24.WW2、4度目のS耐TI戦をサポート!(後編) 







●9月11日(土)
    PM1:50〜2:30
 グリッド予選


 
土曜午後の2回目の公式予選セッションは、いよいよ決勝レースのスターティンググリッドを決定する戦いとなります。一般に耐久レースでは予選順位の重要性はさほど高くないと言われますが、S耐TI戦はレース距離が400kmと短く、殆んどのチームが1ストップ作戦を採るため、スプリントレース並みにその重要性は増しているといえます。もちろん、ライバルのマシンの仕上り具合いを確認し、決勝レースの展開を占う上で大変重要なセッションであることは言うまでもありません。

 ドライバー予選終了後、お昼のピットウォークを挟んで簡単なメンテナンス作業を済ませた78号車には、グリッド予選から決勝スタートを通じて装着が義務付けられている、赤いマーキング入りのタイヤが装着され、出走の瞬間を待ち受けます。

 
セッションの合間に
janさんT−eMさんが丹念に磨き込んだピカピカのP1レーシングのホイールと、新品スリックタイヤの絶妙なコンビネーションが、戦闘態勢に入った78号車の足元をぐっと引き締めています。
お二人ともお疲れさまでした〜
懸命の磨き作業中


 78号車のエンジンセッティングは今回も耐久性を最重視したものです。4度目のTI戦ながら、チームとして未だに「攻め」の姿勢に転じるには至っていませんが、今年のチーム事情や従来からの参戦スタンスを考慮すれば、最善の選択と言わざるを得ないでしょう。それよりも、昨年からチームに加わったながつ氏のメンテナンスによってマシンの基礎整備が進んだ結果、78号車の持病でもあった原因不明のエンジントラブルに見舞われる可能性はもはや激減しており、エンジンパフォーマンスの底上げという点に関しては目を見張るものがあります。

 その一方で、従来からの課題だった足廻りの煮詰めは、依然として全てのドライバーに合った落とし処を見出し兼ねているようでした。3人のドライバーのLAPの積み重ねが勝負を左右する耐久レースゆえに、一周でも多く走破するためには、平均LAPタイムの改善と各ドライバーのタイムの均衡化が急務なのですが、各ドライバーのセットアップ嗜好の乖離を埋め切ることができずに、未だにコーナリング性能の劇的改善には至っていません。
 ここはとりあえず、フレッシュな新品タイヤを装着することで、手っ取り早いポテンシャルUPを図ります。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 
グリッド予選は全60分を20分ずつの時間帯に区切り、それぞれ「1/2/N+クラス占有」、「3/4クラス占有」、そして「全クラス混走」、と分けた方式で行なわれます。ただし、今回は予選開始前にカートの決勝レースが行なわれたため、最初の20分間の各チームの出足はとても鈍く、路面状況が好転する最後の「全クラス混走」の時間帯に勝負を賭けている様子でした。



PITアウトのタイミングを窺う伊藤選手


 
78号車には先にアタッカーの伊藤選手が乗り込み、コースインのタイミングを待ちますが、3クラス/4クラスの占有走行時間になっても、依然としてPITロードは閑散とした状態で、目立った動きはありません。
 やがて、痺れを切らしたように
#7・MAKERS hart RX−7が姿を現すと、その後を追うようにして、伊藤選手はようやく14時55分過ぎにコースインしていきました。

 比較的空いているコースを利用して、伊藤選手は早々にアタックを開始。その2周目には、午前中に記録したタイムを僅かに上回る
1’44.313をマークし、一旦PITに戻ります。もちろん、このタイムは金・土を通じて78号車が叩き出した最速のラップタイムとなっていますが、タイムのUP幅が小さかったのは、やはり路面状況の悪化の影響と思われます。

