27.WW2、岡山国際でのS耐参戦をサポート!(後編) 






 金曜、土曜と思わぬハプニングに見舞われた今年のS耐岡山戦も、いよいよ決勝の日を迎えました。基本的には、ここまで78号車にはメカニカルトラブルの発生はなく、セッションを快調に消化してマイレージを伸ばし
続けています。

 日曜朝の嬉しいNewsとしては、木曜日のプライベートテストに参加して以来、所用でサーキットを離れていたチームオーナーがこの日から再び合流することになり、チームテスタスポーツには一層強力な布陣が敷かれました。オーナー不在の金曜と土曜、私
Nukupeeがチーム監督としての代役を務めてきたわけですが、なにせ全員にとって丸々1年ぶりの実戦となるだけに、プライベーターとしてのレース参戦経験の豊富なチームオーナーの存在感たるや絶大なものがあり、チームメンバーの安心感が全く違ってきます。

 これで私も本来のレース戦略担当に専念できるかも!(甘いか・・・?)



●9月11日(日)
    AM9:00〜9:30
 フリー走行

 曜朝の岡山国際サーキットはどんよりとした曇り空で、宿からの往路では時折り小雨がぱらつくという状況。コース上には夜半に降った雨がまだ残っていました。

 朝9時から始まるフリー走行に備え、チームは路面の状況を勘案し、まずはインターミディエイトタイヤを装着して様子を見ることにしました。
 午後の決勝レースの天候はまだ予測がつきませんが、少なくともこれから始まる30分間のフリー走行の間は、曇り空のままで持ち堪えそうな雰囲気でした。

 PITには早速、パドックで待機するパネルバンの奥から、溝付きタイヤのセットが急いで運び込まれました。組み合わされている白いリーガマスターのホイールは、78号車が旧カラーリングをまとっていた時代からの長年の愛用品。長らくマシンサポートで関わってきた私達WW2にとっても、思わず懐かしさが込み上げてくる逸品です(笑)。

 

じっくり寝かして●●年(嘘)
レイン用タイヤの登場


 
というわけで、このセッションは今週末を通じて初めて、スリック以外のタイヤを履いての出走となります。ただし、路面状況の変化次第では、セッション途中でもスリックタイヤへ交換が必要となりそうです。


 この状況を受け、チームでは急遽タイヤ交換のPITメンバーを選出、それぞれの持ち場の確認と、競技規則の徹底を行います。・・・というのも、78号車は過去、決勝レースでは一度もルーチンのタイヤ交換を計画したことがないため、PITレーンでのタイヤ交換作業は未体験に近い領域だったのです。かくいう私も、マシンのGO/STOP役を担当する傍らで、ジャッキアップ用のエアホース脱着を命じられることに。まさに初物づくしという様相ですが、決勝レース直前に予行演習ができるのはこの上なくラッキーな展開です。


T−eMさんが磨き中(^^♪
ハーフウェットのフリー走行に備える78号車


 昨晩のうちに燃料をフル搭載した78号車は、まず新宅選手のドライブで「チョイ濡れ」の路面の中、慎重にコースイン。約10分後に伊藤選手にステアリングが渡されると、その後すぐ、ドライバー本人からスリックタイヤへの交換がリクエストされました。
 そして、9時15分過ぎに伊藤選手駆る78号車がPITへ戻り、チームはタイヤ交換を敢行します。チームオーナーも自ら後輪の交換作業を担当し、着実な作業が行なわれました。私達のチームは交換用ホイールにナットがプリセットされていないため、ナットの脱着に多少のもどかしさは残りますが、「落ち着いて、確実に」をモットーに、初の作業を何とか失敗なくこなしました。一見悠長な作業にも見えますが、下手に慌てて、ナットをマシン下に転がしてしまうよりはマシでしょう。

 こうして、未知の領域にトライしたことでやや活気が出てきたチームテスタスポーツ。この後、チームオーナーの提案で、セッション最後のPITイン時を利用して、ドライバー交代&燃料補給までメニューに加えて、再度、タイヤ交換の練習を繰り返すことにしました。

 決勝レース中の状況変化を想定したシミュレーション作業が続きます。

 

スーパー耐久 フリー走行 リザルト
【ST3クラスのみ抜粋;順位は総合順位】
◆9月11日(日) 天候:曇り◆
 9.#46 realstyle.jp S2000 1'44.992

10.#19 EBBRO☆Z☆TC−KOBE 1'45.103 +0.111
11.#16 バウフェリス 速人7 1'45.418 +0.426
13.#15 岡部自動車 ハーツ RX−7 1'45.651 +0.659
14.#23 C−WEST ORCアドバンZ 1'46.192 +1.200
16.#7  メーカーズ ゼナドリン RX−7 1'46.649 +1.657
17.#48 フィールズT&Gアドバン  Z 1'46.732 +1.740
18.#78 WW2 ダンロップ RX−7 1'46.940 +1.948
19.#29 PERSON’S elf YH NSX FAB 1'47.024

