三バカの二人と遊んでればいいのに。





学校も終わってヒカリと買い物に行こうとしたら、またシンジが、





『アスカ、帰ろう』





「たまには一人で帰りなさい!」





『なんだよそれ!今日のアスカ変だよ。』





「うるさいわね。私は忙しいの!」





『どうして?今日は何もないはずだけど?』





「うっ・・・うるさいわね!もう、早く帰りなさいったら帰りなさい!」





『わ、わかったよ・・・』





シンジはがっかりして帰っていった。

ごめんね・・・でもシンジのためなんだからね。





ヒカリと一緒に材料を買ってヒカリのうちに向かってたの、その時にヒカリが、





「碇君ちょっと元気なさそうだったわね。」





「うん、でもしょうがないじゃない。

私だって一緒に帰りたいけど、今日はしなきゃいけない事があるんだから。」





「そうね。だけど碇君、アスカが自分の誕生日のために、

何かしてるってわかったかもよ。」





「それはないわね、シンジは鈍感すぎるから。」





「そうかもね。でもケーキあげたらアスカが碇君の事、

好きだってわかってくれるかもね。」





「ちょ、ちょっとなにもあたしはシンジの事好きであげるわけじゃないわよ!

どうせ誰も祝ってくれないだろうから、私が義理であげるのよ。」





「じゃあ何?私はアスカの義理のために手伝わされるの!?」





ヒカリが怒った顔で私を見てる。ど、どうして?