 代わってコースインした新宅選手は、伊藤選手同様、午前中のタイムをコンマ3秒縮める
1’46.074のタイムをファーストアタックでマークすると、早々に走行を切り上げてPITイン。その後、再びステアリングを託された伊藤選手が2度目のコースインを行ないますが、既にコース上は全クラス混走の時間帯に突入しており、さらなるタイムアップには厳しい状況でした。



スーパー耐久 グリッド予選 リザルト
【クラス3車両のみ抜粋;順位は総合順位】
◆9月11日(土) 天候:晴れ◆
 9.#27 FINA BMW M3 1'40.677 ― 
10.#23 C−WEST ORCアドバンZ 1'40.866 +0.189
12.#245 モバイルキャスト アドバンZ 1'40.995 +0.318
14.#83 BP ADVAN NSX 1'41.164 +0.487
15.#88 ingsアドバンコムセント Z 1'41.555 +0.878
20.#19 TC−KOBE・MAX・Z33 1'41.916 +1.239
21.#79 TAITEC ADVAN NSX 1'42.329 +1.652
22.#15 レーシングスパルコディクセルRX−7 1'42.764 +2.087
23.#7  MAKERS hart RX−7 1'42.783 +2.106
35.#78 WW2 ダンロップ RX−7 1'44.313 +3.636
―   #14 エンドレス UEMATSU RX−7


 結局#78・WW2 ダンロップ RX−7は、午前中のドライバーズ予選で記録したタイムをコンマ1秒更新するに留まり、些か控えめな予選タイムに終わってしまいました。

 元々マシンセットアップが停滞気味で、劇的なタイムアップ要素に乏しい78号車ではあったものの、とっておきの新品タイヤを装着してタイムアタックした分、チームは密かな期待を寄せていたのですが、それほど美味くコトは運ばなかったようです。昨年の予選では搭載燃料計算を誤り、約40kgもの余計なウェイトを積んで走行しましたが、その時のタイムにもコンマ7秒及ばない残念な結果でした。


 クラス3の予選の戦いはやや意外な展開を見せ、伏兵ともいえる
#27・FINA BMW M3が早々に40秒台中盤の好タイムをマーク。その後、Z33勢が肉薄したものの、M3のタイムを更新するマシンはついに現れず、堂々のクラスポール獲得となりました。
 一方で、今シーズンの劣勢が否めないRX−7勢はやはり振るわず、
#15・レーシングスパルコディクセルRX−7のクラス8位が最上位で、なんとクラス3の最後方グリッド、8位〜9位〜10位を占める事態となってしまいました


TI 400km Race グリッド予選
正式結果は→こちら



●9月12日(日)
    AM8:00〜8:30
 フリー走行

 一夜明けて、日曜朝のフリー走行は、決勝レース直前の唯一の走行セッションとなります。
 これに先立ち、チームは土曜日のCドライバー予選を走り終えた後、異音が発生していたトランスミッションの交換作業を敢行。さらには、デフとドライブシャフトの交換作業を追加で実施していました。このため、この朝のセッションでは、3人のドライバーによるマシンの状態チェックを最優先で行なうことになりました。



 

スーパー耐久 フリー走行 リザルト
【クラス3車両のみ抜粋;順位は総合順位】
◆9月12日(日) 天候:晴れ◆
 6.#23 C−WEST ORCアドバンZ 1'41.228 ― 
11.#245 モバイルキャスト アドバンZ 1'42.201 +0.973
13.#88 ingsアドバンコムセント Z 1'42.422 +1.194
17.#83 BP ADVAN NSX 1'42.954 +1.726
18.#27 FINA BMW M3 1'42.982 +1.754
20.#79 TAITEC ADVAN NSX 1'43.209 +1.981
23.#14 エンドレス UEMATSU RX−7 1'43.589 +2.361
25.#19 TC−KOBE・MAX・Z33 1'43.996 +2.768
26.#15 レーシングスパルコディクセルRX−7 1'44.094 +2.866
29.#7  MAKERS hart RX−7 1'44.441 +3.213
39.#78 WW2 ダンロップ RX−7 1'46.547 +5.319


