スーパー耐久シリーズ2006  第5戦

OKAYAMA 400km Race


9月2日(土)〜3日(日) @岡山国際サーキット


(画像提供:にゃおにゃおさん)



 
改造範囲が限られた市販スペックに近いツーリングカー達が、全国各地のサーキットを転戦して戦うスーパー耐久シリーズ。2006年はMINEサーキットの閉鎖によって1戦キャンセルとなってしまい、全7戦のシリーズに変更されました。
 岡山国際サーキットで開催される400kmレースは、今年も9月初旬に組み込まれていますが、2006年はシリーズ第5戦としての開催になりました。しかも、カレンダー上の都合で予選・決勝日が9月第1週の2日・3日に設定されており、葉月の終わりの声を聞いた途端にいきなりレースウィークが幕を明けるという、なんとなく気忙しい日程となっています。
 MINEラウンドなき今、S耐シリーズにとってはこの岡山国際が西日本唯一のラウンドとなります。

 S耐シリーズの中で最もマシンバラエティが豊富と言われるST‐3クラス。排気量2001cc〜3500ccの2輪駆動マシンで争われるこのクラスは、今シーズン、その勢力分布図に大きな変化が起きています。かつてのチャンピオンマシンながら、ここ数年苦戦が続いていたマツダRX−7ですが、昨年から最低車重が160kg軽減されたことに加え、今年からはレース中最低2回のPITストップを
義務付けるルール改正が実施されました。これが燃費で劣るためにPIT回数でハンデを追っていたRX−7勢に有利に働くことになり、ライバルのZ33やM3に対しての十分な競争力を取り戻す結果となりました。果たして、今シーズンのRX−7は水を得た魚のごとく、第4戦終了時点で2勝を挙げ、ポイントランキングの首位を走る活躍を見せています。

 決勝グリッドが自動的に確保されるという年間エントリー枠には岡部自動車の3台とTeamNRFの1台の計4台のRX−7が登録。その他のスポット参戦組も含めて、多彩なカラーリングのRX−7が、今年のST‐3クラスの激しい戦いに挑んでいます。

 今年もWW2は、サーキットを疾走するMAZDAのマシンを力強く応援すべく、ST‐3クラスに
#78・WW2 ダンロップ RX−7でスポット参戦するチームテスタスポーツへのサポート活動を通して、2006年S耐で再び勢いを取り戻したマツダRX−7勢の勇姿を追いかけていきます。
 

 



<スタート進行>
 12:20〜12:40


 9月3日(日)の決勝日、正午を挟んで50分間の長いピットウォークタイムが終了すると、各マシンはPITを後にしてダミーグリッドへと向かいます。

 メインストレート上を埋め尽くすように居並ぶ個性豊かなマシン達。ポールポジションを獲得したST‐1クラスの
#8・ニコカット GT3を先頭に、ST‐2クラス1位の#11・オーリンズ・ランサーEVO・MRが7番手グリッド、ST‐3クラス1位の#15・岡部自動車アドバン洗剤革命RX−7は9番手グリッド、ST‐Sクラス1位の#10・MSF シーケンシャル S2000は30番グリッド、ST‐4クラス1位の#999・P.MU Racing MACAU YH INTEGRAが33番グリッドで続いています。


■前進の中段グリッド

 
昨年の岡山戦以来、ちょうど1年ぶりとなる実戦の舞台に総合26番手グリッドから臨むこととなった#78・WW2 ダンロップ RX−7。6台のRX−7を筆頭に全13台が大挙エントリーしている今回のST‐3クラスで、スポット参戦ながらもクラス10位のグリッドポジションをGetしています。全39台が決勝レースに駒を進めた今回のレースでは、先頭からちょうど3分の2のところで、後方には13台のマシンを従えており、僅か7台しか後ろにいなかった昨年のグリッド位置と比べると遥かに好位置となっています。その証拠に、隊列の最後尾に控えるマーシャルカーの姿は、グリッド上を行き交う大勢の人影に阻まれて、そう簡単に視認することはできません。ただし、遠くに霞んで見えないというと嘘になります(笑)。 

 また、あらためて中段グリッドを見渡せば、総合21位から総合29位までの9台中、8台までもが同じST‐3クラスのマシンで占められ、クラス5位からクラス12位までがほぼ一列に連なるという、まさに群雄割拠を絵に描いたような混戦グリッド状態になっています。私達の78号車が激しいコンペティションの真っ只中にいることを否が応でも実感させられる光景です。

この後ろに13台のマシンがいます(^^)v
グリッド後方に#83・NSXと#70・RX−7を従えた78号車


 毎年のことながら、資金力の豊かなチームはこのダミーグリッド上の風景もじつに華やかなもので、大勢のスタッフやゲスト達がマシンを取り囲み、カラフルなパラソルや立派な幟などが彩りを添えています。
 一方で私達のチームはというと、グリッド上には最低限必要な工具類しか持ち込まず、マシンに寄り添うスタッフのつなぎのデザインもバラバラで、見た目の華やかさや統一感は皆無といったところです。しかし、毎年1回、有志が手弁当で駆け付けて結成されるチームの結束力は、決して他所に見劣りするものではありません。むしろ、質素なグリッド風景であればあるほど、このグリッド位置に喰い込んでみせていることが誇らしく思えるというものです。


■ポスト・Charles■

 昨年のチームテスタスポーツは、チーム初トライとなる1PIT作戦を軸にしたアグレッシブなレース戦略〜
通称「Charles大作戦」〜を計画したものの、結果的にはマシンの燃欠トラブルの発生により、完遂の夢は潰えてしまいました。しかし今年は幸運なことに、決勝レース中2回以上のPITストップが義務化されたため、少なくともPITストップ回数に関しては、私達は労せずに他チームと肩を並べるチャンスを得たことになります。
 
