私のマツダ車ランキング

 

第3位 COSMO SPORT

 かつてこれほど衝撃的なクルマの出現があったでしょうか。高効率・低振動の画期的な内燃機関、マユ型のハウジング内をおむすび型のローターが回転する運動をそのまま出力として取り出すというロータリーエンジン。今までとは全く機構の異なる新しいエンジンが、多くの国々の技術者の実用化に向けた挑戦の末、生みの親ヴァンケル博士のもとから遠く離れた東洋の国で高らかに産声を上げたのです。10Aと呼ばれる世界初の2ローター・ヴァンケル型ロータリーエンジン。
 そして、その先進的な技術にふさわしく未来的なそのアピアランス。異様なまでに低い車高と超コンパクトな2シーターのキャビン、どこを切っても非日常的なスタイリングは、まさに宇宙からの使者という感じです。NSU社とのライセンス契約から6年、未知への挑戦に明け暮れた血の滲むような開発の日々を経て、1967年についに市販化に漕ぎつけたのです。

 私が小学生の頃に一度だけ、街中を走るコスモスポーツと出くわしたことがあります。小学生の目線から見てもその車高は恐ろしく低くて、まるで地べたを這っているかのように感じました。おりしもスーパーカーブームの時代でカッコイイクルマは見飽きていたはずでしたが、その時の衝撃は20年近く経った今でも鮮明に記憶に残っています。なにせ、当時から数えても10年以上も前に、他ならぬ日本からこんな凄いクルマが出ていたのかと、子供ごころに驚いてしまったものです。

 総生産台数は1176台とごく少数ですが、このクルマは世界の自動車史に大きな足跡を刻んでいます。何年か前に、オーナーズクラブのパレード走行を見学したことがありますが、30台以上ものコスモスポーツの勇壮な行進、とても見ごたえがありました。


<主要諸元> '68 コスモスポーツ (L10B)

寸法:4130×1590×1165mm ホイールベース:2350mm
車両重量:940kg (5MT)
エンジン:10A 水冷2ローター 49
1×2cc
 (最高出力)128ps/7000rpm (最大トルク)14.2kgm/5000rpm
懸架装置:ウィッシュボーン独立(前)/車軸式リーフ(後)
ブレーキ:ディスク(前)/ドラム(後)
タイヤ:155HR15