「まあ、いいわ…しっかし、アスカも短気ねぇ…」

「…何で怒ったのかな…別に怒らせる様なこと…言ってないのに…」

「シンちゃんも罪な男ねぇ…ま、らしいけどね。」

そんなことを言ってみるが、ミサトの頭の中はキョウコがここに来たときのシミュレーションに走っていた。

ニヤリ。

結果が出たのか、ミサトは小悪魔的な笑みを浮かべていた。

 

アスカ・ついんず!

第二話 母は強い?

 

Rossignol 高橋

 

 

 

シンジは何を思ったのか、突然キッチンに立つ。

「明日の準備?相変わらずマメねぇ。」

ミサトは椅子の上に胡座をかき、大きな溜息をひとつ。

-ったく、そのマメなとこをすこーしだけでもアスカの為だよって、解る様にしたらいいのにねぇ…-

半ば呆れた様なミサト。あんたもちょっとは見習えよ。

「み、ミサトさん、デザート食べたくないですか?」

卵をボウルに割入れ、すさまじい勢いでかき混ぜながら尋ねるシンジ。

「それもいいわね…で、何作んの?」

「プリンですけど…。」

答えながらもシンジの手は止まらない。

「プリンねぇ…ま、いいんじゃなぁいのぉ、アスカが好きだしぃ。」

びくうっ!ボウルに牛乳を注ぐシンジの肩が揺れる。

-分かり易いったらありゃしないわ…ったく、アスカもシンちゃんを好きなんだったら-

-鈍いとこは我慢しなさいっての…一生懸命想ってくれてるのにねぇ-

ミサトはにんまりと笑っている。

「ち、違いますよ、た、ただ僕、何かもう一寸食べたいから…ですよ。」

明らかに動揺しているシンジ。顔はすでに真っ赤だ。

「へー、じゃあ、わたしがリクエストしてもいいのかなぁ?」

いい加減に止めればいいのに、ミサトはさらに罠を張る。

「え、あ…で、でももう作り掛けてるから…」

「いいじゃない、ミルクセーキよ、それって。そのままでも飲めるから。」

ますます動揺するシンジ。

「わったしはねぇ、ビアゼリーがいいなぁ…」←それしか知らんのか?

シンジの手は止まっていた。すでにプリンカップも用意していたのに…。

「ねぇ、シンちゃーん、別にアスカの為じゃないんならさぁ、わたしのリクエスト、聞いてくれるよねー。」

めちゃくちゃ楽しそうなミサトだが、シンジはふと気付く。

「だ、ダメですよ、僕が食べられないじゃないですか…」

完璧だっ、とシンジは思うが相手はミサト、ネルフ作戦部長の肩書きは伊達ではなかった。

「ふっふーん、いいの?そんなこと言って…」

「な、何でですか?僕、まだ十四歳なんですよ。」

「あーら、そうだったのぉ、ふーん。」

いやな予感がシンジの脳裏をよぎる。

「確か一週間ほど前だったかなー、わたしが泊まりの時に何故かビールが一本減ってたのよねー。」

びっくう!

-あれだけ飲んでもビールの数をちゃんと把握してるのか…-

シンジの額には一筋の汗。

実は、アスカがいやがるシンジに無理矢理半分飲ませたのだ。無論、アスカはシンジの後に飲んだ。

素直じゃないねぇ。

「あれー、どうしたのシンちゃーん。」

とぼけてもいいのに、シンジはがくっとうなだれる。

「わ…分かりましたよ…」

はぁ、と溜息をつくシンジ。ミサトはものすごく楽しそうだ。

「ふふーん、い・い・の・よ。わたしもプリンでいいわ。」

「へ?」

ここまできてもからかわれたのに気付かないニブニブシンジ。

「まさかシンちゃんが一人で飲むわけないこと、分かってるのにねー。優しいねシンちゃん、アスカには。」

「…あ…」

シンジは少しムッとした顔になる。

「からかってましたね。」

「だってシンちゃん、可愛いんだもの。」

免罪符その一を持ち出すミサト。また手を動かし始めるシンジは、少し赤面していた。

 