 となれば、次なるレース戦略上のポイントは、長年の懸案だった
@レース中のタイヤ交換実施、と、A効果的なスティント割り、へと移ってきます。

 @は以前からその是非については明白であったわけですが、今年はインパクトレンチ用エアホースを這わせるためのPITタワーや、ホイールナット固定用のスリーブなどの一連の「道具」がようやく揃ったことで、経験の乏しさを除けば、もはや実行に移す上で支障はありません。当然ながら、交換作業に費す時間を補って余りある大幅なLAPタイム向上が期待されます。ただし、諸般の事情から、タイヤ交換は2スティント目終了後の1回のみとし、その交換パターンも、決勝レース中のドライバーインプレッションを踏まえて最終判断を下すことにしました。
 Aは監督のN平氏と私が土曜からアイデアを練り続けた結果、単純な均等割りにはせずに、1スティント目をより短く、2スティント目をより長くする変則の3スティントに決定。いつものようなフルタンクスタートを止め、やや軽めの序盤に少しでもポジションアップを狙っているところが大きなポイントです。

 元来、私達の78号車に1PITで400kmを乗り切れるマシンポテンシャルがあるかは疑わしく、レース戦略の自由度はかなり限られてはきますが、マシンやチームの能力を冷静に見極めた上で、昨年に引続き、可能な限りのアグレッシブなレース戦略をとることを選択したわけです。
 さらに、総合TOPの車両とのペース差で決まってくる総周回数の数字も、好タイムを連発してきた今週末の78号車の流れを汲んで、昨年のリザルトを3周上回る「
102周」という強気の周回前提を掲げました。これは同時に、チーム初の「3桁」完走へのチャレンジを意味しますが、今年は全車のPIT回数が2回で同条件となるので、私達からすれば、両車のLAPタイムペース差を元にして、例年よりも精度の高い周回数予測ができることになります。

スタート直前の穏やかなひと時・・・
78号車と伊藤選手を取り囲むチームの面々



 その1スティント目を担当するのは伊藤弘史選手。昨年に続いて78号車のスターティングドライバーを務めることになりましたが、さすがに2度目とあって終始落ち着いた様子で、グリッド上では時折り新宅選手と簡単な会話を交わしつつ、徐々に集中力を高めているようでした。
 前日のグリッド予選で1分42秒019という過去最高の予選タイムを叩き出した
伊藤選手+78号車のこのパッケージ。今週末、マシンの仕上がりにひときわ好感触を得ている伊藤選手だけに、序盤にどのような走りを見せてくれるのか、チーム全員の期待も自ずと高まっています。

 やがてスタート3分前のボード掲示。親交のある#33の大井貴之選手からも通りすがりにエールを贈られ、伊藤選手は決勝レースのローリングラップへと旅立って行きました。

前を行くはZ33〜。
後ろに迫るはランエボ〜。
スタートへ向けローリングラップ中の78号車 fromパドック

 




≪決勝レース≫

<スタート直後>
 〜13:20

 全109周にわたって争われる400kmレースは13時13分にスタートが切られ、ポールポジションからスタートした
#8・ニコカット GT3が総合TOPの堅持し、2番手の#1・ARTA DONAG GT3、3番手の#3・エンドレス アドバンZが続いていきます。
 
 ST‐3クラスの動きに注目すると、岡部自動車からエントリーしている3台のRX−7が、お互いにポジションを入れ替えながらもクラス1−2−3をキープ。予選3番手だった
#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX−7が先頭に踊り出て、堂々のTOPランを開始しています。一方のZ33勢は、#23・C−WEST ADVAN Z#19・バーディクラブTC神戸Z33がクラス4位・6位で続きますが、#33・eeiA−ings Z#9・ハウスコンサルタントADVAN Zが1周目の終わりに相次いでPITインをし後退。#33はオープニングラップで他車と接触してダメージを追ってしまったようで、PITガレージでの応急修理が開始されます。
 

◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 私達の#78・WW2 ダンロップ RX−7は、チームスタッフが総出でPITレーンから見守る中、総合27位のポジションで順調に周回を始めていました。スタート直後に、背後に控えていた#70・マジック kg/mm RX−7#83・BP ADVAN NSXの先行を許したものの、Z33勢2台の後退もあって、予選と同じクラス10位のポジションをキープしています。
 伊藤選手は混戦の中1分46秒台のラップタイムで周回を始めますが、4周目には早くも44秒台に入れ、その後も44〜45秒台のハイペースを維持して快走を続けます。これは昨年のレース序盤よりも1秒から1.5秒も速いペースであり、目の前を行くST‐3クラスのライバル勢とも全く遜色ないものです。前日の予選では昨年のタイムを2秒以上更新して私達を驚かせた78号車ですが、その勢いをそのまま決勝レースに持ち込んだカタチとなっています。

まずは無事にスタート成功(^.^)
安堵の表情を見せるチームPIT(12−C)


 この伊藤選手の好ペースが奏功し、クラス11位で続く
#43・ゼナドリンディクセルMJ M3とは、毎周2秒のペースで差がじわじわと拡がっています。この週末を通じてタイムが伸び悩んでいる感のある#43ですが、年間エントリー済みのチームとあって決勝ではステディな走りが予想されるため、スポット参戦組の私達にとってはしっかりマークしておくべきライバルであり、78号車の6年連続の完走&ポイント獲得につなげるためにも、今後の動向には目が離せないところです。


