22.WW2、3度目のS耐TI戦にチャレンジ! 



1.MINE戦のリベンジ準備は着々と・・・


 
2003年から新しくダンロップのDIREZZAカラーをまとった78号車・WW2 ダンロップ RX−7は、今年も9月に開催されるスーパー耐久第6戦のTI 400kmレースにエントリー。今シーズンの2戦目に臨むことになりました。


 6月に出場したMINE戦を終え、チームテスタスポーツと78号車は、足掛け3年でスーパー耐久シリーズの5レースを戦ったことになります。
 ときには深刻なトラブルを抱え込んだこともありましたが、そのたびにメンバーが持てる力を結集させ、ソフト&ハード両面から精一杯の手を打って致命傷に至るのを防いできました。この結果、チームテスタスポーツはこれまで参加した全てのレースで決勝に進出し、完走を果たしています。

 この実績は、近年益々プロフェッショナル化が進んでいるスーパー耐久シリーズの中で、ゼロからのマシン製作、そしてゼロからのチームづくりでの挑戦の結果としては堂々と胸を張れるものです。これは、現有のマシン、ドライバー、スタッフ・・・チームの全ての構成要素がうまくバランスし、機能した成果といえるでしょう。
 この裏にはメンバー個人個人の頑張りがあったことは勿論ですが、それに加え、要所要所で新宅チーム代表の巧みな舵取りと動機付けがあったことも見逃せないところです。

 私達WW2はサポート活動を通じて、そんなチームメンバーの輪の中で少しでも潤滑油的な役割ができれば・・・という気持ちで頑張ってきました。その意味では、これまである程度貢献してこれたという実感はあります。今後もそんな役割意識を常に忘れず、チームとともに着実に成長していきたいですね(^^)。

 


 ◆マシンの改良◆

 完全なるプライベート体制のため、チームは頻繁にテスト走行を実施して急速にマシン熟成を進めることは叶いませんが、2年の時を経て、再びデビュー戦の地・TIサーキットに舞い戻って来た78号車には、MINE戦での教訓を生かすカタチで、僅か2ヶ月間のインターバルの中で地道なモディファイが加えられていました。

 なんといっても一番の重要課題はコクピットのドライバーの冷却対策でした。
 これまで、第1ドライバーの新宅選手がどんな過酷な条件下でもコンスタントに走り抜くタフネスさを持ったドライバーであっただけに、この問題はなかなか顕在化してきませんでした。しかし2002年シーズンからカレンダーが変更され、暑さが本格化する6月下旬に長丁場の500キロレースが開催されるようになったことで、伊藤選手、有木選手の予想以上の体力消耗という結果から、図らずも問題の大きさが浮彫りとなったわけです。


 まず外観に注目すると、マシンの左右のAピラー付け根付近には、見慣れぬエアダクトが設置されていました。
 これらは見た目の通り、コクピットのドライバーへ外気を直接当てるための
導風ダクトです。考えてみれば、レース界では極めて常識的なこのアイテムをこれまで78号車がずっと未装着だったことは、とても不思議な事実でした(笑)。
 今回は大径ダクトと小径ダクトの2本のコンビネーションで、運転席側と助手席側にそれぞれ装着されており、この後、レースウィークを通じて取付け角度や径の大きさを少しずつ変更しながら、改良を加えていきました。

 また、コクピットのセンタートンネル周辺の遮熱対策にも手が加えられ、遮熱テープを大幅に増強させることで、エンジンやトランスミッションからの熱の伝達を抑える工夫が加えられています。
 一説には、ドライバーのレーシングシューズの靴底を熔かしてしまうと言われるRX−7の凄まじい熱・・・想像しただけでゾッとしますね。


 さらに、MINE戦でS耐デビューを果たした有木選手からの切実な訴えにより(笑)、確実な後方視界を確保するために、サイドミラーがR−specのエアロタイプから純正タイプへと戻されました。
 ・・・本来ならば、DIREZZAカラーに合わせてミラーカバーを赤色に変更すべきなのですが、金曜日のマシンの走行シーンを見て「
緑色もまたアクセントとして良し。」と私は判断しました(笑)。
 もっとも、現地には赤色のカッティングシートの十分な持ち合わせがなかったことも事実なのですが・・・。



