雪山に消ゆる面影を求めて


外伝?6 番外編【シンジの敵はシンジ】



僕には何も無い

生きている理由も、その価値も

生きている資格が無い

「僕は・・どうすればいいんだ・・」

シンジはヘルメットを両手で持って呟いていた。

それをアスカが、ピットルームの横に座って見ていた。



「甘えるなぁ〜」

バキッ

いずこからか現れた、コートを着て、顔をすっぽりと、

銀行強盗のように隠した男が、シンジを殴り飛ばした。


「な、あなた誰です?」

シンジは、見覚えの無い人に殴られる覚えが無いので、頬を押えて振り向いた。

「私が誰だだと? そんな事はどうでもいい!」男は白い軍手に包まれた右手を震わせていた。

「僕の何を知ってると言うんです!僕が何に甘えてるって言うんです」

シンジは思わずムキになってしまった。

「それが甘えてると言うんだ!」男の膝蹴りが、シンジの腹に命中した。

「綾波が死んだ・・それは分かる・・だが、いつまで甘えてるつもりだ!」

シンジより一回り背の高い男は、シンジを見下ろして言った。


「ちょっとシンジに何するのよ」アスカが、気付いて走って来た。

「アスカ・・アスカ〜」男はアスカを無理矢理抱きしめた。

「ちょっと!何するのよ!」アスカは混乱していた。

訳も無い・・さっきまでシンジを苛めていた男がいきなり自分に抱き着いたのである。

「会いたかった・・会いたかったよ・・アスカ・・」男はアスカを離さなかった。

「アスカに何をするんだ!」シンジもようやく、止めに入った。

男はアスカを抱きしめていた力を緩めた。

「彼に話があるんだ・・ちょっと席を外してくれないか・・アスカ」

「あんたなんかに、アスカ呼ばわりされる覚えは無いわよ」

「来い!」男はシンジの腕を引いて、アスカから離れた所に連れていった。

「一体、あなたは誰なんですか?」シンジは開口一番に言った。

「私の名前は・・碇シンジ」男は顔を覆っていたマスクを取り除いた。

「そ、その顔は!」

そう その顔は、少しやつれた感があり、髪は白髪となっていたが、明らかにシンジと同じであった。

年は20代前半から半ばといったところだろうか


「僕には、親戚はもういない筈じゃ・・もしかして父さんの隠し子?」

「ばかもの・・同じ名前をつける親がどこにいるか!私は紛れも無く、碇シンジだ」

「私は2022年の未来からやって来たのだ・・・私はいつまでも、

うじうじと、今の貴様のように悩んでいたから・・

アスカには逃げられ、そのショックで食い物も喉を通らず、一夜で髪は白くなったんだ」

「えっ未来から? ドラ○もん?」

「をい 前世紀の漫画じゃあるまいし・・似たようなものかも知れんが・・」

「おまえが、何に悩んでいるかは、takeoさんに・・めそ・・げほっごほっ いや、なんでも無い」

「たけおって誰だ・・・めそって一体・・」

「とにかくだ!お前にはアスカがいるじゃ無いか! 何も悩む事は無いだろう・・」

「俺のアスカは目の前で落ちたんだぞ!」

「落ちたって?」

「いや、何でも無い・・気にするな」

「気にするなったって、気になるじゃないか・・」

「とにかくだ・・今のままじゃ、アスカにも見捨てられるぞ・・それは確かだ・・

だから・・アスカにだけは、何があっても絶対離すなよ!」

「シンジ・・」その時、背後からアスカの声がした。

アスカは、未来から来たと言うシンジに抱き着いた。


「ごめんなさい・・未来の私は、あなたを捨てたの?」

涙をぽろぽろ流して、未来から来たと言うシンジの白髪を撫でた。


「今は、彼の心の傷はまだ癒えて無いけど・・君さえ側にいてくれたら、

彼の心の傷は塞がる筈だ・・彼は君の事を大事に思っているのは、確かだと思うよ」

「彼って・・」

「ごめん・・未来から来たと言うのは、嘘なんだ・・

僕は別の世界の碇シンジなんだ・・

僕の世界のアスカは僕の目の前で落ちて、死んでしまったんだ・・

それなのに、こっちのシンジは君がいながら、あんな態度しか取って無い・・

それが、見てて腹が立ったんで、takeoさんに頼んで、こっちの世界に呼んで貰ったんだ」

「あなたも、あっちの世界の私を愛してくれたのね・・」

アスカは涙を流した。

「そうだったのか・・さっきから、訳の分からない事を言うと思ったら・・」


「君を・・もう一度だけ・・・抱きしめたかった・・それも理由なんだ・・」

「・・・・シンジ・・」

「アスカ・・・・」

その時!