◆ST‐3クラス順位◆

経過時間: 0H 12M  (周回:  5/109LAPS)
      
総合12位 # 7   MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 5LAPS
総合13位 #14  岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 5LAPS
総合18位 #15  岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 5LAPS
総合19位 #23  C-WEST ADVAN Z 5LAPS
総合21位 #27  FINA SUNBEAM ADVAN M3 5LAPS
総合22位 #19  バーディクラブTC神戸Z33 5LAPS
総合23位 #16  H!NT. 7 5LAPS
総合24位 #70  マジック kg/mm RX-7 5LAPS
総合25位 #83  BP ADVAN NSX 5LAPS
総合27位 #78  WW2ダンロップRX-7 5LAPS
総合32位 #43  ゼナドリン ディクセル MJ M3 5LAPS
総合35位 # 9   ハウスコンサルタントADVAN Z 5LAPS
総合37位 #33  eeiA-ings Z 4LAPS






<30分経過時点>
 〜13:40〜


 曇り空でスタートしたレースは、時折りPITを駆け抜ける爽やかな風とともに静かに進んでいきます。

 ST‐3クラスは、ST‐1/2クラスのマシンの先行により総合順位を少しずつ下げたものの、上位勢に大きな順位変動はなく、一応の降着状態を保っています。その分、スタート直後に相次いでPITインして順位を下げたZ33勢の巻き返しが目立つ展開となっています。中でも
#9・ハウスコンサルタントADVAN Zは、クラスTOPのRX−7勢に肉薄する42〜43秒台のラップタイムで猛追を開始し、クラス順位を12位から8位まで一気に挽回。総合順位も24位まで戻し、ST‐3クラス中段の激しい順位争いの中に再び加わっています。それもそのはず、#9は2回のPITストップ義務を逆手にとり、あえて1周目にストップ&ゴーだけのPITインを敢行、最低限のロスタイムでコース復帰していたのです。本来、400kmレースを1PITで十分走り切れるポテンシャルがあってこその大胆な戦略といえます。
 また、一時は総合でも最後尾近くまでドロップした
#33・eeiA−ings Zは、その後PITロード速度違反によるドライビングスルーペナルティというダブルパンチを喰らいながらも、#70・マジック kg/mm RX−7のPITインにより、クラス12位へポジションアップしています。ただし、ラップタイムは45〜46秒台と#9ほどの勢いはなく、接触の影響か、今ひとつ精彩を欠く感じです。

 今回の岡山戦が初参戦となる
#70・マジック kg/mm RX−7は、クラス12位からスタート、序盤でクラス7位までスルスルと順位を上げていましたが、13時35分、突如白煙を上げながら緊急PITイン。そのまま修復作業に入り、15分以上のタイムロスを強いられる結果となりました。金曜のフリー走行ではいきなりクラス上位のタイムを叩き出して注目を集めた#70ですが、土曜のグリッド予選で起こったエンジントラブルをきっかけに、流れが悪い方向に転じてしまった感じです。
 今回のST-3クラスで最大勢力となっている6台のRX−7勢、その一角が早くも崩れてしまいました。

やっぱ、RX-7はカッコいいですな〜
白煙を上げながらPITインしてきた#70



 
その#70のPITのすぐ左隣りが私達チームテスタスポーツのPITでした。ライバルの早過ぎる脱落を目の当たりにしつつ、これとは対照的に伊藤選手は依然として快調に45秒台のラップを並べ続けます。驚くべきことに、レース開始から30分近くが経過し、15周目の周回を迎えようとする時点でも、78号車はまだ総合TOPのポルシェと同一周回に踏み止まっています。たしかに、レース前のシミュレーションでは「16周につき1LAPダウン」という強気の読みの元、78号車の総周回数を過去最多の102周に設定したのですが、それがいざ現実のものとなっても実感が湧かず、逆に落ち着かなくなるから困ったものです(笑)。

 78号車の現在のクラス順位は10位。さすがに追い上げ急な
#9・ハウスコンサルタントADVAN Zにはオーバーテイクを許しましたが、まだまだポイント圏内をしっかりとキープしています。逆に、先行していた#16・H!NT 7がややペースを落としたのか、次第に78号車の射程圏内へと入ってきました。12周目には両車の差は僅か0.4秒へ縮まり、もはや逆転は時間の問題と思われたのですが、タイミングモニター前に釘付けとなった私達をよそに、なかなかその順位は入れ替わりません。あとで伊藤選手に聞いたところでは、#16に対して何かアクションを仕掛ける度に、ことごとく水温が急上昇!・・・結局は自重せざるを得なかったとのこと。歴然としたペース差がありながら、最後まで抜くことを許されなかった伊藤選手の歯痒さは察するに余りありますが、それでも最後まで冷静さを失わなかったクレバーな走りは高く評価されるべきでしょう。
 こうして1〜2秒のGapを保ったままの両車の攻防は、その後、78号車が最初のPITインを迎える30周前後までずっと続きました。

 

◆ST‐3クラス順位◆

経過時間: 0H 30M  (周回:  15/109LAPS)
      
総合12位 # 7   MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 15LAPS
総合16位 #14  岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 15LAPS
総合17位 #15  岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 15LAPS
総合20位 #23  C-WEST ADVAN Z 15LAPS
総合21位 #27  FINA SUNBEAM ADVAN M3 15LAPS
総合22位 #19  バーディクラブTC神戸Z33 15LAPS
総合23位 #83  BP ADVAN NSX 15LAPS
総合24位 # 9   ハウスコンサルタントADVAN Z 15LAPS
総合25位 #16  H!NT. 7 15LAPS
総合26位 #78  WW2ダンロップRX-7 15LAPS
総合31位 #43  ゼナドリン ディクセル MJ M3 14LAPS
総合34位 #33  eeiA-ings Z 14LAPS
総合36位 #70  マジック kg/mm RX-7 12LAPS

