20.WW2、新生78号車を引き続きサポート! 



3. WETからDRYへ ライバル不在の孤独な戦い

 

●6月28日(土)
    PM1:30〜2:30
 公式予選(2)

 1回目の公式予選走行終了から約3時間のインターバルを挟み、いよいよ決勝グリッドを決める2回目の予選が始まります。
 この60分枠は、実は20分ごとの3パートに細かく区切られており、1パート目と2パート目に関しては、それぞれ出走できるクラスが制限され、コース上の混雑の緩和が図られています。クラス3は2パート目からのコースインとなり、その後セッション終了までの連続40分が走行時間となります。


 依然としてブースト不調が回復する気配のない78号車は、残念ながら、決勝グリッドの順番争いに加わる状態にはありません。午前の予選走行終了直後から、チームスタッフを中心にして、時折りMoTec(ECU)の技術者も加えながら、トラブルの原因究明のためのディスカッションが延々と続けられていました。

 可能であれば、原因として考えられる部品を片っ端から交換して様子を探っていきたいところですが、午後に控える
公式予選(2)、およびCドライバーフリー走行の2セッションの重要性を考慮すると、チームとしても大掛かりな部品交換や、完全なテスト走行への切替えには踏み切れない事情がありました。


トラブルの原因探しは続く・・・
 朝からセッションの合間合間で追加ステッカーの貼付け作業を行なってきた私達は、この2回目の予選開始の直前に、懸案となっていたボンネットのWW2ステッカーを早業で赤色のものに変更。これにてマシンの外観は一旦完成版となりました(^^)。



 13:50からのコースインに備え、新宅選手は一旦マシンに乗り込んでスタンバイしましたが、コースコンディションの悪化によりセッションは20分間にわたり中断。14:10から再度仕切り直しとなりました。
 路面は相変わらずWETで、真新しい
P1レーシングUのホイールと共に2セット・計8本が用意されたダンロップのスリックタイヤは、一向に登場する気配すらなく、チームテスタスポーツの46番PITの片隅に静かに積まれたままでした。
 決勝グリッドを決めるためのこのセッションは、必ずしもA・B両ドライバーの出走義務はありませんが、チームは通常通り、両ドライバーを半分ずつ走行させることにしました。
 マシンの調子は相変わらずでしたが、新宅選手が
1分59秒472までタイムを縮めたところでPITイン。ドライバー交代で多少タイムロスしましたが、残り15分で再コースイン。代わった伊藤選手は、他クラスのマシンがひしめく中で、3LAP目に1分58秒653のベストタイムを刻むことに成功しました。
 とはいえ、得られたグリッドは出走した全38台のマシンの中での最後尾。78号車は全力で戦うことを一度も許されないまま、我慢の予選走行を終えました。


 結局、公式予選(2)では、#1・エンドレスアドバンGT-R1分43秒228で総合ポールを獲得し、クラス2の#11・ジアラランサーEVO[が、クラス1のポルシェ勢を蹴散らして総合3位(=1分45秒138)に食い込むなど、WET路面での4駆勢の速さが目立った結果となりました。
 逆に、クラス3はTOPの
#39・DELPHI ADVAN NSXでさえ総合20位(=1分49秒604)に留まり、僅かコンマ3秒差ながら、クラス4TOPの#10・REDLINEベルノ東海DL DC5の後塵を拝してしまいました。


スーパー耐久公式予選(2) 結果
【クラス3車両のみ抜粋】
◆6月28日(土) 天候:雨◆
総合20位 #39 DELPHI ADVAN NSX 1'49.604 ― 
総合22位 #15 ORCアドバンRX−7 1'50.298 +0.694
総合23位 #27 FINA BMW M3 1'50.555 +0.951
総合27位 #83 BP ADVAN NSX 1'51.077 +1.473
総合28位 #14 REDLINEダイトウRX−7 1'51.136 +1.532
総合29位 #77 TRUST ADVAN RX7 1'51.496 +1.892
総合30位 #23 C−WEST アドバン Z33 1'51.863 +2.259
総合38位 #78 WW2 ダンロップRX−7 1'58.653 +9.049

