28.WW2、6年目のS耐岡山戦をサポート!(Part1) 






 毎年9月といえば、もう私達WW2メンバーにとってはすっかりお馴染みとなった感のある、恒例のスーパー耐久・岡山戦の季節です。

 マツダワークスのモータースポーツ活動が休止されて久しい今、私達がサーキットを疾走するマツダのマシンを応援できるレースは減少の一途を辿り、2006年現在、そのステージは北米や日本を中心としたごく一部のカテゴリーに限られ、ル・マン24時間レースに代表されるような国際的レースに関しては皆無に等しい状態です。マツダの生まれたここ日本でも、マツダは一部カテゴリーにプライベーターが細々と参戦しているのみというのが実態で、世界的なモータースポーツ活動を展開するトヨタやホンダの積極的な取り組みとは実に対照的です。

 そんな中で、市販車スペックに近いマシンで争われる
スーパー耐久シリーズには、’90年代始めのN1耐久時代からハイパワーロータリースポーツのアンフィニRX−7が参戦し、年々、レギュレーションの狭間でクラスを転々としながらも、熱烈なファンに支えられながら孤軍奮闘を続けてきました。その後RX−7は2駆/4駆別のクラス区分となった頃から頭角を現し、発売から10年近くが経った2000年から3年連続でクラスチャンピオンを獲得しました。

 私達WW2が、縁あってこのスーパー耐久シリーズにRX−7で参戦するチームを応援するようになってから7年が経ちました。とくに2001年からは、この人気のシリーズに新たに参戦開始した広島のプライベートチームとジョイントしたサポート活動に発展し、以後の5年間にわたり、通算8戦のスーパー耐久レースを共に戦ってきました。




 ◆サポート準備開始◆

 WW2代表の私が、新宅選手から今年のS耐岡山戦出場の話を聞いたのは、5月初めのことでした。

 例年ならばお盆過ぎ、レースのエントリーの締切り直前になってようやく確定情報が私達のところへと伝わってくるのですが、今年は少々事情が違いました。レギュレーション変更により燃料タンク容量が95Lへ縮小されたために、昨年までの燃料タンクのままでは今シーズンのレースに参戦ができなくなっていたのです。
 このため、新しい燃料タンクを調達してマシンに設置する作業のリードタイムを見込むと、例年よりもかなり早い段階で参戦の決断をし、部品を発注しておく必要があったのです。幸い、チームオーナーは6年連続のスポット参戦を決意、今年も岡山の地で78号車の勇姿が拝めることになったというわけです。

 完全なるプライベートチームゆえに資金や体制面での劣勢は否めませんが、今年のRX−7勢は、レース中2回以上のPITストップを義務付けたルール改正が有利に働き、再びST‐3クラスをリードする速さと強さを取り戻しており、そのことはスポット参戦組の私達にとっても明るい材料となっていました。もちろん、エントリー台数増による戦いの激化も予想されるのですが、私達が昨年のレースで誓った攻めの戦略をさらに推し進めていくならば、チャレンジャーの立場としてその舞台に不足はありません。
 私はWW2としてのサポート継続意思を伝え、いつになくポジティブな雰囲気で新宅選手との打ち合わせを終えました。


 ところが、例年と違って本番レースまでの時間が十分にあり過ぎると、逆に何をしていいか躊躇してしまうもので、結局のところ、WW2サイドの動きは例年と大きく変わることはなく、サポート隊のメンバー人選はレースの1週間前と慌しいものでした。でも嬉しいことに、今年も
克ちゃんT−eMさんの2名がKojiさんからの呼び掛けに応じ、サポート隊への参加を快諾してくれました。克ちゃんは金曜早朝からチームに合流して3日間のサポート、T−eMさんと私は土曜から2日間のサポートです。岡山から参加するT−eMさんは土曜朝にマイカーでサーキットまで来てもらって現地合流。一方の私は、土曜早朝に後発のチームメンバーを広島でピックアップしてからサーキットへ向かう計画です。