 




<55分経過時点>
 〜14:05〜


運命のPITストップ■


 78号車の1スティント目の予定周回数はちょうど30周。過去のレースでの35周〜37周目というタイミングと比べて短めに設定し、燃料搭載量をやや軽くすることで積極的なポジションアップを狙ったものでしたが、結果的には、絶好調の伊藤選手をもってしても、昨年のレース序盤のような胸のすくオーバーテイクシーンを再現することはできませんでした。
 しかしこれは、決して私達の作戦の失敗でも伊藤選手のミスでもありません。振り返れば、土曜の予選で過去最高のタイムを叩き出し、日曜の午後になってもその好調さを維持している私達の78号車は、言ってみれば最初から「収まるべきポジションで」決勝レースに参加していたのです。本来の相対位置関係を正しく反映したグリッドだったからこそ、元々ドラマチックな順位変動を期待してはいけなかったのです。

全員がPITロードに注目中・・・
78号車を待つ新宅選手と給油スタッフ

 14時00分、チームテスタスポーツのPITでは給油スタッフと新宅選手がすでに臨戦態勢に入り、いつでも伊藤選手を迎え入れる体制が整っていました。全員がほぼ1年ぶりのPITストップ作業となりますが、前日に軽く練習し記憶を呼び起こしているので、とくに不安要素はありません。
 WW2サポート隊からは、給油のエア抜き側担当の
克ちゃん、消火器担当のT−eMさんが、ともに耐火スーツと純白のヘルメットを装着し、準備万端といった面持ちでその時を待ちます。
 14時03分にサインガードから伊藤選手にPITインの指示を出し、チームは78号車がPITロードに滑り込んでくる瞬間を待ち受けます。


 次第にPITの私達の緊張感が高まっていく中、伊藤選手はなぜか次周PITウォールの向こうを勇壮に通過(笑)。1周ほどオマケの周回をし、31周を消化して14時08分にPITロードへ進入してきました。誰もいない静かなPITレーンをゆっくりと進んでくる78号車。しかし、N平監督が高く掲げたPITストップボードが降ろされた瞬間、伊藤選手が12‐Cピット前に向けてスパッとステアリングを切り込む・・・・はずが、マシンは

そのままPITロードを直進!?!?

 
訳が判らず呆然とする私達と、驚いたような伊藤選手のバイザー越しの視線がピッタリ合った瞬間、DIREZZAカラーのマシンはまさにチームテスタスポーツの真正面のPITロード上を通過しようとしていました。
 78号車は私達のPIT前を5mほど行き過ぎて緊急停止。PITエリアにいたチームスタッフが我こそはとマシンに駆け寄り、正規の停止位置まで78号車を押し戻し、なんとかリカバリーを果たします。この間、すっかり冷静さを取り戻した伊藤選手は、元F1の○ンセル選手のようにバックギアに叩き込むような過ちは犯しません(笑)。

 こうして予定外のタイムロスを15秒ほど喫しましたが、ここからあらためて仕切り直し。チームは早速、予定していたガソリン給油作業を開始します。第2スティントは40周の長丁場となるため、給油量の細かい数字を気にする必要はありません。フルタンクになるまでひたすら給油リグを差し込み続けます。

 この間を利用して、2人のドライバーがコクピットで交代作業を進めますが、ハプニングの影響もあったのか、ドリンクボトルやコネクターの脱着にやや手間取り、給油作業の完了から暫く経った後、14時10分にようやく新宅選手が爆音を轟かせながら私達のPITを後にしていきました。

今年はちゃんと画像を撮ってます(^^ゞ
1回目のガソリン給油中の78号車

 予期せぬハプニングの発生に混乱した私達のPITが、マシンのピットアウトを見届けやっと平静を取り戻しかけた時、追討ちをかけるように担当のオフィシャル氏がチームオーナーに何やら告げに来ます。どうやら、マシンを押し戻すために走リ寄ったPITスタッフの人数を問題視しているらしく、ペナルティの審議に入っている様子です。・・・たしかに、S耐ではチーム間の格差をなくす目的から、PIT作業にあたる要員の数が厳しく制限されており、些細な違反がたびたびペナルティ対象となってきています。
 自分自身の思わぬミスに、汗を拭くのも忘れて悔しい表情を浮かる伊藤選手を中心に、私達のPIT内は暫し不穏な空気に包まれます。・・・が、やがて担当オフィシャル氏が再びPITに姿を現すと、PITレーンでの安全確保に努めるよう厳重注意を行ない、今回は「御咎めなし」と告げて去っていきました。
 「・・・ふぅ!」 一時はペナルティを覚悟したチーム全員の顔にたちまちいつもの笑みが戻ったのは言うまでもありません。伊藤選手は心から安堵の表情を浮かべ、突然思い出したように水分補給を再開します。私達もその姿を見ながら序盤の素晴らしい走りをあらためて称え、労ったのでした。

 このようにして、絶体絶命の危機をなんとか乗り切ったと思えたチームテスタスポーツでしたが、この1回目のPITインのドタバタ劇が、その後の78号車のレース展開に思わぬ陰を落とすことになるのでした・・・。