パシーン

シンジの頭に、シンジの(ややこしい)ヘルメットが直撃した。

「痛っ」もう一人のシンジは振り向いた。

「アスカ・・」

「私がいるのに、浮気しようだなんて、いい度胸ね」

「誤解だ! それに彼女も君じゃ無いか」

シンジとアスカは乱入してきた、アスカを目を丸くして見ていた。

「落ちて死んだんじゃ・・」アスカが問い掛けた。

「うん・・・死んだと思って、二年間泣いて暮らしたんだけど・・生きてたんだ・・」

「あんたも、私のシンジに近づかないで!」別の世界から来たアスカがシンジを連れて行った。

別の世界から、来たと言うアスカの薬指には、指輪が光っていた。

「あの・・アスカさん・・シンジ・さんと・・幸せですか?」

アスカは、別の世界から来たと言うアスカに声をかけた。

「もちろん! あなたも早く既成事実でも作って、そっちのシンジをモノにするのよ!

シンジって、結構もてるから、ちょっかい出して来る奴がいんのよ」


「は、ハイ!」アスカは頬を染めて答えた。

「さ、帰るわよ takeoさーん もういいですよぉ」

次の瞬間、サーキットに丸く黒い空間が開き、

異世界から来たと言うシンジとアスカは吸い込まれて行った。

「アスカ・・ごめん・・あの人の言う通り僕・・・甘えてたかもしれない・・」

「いいのよ・シンジ・・私・・シンジの事・・好きだから・・」

二人はよりそい、そして。

その時!

プシュッ アスカの首筋で、無針注射器が当てられ、何かの薬品をアスカは注射されてしまった。

「誰だ?」崩れ落ちた、アスカを抱いてシンジが叫んだ。

「私が、この世界の創造主・・takeoだ・・悪いが、今回の記憶は消させて貰う・・

そう簡単にひっついて貰ったら、連載が終わってしまうからな・・」

takeoと名乗った人物は、無針注射器をシンジの方に向けた。

「そんな!創造主だからって、そんな事!」シンジは激怒し、こぶしを構えた。

「ふん この世界は、私の好きにしていい世界なのだ・・だから好きにさせて貰うさ!」

「この野郎!」シンジは殴り掛かった

だが、その攻撃はかわされ、首筋に生暖かいものを、シンジは感じた。

「アスカ・・やっとわかりあえたのに・・ガクッ」

「ふぅ・・あっちの世界のお○き をうらむがいいさ フフ」takeoと名乗った男はどこかに去って行った。


ヒューー

サーキットに空しい風が吹き渡った時・・シンジは目覚めた。

「何でこんな所で・・寝てたんだろう・・疲れてたのかな・・昨日のレースで・・あ、アスカ」

「アスカ!どうしたの!アスカ」シンジはアスカの肩を掴んで揺さぶった」

「ん・・シンジ・・」

「大丈夫?アスカ」

「私・・立ち眩みでもしたのかしら・・」

「多分疲れてるんだよ・今日はもう帰ろう・・アスカ・・」

「うん・・ありがと・・シンジ」

記憶は消せても、無意識下の、お互いを思う気持ちは消せなかったようだ。

それ以来、彼等の距離は少し近づいたのかも知れない。




雪山に消ゆる面影を求めて


外伝?6 番外編【シンジの敵はシンジ】





50000hit記念投稿第六弾は、尾崎貞夫さんです!
尾崎さん、ありがとうございました!!

ご覧になっての通りの作品なんですが、私はかなり、ショックを受けました。
もちろん良い意味で、ですけどね(笑)
確かに「命の価値は」のシンジ君には、こう言いたくなります。 いつまでグジグジ考えてるんだ!って。
そういう意味で、凄く刺激になる作品でした。
早いところシンジ君を立ち直らせたいですねぇ。ホントに。

ラストがいい感じで終わって、それがまたいいですね(^_^)


それでは是非、尾崎貞夫さんに感想メールを!





尾崎さんのページは
 四国の参愚者 [裏庭エヴァンゲリオン・裏庭エヴァンゲリオン Second Generation・雪山に消ゆる面影を求めて]

尾崎さんへのメールは
 尾崎貞夫さん [uraniwa@ps.inforyoma.or.jp]





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