 
金曜から土曜にかけて、78号車はセッションを消化するごとに、クラスTOPとのタイム差を少しずつ縮めてきましたが、このフリー走行ではその良い流れを維持することができず、再び5秒以上のタイム差に逆戻りしてしまいました。
 装着タイヤがグリッド予選時の新品タイヤではないため、多少のタイムダウンは想定済みですが、前日に交換した部品にもとくに異常があるわけでもないのに、決勝を直前に控えてタイム差が大きく拡大してしまったことは、午後の決勝レースに向けてやや気になるところです。





●9月12日(日)
    AM11:35〜12:25
 ピットウォーク

 決勝レースを直前に控えた時間帯には、恒例のピットウォークが開催されます。

 朝のフリー走行終了後、公式結果を入手するためS耐事務局まで足を運んだ私は、パドック内のゲート手前で長蛇の列をなして待機する大勢のファンの姿に驚かされました。お目当ては各人によって様々だと思いますが、ピットウォーク開始1時間も前から並んでいる熱意には思わず脱帽でした。こうした熱心なファンの存在が、S耐人気をしっかりと支えてくれているのでしょうね。


「目抜き通り」に押し寄せる群衆


 私は予選日のピットウォークで主な写真撮影を済ませていたので、今回はあえて敵情視察の旅には出ず、自PIT周辺に腰を据えて、人間ウォッチを決め込みました。というのも、ここは多くのファンの注目が集まる「目抜き通り」ゆえ、カメラ片手に繰り出していくには余りにも人の壁が厚く立ちはだかっているように感じたのでした。ピットウォーク開始後暫くの間は、メインストレートで繰り広げられたバイクのパフォーマンスショーに気を取られる人もいたのですが、そのイベントが終了し、全員がPITロード側に押し寄せてくると、今回のピットウォーク参加者の多さが一層際立ちました。

左向けば〜 右向けば〜


 
その中で今回はちょっと面白い現象を発見。
 先に紹介したように、私達は大変賑やかなPIT位置に陣取っていたわけですが、すぐ両隣りで繰り広げられているキャンギャルの熾烈な撮影大会の合い間で、私達のPIT前スペースはちょっとした息抜きの場と化していました。ここで足を止めて一息入れたり、集団から一旦抜け出してカメラを構えるタイミングを図り直したり、なかには78号車の前で座り込み、カメラのフィルムの入れ替えを始める輩まで出現する始末・・・
(苦笑)

 もちろん、我らが78号車をきっちりとファインダーに収めて行ってくれるS耐ファンも大勢います。

 チームテスタスポーツのPITには、彩りを添えてくれるキャンギャルは一人もいませんが、他のチームのように観客の出入りを規制する柵の類は一切設けていないので、見方によれば、本物のレーシングマシンと最も接近できるチャンスが提供されているのです。

 現に、78号車のサイドウィンドウから顔を突っ込むようにして、熱心にコクピット内を観察していく人も数多く見られました。
 折角のPITウォークの機会ですから、私達のマシンを通して、少しでもレーシングカーやスーパー耐久レースを身近に感じてもらえると嬉しいですね。

おっ、あそこに携帯電話があるぞっ(少年談)
78号車の前で記念撮影(^.^)


◆    ◆    ◆    ◆    ◆


 次から次へと押し寄せる人並みを眺めていた克ちゃんと私にとって、ここTIのピットウォークでは忘れられない1つのシーンがありました。

 それは、チームテスタスポーツがオレンジ&グリーンの手作りカラーリングのRX−7で初出場を果たした2001年のTI戦でのこと。マツダのモータースポーツ復帰をアピールする私達WW2のメッセージに激しく共感し、
「ロータリーは絶対に止めちゃあいかんよ!」 「あんたら、期待してるから頑張ってくれよ!」と、アツいエールを送ってくれた一組の親子の姿でした。
 それ以来、私達はどこのサーキットに行っても、PITウォークに立ち会うたびに必ずその感動の光景を思い浮かべていたのでした。


 当初、右から左へ一方的に進んでいた群集の流れがやがて交錯し始め、50分間のピットウォークの残り時間も少なくなってきた頃、ついに私達が待ちかねていた瞬間が到来しました。そうです、ついにあのオヤジさん達が再び登場したのです!

