ここ15年、私はフュージョンを中心に音楽を聴いています。
 歌詞があってすぐにその世界に入り込めるのもいいけれど、逆にインストだったらシチュエーションの設定を自在に楽しむことができる。そして、コトバの代わりに、一流のミュージシャン達が奏でる卓越したスキルが力強くメッセージを語ってくれる。よく聴けば、ギターも泣いたり笑ったり。

 そう、私はギタリストのアルバムがとくに好きです。でも正直なところ、最初は彼らの本当のうまさに気付かないまま聴いてました。しかし、いざ自分でピックをはじくようになった途端、そのテクニックの凄さに唖然としてしまいました。指が追い付けるスローな曲を弾いても、出てくる音は全然違う。ま、当たり前と言えば当たり前なんですが…。

 我が家のCDラックには、ギタリストでは高中正義、野呂一生、安藤まさひろ、是方博邦、増崎孝司、ジョージ・ベンソン、カルロス・サンタナ、アール・クルー、ジェフ・ベック、リー・リトナーなどが所狭しと並んでいます。他には渡辺貞夫、松岡直也、カシオペア、T-スクエア、JIMSAKU、ナニワエキスプレスなどがあります。
 その中でもとくにお気に入りのミュージシャンはというと…


高中正義 Masayoshi TAKANAKA

 きっかけは15年前。学校の帰りにふと立ち寄ったレコード店で流れていた聴き覚えのある曲。初代FFファミリアのCMのBGM曲だった「SAUDADE」でした。当時は、我が家の夕飯の時間帯のニュース番組の中でこのCMが毎日のように流れていて、もともとクルマにとても興味のあった私のアタマの中に無意識の内に刻み込まれていたらしい(サブリミナル効果?)。アルバムを買ってみると他にも聴いたことのある曲がわんさか。この頃のファミリアのCMにはずっと高中のトロピカルサウンドが採用されていましたね(北大路欣也が「発信To You」と言うヤツ)。
 高校生になって本格的にCDで聴くようになってからは、ソロデビュー以来のアルバムを揃えるのにそう時間はかかりませんでした。以来、今日まで新作アルバムは全てGetしていますが、ディスコサウンドにふったり、ポピュラーっぽくした、ここ10年くらいの作品よりは、ソロデビュー以降、日本のTOPギタリストの看板を背負って突っ走っていた20代の頃の方が、勢いや力強さを感じるし、アレンジや構成にも相当凝ってて聴き応えがありますね。
 もちろん、最近の情感あふれるメロウな曲もいとおかし、なんですけどね。私はフュージョンを聴いていながら、ドライブにピッタリという感じのノリのいい曲よりは、静かで少し切ないような曲が好きなんです。少々「暗め」でも。
 たしか’85年頃に東芝VIDEOのCM(波打ち際で砂上の楼閣が崩れていく、薬師丸ひろこが出てたCM)で有名になった”渚・モデラート”は、年々いろいろなアレンジが加えられ、とても「いい感じ」になってます。
 というわけで、ここで勝手にランキングの発表。

My Favorite TAKANAKA
1.Saudade from 「SAUDADE」
2.Bay Street Fix from 「JANGLE JANE」
3.Disco "B" from 「SUPER TAKANAKA LIVE」
4.Alone from 「ALONE」
5.Nagisa '91 from 「LOVER」


 中学時代の話に戻りますが、初めて買ったその高中のアルバムをよーく聴いてみると、CMの記憶にあったいわゆる「サビ」の部分以外にも聴きどころがたくさんあって、一気にフュージョンの面白さというか、その奥深さに目覚めたのがそもそもの始まりになったわけです。(というか、インストゥルメンタルだとサビの部分を定義すること自体難しいのですが…) リフレインも単なる繰り返しではなくて少しずつアレンジが変わっていたり、ギターとキーボードの絶妙な掛け合いがあったり、なかなか面白い世界だなと感じたんです。

 また、この一連のファミリアのCMがきっかけになり、元来のクルマ好きの私の中でも、とりわけ「マツダ」への関心が自然と高くなっていったので、いろんな意味でその後の私の人生を方向付けることになったひとつの重要な「出会い」だったといえるでしょう。

DIMENSION

 超有名なフュージョングループの”Tスクエア”や”カシオペア”なんかと比べると、やや「知る人ぞ知る」といった感じかもしれません。増崎孝司(g)、小野塚晃(key)、勝田一樹(sax)の3人で結成されたユニットです。
 もともとはギタリスト増崎孝司のソロアルバム「SPEAKS」にハマったのがきっかけです。当時NHKのBSで放映していたWRC(世界ラリー選手権)のオープニング曲に同アルバムの”
Chance it”という軽快な曲が使用されていて、当時はどこへ出かけるにもこのアルバムを聴いていました。(気分はラリードライバー?)

 93年に最初のアルバム「DIMENSION」をリリースして以来、最新の「Tenth DIMENSION」まで、ライブ版1枚を含み全10枚を数えています。TVやラジオではいろんな番組で使用されていますが、いずれも都会的で、クリエイティブで、とてもアピール性の高い曲ばかりです。どのアルバムも同じくらい好きです。ちなみに今、車載のCDマガジンには「Tenth …」が入っています。
 夕暮れ時から夜中のドライブがピッタリですかね。

神保 彰 Akira JIMBO

 元カシオペアのドラマーであり、現在は櫻井哲夫とともに「JIMSAKU」のメンバーですが、彼の作るメロウな曲には素晴らしいものがあります。もちろん、カシオペアやJIMSAKUのアルバムの中にも彼の作品はあるし、全体としても彼のアレンジや多彩なドラミングがふんだんに散りばめられているのですが、カシオペア時代から時折リリースしているソロアルバムでは、より一層、その「JIMBOワールド」に浸りきることができます。
 私の一番好きな曲は、86年のアルバム「COTTON」にある"
It's a Holiday"です。このアルバムには珍しく全部コーラスが入っていて、しっとりとした曲からアップテンポな曲までバラエティが豊富なのですが、このリズミカルな曲にはとびっきり明るい歌詞とともに、流れるような素晴らしいギターソロ(ポール・ジャクソンJr)が入っていて、聴くたびに思わず元気になってしまいます。
 あと、93年の「LIME PIE」や94年の「PANAMA MAN」といったアルバムもとくに思い出に残っています。なぜって…、ときに傷心を癒してくれるのもまたフュージョンですからね!