 雨によってグリッド後方に沈んだクラス3勢ですが、予選結果を見る限り、NSX、M3、Z33、そしてRX−7と、各マシンのタイムが非常に拮抗していることがわかります。
 もしも日曜の決勝レースでもこの団子状態が続けば、給油回数で不利となるRX−7勢に、もはや勝ち目はありません。いかにレース序盤に集団から抜け出し、ライバルのNA勢から2〜3秒早いペースで逃げ続けられるかが、RX−7が今シーズン初勝利を呼び込めるか否かの大きなカギとなりそうです。


 

●6月28日(土)
    PM3:45〜4:05
 Cドライバー フリー走行

 チームテスタスポーツとゼッケン78号車にとって、今回のMINE戦では、S耐参戦3年目にして初めて経験するセッションがありました。20分間で行なわれるCドラ・フリー走行がそれでした。チームはレギュラードライバーの新宅選手、伊藤選手に加え、初めてCドライバーを登録していたのでした。


伊藤選手にアドバイスを求める
有木選手(左)

 その「第三の男」となったのは有木雄太選手でした。
 若干19歳(!)というその若者は、過去に何度も親父さんと一緒に78号車のPITを訪問したことがあり、チームのメンバーにはすっかり顔なじみの存在となっていましたが、実はミッションカートでの優勝経験も豊富な、期待の若手選手だったのです。チームがTI英田とMINEで与えた二度のテスト走行のチャンスを無難にこなし、晴れて78号車のシートを手に入れたというわけでした。

 なんとF4のドライブ経験まであるという彼ですが、いわゆるハコのレースは今回が初めて。さらには、プライベートでの運転はもっぱら楽チンAT車だとのこと(笑)。


 
緊張の面持ちで初のS耐公式セッションに挑む有木選手にとって、ただでさえ難しいWETコンディションの中で、しかも、本調子には程遠いハンデ付きマシンでの出走となったことは、本当に気の毒という言葉しか見当たりませんでした。唯一の好条件として、朝から降り続いた雨が殆んど止みかけており、路面状況の回復如何では、タイム出しに大きなアドバンテージを得る可能性もありました。
 私達は、午前中の雨の公式予選で設定された「
2分01秒852」というクラス3の予選基準通過タイムのメモを片手に、PITモニターに釘付けとなり、新人の走りを見守りました。まさかこの若者が、稀にみる離れ業をやってのけるとは・・・。

 2分10秒台からスタートして、慎重に毎周1秒ずつタイムを削っていく有木選手。20分間のセッションが残り約5分となった時点で、ついに
2分02秒台まで到達しました。路面はすでにセミウェットまで水が減り、他のCドライバー達も急速にタイムアップを果たしつつある状況でした。予選通過タイムまであと僅かですが、同時に、残されたLAPもあと2〜3周しかありません。
 そして、PITの全員が固唾をのんで注目した次の周、有木選手の記録したタイムは「
2分01秒852!!」・・・なんと、予選基準通過タイムと1/1000秒までピッタリではありませんか! 「これはOK?、それともNG?」と、一時PITは騒然となりました(^_^;)。

 幸い、時間とともに好転し続ける路面状況を味方につけた有木選手は、最終LAPで
1分59秒761を記録し、PITの面々の心配をよそに(笑)苦もなく基準タイムをクリアしていきました。この日、チームテスタスポーツのPITが最も盛り上がった瞬間でした。そしてまた、有木選手の親父さんの、心からホッとした安堵の顔が何より印象的でした。
 もちろん、こうした強運も実力の内というものです。有木選手の今後の成長には十分期待がもてると言えるでしょう。



●6月28日(土)
 セッション終了後

 チームテスタスポーツは、思わぬ苦戦を強いられた予選の中で、全ドライバーのクオリファイを済ませるという最低限のハードルは越えたわけですが、正常なブーストがかからずに完全に「速さ」を失った絶不調のマシンでは、地元サーキットで最後尾グリッドからスタートする悔しい現実も、黙って受け入れざるを得ませんでした。
 事前テストでの好調さに大いなる期待を抱かせた78号車ですが、なぜか今週末はすっかりその速さが陰を潜めており、抜け道のない迷路に入り込んでいるようでした。