+2.032

24.#83 BP ADVAN NSX 1'48.332 +3.340
28.#27 FINAエクスクエアーADVAN M3 1'49.500 +4.508

 
 このフリー走行、ST3クラスのリザルトは昨日までの順位をシャッフルしたかのような大変動。予選一発の速さにやや劣っていたS2000が、クラス唯一の44秒台で見事にTOPを取りました。私達の78号車もこの混乱に乗じて?総合18位(クラス7位)まで大躍進。
 決勝直前のハーフウェット路面でリスクを避けたチームが多かったためと思われますが、18位というポジションは参加全36台中でちょうど真ん中の好位置。何気なくリザルト表を眺めてみても、随分と気持ちが良いものですね(^^)v。




●9月11日(日)
    AM11:10〜12:00
 ピットウォーク

 恒例のピットウォークは土曜の昼にも設けられてはいますが、やはりその熱気たるや、日曜の決勝レース直前のこの時間帯に勝るものはありません。レース直前の緊迫感と演出された華やかさが巧みに絡み合う、奇妙な奇妙な50分間が始まります。

 昨年よりエントリー台数が10台減ったことで、PITレーンを埋め尽くす群集の全長がやや短くなった気はするものの、その場を取り巻く熱気と人口密度の高さは相変わらずで、最終コーナー寄りで「隅っこ」の私達のPIT前でさえ、目の前を行き交うS耐ファンの流れは決して絶えることがありません。

PITストップボードも登場(^・^)
ピットウォーク中の78号車の展示状況


 私は暫し、佐竹会長の仕事場であるサインガードエリアに腰を据え、私達のPIT前で足を止めた熱心なファンが、78号車をカメラに収めたり、コクピットを覗き込んだりする様子を観察していました。

 といってもじつは頭の中は直前に迫った決勝レースの戦略のことで一杯で、例年のように他所のピットウォーク見物に出掛けるには正直気が重かったのですが、ここ5年間のS耐サポートを通じて身に付いた習性とは恐ろしいもので、ふと気が付けば、私は何かに急き立てられたかのように、デジカメ片手に華やかなPITレーン上を彷徨っていました(笑)。


こちらはレギュラー参戦組(ムラムラッ?)
#7 メーカーズ ゼナドリン RX-7
こちらはスポット参戦組(メラメラ)
#16 バウフェリス 速人7

 
 精悍なレーシングマシンを取り囲むように、ドライバーやキャンギャル達が華を添えるピットウォークタイム。大勢の人でごった返すPITレーンで、いつも私がチェックを欠かさないのはST3クラスのライバル勢のPITです。フェアレディZ、BMW M3、S2000、そしてRX−7と、S耐の中で最もマシンバラエティが豊富なST3クラスだけあって、それぞれのPITの色合いも多種多様で、とても見応えがあります。
 そんな中、私はRX−7勢のチームのPIT前に来ると、直接に順位を争うライバルとしての立場というより、むしろ、一人の熱烈なMAZDAファンとして、決勝レースでの健闘を祈る気持ちに強く支配されます。

 RX−7(FD3S)は既に量産モデルの生産中止から3年も経過していますが、未だレーシングマシンとしては一線級の実力を持ち、日本のレーシングフィールドで今なお戦い続ける数少ないMAZDA車として、熱心なMAZDAファン、ロータリーファンの大きな期待を一手に背負っているのです。

◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 熱心なロータリーファンといえば、私達WW2サポート隊にとって、ここ岡山のレースでは必ず思い出す人々がいます。
 そうです、2001年のチームテスタスポーツの初参戦の時から、私達WW2の参戦コンセプトに共感し、以来、ずっと78号車を応援してくれているあの親父さん達です。

 ピットウォーク開始から約20分経った頃、私はふと気配を感じ、他チームのPIT前から急いで「6−B」PITへ舞い戻りました。すると、PITガレージ内で
克ちゃんとにこやかに談笑している彼らの姿があったのです!!今年もまた決勝日のピットウォークに参加し、私達の激励のために訪れてくださったのです。

 今回も少しばかり立ち話をさせてもらいましたが、かつて親父さんは国内レースでのサバンナRX−3の活躍に惹かれてロータリーファンになったとのことで、当時の国内レースのビデオの貸出しをマツダの広報部に申し入れたほどの強いコダワリをお持ちでした。(残念ながら著作権を理由に断られたそうですが・・・涙)
 親父さんと一緒に来てくれた二人の若人も、かなり高いテンションで私達に激励の言葉をかけてくれました。きっと、ロータリーマシンの華々しい活躍の歴史を、この親父さんからしっかりと刷り込まれているに違いありません(^^)。