 ◆レースウィーク突入◆

 今回はエンジンのセットアップ作業の都合で、78号車と一部スタッフは火曜日からすでにサーキット入りしていました。計時セッションが予定されている週末の3日間のみならず、週の半ばからすでに現地での活動が始まるあたりは、このS耐スポット参戦がチーム関係者にとっての一大イベントであり、1年のうちでも特別な1週間になっていることを物語っています。
 これに伴い、マシンメンテナンスに必要な最低限の機材が既に現地へ送られていたため、私と克ちゃんが水曜夜の恒例行事であるオーナー宅での機材詰め込み作業に駆け付けましたが、ボリュームの少なさも手伝って、ごく短時間で作業は完了しました。例年ならば荷崩れする余地もないほど鮨詰めになるパネルバンの中身も、今回に限ってはそのスペースを持て余し気味でした。でも、ここで調子に乗って詰め過ぎてしまうと、間違いなく帰りに積み切れなくなるので自制が肝心です(笑)。

 土曜から参加する私は、金曜夕方から荷造りを開始し、WW2オフィシャルカーのアテンザワゴンに次々と積んでいきます。

 その中身は、チームオリジナルのPIT看板やPITストップボードをはじめ、クーラーBOXやヘルメット&耐火スーツの予備品、差し入れ用のドリンク類、さらにはタイムスケジュール表からクレデンシャルケースといった細々とした品までで、その大半が約1年間の長い眠りから目覚め、次々に集結していきます。

 今回はこれらの常備品に加え、昨年のレース直後に私がメモしていた追加品として、PITガレージ設置用の
ホワイトボードを1枚調達しました。
 これは、私が情報共有の徹底を要改善点の一つに挙げたことによるもので、実際に昨年は小さなボード1枚しかなく、明らかに約不足でした。インカムのような機能的装備のない私達のチームでは、情報伝達の手段も限られるため、この追加アイテムが活躍してくれるのはまず間違いないところです。
一応、ナカバヤシのブランド品(笑)
フラッグ横にホワイトボードを増設

 その他にも私専用の備品として、レース戦略検討の参考となる過去6年間のレースデータや、各セッションのタイムや動きを書き留めておく記録用紙、デジカメやノートPCなど、準備に万全を期そうと思えば思うほど携行品のボリュームは際限なく増えていきます。またこれに加えて、現地PITからの要求で追加発注したスペアパーツやウェア類の品々を市内各所を回って集配していったので、結果的に土曜の朝私が一人で自宅を出発する段階で、アテンザワゴンのラゲッジスペースはこうした荷物でほぼ占領されていました(笑)。



 ◆平穏な土曜朝◆

 さていよいよ当日の朝です。私は睡眠時間2時間足らずで4時前に起床、眠い目をこすりながら、5時前にはチームメンバー御二方を某所でピックアップし、夜明け前の山陽自動車道を和気ICを目指して走ります。到着目標時間は公式車検の開始時間の7時のはずでしたが、道中、交通の流れは順調なものの、やや遅れそうな雰囲気です。もっとも、昨年の公式車検のような忌わしいドタバタ劇さえなければ、大勢のメンバーが車検場で首を洗って待つ必要もないのですが・・・。
 WW2オフィシャルカーはその後、朝陽に照らされてすっかり明るくなった往路をコンビニ休憩1回のみで走り抜き、7時10分に岡山国際サーキットのゲートを通過しました。が、計算外だったのはPIT真裏のBパドックの駐車スペースが満杯だったことで、アテンザワゴンは車検場の手前で順番待ち中の78号車の傍らをそのまま通過、サーキットの外周路を通って、テクニカルなインフィールドセクションを望む広大なCパドックへと移動します。駐車後、ラゲッジの大荷物(の一部)を抱えて移動用のブリッジを歩いて渡り、チームのPITに到着したのは7時20分過ぎのことでした。