車両に設置された導風ダクト



2001年以来の純正ミラー


 しかし、今回の熱対策の目玉アイテムは、なんといってもクールスーツの導入でしょう。

 MINE戦終了後の伊藤選手の直訴に応えるため、前戦からチームのPITスタッフに加わった
ながつ氏の手によって素晴らしいクーリングシステムが開発されていました。なんと、スーツ自体(2着)も含めてほとんどが手作りで製作されているという驚愕モノです。仕上げも非常に丁寧で、見た目もセンス良くまとめてあり、PIT内では「そのまま売り出したら?」と大変評判でした。

 
助手席側フロアのクーラーBOX         装着状況を確かめる伊藤選手


 「一旦壊れてしまったらもう最悪・・・」と、とかく故障時の影響が懸念されるクールスーツですが、こちらもフリー走行セッションを利用して作動テストが繰り返され、機能的には全く問題がないことが確認されました
 決勝レースでは、冷却用の氷の入替え作業や、ドライバーによるポンプのエア抜き作業が発生してくるため、まだまだ実戦リスクを抱えていることは事実ですが、まずはシステムが幸先の良いスタートを切り、製作者のながつ氏もひと安心といった面持ちでした。
 チームにとっても初導入のアイテムとあって、氷の切り出し作業や保管場所の確保など、幾つかの検討事項がありますが、ながつ氏を中心に皆でアイデアを出し合いながら、着実に解決策が編み出されていきました。

 幸いなことに? S耐ではRX−7の純粋な速さを封じ込めるためにレギュレーションで過大なウェイトハンデを課しており、規定の最低重量まではまだまだ余裕がある状態です。付加価値のないバラストを積む代わりに、機能的なアイテムを導入していくのは至極スマートな選択といえますね。






 今回はチームの司令塔であるサインガードエリアにも、確実に改善の手が加えられていました。

 太い鉄パイプを巧みに組み上げた陽避けテントは、初登場となったMINE戦の時よりも一層アップグレードされたものとなり、台風が来ても微動だにしないような強固な構造になっていました。
 さらに、初参戦時からずっと懸案になっていた、計測マンとボード掲示マンの2名分の専用チェア(=脚立ともいいます)が今回から用意されています。

 まずは機能最優先とばかりに、現時点では他チームのものと比べるといささか地味な印象は拭えませんが、全く陽射しを遮るモノがなかった2年前の状態から比べると、格段の進歩といえます。
 一旦レースが始まると、4時間近くも灼熱の太陽と対峙するこの過酷なエリアにも、今回しっかりと目が向けられたということは、チームにいくらか余裕が生まれてきた証拠であり、とても喜ばしい出来事といえます。

 あとは、他チームのテントも参考にして、華やかさや機能性をプラスしていけるといいですね。





●9月5日(金)
 S耐占有走行日

 いつものようにS耐占有走行枠が設けられた金曜日、WW2の先発隊としていち早くチームに合流した私は、この日、チームの新宅代表と共にサインガードに立ち、サインボード掲示役を初体験しました。
 総じて短時間の担当だったため、作業自体は比較的楽でしたが、ジリジリと照り付ける陽射しが半端なレベルではないことを今更ながら痛感しました。


 今回のTI戦、チームテスタスポーツに与えられたPIT位置は「2−C」。
 場所的にはまたもやコントロールタワーやS耐事務局から最も遠い最終コーナー寄りとなってしまいましたが、逆にこの位置は車検場やガソリンスタンドが近くなるというメリットもあり、様々な雑務を仰せつかるWW2サポート隊としては、ラッキーな一面もありました。

 また、MINE戦の時とは違って、私達のPIT位置の真正面にもきちんと観客席が存在しているということも重要なポイントとなりました(^^)。

PIT裏の風景



 金曜の早朝にチームと合流した瞬間から、私はいつになくチームメンバーの表情が明るいことに気付いていました。
 それもそのはず、こうしてPITウォールの傍に立ち、ストレートを走り抜けて行くマシン達を手に届くような距離から眺めていると、私達の78号車は、ブーストトラブルで大失速したあのMINE戦がまるで嘘のように、とても快調に走っていることが肌で感じ取れたのです。
 当然、この確かな手応えは木曜の練習走行時点からすでに得られており、その知らせはいち早くチーム首脳陣へ伝えられていたわけでした。

 
快音を響かせてストレートを駆け抜けるロータリーマシン勢


 
原因不明のトラブルに振り回されて、マシンのセットアップを全く進められないという悪循環を断ち切り、久々に「戦う姿」を取り戻した感のある78号車。「皆で楽しく戦う」ことをモットーに掲げるチームテスタスポーツですが、やっと本来のスタートラインに付くことができたことを、メンバー全員が心から喜んでいました。