 ピカピカに磨かれた78号車をご機嫌そうにビデオカメラに収めながら、オヤジさんは私達との再会を心から喜んでくれた御様子で、またも私達にアツい激励の言葉をかけてくれました。
 オヤジさんは、かつてクラス3の最大勢力を誇っていたFD3Sの姿が、今回4台にまで減ってしまったことをとても悲しんでおられました。おそらく、TIにやって来たRX−7ファンも同じ気持ちだったと思います。(その分、私達78号車に送られる声援は倍化していたかもしれませんね)

 帰り際、それまでじっとマシンを見つめていた息子さんが、私の手を両手で強く握り締め、興奮した面持ちで


 
「ホント、これ
(=RE)しかないっすから!!!」

と、アツく訴えかけてくれたのが、心にズシリと響きました。




 ここTIを訪れた何万人ものS耐ファンの中で、その数はほんの一握りかもしれませんが、このように78号車にアツい視線を注ぎ、WW2の活動を理解・支持してくれる方々の存在は、私達にとって有難く、大変心強いものです。今年はいろいろと紆余曲折があったものの、チームとともに再びこの場に立つことができて本当に良かったと、心から思いました。

 こうして応援してくれる人々のためにも、私達はチームテスタスポーツのメンバーと協力してこのレースを確実に戦い抜き、成長の跡を見てもらう必要があると強く認識しました。


PITウォーク参加中の78号車と私達
(画像提供:Kojiさん@サインガード)

◆    ◆    ◆    ◆    ◆

それにしても、世界が認める素晴らしい固有の技術・REを持ち、孤高のレーシングロータリーを愛して止まない大勢のファンを世界中に抱えていながら、まるでその存在を無視するかのように、また、過去の勇敢なチャレンジの足跡を完全に忘れ去ったかのように、未だにモータースポーツのTOPカテゴリー復帰へ向けた動きを見せないマツダの姿勢には、ファンとして大きな疑問を感じざるを得ません。

 私達がTIで体験したように、モータースポーツの最前線でファンのアツい声をダイレクトに感じ取らないまでも、コアなマツダファン、REファンを大切にしようという姿勢さえあれば、今すぐに万難を排してでも取り組むべき活動が見えてくるというものではないでしょうか・・・。

 今マツダがモータースポーツフィールドに復帰し、新たな挑戦を開始すれば、私達のような旧来からのファンを再びリアルタイムで楽しませてくれるだけでなく、それと同時に若い世代の新しいファンの心をぐっと掴むこともできるはずです。そうすれば、宣伝目的のために13年以上も前の「過去の栄光話」を都合良く持ち出すような恥ずかしい行為もせずに済みます。

 少なくともモータースポーツのイメージに関しては、現在のマツダは過去の遺産を食い潰しながら細々と生き永らえているに過ぎません。今後のマツダブランドのスポーティーなイメージ作りにおいて、本当に今のような活動休止状態が許されて良いものなのか、長期的視野に立って是非とも一考願いたいものです。

◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 決勝日を迎えたTIサーキットの天候は晴れ。最高気温は例年よりやや低めの予想となっています。すでにマシン&ドライバーともに準備万端。チームテスタスポーツの1年ぶりのレースに向けて、舞台はすっかり整いました。


→ S耐TI戦の決勝レースレポートは          
    
WW2 EVENT REPORT にて公開中です


 




WW2−BBSへ