「tomica」は玩具メーカーのトミー工業(現トミー)が1970年(昭和45年)8月に発売を開始した、ダイキャスト製ミニチュアカーのシリーズです。 安価かつ手頃なサイズのうえ抜群の品質感を持ち、ドアの開閉アクションや立派な「運動性能」まで備えていたことから爆発的にヒットし、今や日本のミニカーの代表的存在にもなっているミニチュアカーです。 縮尺スケールは乗用車タイプが1/65〜1/50、大型トラック・バスなどは1/100〜1/150程度で、いずれも「手のひらサイズ」に統一されていることが、トミカの大きな特徴のひとつです。
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当初は国産車シリーズのみで始まったトミカは、1976年(昭和51年)に外国車シリーズを追加しました。 その他にも同1976年にロングトミカシリーズ、1978年にはマスコミトミカシリーズが追加されましたが、後者は短命で消滅しています。
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●1970年に発売された6モデル 〜「トミカのすべて」(NMCC編)より〜 |
1970年に 「No.1 ブルーバードSSSクーペ」 「No.2 コロナマークUハードトップ」 「No.3 クラウンスーパーデラックス」 「No.4 クラウンパトロールカー」 「No.5 トヨタ2000GT」 「No.6 フェアレディーZ432」 の全6車種で始まったトミカ日本車シリーズは、その後毎年20モデルを超えるハイペースで急速にその種類を増やしていき、僅か3年後の1973年(昭和48年)には全80車種になり、そして1976年にはじつに全110車種まで到達したのでした。 1988年には外国車シリーズを国産車シリーズに吸収して一本化、現在の全120種類のラインナップに至っています。 |
ところで、トミカのモデルは、実車のモデルチェンジなどに伴なって生産中止となったモデルの番号を「欠番」とするのを避け、随時新しいモデルがその番号を引き継ぐ形をとっています。 よって、30年という長い歴史を持つトミカでは、当然、同じ番号でも時代によって異なる複数のモデルが存在します。それらを区別するために、例えば同じ「1番」を名乗ったモデルでも、 「No.1−1」、「No.1−2」、「No.1−3」、「No.1−4」… という表現方法が使われるのです。
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さて、このtomicaがただ子供のオモチャにとどまらず、大人たちのコレクションの対象として古くから親しまれている理由は何でしょう? 私なりの答えをしますと、その理由は、 1.モデルが非常に精巧に作られていること 2.各モデルが多彩なバリエーションを有すること に尽きると思います。 それではその魅力を少しばかり説明していきましょう…。 |
トミカは縮尺スケール1/60以下の、いわゆる「小スケール」の部類に属するミニチュアカーながら、非常に精巧な造りが特徴です。 実際にトミカを手にしてよーく眺めると、ボディの細かいキャラクターラインやグリル・ライトの形状に至るまで、とても実車に忠実に再現されていることに気が付きます。プラスチックのウィンドウにワイパーブレードを示す突起が設けられていたり、ナンバープレートにもそれらしき数字が彫られていたり。ドアを開けて覗き込めば、ハンドルやシートはもちろん、フロアシフト廻りの細かな形状までもきちんと作り込んである…。 この完成度は世界でも有数のレベルのもので、実際、昭和50年に「USトミカシリーズ」として対米輸出を開始すると、本家「マッチボックス」を向こうに廻して、たちまち爆発的な人気を獲得したそうです。 やはり、手にしたモデルの出来が良く、それが実車に近ければ近いほど親近感が湧くもので、これがコレクションごころをくすぐる、ひとつの大きな魅力となります。 |
ではもうひとつの「バリエーション」とは何でしょう? トミカでは同じモデルであっても、平均で4〜5年とされるモデルサイクルの間には様々な仕様変更が行なわれます。 もっともポピュラーな例が、ボディ色やシート色、スクリーン色などの変更で、現在でもマイナーチェンジ的にしばしば実施されています。 よって、一部の短命に終わったモデルを除いては、製造時期により色の仕様が異なるというのが一般的ですが、同じ時期に複数色のモデルを並売した例もあります。 |