背景には「MAZDA motorsport」!! ホントにいつもありがとうございます。
 激励に訪れてくれた御三方と克ちゃん  熱心にコクピットを撮影する親父さん


 一年ぶりの再会を心から喜びながら、私達は最後にまた固い握手を交わしました。親父さんからは
「頑張ってくれよ!!」と力強い言葉をかけてもらい、私達もそれに応えるよう最大限の努力をすることを約束しました。3人は別れを惜しむように最後まで78号車の姿をビデオカメラに収めながら、やがて、PITレーンに押し寄せ続ける群集の中に消えてゆきました。


 私は彼らに直接言及こそしませんでしたが、今年のS耐岡山戦に臨むにあたり、WW2として心中ひそかに期するところがありました。

 その思いの中心は、私達WW2が追い求める
「サーキットで活躍するMAZDAのマシンの姿」の実現を、他でもないこの78号車で成し遂げるために、過去4年間のS耐サポートの現場で感じてきた悔しさやもどかしさの部分を、いかにして私達自身の手で解消していくか、ということに尽きます。レース直前に今回の戦略立案を任されて以来、私はその実現手段を必死に探り続けてきたわけですが、金・土と熟考した挙句に辿り着いた結論は、もうあと1時間もすれば白日の下に晒されます。

 結果はどう転ぶかわかりませんが、少なくとも、昨年までのチームテスタスポーツの戦いからの脱却を狙う今回の「チャレンジ」は、グランドスタンドから戦況を見つめる彼らにもきっと無言のうちに伝わることでしょう。



 ◆屈辱の昨年…◆


 さて、いくら新しいチャレンジと繰り返し強調したみたところで、周囲のチームがあっと驚くような秘策や奇策が飛び出すわけでは決してありません。ひとまず、チームのこれまでの4年間の戦いの中で、明らかに他チームと比べてビハインドとなっていた部分を一歩ずつ解消していこうという地道なものです。
 
 そのビハインド部分が強調されたレースが昨年のTI戦でした。

 私達の78号車が大きなトラブルもなくほぼ予定通りレースを走りきったにもかかわらず、PITイン回数が他チームより1回多かったことが災いし、ラップタイムに劣るクラス4勢の大半のマシンに先行されてしまう悔しいリザルトとなり、旧来のチーム戦略の限界をイヤというほど思い知らされました。
 そのうえ、ただでさえRX−7の相対的な戦闘力が下降線を辿り始めている中で
、いつまでも私達のチームが戦略的に大きなロスを抱え込んだままでいては、いつかは最後尾しか走れなくなってしまう日が来るのではないか・・・。

みんな温かく迎えてくれたけど・・・・
昨年のTI戦を走り切ってPITに帰還した78号車



 そんな懸念から、私は昨年のレース後、打開策として以下のような”ネクストステップ”を考えました。

 @他チームと同じ1PIT作戦を採用する

 APITストップの際にタイヤ交換を実施する

 Bレース序盤で積極的なポジションアップを狙う



 @、AはS耐の岡山戦に限っていえば極めて当たり前のことに過ぎず、ひとまず基礎的な部分で他チームと肩を並べるだけのものです。とはいっても、チームの諸事情でそう簡単に実現できそうにないのも事実です。マシンの燃費性能や熱害の影響をはじめ、ドライバーの体力、ドライバーのラインナップ、PITクルーの体制など、複雑に絡み合う様々な障壁をひとつひとつ取り払っていかなければ達成できません。

 一方で、Bは少し毛色が違い、これまでで初めて「魅せる」レースを意識した私からの提案です。この場合の魅せる相手とは、メインスタンドの観客はもちろん、我々チームメンバー自身も含んでいます。

 私達のチームはこれまで、スタートドライバーの新宅選手が序盤に手堅くポジションをキープし、中盤で伊藤選手につなぐというお決まりのパターンを繰り返してきました。
 いつもここから伊藤選手がスプリントレース並みの激しい走りを見せ、私達を大いに盛り上げてくれるのですが、なにせレースはすでに中盤戦に突入しており、各マシンの周回数もバラバラ。見た目の順位がほとんど意味を成さない中で、タイミングモニター上でしかその活躍が確認できないというもどかしさがありました。折角のこの走りをもっと判りやすいシチュエーションで披露できたら・・・。そんな思いから、ローリングスタートからレースの幕が切って落とされる1スティント目に伊藤選手を起用するという案が生まれました。