 

翌日。すこぶる機嫌のいいアスカに引き連られる様にシンジは登校した。

昨夜のプリン攻撃と、それを持って行った時のシンジの心配そうな顔がアスカの琴線に触れたのだ。

「おっはよー、ヒカリっ!」

「トウジ、ケンスケ、おはよう。」

教室に入ると二人はお互いの居場所へと別れる。

アスカの方では…

「おはよう、アスカ…今日はなにかいいことあったの?」

「どうして?」

「ご機嫌じゃない…あ、まさか…不潔なことしてないでしょうね…碇君と。」

「い、いやねぇ、なんでアタシがバカシンジと…」

あっさりと否定はするが…心の中では

-あったらいいな…そんなこと…-

などと思っていたりする。

一方、シンジは…

「おはようさん。」

「おはよう、シンジ。」

トウジはかったるそうに机に足を載せている。ケンスケはビデオカメラをアスカに向けつつ挨拶を返す。

「なんや…今日の惣流は妙に機嫌良さそうやな。」

「ああ、そうだな…いい絵が取れそうだ…」

いつもいちゃモンを付けられる二人はアスカの挙動が気になる様だ。

「アスカがどうかした?」

「なんやセンセ、気ぃついてへんのか?」

呆れた様にトウジはシンジに目をやる。

「ま、上手いこと夫婦出来てるってことか…」

「僕とアスカはそんなんじゃないよ。」

そう言いつつも、頬を僅かに染めるシンジを見て、トウジはニッと笑う。

「気付かないのは本人ばかりってね…」

ケンスケは飛びきりのアスカの笑顔をカメラに納め、満足そうに呟く。

「センセが惣流の機嫌を左右するってこっちゃ。これからは今日みたいな日が続くことを祈るわ。」

「そうそう、シンジはそうして売り上げに貢献してくれりゃいいの。幸せは分け合うもんだ。」

「好きに言ってくれるよな…」

ぶつぶつとぼやきながらシンジは席についた。と、同時に始業のチャイム。

ふとレイの席に目がいくシンジ。しかし、今日は来ていないのか、空席だ。

「おかしいな…今日からしばらくテストは無いはずなのに…」

親父がなにを企んでいるかは…知らない方がいいと思うよ。

 