<1時間20分経過時点>
 〜14:30〜

 109周のレースも45周を過ぎ、そろそろ折り返し地点が近付いてきましたが、スタート直後の曇り空はどこへやら、サーキット全体はすでに強い日差しに包まれています。

 ST‐3クラスは、岡部自動車の3台のRX−7勢が1回目のPITストップを終えてやや後退。これに代わって、1回目のPITストップをショートストップ作戦としたZ33勢が浮上、
#9・ハウスコンサルタントADVAN Z#23・C−WEST ADVAN Zがクラス1−2を形成しています。各車のラップタイムは気温の上昇に伴い、概ね44秒〜45秒台にペースダウンしていますが、唯一、#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX−7 は43秒台で攻めの走りを続けています。#23と#15の2位争いも僅差で白熱していますが、この後に控える2回目のPITストップの所要時間の差が、順位争いに大きな影響を与えることは間違いない状況です。

 

◆ST‐3クラス順位◆

経過時間: 1H 20M  (周回:  46/109LAPS)
      
総合12位 # 9   ハウスコンサルタントADVAN Z 45LAPS
総合13位 #23  C-WEST ADVAN Z 45LAPS
総合15位 #15  岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 45LAPS
総合16位 #19  バーディクラブTC神戸Z33 44LAPS
総合17位 # 7   MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 44LAPS
総合18位 #14  岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 44LAPS
総合21位 #27  FINA SUNBEAM ADVAN M3 44LAPS
総合27位 #83  BP ADVAN NSX 43LAPS
総合28位 #33  eeiA-ings Z 43LAPS
総合29位 #16  H!NT. 7 43LAPS
総合30位 #78  WW2ダンロップRX-7 42LAPS
総合32位 #43  ゼナドリン ディクセル MJ M3 42LAPS
総合35位 #70  マジック kg/mm RX-7 39LAPS


 チームテスタスポーツは31周終了時点で伊藤選手から新宅選手へとドライバー交代し、全40周の第2スティントへ突入しました。
 ここまで、基本的にはほぼ私達のスケジュール通りに進行していますが、レース前半途中からサーキットには強い日差しが降り注がれており、PITに居ながらにして気温や路面温度の急上昇が十分に感じ取れるほどです。この酷暑の中、消耗の進んだタイヤ/ブレーキと、すっかり熱に覆われたマシンで厳しい中盤戦をいかに乗り切るか・・・78号車の命運は、今回もクールスーツ装着をキャンセルしたタフな新宅選手の70分間のドライビングに委ねられることとなりました。
 

■我慢の中盤戦

 新宅選手の序盤のラップタイムは1分48秒〜50秒といったところ。これは昨年よりも1秒〜1.5秒速いペースで、ここでも今回のマシンの仕上がりの良さを裏付ける結果となっています。ただし、第1スティントで接戦を演じていた#16・H!NT 7とのGapは、1回目のPITストップを終えた時点で一気に20秒以上に拡がり、その後も、#16のペースが47秒〜48秒台に留まったものの、両車の差は少しずつ拡大する傾向にあります。一方で、後方の#43・ゼナドリンディクセルMJ M3に対しては1分30秒ものマージンを築いており、なお毎周2秒ずつその差は拡がっています。
 レースの折り返し地点に向けてひた走る78号車。同クラスの前後車両とは少しずつ差が開きつつあり、当面の順位変動はなさそうですが、
PITアウト直後に#33・eeiA−ings Zに抜かれたことでクラス順位は11位に後退。今回のレースで初めて、ポイント圏外にはじき出されての周回が続きます。

右端になにか写ってますねぇ(笑)
#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7
ねっ、着替えてまで撮影に行った甲斐があったでしょ(笑)
#43・ゼナドリン ディクセル MJ M3



 しかし、第2スティントが残り20分となった15時少し前、コース上の新宅選手から突如、マシンの燃欠発生を告げるレポートが入り、事態は一転します。


 記憶に新しいところでは、昨年の1PIT作戦敢行を阻む要因となったこの「燃欠」。78号車にとっては持病といえるもので、過去のレースで幾度となくこの「悪夢」に見舞われています。症状は、まずインフィールドの低速左コーナー立ち上がりで発生、それ以降周回を重ねるごとに確実に悪化の一途を辿る、という御決まりのパターンです。
 もちろん、フルタンクで第2スティントへ旅立った78号車にはまだ40L以上のガソリンが残っており、決して燃料が底をついている訳ではありません。短時間のフリー走行や予選走行では発生しないことから、決勝での連続周回によってガソリン自体を含めた燃料系統が長時間熱に晒されることで発生しているものと思われます。ただ、今年のマシンは燃料タンクを新調した際に、吸込み口が潰れないような対策を加えていたので、事態の好転を期待していたのですが、そうはうまく事は運ばなかったようです。あるいは今年の著しいLAPタイム向上も、症状の再発を加速させる一因となっているのかもしれません。
 それにしても、私達のように年1回のスポット参戦では、事実上、本番の決勝レースが唯一のロングランテストの機会であり、問題の根本対策が進んでいかないところはもどかしいところです。