●ボディカラーのバリエーション例・その1 【No.50-3 サバンナRX−7リミテッド】 ('79〜'86) ●ボディカラーのバリエーション例・その2 【No.54-3 ホンダシティ】 ('82〜'84) ●シートカラーのバリエーション例 【No.43-1 トヨタセンチュリー】 ('72〜'87) |
トミカの初期の頃のモデルは、発売当初から2〜3色の色違いモデルを同時にラインナップしており、当時の化粧箱にはボディ色識別用の色印刷がしてありました。
また、シリーズ初期の頃に特有な話としては、製造上の都合による仕様変更も数多くありました。
この「2」シリーズは比較的長く主流の座を務め、その後数年を経て、昭和51年頃から現在のような一体型・銀スタンプに変わりました。
ですから、初期モデルのうち、とても人気があり比較的長い期間生産されたモデルの場合だと、トミカの初期ならではの「ホイールの変遷」と共に生き続けたことになり、ホイールバリエーションだけで4〜5種類も存在することになります。 |
このように外観仕様の異なるモデルが、一般的に「バリエーション」と呼ばれるもので、トミカを語るうえではまさに必須のコトバとなっています。 本来、コレクターとしてはそのバリエーションのすべてが収集対象となるのですが、この他にもラベルの小変更や、サイレンやパトランプといった別体部品の細かい形状変更、実車のマイナーチェンジに合わせたグリル等のデザイン変更などがあります。また、モデルによってはカシメの方法、刻印にも違いがある場合もあるので、個人のコレクションでそれらをすべて網羅することは不可能に近いでしょう。
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さらに、こうしたトミカの正規シリーズとは別に、特定の企業やミニカー専門ショップなどからの依頼によって、特別仕様モデル(色やステッカーが異なる)が、随時数量限定で製造されるので、まさにコレクションには際限がありません。こうした特注モデルは、その稀少性ゆえに値段も高く設定されるのが普通で、一台1,000円〜2,000円というのが相場です。 私が最近のトミカ収集の対象としている「モータースポーツモデル」はまさにこの類で、市販のトミカをベースにして、実際のレース車両と同じスポンサーカラーに塗装された特注モデルです。 |
「相場ついで」に紹介しますと、すでに生産中止となったいわゆる「絶版モデル」には、コレクターの間でとても高い値段が付けられています。 とくに、トミカの初期モデルの、さらに「初期仕様」ともなると、たった一台で数万円というのも珍しくありません。最近では、金型の現存しているモデルに限っては「復刻版」としてセット販売されることもよくありますが、ボディ色やホイールが最新の仕様となるため、当時の仕様のままの絶版モデルの価値は少しも下がることはありません。(…が、2000年にトミカ30周年を記念して当時の仕様のまま復元されたモデルが限定発売されたそうです!…嗚呼) これに加えて、トミカではごく初期の頃に、予想を超える人気の高さに国内工場での生産が追い付かないため、特定の車種の限って香港の下請け業者に製造させた時期があるのです。これらがいわゆる「ホンコントミカ」と呼ばれるモデルですが、これらは製造数が極めて少ないため、コレクターにとっては目にする機会さえ少ない垂涎モノとして語られています。 (ちなみに最近は全てのトミカが中国製になっていますけどね・・・)
ホンコントミカは、「No.10ホンダN360」、「No.11トヨタスプリンターSL」、「No.12カペラロータリークーペ」、「No.30三菱ギャランGTO」、「No.33ニッサンセドリック」、「No.42ダットサン1300トラック」、の6車種が該当します。 |
…と、ざっと紹介してみましたが、現在までの30年の間に500種類を超えるモデルがリリースされたと言われるトミカですが、それぞれのモデルに豊富なバリエーションが存在することを想像すると気が遠くなりそうですね。 よって、その無数の種類の中から、自分自分が設定したテーマに沿ってモデルを収集していく、というのが「トミカ・コレクション」を気軽に楽しむ一番の方法だと思います。 |