シンジ達が学校にいる頃、ミサトはリツコ達とレイ―初号機のシンクロテストに立ち会っていた。

「でも、初号機はシンジ君でうまくいってるのに…どうしてレイなの?」

ミサトの疑問はもっともである。

「しばらく弐号機は使えないのよ。シンジ君一人に負担を掛けないようにね。」

「レイは空いてるから…なの?でも、第十四使徒の時はダメだったじゃない。」

腑に落ちないミサトはさらに突っ込む。

「だから学校よりもこっちを優先してるんじゃない…少なくとも、時間を掛ければ起動可能だわ。

レイ―初号機ならね。」

ディスプレイから目を離さないリツコ。いつものことだ。

「実績あるものね…」

「A10神経接続拒絶!」

マヤの声が発令所に響く。それを聞いたリツコは冷静に指示を与えていく。

昨日と同様の緊迫した空気…ここしばらくはなかったことだ。

「レイ…大丈夫?」

ミサトはパイロットの都合はおかまいなしに繰り返されるテストに嫌気がさしていた。

「…はい…」

レイの声には明らかな疲労が滲んでいる。

「リツコ!今日はもう無理よ。」

「そうね…じゃあ、もうあがりなさい、レイ。」

ミサトは自分の意見がすんなりとリツコに通ったことに疑問を感じる。

「…はい…」

接続が切られていくエントリープラグ内。こぽっとレイの口から出ていく泡。

レイはこみ上げる様なむかつきを押さえるのに必死だった。

ミサトはちらっとリツコを見る。どことなく寂しそうな雰囲気がある様な気がした。

傍目に見れば全く解らないだろう。

「ねぇ…リツコ…」

「なに?」

「あのキョウコって娘…原因は解ったの?」

「現在調査中よ、結果が出しだいあなたにも報告するわ。」

ミサトはリツコの表情に微妙な変化があることを確認すると、フッと溜息をつく。

「まあいいわ、それよりキョウコはわたしが預かることにしたから。」

「またなの?しかも、ぱっと見ではアスカと区別がつかないのに…許可は取ったの?」

「もちよ、司令はいつもの文句だったわ。」

リツコは白衣のポケットに手を突っ込んでミサトの方に振り返る。

「私が言ってるのはシンジ君達のことよ。」

「大丈夫よん、シンちゃんが言い出したことなんだから…」

ニヤッと笑うミサトを見て、リツコは呆れたように額に手をやる。

「あなた…いい加減にしてあげた方がいいんじゃない?シンジ君はおもちゃじゃないのよ。」

「やーねー、人聞きの悪い…ちゃーんといろいろ考えてあるのよ。」

「まあいいわ。それより、キョウコって娘も保護観察の対象になるから…解ってる?」

ふふん、と鼻をならすミサト。

「だから、よ。チルドレン達がひと固まりになってた方がいいじゃない。一石二鳥って奴よ。」

「本音が出てるわよ…反対する気はないけどね。」

脳天気なミサトを見ていると、リツコはなんとなくうらやましい、と思った。

「でも、あそこまでアスカそっくりだと困ることあるかもね…特にシンちゃんが。」

「なにか見分けられる様にすればいいじゃない。」

「見分けられる様に…ねぇ…」

顎に手を当てて考え中モードのミサト。

「リボンを付けさせるとか…いろいろあるでしょ?」

「めんどくさいわねぇ…いっそ髪型を変えさせるか。そんじゃリツコ、お先にね。」

ミサトはそう言うと、くるっときびすを返して発令所を後にした。

 

「わたしと住むのよ、解る?」

「…はい…」

ミサトは髪をショートボブにしたキョウコをアルピーヌの助手席に乗せてマンションへと向かっている。

早々にネルフを出ると、その足でキョウコのいた病院まで出向き、美容院に連れていったのだ。

がらりと感じの変わったキョウコ。アスカと同じ髪型の時はまんまアスカだったが、ショートに

すると少女らしい可愛いい雰囲気が強くなっていた。

「シンちゃんも一緒よん。あなた、シンジ君を気に入ってるみたいだしね。構わないわね?」

「…はい。」

キョウコは少し頬を染めて答える。横目でそれを確認したミサトはニッと楽しそうに笑った。

-初々しいってのかしら…可愛いわねー。-

「…あの…アスカさんも…いるんでしょうか?」

キョウコの方からの質問に、少し戸惑いながらも冷静に答えるミサト。

「そうよ、アスカもいるわ。」

「…迷惑になりませんか?」

「ならないわよ、わたしとしては来て欲しいのよ。もっとも、言いだしっぺはシンちゃんなんだけどね。」

それを聞いたキョウコは目を丸くしている。

「…シンジ君が…ですか?」

「ええ。」

ブラウスの胸の辺りに手を当てるキョウコ。目を閉じて微笑んでいる。

「シンちゃんの何処がいいの?」

まともな答えを期待せずに聞くミサトだが、返ってきたのは謎の言葉。

「アスカさんのにいつも居ましたから…」

そして、ルノーはマンションの駐車場へ入っていった。

 

