少し肌寒い曇り空でスタートした土曜日も、午後になると強い日差しが照り付け、真夏を思わせるような暑さの中で公式予選の時間を迎えました。ひたすら穏やかに進行してきたS耐のレーススケジュールも、予選開始時間が近付くにつれ、次第にピンと張り詰めたような空気に支配され始めました。
14時30分、マシンはスタッフ一同に押されてPITロードへ。まずはAドライバーの新宅選手がステアリングを握りコースイン。 |
伊藤弘史選手(左)と新宅文亮選手(中央) |
やがて新宅選手が1分47秒698のタイムをマークしたところでBドライバーの伊藤選手にドライバー交代。細かい情報伝達が即座に行なわれ、その後アタックに入った伊藤選手が1分45秒876のベストタイムを記録。 クラス3は劇速39秒台のBPビスコガンマ号を除いていずれも41秒〜45秒台に集中しており、WW2号はクラス7位のSS.ROYAL号から遅れること僅か0.5秒の好タイムでした。 |
こうしてクラス8位、総合30位で初めての予選を無事に通過したWW2 RX−7でしたが、両ドライバー、それにチームスタッフの表情にはやや険しいものがありました。 初日の占有走行の時から薄い白煙を吐く傾向があった78号車の13Bエンジン。ドライブした新宅選手によれば、セッションを追うごとに徐々に吹けが悪くなっていたようですが、ついに公式予選中にパワー感が著しく低下してしまったとのこと。関係者の間では、燃調が合っていないのでは?という声も・・・。 これを受けてチームは対策を検討した結果、最終的にスペアエンジンへの換装を決定。15番PITは徐々にエンジン脱着の作業場へと姿を変えていくのでした。このために、折角Getした30番グリッドでしたが、日曜の決勝では最後尾からスタートすることが決まったのです。 不調のエンジンで他チームに匹敵するタイムを叩き出した事実には期待が持てるものの、これから始ろうとしているエンジンの載せ替え作業のハードさを考えると、決勝前夜のチームスタッフの疲労が大変心配されました。 しかし、翌日は早朝に広島を出発するWW2観戦ツアーも予定されており、私とjanさんの日帰り隊は、後ろ髪を引かれる思いで夕刻TIサーキットをあとにしました。
決勝当日、広島からはマシン製作にも深く関わったメンバーの323GTさん、muneさん、おくさんに、ハッチさんも加わり計7名のWW2応援ツアーを結成。岡山在住のぬまさんとT−eMさんも現地TIで合流し、約10名ほどの応援隊を形成して、チームテスタスポーツのPIT前のメインスタンドにしっかりと陣取りました。この後、応援隊はパドックパスを2枚ほど購入し、順番に78号車のPITを激励訪問していったのです。
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決勝スタートを直前に控えた日曜のお昼どきとくれば、いよいよお楽しみのピットウォークの時間です。 いつものレース観戦なら、この時ばかりとメインスタンドからの民族大移動の列に加わり、お目当てのRX−7のPITエリアを目指す私達WW2メンバーも、今回ばかりはそれを待ち受ける側の人間へと立場を変えていたのでした。 私達が週始めから連夜懸命のカラーリング作業を施し、その後の製作や実走行のシーンを見守り続けてきたマシンが、今度は詰め掛けた大勢の観客と初めて身近に接することになるわけです。 この「晴れの舞台」を控え、WW2サポート隊も不思議な緊張感に包まれてきました。 ・・・おっとその前に、PIT前にマシンを並べる作業を忘れてはいけません(^^)
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ケタップさんの軽やかなフットワークと、克ちゃんの巧みなハンドルさばきで(笑)無事15番PIT前に鎮座したWW2 RX−7号。溢れんばかりの日差しを浴びて、オレンジとグリーンの鮮やかなカラーリングが一層映えていました。 (直射日光を浴びると本当にカッコイイんです!) さすがに両隣りのPITのような派手な装飾は一切ありませんが(笑)、それだけに、私達WW2メンバーの思いの込められたマシンがより際立つというものです・・・。 |
1.正面から見た風景 |
2.PIT内から見た風景 しかし、私達も決して何の準備もしていなかったわけではありません。 |
3.角度を変えると・・・(^^) |
有名ドライバーにキャンギャル、とどめはプレゼント配布と、観客を惹き付けるには事欠かない他チームのPIT。ここに埋没してしまいそうな私達の地味なPITでしたが、いざピットウォークの時間が始まると、予想を上回る大勢の方が足を止め、初参戦となった私達のマシンに興味を示し、次々にファインダーに収めてくれたのでした。なかには、 「このクルマのカラーリング、いいですね!」 「走行中も目立ってたけど、近くで見るともっと鮮やかだね・・・」 などと声をかけてくれる人も・・・。こんなお褒めコトバをもらい、思わず私達の頬も緩んでしまいましたが、ここでサポート隊の克ちゃんが機転を利かしたファインプレーを演じてくれました。 |