 
スタート直後から”ファイター”伊藤選手にできるだけのポジションアップを果たしてもらい、レースが落ち着いた中盤戦で新宅選手のステディな走りにつなぎ、最後まで走り切る。

 そんな会心のストーリーが描ければ、常連チームが少しでもマイナートラブルを抱えた瞬間に、即ポジション争いに絡むことが可能なはずです。もちろん、序盤の混戦の中でのアグレッシブな走りはリスク含みということも決して忘れてはなりませんが、少なくともチャレンジする価値はあるはずです。



 ◆決勝の新戦略◆

 私は、5回目のS耐岡山戦に臨むチームテスタスポーツの新しい戦略案として、上記の基本コンセプトをチームオーナーに打ち明け、大筋で賛同を得ることができました。レース用機材の積込み作業に集まった水曜夜の出来事でした。

 私はこの時、チームが従来の殻を打ち破って少しでも上を狙っていくという今回の新しいチャレンジを、

 ”Charles大作戦”

と秘かに名付けました。
 実はこれ、つい数週間前にアメリカで誕生したばかりの、
こーぢさんの長男・一翔くんのミドルネームを拝借したもので、チームが新しく「生まれ変わる」ことと引っ掛けていました。当然ながら、かの地のこーぢさんも本件快諾済みです!・・・事後承諾ですけど(爆)。


 それからというもの、ひたすら私は金・土・日と、この大作戦を現実のものとするためのバックデータ収集に没頭しました。

 最大のネックと思われた決勝レース燃費は、プラクティスでの数回の燃費計測結果と過去の燃費データの分析の結果、ひとまず「
1.85km/L以上」という
見通しが立ちました。これなら連続周回も50周程度はこなせる計算になります。一方で今レースの78号車の総周回数は99周あたりと想定されるため、総周回数をキッチリ半分で割ってやれば、決して余裕はないものの、ハード的には1ストップ作戦が成立する目処が立つわけです。しかもチーフメカ&チーフエンジニア(笑)のながつ氏によれば、クールスーツ用の氷もギリギリ持ちこたえるはずとのこと。

 となれば最大の懸念は両ドライバーの体力であり、1時間25分〜30分と計算される連続ドライブ時間にどう対処するかにかかります。
 とくに、序盤の団子状態で激しいポジション争いを演じる可能性が高いスタートドライバーの伊藤選手が、張り詰めた緊張感の中でいかに体力と集中力を持続できるかがポイントと思われますが、何せ過去に経験のない未知の領域ゆえに、予測を立てにくい状況でした。

 もうひとつの目玉であったタイヤ交換の実施は、日曜朝の練習の様子や、過去に新品タイヤでのタイムアップ代が少なかったという78号車の実績を考慮に入れ、ハード/ソフト両面の準備不足が明らかであり、大幅なタイムロスの懸念があることから、今回は見送ることにしました。

 こうして、Charles大作戦の全容は、決勝日朝のフリー走行を終えて暫くのちに、
「タイヤ無交換の1PIT作戦」というカタチでひとまず落ち着きました。

◆    ◆    ◆    ◆    ◆


 私が過去のS耐参戦レポートで幾度となく触れてきたように、チームテスタスポーツには究極のアマチュアリズムともいうべき、かけがえのないプレジャーが存在しています。年1回の参戦のために、様々な方面からチームオーナーの元に集結して来るレース好きの仲間達がいて、スポット参戦というハンデを克服してしまう見事なまでの団結力があり、そして何より、「完走」の喜びをチーム全員で分かち合える素晴らしい雰囲気があります。こんな純粋なプライベーター体制であるからこそ、私達WW2の素人サポートを快く受け入れてもらっているわけです。

 私は新しい戦略案をずっと考えながらも、チームの生命線であるこの素晴らしい雰囲気を壊すことがないよう、絶えず配慮してきたつもりです。決して、ドライに割り切って結果のみを最優先させるのではなく、これまで通りのチームメンバーの固い絆を維持したままで、より大きな喜びを求めてチャレンジを試みる。これこそが、今回の「Charles大作戦」の最大の使命であり、真価が問われるポイントといっても過言ではないでしょう。



ん?スタッフの方が多いか(汗)
敷居の低いピットウォークタイムもウチならでは(^^)



 午後の決勝レースで一体どんな展開が待ち受けているのかはわかりませんが、このチームテスタスポーツの新戦略の結果がどう出たのか、また、そのチャレンジを通して私達が何を得たのか、という点に注目し、じっくり検証していきたいと思います。




→ S耐岡山戦の決勝レースレポートは、近日中に          
    
WW2 EVENT REPORT にて公開する予定です(汗)






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