「ねぇシンジぃ、今日はなんなの?」

キッチンで夕食の支度をしているシンジの隣で尋ねるアスカ。

「タンシチューだよ。」

「ふふ、う・れ・し・い・な。何か手伝おっか?」

ご機嫌は上々のアスカ。シンジは何故か顔を赤くしている。

「いいよ、後は煮込むだけだし…テレビでも見てなよ。」

「いいのよ。お皿の用意、してるね。」

そう言って食器棚からシチュー皿を出すアスカを見て、シンジは優しい微笑みを浮かべる。

-こんなアスカもいいな…-

ピンポーン

いい雰囲気の二人を引き裂くチャイム。ミサトのご帰還だ。

「ねぇ、シンジくーん!ちょっとこっちに来てよ。」

明るい声で呼ばれたシンジは慌てて玄関に向かう。

「何ですか…って、あ!」

ミサトの横にいるのはショートカットにしたキョウコ。

「ふっふーん、キョウコちゃんよーん。嬉しい?シンちゃん。」

キョウコは恥ずかしそうにもじもじしている。ポケーとキョウコに見とれるシンジ。

「あ…髪…切ったんだね…似合ってるよ。」

何故か気の利いた台詞が出る。そんなのはアスカに言ってあげなよ。

「…そんな…こと…ない…」

耳の辺りの髪を掻き上げる様な仕草を繰り返すキョウコ。

「上がりなよ…これからここに住むんだよね?」

「…ええ。」

雰囲気はまるで初々しいカップルの様だ。ミサトはニヤッと笑う。

横目でシンジとキョウコを見ながらキッチンに向かうミサト。ふと、二人を覗くアスカと目があった。

-予定通りね、ここまでは。-

ミサトは心の中でニヤニヤとほくそ笑んだ。

「なんであの娘を連れてきたのよ。」

「なんでって…命令だもの。」

しれっとウソを付くミサト。アスカはキッとミサトを睨むと、また二人の様子を伺いはじめた。

「全く、こっちは可愛くないわねぇ。」

「五月蝿い。」

またミサトを睨むアスカ。

「アスカ、なにしてんの?」

こそこそとしているアスカに、シンジが怪訝な顔で尋ねる。

びくう!っと飛び上がるアスカをキョトンとした目で見るシンジとキョウコ。

「な、何もしてないわよ。それよりシンジ、食事の支度、早くしなさいよ。」

さっきまでとはうって変わって言葉に棘のあるアスカに、シンジは慌ててコンロに向かう。

取り残されたキョウコはアスカと対峙するかの様に立っている。

「あんた、何しにきたのよ。」

「…ここに住めって言われたの。」

「そんなことはどうでもいいのよ…髪、切ったのね。」

「…葛城三佐があなたと見分けがつくようにって…」

「ふうん…」

じろじろとキョウコを見るアスカ。自分がショートカットにしたら…の実在版である。

-ふふーん、アタシってどんな髪型でも似合うのね…-

-でも、シンジってロングよりショートの方が好きなのかな…-

-アタシも髪、切ろうかな…って、なんでシンジの為に!…シンジ…か…-

アスカはキョウコが自分のレプリカだと言うことを無意識に認めている様だ。

それ故にシンジになついているキョウコにライバル心を燃やすのだ。

「…あなたはシンジ君のお手伝いをしないの?」

シンジの事で無限ループにはまったアスカは、キョウコのその一言でふと我に帰る。

「もう手伝ったわよ…そうね、あんたの分も用意したげるわ。」

「…いつもシンジ君が食事の用意をしてるの?」

キョウコの目には母の意志。

「そ…そうよ…あ、あのバカシンジの唯一と言っていい程の取り柄なのよ、料理は。

それまで取っちゃったら悪いじゃない?だからよ。」

「…ウソね。」

適当な言い訳をするアスカを見すかす様なキョウコの一言。

「…わたしが手伝うわ…」

そう言ってシンジの方に行こうとするキョウコの手を取る手。

「…アタシが手伝う…アンタはリビングでテレビでも見てなさいよ…」