●9月5日(金)
 フリー走行

 この日に設けられたフリー走行セッションは1時間×3回で、すべてドライ路面での走行となりました。トラブル三昧のMINE戦では全く進められなかったマシンのセットアップ作業を、チームはようやく本格的にスタートさせることになったわけです。

 今回のチームテスタスポーツのドライバーの布陣は、前回のMINE戦と同様、新宅文亮選手、伊藤弘史選手、有木雄太選手の3名。
 チームは全てのセッションで3名全員にステアリングを握らせることにして、各ドライバーのフィーリングを随時確認しながら、全員の共通解というものを探っていきました。

 基本的にはタイムアタッカー役を努める伊藤選手がマシンのセットアップをリード。マシンは当初、リバースステアの傾向が強く、コーナー入口での頑固なアンダーステアには有木選手も手を焼いたようでした。この対策のために、インターバルの時間を利用して、フロントの車高に変更が加えられていきました。
 この結果、セッションが経過するにつれてマシンの挙動は改善を見せたようですが、この日のドライバーコメントを聞く限りでは、現在の78号車の足廻りに関しては、総じて、スイートスポットの狭い「気難しいクルマ」となっている感じでした。

 スプリントレースならともかく、耐久レースのマシンとしてはやや不安の残るところです。


 

予定通りのITインを繰り返す78号車

桧井さんもWW2メンバーです!
突如フレームインする「三船」選手(^^)

 結局、この日78号車が記録したベストタイムは、15:00〜16:00の3回目のフリー走行枠で伊藤選手が出した1分46秒083でした。順位でいうと全47台中での40位、3クラス勢では最後尾という初日の滑り出しとなりましたが、マシンが足廻りのセットを模索中であることを考えれば、決して悲観することはないでしょう。

N1−LEAGUE占有走行 総合リザルト
【クラス3車両のみ抜粋】
◆9月5日(金) 天候:晴れ◆
1.#23 C−WEST アドバン Z33 1'42.787 ― 
2.#83 BP ADVAN NSX 1'43.041 +0.254
3.#15 ORCアドバンRX−7 1'43.110 +0.323
4.#27 FINA BMW M3 1'43.306 +0.519
5.#77 TRUST ADVAN RX7 1'43.476 +0.689
6.#39 DELPHI ADVAN NSX 1'44.547 +1.760
7.#14 REDLINEダイトウRX−7 1'44.931 +2.144
8.#78 WW2ダンロップRX−7 1'46.083 +3.296

 


 
じつは木曜日の時点から、78号車にはクラッチが滑る現象が発生しており、S耐占有走行のこの日も、終始トラブルを抱えた状態での走行が続いていました。このため、チームは3回目の走行セッションが終了すると、直ちにクラッチセットの交換作業に着手しました。

 私はというと、この作業の合間を利用して、新宅代表と2人で一旦サーキットを離れ、この日の宿舎のロッジへと向かいました。事務所で宿泊の手続きを済ませると、部屋に備え付けの炊飯器で15合のご飯炊きをセット。そして、ありったけのビールを冷蔵庫に詰め込んで再びサーキットへ。(・・・じつは詰め込み過ぎで全然冷えなかった・・・涙)
 ロッジまでの往復の道中、久しぶりのマシンの好調さに車内の二人はずっと上機嫌で、予選や決勝レースへの期待、さらには将来の参戦構想と、思わず会話が弾んでいきました・・・。



遅くまで調整に余念のないスタッフ


 二人が再びサーキットに戻った頃には、すでに日はとっぷりと暮れ、サーキットは闇に包まれていました。スタッフはとっくにクラッチ交換の作業を終えていたのですが、その後も明日の予選走行へ備え、アライメント調整をはじめマシンのチェック作業に余念がありません。
 結局、この夜チームは二班に別れ、別々のタイミングで宿舎へ戻ることになりました。

 やがてその先発隊がサーキットを離れた頃、WW2の
ぬまさんが、愛車RX−7を駆り、メカニックの余伝さんを連れて現地入り。有難いことに、ぬまさんは2戦連続で部品取り車の提供を快諾してくれたのでした(感謝!)。
 翌日には
KojiさんYasuさんが早朝から駆けつけてくれる予定で、WW2サポート隊もいよいよ本格稼動となります。

 復調した78号車の予選の走りに大いに期待したいところです(^^)。

 




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