 急いでチームのメンバーに挨拶を済ませ、私が車検場に向かおうとクレデンシャルを手にした瞬間、なんと78号車が私達のPITへ自走で戻ってきました。思わず私は反射的に同行スタッフの顔色を窺ってしまいますが、PIT内の誰もが皆とても落ち着いた様子です。そうです、私達がサーキットのゲートをくぐってバタバタしている間に、78号車はあっけないほどスムーズに今年の公式車検を通過していたのでした。
 まさかのロールバー不備を言い渡され、PITに激震が走った1年前の公式車検の記憶がまだ生々しいだけに、かなり拍子抜けの感じがしましたが、とりあえず78号車とチームテスタスポーツは極めて平穏に土曜日のスタートを切ることができました。


公式車検を終えて帰還した78号車


 ちょうどその頃、T−eMさんからサーキット到着の連絡が入り、私は原付バイクに乗り込んでゲート前へクレデンシャルを渡しに向かいます。いよいよWW2サポート隊の3名が集結、私達は土曜の公式セッションに臨んでいきます。



●9月1日(金)
 専有走行リザルト


 
金曜日の計3回のフリー走行セッションを、大きなトラブルもなく終えていた78号車。1’46.211のベストタイムこそ、ST-3クラスの13台中12位に止まっていますが、今年のマシンは足廻りが大きくリニューアルされており、予選・決勝を通じて確実なポテンシャルアップが期待されています。

 そのリニューアルの一つの目玉は
TEIN製のNewサスペンションセット、そしてもう一つの目玉はフロントタイヤのサイズアップでした。
 ここ数年、RX−7勢唯一のダンロップユーザーとなった私達は、大多数のYOKOHAMAユーザーと同じ、ワイドなフロントタイヤの装着が許されていなかったのですが、今年はようやくメーカーのDUNLOPのサポートをとりつけることに成功。これによって78号車のフロントのグリップレベルは格段に向上していました。もちろん、新しいサスペンションを軸に、伊藤選手と新宅選手の両名が満足するセットアップを探っていく作業は発生しますが、基本的には従来よりもリアのトラクション性能を改善させることができるはずで、セットアップのツボを大きく外さない限りは、前後のトータルグリップの向上による大幅なタイムアップが予想されます。


 

スーパー耐久 専有走行 リザルト
【ST‐3クラスのみ抜粋;順位は総合順位】
◆9月1日(金) 天候:曇り◆
14.#23 C-WEST ADVAN Z 1'40.870 ― 
16.#15 岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 1'41.023 +0.153
17.#70 マジック kg/mm RX-7 1'41.162 +0.292
19.#33 eeiA-ings Z 1'41.180 +0.310
20.# 9 ハウスコンサルタント ADVAN Z 1'41.359 +0.489
22.#19 バーディクラブ TC神戸 Z33 1'42.185 +1.315
23.# 7 MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 1'42.313 +1.443
24.#16 H!NT. 7 1'42.739 +1.869
25.#14 岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 1'43.001 +2.131
26.#27 FINA SUNBEAM ADVAN M3 1'43.068 +2.198
27.#83 BP ADVAN NSX 1'43.341 +2.471
34.#78 WW2 ダンロップ RX-7 1'46.211 +5.341
39.#43 ゼナドリン ディクセル MJ M3 1'49.882 +9.012



緑色も鮮やかに・・・ 見た目もカッコよくなりましたね〜
TEINのサスペンションユニット グリップ力が向上したFrタイヤ




●9月2日(土)
    AM9:15〜9:45
 ドライバーズ予選


 土曜の午前中に行われるドライバーズ予選。このセッションの位置付けは従来と変わらず、いわばA・B両ドライバーに対する参加資格試験にあたります。両ドライバーは、このセッションの走行結果で決まる各クラスごとの予選通過基準タイムおよび、総合での予選通過基準タイムの双方をクリアすることが求められています。といっても、前者は各クラスTOP3のベストタイム平均の110%、後者に至っては総合TOP3のベストタイム平均の130%という緩いものですから、セッション途中でマシントラブルにでも見舞われない限り、予選通過は決して難しいものではありません。
 金曜の専有走行での上位陣のリザルトから計算すると、ST‐3クラスの基準タイムは
1分50秒前後、総合の基準タイムは2分06秒あたりが想定されます。よって新宅選手・伊藤選手ともに1分50秒を切っておけば、まず予選不通過となる心配はありません。即ち、金曜の専有走行での78号車のベストタイムの3秒落ちで走っても大丈夫という状況にあります。