「どうしたのよ?ヒカリ・・・」





「私は碇君が喜ぶだろうから、手伝ってあげようと思ったのよ。

でもそんないいかげんな気持ちでアスカは作るのね。

アスカがそんな人だとは思わなかったわ、もう知らない!」





ヒカリが私をおいていってしまう。

私はすぐに後を追いかけてヒカリを呼び止めた。





「ちょっ、ちょっと待ってよヒカリ!・・・ごめん・・・いまの嘘なの・・・

シンジのこと・・・好きだから・・・あげるの。」





「・・・・やっと正直になってくれたわね、アスカ。」





ヒカリが今度は満面の笑みを私に見せた。





「ヒカリ・・・もしかしてさっきの・・・」





「嘘よ、わざと怒ったの、アスカの本当の気持ち聞きたかったから。」





私は言ってしまった言葉に真っ赤になりながらヒカリに怒った。





「だましたのね!?私、びっくりしたんだから!」





「ごめんね、アスカ。でも聞いて、私アスカの本当の親友になりたいの。

確かにアスカは私にいろんな話してくれるし、相談にも乗ってくれたわ。

でも、碇君の事になると、アスカは私にも正直になってくれなかった。

アスカを見てれば、碇君が好きだって事ぐらいわかるわ。

でも私には、言葉で伝えて欲しかったの。

アスカがその事で悩んでたら助けてあげたかったの。

だから、今日の事アスカが私に相談しに来たとき、とてもうれしかったの。

でもアスカが義理だなんて言うから、私さみしくなってあんな事言ったの、

ごめんね。」





「ヒカリ・・・」





「アスカ、何でも一人で考えないで私にも言ってきて。

一人じゃわからない事もあるんだから、

まあ、私では頼りないかもしれないけど、

でもアスカのために一緒に悩む事はできるわ。

一人よりも二人で悩んだほうが、辛い事も半分ですむでしょ。

愚痴でもいいのよ。

いやな事があってイライラしてたら、アタシにぶつけたっていいわ。

それでアスカがすっきりするなら、私はかまわないもの。

何でも言ってきて。アスカは私の大切な友達なんだから。」





「ヒカリ!」





ヒカリの言葉を聞いて私涙があふれてきた。

これほどまでに私の事考えてくれる人がいる。

これほどまでに私の事思ってくれる人がいる。

気づかなかった、こんな近くにいてくれてたなんて。

私は荷物をほうり投げてヒカリに抱きついた。





「ア、アスカ・・・」





「ごめんね・・・ごめんねヒカリ、私にとってもヒカリは大切な友達よ。

だからヒカリには何でも話してきたつもりだった。でもシンジの

事になると私駄目だったの。なんだかいつもの自分でいられなくて、

そんな自分が恥ずかしくて誰にも言えなかったの。

でもヒカリがそんなに心配してるなら、私言うわ。ううん、これはヒカリ

だから、私の本当の気持ち打ち明けるね。

私、シンジの事好き。どうしようもなく好きなの。でも不安なの、

シンジが私の事どう思っているのか。

私、シンジに辛く当たるところがあるから、

シンジ、私の事嫌いなのかもしれないって思う事があるの。

本当はこの気持ち伝えたいのに、

でもまだ自信がないから、プレゼントにしようと思ったの。

だからこのプレゼントには、私のありったけの気持ちを入れるの、

この気持ちがシンジに届くように・・・ヒカリ、助けてくれる?」





私がそういうとヒカリは私の背中に手を回した。





「わかったわ、料理は私の得意分野だからまかせて。二人で頑張れば、

アスカの気持ち絶対碇君に届くと思う。ありがとうアスカ、

言ってくれて嬉しかった。」





私が体を離してヒカリの顔を見たら、ヒカリも泣いていた。





「ヒカリ・・・ありがとう。」





「アスカも・・・ありがとう。さっ私の家に行きましょう。

早く作らないと碇君の誕生日が終わっちゃうわよ。」





「うん、いこっ!」





私達二人は手をつないでヒカリの家まで行った。これでヒカリとは

本当の親友になれたのよね、これもシンジのおかげかな。





ヒカリのうちに着いたらさっそくケーキ作りにとりかかったの。

ヒカリに教えてもらってなるべく自分で作るようにはしたけど、

難しいところや時間のかかりそうなところはいっしょにしたの。

さすがにヒカリは手際がよかった。毎日自分でお弁当作ってるだけの事は

あるわね。ヒカリが、アスカもお弁当自分で作ったらって言ったけど。

うーんいつかね。今はシンジのお弁当があるから。

スポンジケーキにクリームを塗って、簡単なデコレーションをした。

これが難しかったのよね。でもここはヒカリの力を借りずに、

全部自分でやったの。この苦労がシンジにわかってもらえるかしら。





まわりに苺を乗せて、真ん中にチョコでメッセージ。

シンジはドイツ語わからないし、しょうがないから英語で、





Happy Birthday Shinji!