 燃欠はエンジンに深刻なダメージを与える可能性が高いため、チームには前後のマシンとの位置関係を慎重に考慮しつつ、ペースダウンして周回数を稼ぐか、即PITインしてフレッシュな燃料を継ぎ足すかの選択が求められます。もちろん、PITストップタイミングと連動して決まる3スティント目の周回数および所要時間、必要給油量も考慮して決定する必要があります。マシントラブル発生の影響をいかに最小限に留めるか、まさに的確な戦略対応が求められる重要な局面でした・・・が、結果的に、私達のPITには対応策を練るだけの時間的猶予は与えられませんでした。じつは、1回目のドライバー交代直後から
交信システムが不調で、78号車はドライバーとPIT側の十分な意思疎通ができない状態だったのです。このため新宅選手はPIT側から十分な情報を得ることなく、猛暑の襲う孤独なコクピットの中で、78号車の身の振り方を自ら判断せざるを得なかったのです。
 結果的に、最も安全サイドの決断を下した新宅選手の手によって、78号車は15時02分、予定より12周も早い段階でPITロードへ進入、2回目のPITストップを行なうことになったのです。

 新宅選手が28周を消化したところの出来事でした。




<2時間経過時点>
 〜15:10〜



■2回目のPITストップ

 第2スティント後半での燃欠発生により、予定外のタイミングで作業準備を始めることになったチームテスタスポーツのPIT。2回目のPITインでは、ガソリン給油とドライバー交代に加えて、タイヤ交換とクールスーツ用の氷水の交換が予定されています。しかも、これらの作業の補助要員まで含めるとチームメンバーでは頭数が足りないため、日曜に私達のPITに応援に駆け付けてくれたゲストの中から数名がヘルパー要請をされており、PIT内の人の動きの慌しさには一層の拍車がかかっています(苦笑)。 
 元々が混成チームの成り立ちの私達ですが、さらに当日ヘルパーさんが加わるとなると、現場で不要な混乱を招かないよう、事前の入念な打ち合わせは当然ながら、ミスのない着実な作業と的確な指示・判断が求められることなります。戦況把握との名目で唯一人PIT内に留まることを許容されている?私も、不測の事態に備え、この時ばかりはPIT脇で軍手をはめて待機します。

 今回のPITストップでの目玉は、なんといっても私達のチーム初となる
ルーチンのタイヤ交換でしょう。
 前後4本交換という最終決定が下されたのは、実は降りてきたドライバーに状況確認した後、というかなり悠長なものでしたが、給油作業の完了を待ってジャッキアップ、そして左右のフロントタイヤから作業開始と、流れるほどの連携動作はないにせよ、作業は予定通り着実に進んでいきます。土曜の予選終了後に予行練習をした際は、5本のナットを1本ずつ装填して締結する作業に驚くほどの時間を消費してしまいましたが、ナット固定用のスリーブを入手して臨んだ本番ではその手間が要らず、見違えるほどの速さで前後輪の脱着作業が進んでいきます。
 もちろんこれは、ルマン優勝経験もあるカリスマメカニックのNさんと、若さとパワーで速さはNさんをも凌ぐMさんの二人の活躍があってこそです。二人の着実な作業によって50秒あまりでタイヤ交換を完了。即エアジャッキが降ろされ、伊藤選手が78号車を勇壮にPITアウトさせていく光景には、間近で見守っていた私も思わずシビレました。

 こうして、タイヤ交換というチーム初の一大イベントを無事完遂、新しい靴を履いた78号車は再び灼熱のコース上へと復帰していきました。

◆ST‐3クラス順位◆

経過時間: 2H 00M  (周回:  73/109LAPS)
      
総合10位 # 7   MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 70LAPS
総合12位 #23  C-WEST ADVAN Z 70LAPS
総合13位 #15  岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 70LAPS
総合15位 # 9   ハウスコンサルタントADVAN Z 70LAPS
総合16位 #19  バーディクラブTC神戸Z33 69LAPS
総合18位 #14  岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 69LAPS
総合19位 #83  BP ADVAN NSX 69LAPS
総合20位 #27  FINA SUNBEAM ADVAN M3 69LAPS
総合23位 #16  H!NT. 7 68LAPS
総合27位 #43  ゼナドリン ディクセル MJ M3 67LAPS
総合28位 #33  eeiA-ings Z 66LAPS
総合29位 #78  WW2ダンロップRX-7 66LAPS
総合33位 #70  マジック kg/mm RX-7 64LAPS

 

 







<2時間20分経過時点>
 〜15:30〜


■PITイン追加の決定■

 40周の予定だった第2スティントを28周で打ち切らざるを得なくなったことで、78号車のPITスケジュールは修正を余儀なくされます。

 第2スティント終了時点での総周回数は59周ほど。今年は総合TOPから7周遅れの102周走破を目指しているため、ゴールまでにはまだ43周もの遠い遠い道程が残っています。しかも78号車は過去に、これだけの周回数を1スティントで乗り切った実績はありません。スタート直後からならまだしも、すっかりマシンに熱が回ったレース中盤からのロングランは非常に厳しいチャレンジと言わざるを得ません。また、再びマシンに乗り込んだ伊藤選手にとっても、当初予定の32周に対し11周がプラスされる計算となり、燃欠症状を抱え込んだ78号車とともに、75分先のゴールまでその速さをキープできるか大いに不安が残るところです。 

 これに加えて急浮上したもうひとつの悩ましき問題が、ここ岡山戦での1人のドライバーの
最高周回数制限(=72周)のルールでした。新宅選手の周回数が28周に留まったことから、伊藤選手が規定ギリギリの72周を消化しても、トータル周回は100周止まりとなり、私たちが目標とした102周には届かないのです。終盤、故意にペースを抑えて周回数を減らす作戦もありますが、昨年に続いて積極的なチャレンジを目指した私達の戦略とは相容れないもので、第一、果敢な走りを披露してくれている両ドライバーに申し訳が立ちません。しかもこの先、コース上のアクシデント発生でSCランが入るような事態にでもなれば、総周回数が予想以上に伸びてしまうリスクもあります。