キョウコはフッと笑みを浮かべるが、すぐに無表情に戻すとアスカの顔を見つめる。

「…そう…そう言うならそうするわ…」

キョウコの思惑が理解できないアスカは、決まり悪くシンジの側に寄り添うように行く。

「何か手伝うことある?」

「あ、ううん、もういいよ…」

「そ、ならアタシ、キョウコの分のお皿出しとくね。」

再び柔らかな笑みでアスカを見つめるシンジ。アスカもシンジの瞳に捕まったかの様に見つめ返す。

「…頼むよ、アスカ。」

「…うん、シンジ。」

甘いひとときを過ごす二人を見つめる四つの目。ミサトとキョウコだ。

キョウコは満足気に見ているが、ミサトはあまり面白くないらしく、ぶつぶつ呟いている。

「ねぇシンちゃーん、ご飯まだぁー?」

ラブラブモードに入った二人にムカついたのか、ミサトが間に割って入る。

慌てて持ち場につく二人を見たミサトは(フフン)と鼻で笑う。ひどい女。

「あ、あとちょっとですから…」

赤い顔でミサトの方を見るシンジ。

「あらぁん、シンちゃんどうしたのぉー。顔が赤いわよん。」

しかも、からかい始めた。おいおい。

「な、なんでもないですよ。」

ますます赤みの増していくシンジを見たミサトはニターと笑っている。

「そーお、何かお邪魔したかしらって思ったからね。」

「お邪魔って…」

「やーね、アスカといい雰囲気だったくせにぃ…」

ジト目で口に手を当てて、シンジを見るミサト。

「なに言ってるのよ!そんなことよりミサトも少しは手伝いなさいよ、ったくガサツなんだから。」

見かねたアスカが助け船を出したが、それをミサトが泥船にする。

「ほらシンちゃん、アスカは怒ってるわよ。邪魔しないでって。」

ついに真っ赤になって俯くシンジにニヤッと笑うミサト。

「いいからあんたはビールでも飲んでなさい!!」

怒鳴りながらもアスカの頬は紅潮していた。

そんな三人を見ながら、キョウコはその雰囲気に心をなごませていた。

 

シンジのタンシチューは絶品だった。煮込みも十分、ソースも深い味に仕上がっていた。

「ふー、ごちそうさま。」

満足そうにスプーンを置くアスカ。ミサトは5缶目のビールを開けている。

「…ごちそうさま。おいしかった。」

アスカとほぼ同じタイミングでキョウコも食べ終えた。そんなキョウコを嬉しそうに見るシンジ。

「そう、良かった。」

先に食べ終えていたシンジはニッコリと笑った。

「…本当に…料理上手いのね。」

「そうかな、ありがとう。」

シンジとキョウコのやり取りを見ていたアスカは慌てた様に口を挟む。

「シンジぃ、おいしかったよ。」

「あ、うん。」

「なによ、アタシは軽い扱いねぇ。」

アスカはワザと拗ねてみせる。

「そ、そんなことないよ…アスカに合わせた味付けにしたつもりだから…」

シンジの言葉はアスカの予想通りだった。

「って訳よ、解る?」

腰に手を当て、得意気にキョウコに言い放つアスカ。

「…解らない…多分二人目だから。」

「またファーストもどきの事言う。都合が悪くなるとそれぇ?」

「やめなよアスカ、可哀想だよ。」

キョウコに攻撃を仕掛けようとするアスカを諌めるシンジ。矛先が自分に向いても知らんぞ。

「なによシンジ、別にアタシは苛めてる訳じゃないわ。」

キッとシンジを睨むアスカ。

「キョウコがいいんならそう言いなさいよ!別にアンタとアタシは何でもないんだし、別に気にすること

ないわ。なんならアタシが仲を取り持ってあげようか?」

「なななに言ってんだよ、僕とキョウコは別に…」

キョウコを前にして、口ごもるシンジにムッとするアスカ。

「別になによ!早く言いなさいよ!」

「アスカ…」

「もう、知らない!好きにしなさいよ!」

再びアスカの癇癪が破裂した。ダッと部屋に戻るアスカの後ろ姿を目で追うシンジ。

ピシャッ!