 決勝日こそは、このトラブルから抜け出して激しい追い上げを見せたいもの。そのためチームはこの日も夜遅くまで46番PITに居残り、必死にトラブルの原因探しを続けました。


一進一退・・・?
夜遅くまで協議を続けるスタッフ
janさんと克ちゃんはミッションオイル注入中(^^)
作業をみつめるWW2サポート隊

 
チームとしては、決勝朝のフリー走行が始まるまでに、少しでも原因の特定を進めておきたいところですが、既にPITへマシンを引き上げ、コースもクローズされた今となっては、確認作業ができる範囲も自ずと限られています。

 
ここで、我らがぬまさん愛車RX−7に、思い掛けない活躍の場がやってきました。

 チームはこの時点で、原因である可能性が高いと見られた
イグナイターブーストセンサーの2部品について、78号車とぬまさん号の部品を互いに交換。PIT内でスタッフが78号車の吹け具合をチェックする一方で、買出しから帰ってきたばかりのぬまさんが急造テストドライバーとなり、通行証をぶら提げた5型RX−7でパドックを抜け出し、サーキットの外周路を利用して闇夜のチェック走行を敢行しました。

 結局、これらの部品には異常が見つかりませんでしたが、私達はまたひとつ、現地へ乗り付けた部品取り車の有効活用法を発見した気がしました(^^)。

 あ、もちろんテスト走行といっても安全運転の範囲内ですから、どうぞ誤解なきように・・・m(__)m。
照れるぬまさん(笑)
ブーストセンサー交換中



●6月29日(日)
    AM8:00〜AM8:30
 フリー走行

 日曜日、レースウィーク中しつこく降り続けていた雨もやっと上がり、決勝レースを迎えた早朝のMINEサーキットは、一段と穏やかで清々しい空気に支配されていました。
 初のドライ路面でようやく出番が巡ってきたスリックタイヤ。真新しいホイールと共に78号車に装着されて、フリー走行の出走時間を待ち受けます。


新しい靴を履いた78号車


 
MINEに乗り込んでいる全チームにとって、レースウィーク初のドライ走行となるこのフリー走行は、決勝レースの戦略を練る上で非常に貴重なセッションとなります。
 チームテスタスポーツは、新宅選手→有木選手→伊藤選手の順に走行スケジュールを組み、ドライでのマシンの挙動チェックを主眼に置き、このセッションに臨みました。

 クラス3のライバル勢は、開始直後から軒並み1分40秒台に乗せる好調な走りを見せ、
#15・ORCアドバンRX−7が先陣を切っていち早く1分38秒台に突入しました。しかし、NSXZ33M3勢もすかさず38秒台までタイムアップし追随。対するRX−7勢では#15が唯一気を吐いて、最終的に1分36秒台までタイムを縮め、クラス3のTOPを死守しました。

 さて、我らが78号車のステアリングは新宅選手〜有木選手と予定通りに渡り、残り7分のところで伊藤選手がコースイン。アタッカー役の伊藤選手のタイムに注目が集まりましたが、最後の周に記録したベストタイムは
1分46秒179。クラスTOPからの遅れはじつに9秒もあり、期待も虚しく、マシンは依然として低調であることが明らかとなりました。

 この時、総合TOPのクラス1のマシンは
1分33秒台をマーク。78号車の3人の平均タイムを1分48秒台と仮定すると、155周の決勝レースでは、突発的なトラブルが無く淡々と走り抜いたとしても、TOPから22周遅れの133周が精一杯のところ。75%の完走規定周回数のクリア(=116周)を心配する必要はなさそうですが、ドライバーは勿論のこと、チームにとっても、そして応援してくれる人達にとっても、ストレスの溜まるレース展開となることは避けられそうにない状況でした。