観客の好感触を得た克ちゃんは、PIT入口に置いていた「WW2プレスリリース」を手に取り、私達のマシンに興味を示してくれた方々に説明をしながら配布をし始めたのです。 克ちゃんの熱弁に聞き入ってくれた人達は、このグリーンとオレンジがあのCHARGEカラーと全く同じことを知らされると、皆一様に目を丸くして驚きの表情を見せていました。「マシンの中も見せてください」と、さらに詳しく観察していく人も現れ、PITエリアでのコミュニケーションは一気に加速していきました。 |
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なんというファインプレーでしょう! わざわざピットウォークに参加し足を運んでくれる熱心なRX−7ファン、MAZDAファン、そしてレースファンに対して、WW2の新メッセージステッカーをカメラに収めてもらうだけでなく、私達の活動内容についても同時に理解を深めてもらえるわけですから。 そして、その後いよいよ感動の瞬間が訪れるのでした・・・。 慌ただしく過ぎ行くはずの45分間のピットウォークも、開始後20分を過ぎる頃には少し落ち着きを見せ、押し寄せる人の流れも幾分ゆっくりに感じられるようになりました。このように事態を静観できるのも、ピットウォーク「する」側と「される」側の立場の違いがあってこそ(笑)。 私達はWW2 RX−7のマシンの傍らに立ち、慣れない手付きで来訪者への対応を行ないながら、チーム側の人間として華やかなピットウォークの雰囲気を楽しんでいました。 そこに現れたのは、親子連れと思われる3名の方々でした。 |
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最初のうちは、他の熱心なファンと同じように私達のマシンをじっくり眺め、ビデオカメラに収めてくれていたのですが、そこで克ちゃんがプレスリリースを渡しながら、WW2の参戦経緯やマシンのカラーリングの由来などを説明すると表情が一変、その親父さんらしき方が私達のコンセプトに激しく共感してくれたのです。 そして力強い口調で、 「おおっ、そうか!」 「ワシもマツダの復活を待っとるんよ!!!」 との嬉しいおコトバ。\(^o^)/ さらに、 「やっぱロータリーの灯は消しちゃあイカンよ!」 とまるで私達を諭すように続け、最後には、 |
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「あんた達、ホントに頑張ってくれよっ!・・・期待しとるからね!」 と、私達WW2メンバーの肩を叩いて励ましてくれたのです。 「ありがとうございます! どうぞしっかり見て行ってくださいね」 という私達のコトバに促され、一行はWW2 RX−7のコクピットやサイドのメッセージステッカーまでしっかりと観察し、最後には私達スタッフの姿までカメラに収めて次のPITへと移って行きました。 突然の予期せぬリアクションには驚いてしまいましたが、私達と同じ思いを持つファンが確実に存在することを痛烈に実感できる瞬間でした。 朝早くからスーパー耐久レース観戦に出掛け、実際にそのPITにまで足を運び、クラス3で活躍しているプライベーター勢のRX−7に熱い視線を注ぎ、声をからして声援を送る。まるでそこにMAZDAワークスの姿を重ね合わせるように・・・。そんなMAZDAファンが今でも数多く存在することを、私達は確信せずにはいられませんでした。 瞬く間に感動のステージと化したレース前の15番PIT・・・、私達はこのほんの一瞬の出会いの中でも、WW2メンバーと同じ思いを持つ人々の輪を広げられたという、確かな手応えを感じることができました。 連夜、不眠不休でTIに駆け付けた私にとっても、これまでの疲れが一瞬にして吹っ飛ぶような、それはそれは貴重な瞬間でした。 こうして今回、WW2は手探り状態ながらS耐のステージで新しい試みにチャレンジし、そこでかつてないダイレクトな反応を得ることができました。 今後も様々なカタチでMAZDAワークスの復活を待ち続ける人々の輪を拡大していき、「その日」が一刻も早く来るよう、その機運づくりを進めていきたいと考えています。
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(上)最終コーナー方面に目を遣るKojiさん (右)スーツ姿で給油の説明を受ける ケタップさん、克ちゃん、こーぢさん |
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このように、TIの決勝レースでは、WW2サポートメンバーはチームスタッフと力を合わせて新宅選手と伊藤選手の走りをPITから支え、観戦メンバーはメインスタンドを拠点に1コーナー/ウィリアムズ/レッドマン、そしてパドックと、各自思い思いの場所から、コース上を疾走する78号車に声援を送ったのです。 こうして大勢の仲間に支えられ、日曜午後の決勝スタートとともに、WW2 RX−7の78号車は記念すべきデビューレースを戦っていきました。 当然のごとく、レースでは予期せぬハプニングやマシントラブルに見舞われ、全てがチームの描いたストーリー通りとはいきませんでした。 しかし、ドライバーとスタッフは諦めることなく前進を続け、ついに、16時30分過ぎにチェッカーフラッグが振り下ろされたその瞬間、私達は確実なリザルトを刻み込みことに成功したのです。 → S耐第6戦のレースレポートはこちら |