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■新たなスタートライン■
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レース距離の延長によって周回数が109周から135周へ変更された今年の岡山戦。レース時間も4時間前後の長丁場の戦いとなることが確実視されていました。 しかし、そのオープニングラップでは久々に大きなアクシデントが起きてしまいました。 その場所は、高速S字を通過した後、バックストレートへ向けた折返し地点にあたるアットウッドカーブ。 グリッド中位に僅差で続いていたST‐3クラス勢の中で、ベテラン大井選手の駆る#113・カルラレーシング☆ings北海Z がオーバースピードでコーナーへ進入し、ターンイン中の#333・H.I.S.◆ings◆Zの横っ腹に激突。両車が態勢を崩してコース上に立ち往生したため、オープニングラップの超接近戦の中、周囲にいた複数のマシンがその巻き添えになってしまいました。 私達の#78・WW2 RX−7はアクシデントの真後ろの集団にいたため、まさに大混乱の渦中でした。咄嗟に右へ左へ逃げ惑うマシン達。運悪くスピンしたマシンと接触するマシンもあった中、78号車は伊藤選手の冷静な対処で間一髪、その場を切り抜けたのでした。 ほどなく後続車が全車通過し、あらためて事故現場がモニター画面に映し出されると、そこにストップしたマシンはどうやら5台。しかしよく見ればなんと5台全車がフェアレディZという、Z33ファンや日産関係者には信じ難い惨状が展開されていました。 #19・バーディクラブ☆TC神戸Z33、#15・岡部自動車 eeiA ディクセルZを含む4台がその場で息絶えてリタイヤ、#74・アラビアンオアシスZは大きなダメージを受けながら再スタートを切り、PITへ向かいますが、すでに勝負権は放棄せざるを得ない状況でした。
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レースはスタートから1時間が経過し、総合TOPの#50・PETRONAS
SYNTIUM BMW Z4M COUPE
は30周目に突入。
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14時半過ぎ、所定のPITイン時間からはまだ15分以上も早いタイミングですが、チームは1回目のPIT作業に向けたスタンバイを開始。 |
チームの期待と不安が交錯するPIT。 ・・・まだ行ける?・・・うん、まだ行ける!! はたして伊藤選手と78号車は、未踏のマイレージを果敢に突き進み、ついには予定の44周を無事消化して、我々の待つPITへ帰還してきたのでした。 所定の位置に停車した78号車には、すぐさま新宅選手と給油クルー3名が駆け寄り、ドライバー交代と給油作業を開始します。あいにく給油側のリグの勘合がイマイチで注入にやや時間を要しましたが、給油の完了とともに即マシンはジャッキアップされ、フロント側の2本からタイヤ交換作業に移ります。 今回の岡山戦では、安全性確保のための暫定措置として、締結用のナットを予めホイール側に固定しておくスリーブ類の使用が一切禁止されたため、装着時には5個のナットを一本一本作業者が装填していく必要がありました。 当然ながらこれは手間のかかる作業で、前日の練習時には思わずナットが手に付かないシーンもあったのですが、本番では各自が落ち着いた作業でミスなくこなしました。 これと並行して氷交換とオイルチェックの作業を終えた78号車は、トータル3分弱の停止時間で、勢い良くPITを後にしました。 事前の入念な打ち合わせ通りに、予定した作業を予定した段取りでミスなくこなしたメンバー全員に、私はPIT奥のテントから思わず大きな拍手を送りました。 たしかに、作業スピードという点では、百戦錬磨のレギュラーチームのPITマンには遠く及ばないかもしれません。しかし、年に1回きりのレース参戦、しかも決勝レース中に1回しか予定していないフルメニュー版のPIT作業を、いきなりぶっつけ本番状態でミスなくこなすなどという芸当は、携わったメンバー全員の強い意識と集中力なしには到底実現できないことで、本当に胸のすくような素晴らしいシーンでした。 これをあと1.5倍速でこなしたら一躍TOPチームですからね(笑)。 |
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ひとたび落ち着きを取り戻した私達のPITは、大きな安堵感と達成感に満ちていました。 なぜなら78号車は、44周に設定した第1スティントのロングランを、あの忌まわしい燃欠症状と無縁で走り切ってみせたのですから。 長年私達を悩ませ続けた悪い虫をようやく退治できたのは、昨年のレース直後から長いオフシーズンの間、徹底的な原因探しよって遂に決定打を導き出してくれた、ながつ氏の地道なエンジニアリング活動の勝利に他なりません。 私はこの時点で早くも、78号車のこのロングラン達成が、チームにとって今年最大の収穫になることを強く予感しました。いつ何が起こるか予測もできないマシンでは緻密かつ大胆なレース戦略など描けるはずもなく、より上位を目指した次のチャレンジなど永遠に不可能なのですから。 事実、この瞬間から次の2回目のPITインタイミングをアレンジする自由度は格段に広がり、戦略担当としては嬉しい悩みを抱えることになりました。 |
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しかし、いつまでも浮かれているわけにはいきません。タイミングモニター上に目を移すと、78号車はPITイン直前には一時的にクラス5位まで上がっていたのですが、いざコース復帰を果たしてみると、その順位はクラス7位に逆戻りしていました。
そんな確かな手応えを感じさせてくれた第2スティントでしたが、その間もST3クラスの上位勢と伍す45秒台〜46秒台のラップタイムを揃えてきた#43の番場選手との差はじわじわと広がる一方に。
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・・・というのが表向きの理由ですが、実は私達はタイヤレギュレーションの解釈違いから、3セット目のニュータイヤを準備していなかったのです。つまり、タイヤを交換しようにも、1スティント目の使用済みタイヤを再利用するしかありませんでした。 曰く、マーキング済みタイヤの使用が義務付けられているのは「決勝スタートまで」であって、レース中はニュータイヤを何セット使おうが自由なのですが、我々はその点を完全に見逃していました。 極めて御粗末な話ですが、それに気付いた時点ではまだタイヤサービスに駆け込む時間は残されていたでしょう。しかし、47秒〜48秒台前後で安定して周回する新宅選手の状況から判断して、伊藤選手が新品タイヤを得て削り取れるタイム代はそう多く残っておらず、最終的にその必要はなしと判断しました。 ・・・と、今回は結果的に事なきを得ましたが、次戦ではタイヤ交換時間の短縮とセットで、ぜひ計2回のタイヤ交換を念頭に置いてみたいところです。 |
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そんな伊藤選手の闘志の源として貢献したのが、PIT裏に出現した急増オアシスのフレンディ。 |
![]() 簡易コテージが出現した4Aピット裏 |
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13時26分のレーススタートから約4時間。夕暮れ迫る空のもと、500kmのレースもいよいよチェッカーの時を迎えました。
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