スーパー耐久 フリー走行結果
【クラス3車両のみ抜粋】
◆6月29日(日) 天候:曇り◆
1.#15 ORCアドバンRX−7 1'36.991 ― 
2.#23 C−WEST アドバン Z33 1'38.173 +1.182
3.#83 BP ADVAN NSX 1'38.483 +1.492
4.#39 DELPHI ADVAN NSX 1'38.627 +1.636
5.#27 FINA BMW M3 1'38.918 +1.927
6.#77 TRUST ADVAN RX7 1'39.116 +2.125
7.#14 REDLINEダイトウRX−7 1'40.544 +3.553
8.#78 WW2 ダンロップRX−7 1'46.179 +9.188

 

●6月29日(日)
    AM11:30〜PM0:10
 ピットウォーク

 決勝レースのスタート進行を直前に控え、いよいよ恒例のイベント、ピットウォークの時間がやってきました。当然ながら、小雨のぱらつく中で行なわれた前日のピットウォークとは賑やかさがまるで違います。


46番PIT前に登場した78号車


 
朝のフリー走行終了直後から、78号車の周囲には絶えずチームスタッフが群がり、マシントラブルの原因究明が続けられていました。その間もPITではオフィシャルの出走前点検や、チームの戦略ミーティングが慌ただしく進められていきますが、マシンの傍らでは、決勝で少しでもマシンが回復の兆しを見せることを祈りながら、最後まで諦めずあらゆる手立てを尽くしておこうと、スタッフの懸命の作業が続きます。

 これらの動きと平行して、私達WW2メンバーは、長丁場の戦いに挑んでいくマシンのボディやウィンドウを、時間をかけて丹念に磨き上げていきました。
 とくに、
克ちゃんのワックス掛けと、janさんのホイール磨きにかける情熱は並々ならぬもので、安易にルーフに工具でも置こうものなら、あっという間に床に滑り落ちてしまうほどでした(^^)。

 チームはインジェクターの交換作業を終えた後で、エンジンを始動して簡単なチェックを行ないました。すでにピットウォーク開始時間から5分ほど経過していましたが、やがて78号車は人々で賑わう華やかなPITレーンへと押し出されていきました。


解析作業をジャマしないようにそぉっと・・・
只今窓拭き中(^^)

 
Newカラーの78号車に群がる人・人・人・・・

 コントロールタワー付近から次々にPITエリアへと進入してくる観客にとって、78号車の待ち受ける46番PITは、もっとも最終コーナー寄りで、遠く彼方に霞むような場所に位置していました。しかし、熱心なS耐ファンは、新しいカラーリングのRX−7の存在に気付くと、私達のPIT前まで足を延ばし、興味深げに写真を撮影したりマシンを覗き込んだりしていました。

ちょっとした優越感!?
 
RGステッカー配布会
 もちろん、私達も最果てのピットレーンでただ手をこまねいていたわけではありません。

 チームは今回、
ミッションオイル、クーラント等の提供でお世話になった岡山のオークラロータリーレーシングさんから、プレゼント用に沢山の「RGステッカー」を入手しており、これらをぬまさんと私Nukupeeで手分けして、訪れた観客へ配布し始めたのでした。しかも我々は立ち位置を工夫し、ステッカーを受け取るファンが必ず78号車の前を往復してくれるようにうまく陣取りながら・・・(笑)。100枚近くあったRGステッカーも、押し寄せる人波を前に、瞬く間に底をついてしまいました。
 なんとこの間に、WW2メンバーのT−eMさんをはじめ、2年前の78号車デビュー時にカラーリングでご協力頂いた横谷さん、そして、昨年のTI戦で78号車仕様の特製チョロQを披露してくれたにゃおにゃおさんが次々に私達のPITを訪れ、温かい激励の言葉をかけてくださいましたm(__)m。



 やがて時計が12:10を指す頃には、MINEのオフィシャルに促されて大勢の観客もさっと潮が引くように姿を消し、PITレーンにも次第に緊張感が漂ってきました。12:30からのスタート進行を経て、いよいよ500kmレースの火蓋が切って落とされるのです。

 今回で5戦目のスタートを迎える78号車とチームテスタスポーツ。
 マシンは週末を通して未だに一度も快心の走りを見せてくれていませんが、応援してくれる方々の期待に応えるためにも、全員が持てる力を出し切って精一杯ゴールを目指したいものです。


(つづく)

 




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