ジェリコの壁と化した襖を見て、溜息をつく。

「…ごめんなさい…シンジ君…」

心配そうなキョウコ。

「なーに、いつものコミニュケーションって奴よ、キョウコ。気にすることないわ。」

シンジとアスカの喧嘩を見て、ミサトは嬉しそうに言う。

シンジはすっと立ち上がると片づけを始める。しかし明らかに元気はなかった。

はぁ、と溜息をつきながらエプロンを取ろうするシンジの手を取るキョウコの手。

「…わたしが片付けるわ…シンジ君。」

「いや、いいよ…休んでいてよ。来たばっかりで勝手が分からないと思うし…」

そこまで言ってふと思い当たった。

「ねぇ、ミサトさん。キョウコは何処で寝るの?」

「そうねぇ、どこがいいかしら。」

すでに出来上がりつつあるミサトはケラケラ笑いながら答える。

「とりあえずはわたしと一緒に…あ、でもシンちゃんと一緒の部屋でもいいわよん。」

「な、ななに言ってんですか…」

シンジはそう言いながらもチラッとキョウコの表情をうかがう。

キョウコもシンジを見ていたらしく、ばっちり目が合った。

かぁーっと赤くなるシンジとキョウコ。ミサトの目がギラッと光を宿す。

「あらあん、二人とも可愛いのねん。いいわ、わたしが許可します、今日は二人で一緒の部屋で寝なさい。」

ばん!襖の開く音

「ぬぁーに言ってんのよ、この行き遅れ!」

真っ赤な顔のアスカが部屋から飛び出してきて、ミサトにかみつく。

「やあねぇ、アスカ、聞いてたの?」

「聞いてたもなにも、あんな大声なら聞く気なくても丸聞こえよっ!」

ギッとミサトを睨み付けるが、当のミサトは涼し気にしている。

「それにあんた、分かってるの?シンジだって男なんだから、年頃の女の子と一緒に寝させるなんて犯罪行為よ!

それでシンジに何かあったらどうするつもりぃ?」

かなりヒートアップしているのか、アスカは自分の言っていることに気付いていない。

シンジの事となると、いつもこうだ。可愛いね。

「ふーん、普通は女の子の方を心配すると思うんだけど…」

「えっ…?…あ!!」

ニヤリと笑うミサトにたじろぐアスカ。シンジは出てきたアスカにホッとしている。

しかも良く分からないが自分を心配してくれているらしいアスカに、ちょっと喜んでもいた。

「あ、アスカ、ありがとう…その…」

あまりに場違いなシンジの言葉にキョトンとするミサト。アスカの方はさっきの動揺がまだ抜けていないのか、

適当に頷くだけだ。

「あ、いや、その、い、いいのよ。」

「なーにがいいんだか…じゃあアスカ、キョウコと一緒に寝て上げてくれる?」

ミサトとしては次善の選択だが、一応保護者として言ってみた。

「し、しょうがないわね…分かったわよ…」

渋々だが、アスカはキョウコを部屋に連れて行った。

 

 

つづく

 

 

第三話へ

 

 


あとがき

展開が遅いっ!

キョウコが活躍してないっ!

アスカが妙に可愛いっ!

コメディの割にギャグが足りん!

ああ、僕にはこれが限界っす。

しかも中途半端な終わり方。

まあ、続き物ってことで許して下さい。

 

ここで次回予告。

何のためにキョウコは弐号機から出てきたのか?

キョウコの登場で急に素直になっていくアスカ。

シンジも徐々に自分の気持ちに気付き始める。

そんな二人に試練を与えるミサト。←??

次回、素直なアスカ?

75000ヒット時に公開予定!

って、間に合うのか?(自爆)




takeoのコメント



50000hit記念投稿の第四弾は、Rossignol 高橋さんです!
Rossignol 高橋さん、ありがとうございました!!
 
このお話は、40000hitの記念に頂いた、第一話の続きとなっております。
続きを楽しみにしていた方も、沢山いらっしゃるのではないでしょうか?
私も、とても楽しみにしておりました。

今回のお話も、期待を裏切らないとてもいいお話ですね(^^)
読んでいるうちに、自然に頬が緩んでしまいます。
ギャグの中にもホロッとさせる部分があったりして……

キョウコはなぜここに来たのか?
これからどうなるのか?
そしてアスカとシンジの関係は!?

何を隠そう、私が一番続きを楽しみにしてたりします(笑)


皆さま、Rossignol 高橋さんへ、ぜひ感想メールを!


なお、Rossignol 高橋さんは、エデンの黄昏の「カヲル君の分譲住宅」内、
「黄昏大学Rossignol」において、「University of 3rd Tokyo」を連載中です。
こちらもどうぞ、ご覧になって下さい。



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