 ドライバーズ予選に与えられた時間は30分間。全車が走行するためコース上が混雑しがちなことを差し引いても、両ドライバーともにアタックラップを2〜3周こなせばまず十分といえるでしょう。78号車にはフレッシュなガソリンが給油され、まずはAドライバーの新宅選手がコクピットに乗り込んで、9時17分にPITを後にしていきます。
 アウトラップを終えた新宅選手は、最初の計時ラップで
1分49秒869をマーク。これだけでもほぼOKレベルでしたが、念のため周回を続け、すぐ次の2周目で1分47秒988を記録して安全圏に突入。ここで早くも新宅選手にPITインのサインが出されます。

 この時点でST‐3クラスのTOP3の顔触れは、
#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX−7(1分40秒284)、#16・H!NT. 7(1分41秒043)、#33・eeiA−ings Z(1分41秒152)の3台。ST‐3クラスの通過基準タイムは、上位3台の平均タイムの110%ですから、今のところは1分50秒909になります。


新宅選手から伊藤選手へ交代


 続いてBドライバーの伊藤選手が9時27分にコースインします。
 伊藤選手は1周目こそ1分51秒台でしたが、2周目には
1分43秒613という好タイムをマーク。43秒台への突入は今週末初めての出来事であると同時に、昨年の78号車のグリッド予選タイムをも上回る驚くべきタイムでした。続く3周目も43秒台を記録した伊藤選手は、アタック最後となる4周目にベストタイムを1分43秒356まで更新し、クラス10位のポジションをキープしたままPITへ帰還しました。

 最終的にST‐3クラス上位3台のタイムは更新されず、クラスの予選通過基準タイムは1分50秒909で確定。総合の予選通過基準タイムは2分06秒147となり、
#78・WW2 ダンロップ RX−7と両ドライバーは、難なく午後のグリッド予選に駒を進めることになりました。
 

 

スーパー耐久 ドライバーズ予選 リザルト
【ST‐3クラスのみ抜粋;順位は総合順位】
◆9月2日(土) 天候:曇り◆
11.# 7 MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 1'40.284 ― 
16.#16 H!NT. 7 1'41.043 +0.759
17.#33 eeiA-ings Z 1'41.152 +0.868
19.#23 C-WEST ADVAN Z 1'41.264 +0.980
20.#15 岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 1'41.301 +1.017
21.#27 FINA SUNBEAM ADVAN M3 1'41.817 +1.533
23.#14 岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 1'42.048 +1.764
24.# 9 ハウスコンサルタント ADVAN Z 1'42.492 +2.208
25.#19 バーディクラブ TC神戸 Z33 1'42.688 +2.404
27.#78 WW2 ダンロップ RX-7 1'43.356 +3.072
31.#70 マジック kg/mm RX-7 1'43.901 +3.617
32.#83 BP ADVAN NSX 1'44.614 +4.330
38.#43 ゼナドリン ディクセル MJ M3 1'48.628 +8.344

 

 まだ、熾烈なタイム争いが展開されるグリッド予選ではないにせよ、43秒台という望外の好タイムはもちろんのこと、クラス13台中10位という現在のポジションも、予選セッションの段階の78号車としては今までにない好位置です。今年の78号車は速さという切り口からみても、昨年までとは「何かが違う」ポジティブな感触を得たことは確かであり、チームは午後のグリッド予選に向けて、極めて明るいムードで準備作業を進めていきます。




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