 規定周回数オーバーは即失格となり、今回のレースリザルトから抹消されてしまうことを意味します。レースマネジメントの至らなさのせいで、この1年間のチーム関係者の苦労が水泡に帰すということにもなり兼ねません。この段階で、チームテスタスポーツは3ストップ作戦への変更が決定的となりました。

 今年から2回のPITが義務化され、他チームに対するハンデがやっと解消したかに思われた私達のチームですが、皮肉なことにまたしても、他所より1回多くPITインロスを支払う展開となりました。今から思えば、新宅選手のPITストップをあと数周先延ばしできていれば・・・と悔やまれることしきりですが、慌しい1回目のドライバー交代で通信手段に支障を来たしていた78号車にはもう術は残されていませんでした。まさか、
「PITイン禁止」のサインボードなど用意してないですからね(笑)。

会長&ヒロシ君おつかれさまでしたm(__)m
酷暑と戦い続けるサインガード部隊


 こうして急遽、新宅選手のドライブで第4スティントを設けることになったチームは、そのタイミングの検討に入ります。マシンの状況から燃欠症状が再発する可能性は極めて高く、マシンダメージを最小化する意味では、残り周回を均等に2分割し、中間地点でフレッシュなガソリンを継ぎ足すのがベストに思えます。しかし、ST3クラスの順位関係に目をやると、フレッシュタイヤを得た伊藤選手が45〜46秒台のペースで快走を続けていることで、一旦は大きく差を拡げられたクラス9位の
#16・H!NT 7とのGapを毎周2〜3秒ずつ削り取っており、後方の#43・ゼナドリンディクセルMJ M3との関係に至っては、毎周5秒ずつそのGapを拡大し続けているという絶好の展開です。少しでも上位進出の可能性を追求するため、足廻りをリニューアルした78号車と抜群の相性をみせる伊藤選手に、少しでも多くの周回を託すべきという判断にもはや異論はないでしょう。タイミングモニターに表示されるLAPタイムと前後Gapの推移に注目しながら、慎重なPITタイミングの検討が続けられます。


 
ST‐3クラスでは、今季2勝を挙げてシリーズポイントをリードしている15 ・岡部自動車アドバン洗剤革命RX−7#23・C−WEST ADVAN Zとの激しいバトルを制してクラス2位に浮上、#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX−7とともにRX−7の1−2体制を築いています。しかし、同じく上位をキープしていた僚友の14 ・岡部自動車ディクセル洗剤革命RX−7は、15時22分に駆動系のトラブルから緊急PITイン、15時30分にコース復帰を果たすものの、ポイント圏外のクラス11位まで大きく後退しました。
 クラス3位〜5位にはZ33勢が続き、その後方では
#27・FINA SUNBEAM ADVAN M3#83・BP AVDAN NSXが順位を入れ替えながら、クラス6、7位に順位を上げています。さらに、#16・H!NT 7、#78・WW2ダンロップRX−7、#43・ゼナドリンディクセルMJ M3までがポイント圏内での走行を続けています。
 昨年はなかなか上位争いに喰い込めなかったRX−7勢が、序盤からレースを堂々リードしてできているのは、2PITを義務化した今シーズンのルール改定の影響がかなり強く出た結果と思われます。

◆ST‐3クラス順位◆

経過時間: 2H 30M  (周回:  88/109LAPS)
      
総合10位 # 7   MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 85LAPS
総合11位 #15  岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 85LAPS
総合12位 #23  C-WEST ADVAN Z 85LAPS
総合14位 # 9   ハウスコンサルタントADVAN Z 85LAPS
総合15位 #19  バーディクラブTC神戸Z33 85LAPS
総合16位 #27  FINA SUNBEAM ADVAN M3 84LAPS
総合19位 #83  BP ADVAN NSX 84LAPS
総合23位 #16  H!NT. 7 83LAPS
総合25位 #78  WW2ダンロップRX-7 82LAPS
総合29位 #43  ゼナドリン ディクセル MJ M3 81LAPS
総合30位 #14  岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 79LAPS
総合32位 #33  eeiA-ings Z 75LAPS
総合33位 #70  マジック kg/mm RX-7 74LAPS

 

◆     ◆     ◆     ◆     ◆

 さて、決勝レース中は大変貴重な情報源として重宝するタイミングモニターですが、これをきっちりと有効活用するには、数々の人知れない苦労があります。

あなたはどれだけの情報を読み取れますか?
タイミングモニターの表示例(予選時)

 その苦労の原因の最たるものがこの定番の表示スタイル。総合10位までの上位勢は常に画面の中央部に固定表示されますが、総合11位以降となると、画面の下半分の残りスペースを使い、下から上へスクロール表示されていくので、その一瞬一瞬が勝負となってきます。
 それでもまだ自チームのマシンだけなら難易度も低いのですが、順位を争う可能性のある同クラスのライバル勢の動きまで把握しようとすると、目はたちまち画面に釘付けとなり、瞬きすら憚られるほどになります(笑)。
 とくに今回はST−3クラスの車両が13台も存在し、かつその大半が中段に固まって連続走行しているとなれば、クラス順位とゼッケンを一度に書き取るだけでも神業に近い作業となります。