って書いて完成!慎重に箱につめてリボンで結んだ。





できた。私がシンジに贈る初めてのプレゼント。そしてこのプレゼントには、

私の本当の気持ちがつまっている。そう思うだけで胸から熱いものが

こみあげてきた。





「ヒカリ、ありがとう・・・ヒカリのおかげよ、ここまで出来たのは。」





「ちがうわ、アスカが頑張ったのよ。私はちょっと手伝っただけ、

さあ早く碇君に持っていって。もうこんな時間よ。」





「本当?じゃあ帰るね。」





「家まで送るわよ、あぶないから。」





「平気よ、ありがとうヒカリ。これからもずっと親友でいようね。」





「うん、ずっとよ。」





「今度は私がヒカリと鈴原の仲取り持ってあげるわ。」





「い、いいわよ。そんなの・・・」





「正直になりなさい!」





「・・・・・うん。ありがとう、アスカ。」





「じゃあまた明日ね、バイバイ。」





「また明日ね、ケーキ気をつけるのよ。」





「わかってる!」





私はヒカリの家を出ると、急いで家に帰った。

ケーキがあったから走るわけにはいかなかったけど。

それでもいそいで帰ってきたの。そしてうちに着いたとき、

鏡を取り出して自分の顔をチェックした。

涙の跡も吹いたし、髪も整えた。鏡の中の自分の顔は、

今まで見た事も無いくらいに微笑んでる。

嬉しいのね、アスカ。この笑顔でシンジに思いを伝えるのよ。

大丈夫、アスカなら・・・大丈夫。





いくわよ!アスカ。





ケーキを後ろに隠したままドアを開けて、私は元気に言った。





「ただいまーーシンジ!」





シンジが奥から走ってやってきた。私の事待ってたのかしら。





「ごめ〜ん、遅くなっちゃった」





『う、うん・・・おかえり、アスカ』





よかった、シンジ怒ってなさそうね。なぜか機嫌よさそうだし、

私は隠してた箱をシンジに差し出して言った。





「ハッピバースデー、シンジ!!!」





『・・・・・・・・・・・えっ? 』





「ケーキだから一緒に食べよ!!」





あのときの私はシンジにプレゼントする事の嬉しさでいっぱいだった。

シンジったらボーッとしてるけど、わかってるのかしら。





夕ご飯がもう用意してあったから、まずそれから食べていよいよケーキ。





『じゃあ開けるよ、アスカ。』





「・・・うん・・・」





シンジがケーキの箱を置けようとしてる。なんか恥ずかしいわね。





箱を開けるとケーキはやっぱりちょっと不格好。どうかしら?シンジ。





『これ、もしかして・・・・・アスカが作ったの・・・・?』





「・・・・そうよ」





そう言って私はそっぽ向いた。もう、言わせないでよね。

恥ずかしいんだから。





ちらっとシンジを見たらいつのまにか泣いていたの。





「な〜に?そんなに感動したの?」





私思わず笑っちゃった。だって男がこんなことで泣くのって珍しいじゃない。





『なんだよ、アスカ。いいじゃないか泣いたって。』





「ごめんごめん、あんまりおかしかったものだから。アハハ」





『もう、・・・・・・・・・・・ありがとう、アスカ。』





「えっ?い、いいのよお礼なんて、シンジの誕生日なんだから。

それよりも早く食べよう。」





『そうだね、ちょっと待ってて、ナイフ持ってくるから。』





シンジが台所からナイフを持ってきて、いよいよ切ろうとしたその時





「ちょっと待って!」





『どうかしたの?アスカ。』





「私にも切らせて。」





『いいよ、はい。』





シンジがナイフを私に渡そうとした。





「いや、そうじゃなくてね。」





私はシンジの側まで寄ってきて。ナイフを持ってるシンジの手の上に

私の手を重ねたの。





『ア、アスカ。』





「こうすればいっしょに切れるじゃない。」





『いや・・・でもこれって。』





シンジの顔が真っ赤になってる。





「なに?」





『結婚式みたいだなって・・・』





それ聞いて私の顔も真っ赤になった。そういえばそうね。

しばらく二人とも黙ってたけど、しっかり手だけはつないでた。





「べ、別にいいじゃないこういうのも。」





『そ、そうだね・・・じゃあいくよ。』





「うん」





そしてシンジと私は二人でナイフを持ってケーキを切った。







































何度思い出しても恥ずかしいわね。でもとてもいい思い出だわ。





今日はシンジの誕生日。





そして、もう一つの記念日にもなったのよね。





私の左手にはその証が輝いている。





シンジがくれたこのプレゼントには、シンジの気持ちが詰まってるのよね。





シンジ・・・・ありがとう。





シンジは自分だけの記念日に、私の記念日も入れてくれたのよね。





でもシンジの誕生日は、私にとっても大切な記念日なのよ。





それに、女の子って記念日は多いほうが嬉しいのに・・・・・





でもいいわ。それがシンジのやさしさって事わかってるから。





嬉しかったわ、シンジ!





私を見ているシンジにいきなりキスしてやった。





シンジったら顔真っ赤にして怒ってる、ほんとは嬉しいくせに、

おかしいったら無いわ。


























碇シンジ





私の大切な人





初めて会ったのは、そう、船の上ね。





最初のシンジの印象は、





冴えなくて、スケベな男!





それが今は誰よりも素敵な男になったわ。





シンジ・・・





・・・愛してるわ・・・































6月6日





今日はシンジの誕生日





そして





シンジと私の





Anniversary――――











I present Takeo with this story.


by yukiura











takeoのコメント

まずは、こんなに素晴らしいお話を頂きまして、本当にありがとうございました。
このお話は、私が30000hitの記念に書いた「Anniversary」がベースになっています。
わたしの「Anniversary」はシンジから見たお話だったんですが、それをアスカの視点で見直したものが、この

   『プレゼント 〜 Anniversary Asuka's heart』

です。
こういう物は、ホントに嬉しいですね。

しかも、はっきり言って私が書いた物より数段いいお話になってます。
ヒカリとアスカの絡み、アスカの女の子らしい仕種、そしてなによりケーキを二人で切るシーンは本当に素晴らしいと思います。


ゆきうらさん、本当にありがとうございました。


皆さん、ゆきうらさんへ、是非感想メールを!


ゆきうらさんへのメールは ゆきうらさん [yukiura@mb.infoweb.ne.jp]






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