というわけで、このセッションは今週末を通じて初めて、スリック以外のタイヤを履いての出走となります。ただし、路面状況の変化次第では、セッション途中でもスリックタイヤへ交換が必要となりそうです。
この状況を受け、チームでは急遽タイヤ交換のPITメンバーを選出、それぞれの持ち場の確認と、競技規則の徹底を行います。・・・というのも、78号車は過去、決勝レースでは一度もルーチンのタイヤ交換を計画したことがないため、PITレーンでのタイヤ交換作業は未体験に近い領域だったのです。かくいう私も、マシンのGO/STOP役を担当する傍らで、ジャッキアップ用のエアホース脱着を命じられることに。まさに初物づくしという様相ですが、決勝レース直前に予行演習ができるのはこの上なくラッキーな展開です。

ハーフウェットのフリー走行に備える78号車
昨晩のうちに燃料をフル搭載した78号車は、まず新宅選手のドライブで「チョイ濡れ」の路面の中、慎重にコースイン。約10分後に伊藤選手にステアリングが渡されると、その後すぐ、ドライバー本人からスリックタイヤへの交換がリクエストされました。
そして、9時15分過ぎに伊藤選手駆る78号車がPITへ戻り、チームはタイヤ交換を敢行します。チームオーナーも自ら後輪の交換作業を担当し、着実な作業が行なわれました。私達のチームは交換用ホイールにナットがプリセットされていないため、ナットの脱着に多少のもどかしさは残りますが、「落ち着いて、確実に」をモットーに、初の作業を何とか失敗なくこなしました。一見悠長な作業にも見えますが、下手に慌てて、ナットをマシン下に転がしてしまうよりはマシでしょう。
こうして、未知の領域にトライしたことでやや活気が出てきたチームテスタスポーツ。この後、チームオーナーの提案で、セッション最後のPITイン時を利用して、ドライバー交代&燃料補給までメニューに加えて、再度、タイヤ交換の練習を繰り返すことにしました。
決勝レース中の状況変化を想定したシミュレーション作業が続きます。
スーパー耐久 フリー走行 リザルト
【ST3クラスのみ抜粋;順位は総合順位】
◆9月11日(日) 天候:曇り◆ |
9.#46 realstyle.jp S2000 |
1'44.992 |
―
|
10.#19 EBBRO☆Z☆TC−KOBE |
1'45.103 |
+0.111 |
11.#16 バウフェリス
速人7 |
1'45.418 |
+0.426 |
13.#15 岡部自動車 ハーツ RX−7 |
1'45.651 |
+0.659 |
14.#23 C−WEST
ORCアドバンZ |
1'46.192 |
+1.200 |
16.#7
メーカーズ ゼナドリン RX−7 |
1'46.649 |
+1.657 |
17.#48 フィールズT&Gアドバン
Z |
1'46.732 |
+1.740 |
18.#78 WW2
ダンロップ RX−7 |
1'46.940 |
+1.948 |
19.#29 PERSON’S elf YH NSX FAB |
1'47.024 |
+2.032
|
24.#83 BP ADVAN NSX |
1'48.332 |
+3.340 |
28.#27 FINAエクスクエアーADVAN M3 |
1'49.500 |
+4.508 |
このフリー走行、ST3クラスのリザルトは昨日までの順位をシャッフルしたかのような大変動。予選一発の速さにやや劣っていたS2000が、クラス唯一の44秒台で見事にTOPを取りました。私達の78号車もこの混乱に乗じて?総合18位(クラス7位)まで大躍進。
決勝直前のハーフウェット路面でリスクを避けたチームが多かったためと思われますが、18位というポジションは参加全36台中でちょうど真ん中の好位置。何気なくリザルト表を眺めてみても、随分と気持ちが良いものですね(^^)v。
●9月11日(日)
AM11:10〜12:00
ピットウォーク |
恒例のピットウォークは土曜の昼にも設けられてはいますが、やはりその熱気たるや、日曜の決勝レース直前のこの時間帯に勝るものはありません。レース直前の緊迫感と演出された華やかさが巧みに絡み合う、奇妙な奇妙な50分間が始まります。
昨年よりエントリー台数が10台減ったことで、PITレーンを埋め尽くす群集の全長がやや短くなった気はするものの、その場を取り巻く熱気と人口密度の高さは相変わらずで、最終コーナー寄りで「隅っこ」の私達のPIT前でさえ、目の前を行き交うS耐ファンの流れは決して絶えることがありません。

ピットウォーク中の78号車の展示状況
私は暫し、佐竹会長の仕事場であるサインガードエリアに腰を据え、私達のPIT前で足を止めた熱心なファンが、78号車をカメラに収めたり、コクピットを覗き込んだりする様子を観察していました。
といってもじつは頭の中は直前に迫った決勝レースの戦略のことで一杯で、例年のように他所のピットウォーク見物に出掛けるには正直気が重かったのですが、ここ5年間のS耐サポートを通じて身に付いた習性とは恐ろしいもので、ふと気が付けば、私は何かに急き立てられたかのように、デジカメ片手に華やかなPITレーン上を彷徨っていました(笑)。

#7
メーカーズ ゼナドリン RX-7 |

#16
バウフェリス 速人7 |
精悍なレーシングマシンを取り囲むように、ドライバーやキャンギャル達が華を添えるピットウォークタイム。大勢の人でごった返すPITレーンで、いつも私がチェックを欠かさないのはST3クラスのライバル勢のPITです。フェアレディZ、BMW
M3、S2000、そしてRX−7と、S耐の中で最もマシンバラエティが豊富なST3クラスだけあって、それぞれのPITの色合いも多種多様で、とても見応えがあります。
そんな中、私はRX−7勢のチームのPIT前に来ると、直接に順位を争うライバルとしての立場というより、むしろ、一人の熱烈なMAZDAファンとして、決勝レースでの健闘を祈る気持ちに強く支配されます。
RX−7(FD3S)は既に量産モデルの生産中止から3年も経過していますが、未だレーシングマシンとしては一線級の実力を持ち、日本のレーシングフィールドで今なお戦い続ける数少ないMAZDA車として、熱心なMAZDAファン、ロータリーファンの大きな期待を一手に背負っているのです。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
熱心なロータリーファンといえば、私達WW2サポート隊にとって、ここ岡山のレースでは必ず思い出す人々がいます。
そうです、2001年のチームテスタスポーツの初参戦の時から、私達WW2の参戦コンセプトに共感し、以来、ずっと78号車を応援してくれているあの親父さん達です。
ピットウォーク開始から約20分経った頃、私はふと気配を感じ、他チームのPIT前から急いで「6−B」PITへ舞い戻りました。すると、PITガレージ内で克ちゃんとにこやかに談笑している彼らの姿があったのです!!今年もまた決勝日のピットウォークに参加し、私達の激励のために訪れてくださったのです。
今回も少しばかり立ち話をさせてもらいましたが、かつて親父さんは国内レースでのサバンナRX−3の活躍に惹かれてロータリーファンになったとのことで、当時の国内レースのビデオの貸出しをマツダの広報部に申し入れたほどの強いコダワリをお持ちでした。(残念ながら著作権を理由に断られたそうですが・・・涙)
親父さんと一緒に来てくれた二人の若人も、かなり高いテンションで私達に激励の言葉をかけてくれました。きっと、ロータリーマシンの華々しい活躍の歴史を、この親父さんからしっかりと刷り込まれているに違いありません(^^)。
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激励に訪れてくれた御三方と克ちゃん |
熱心にコクピットを撮影する親父さん |
一年ぶりの再会を心から喜びながら、私達は最後にまた固い握手を交わしました。親父さんからは「頑張ってくれよ!!」と力強い言葉をかけてもらい、私達もそれに応えるよう最大限の努力をすることを約束しました。3人は別れを惜しむように最後まで78号車の姿をビデオカメラに収めながら、やがて、PITレーンに押し寄せ続ける群集の中に消えてゆきました。
私は彼らに直接言及こそしませんでしたが、今年のS耐岡山戦に臨むにあたり、WW2として心中ひそかに期するところがありました。
その思いの中心は、私達WW2が追い求める「サーキットで活躍するMAZDAのマシンの姿」の実現を、他でもないこの78号車で成し遂げるために、過去4年間のS耐サポートの現場で感じてきた悔しさやもどかしさの部分を、いかにして私達自身の手で解消していくか、ということに尽きます。レース直前に今回の戦略立案を任されて以来、私はその実現手段を必死に探り続けてきたわけですが、金・土と熟考した挙句に辿り着いた結論は、もうあと1時間もすれば白日の下に晒されます。
結果はどう転ぶかわかりませんが、少なくとも、昨年までのチームテスタスポーツの戦いからの脱却を狙う今回の「チャレンジ」は、グランドスタンドから戦況を見つめる彼らにもきっと無言のうちに伝わることでしょう。
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