 さらに、
クラスの前後マシンとのGapとなると、簡単に読み取れるのは直前・直後に続くケースのみで、間にマシンが数台挟まった瞬間に、次々にスクロールする表示を追いかけながら、瞬時に足し算をしていく必要が生じるので難易度が倍増します。もしも読み間違えようものなら、一巡して次回に表示されてくるまで暫らく指を咥えて待つ必要がありますが、その間にもレースはどんどん動いていってしまうのです。当然ながら、マークすべきライバル車がある場合は、このGapはもちろんのこと、相手側のLAPタイムの推移にも常に注意しておかなければなりません。
 チームテスタスポーツがゲスト用に設けているチームテントには2つのモニターが設置されています。一方のモニターでは生中継風のレース映像が随時流されており、PITに居ながらにして楽しくレースを観戦できるのですが、常にタイミングモニターの方を凝視せざるを得なかった私は、結局最後まで、1度もその楽しげな中継映像に目をやる余裕がありませんでした・・・。

 このように骨の折れる戦況把握の作業は、別にチームの誰から指示されたわけでもなく、WW2サポート隊の私が数年前から自発的に始めたものですが、生データからチームにとって有益な情報を引き出していく作業は、レースの戦略判断のためには不可欠であり、時としてチームの順位を大きく左右することもあります。このため、私が収集・分析したデータは常にチーム首脳陣と共有化できるよう、常にPIT内を行き来して情報展開に努めているわけなのです。もちろん、こうしてレース中に記録したデータは、後でWW2レポート作成用のネタとして大活躍するわけですから、まさに一挙両得ですね(^.^)。



<2時間45分経過時点>
 〜15:55〜


■3回目のPITイン■

 伊藤選手によるドライブで約35分が経過した15時40分、ついに、恐れていた燃欠発生のレポートがPITへ入ってきました。第3スティントのちょうど20周目、トータルで79周目での出来事です。

  この時点で78号車は
ST-3クラスの9位。クラス10位で続く#43・ゼナドリンディクセルMJ M3に対しては1周以上のGapを稼いでおり、ほぼ安全圏内に入ろうとしていましたが、緊急PITインを終えて42秒台で猛追を開始している、クラス12位の#14・岡部自動車ディクセル洗剤革命RX−7の圧倒的なパフォーマンスを考えた場合、私達の#78と#43との順位関係が最終的に、クラス10位(1ポイント)と11位(ノーポイント)とを分ける重大な分岐点となる可能性もあります。私達が最後のPITストップで予期せぬタイムロスをしないとも限らないので、少しでも#43に対する余裕マージンを稼いでおきたいというのが偽らざる心情です。
 さらには、先行する
#16・H!NT 7の背中は未だに見えていないものの、タイミングモニター上で、ライバルに対して急追のプレッシャーをかけ続けておくことも大切なことです。

 こうした状況から、チームテスタスポーツは当面のPITインを見送ることに決定。周回中の伊藤選手には、燃欠発生を回避しつつ、できるだけ周回数を伸ばすよう、極めて難しい注文が出されます。しかし伊藤選手はそれにきっちりと応え、LAPタイムを46秒〜47秒台にやや落として、安定した周回を続けます。追撃ペースとしてはやや鈍りましたが、それでも後方のマージン作りには十分な速さであり、#43とのGapは毎周3〜4秒ずつ着実に拡がっていきます。

 この状態で10周近く周回を消化した88周目、ここでチームはPITストップのタイミングと判断、サインガードに最後のPITイン指示を伝えます。

次第に影も長くなってきています・・・
伊藤選手の周回を見守るPIT


 こうして15時50分、レースが残り約10周となったところで、78号車は3回目のPITインを敢行。その主目的はドライバー交代ですが、燃料系の冷却のために40Lのガソリン給油も行います。
 給油担当マンはこのレース3回目の作業に入りますが、事前に給油リグ周りをきっちりオーバーホールしていたお陰で、極めて順調にガソリンがマシンへと流れ込んでいきます。一方でコクピットはそtれとは対照的に、伊藤選手へドライバー交代指示が伝わっていなかったために、またしても大慌てのドライバー交代劇となっていました。結局、交代に40秒あまりを要することになりましたが、15時55分に、新宅選手は無事にPITアウトしていきます。

給油はとっくに終わっております(^^ゞ
マシンから降りた伊藤選手が交代サポート中




<2時間55分経過時点>
 〜16:05〜


 3回目のPITストップを終え、チームの狙った通り、直接のライバルである
#43・ゼナドリンディクセルMJ M3の前方、クラス9位をキープしたままでコース復帰することに成功した78号車。あとは、このまま無事にゴールまで走り切りさえすれば、チームの最低目標である「完走&ポイント獲得」が確実な状況となりました。
 レース終盤にかけての猛追が予想された
14・岡部自動車ディクセル洗剤革命RX−7は、いよいよゴール間近となっても、なお毎周8秒から9秒ずつ78号車とのGapを豪快に削り取ってきますが、それでも私達にはまだ逆転を阻止するだけの十分なマージンが残っていました。それどころか、どうやら#14は追撃空しく、目前の#43にもギリギリ届かない公算が強まってきました。

 例年の400kmレースであれば、完走イコール「ポイントGet」を意味したのですが、何故かST‐3クラスのリタイアが1台も出ず、完走率が100%に達しようとしている今年は、たとえ完走を果たしても下位3台がノーポイントになる非情な展開となっています。そんな中で私達の78号車が、トラブルを抱えながらも堂々とポイント圏内を維持できているのは、チームのレースマネジメントがうまく機能した証拠であり、私達全員に一際大きな喜びと達成感をもたらしてくれています。

 現時点、総合TOPの
#1・ARTA DENAG GT3#78・WW2ダンロップRX−7との周回差は、タイミングモニターで確認したところでは「9周」。もしレースの残り時間でもう1度#1にLAPダウンされてしまうと、総周回数が99周止まりになるという、ちょっと微妙なポジションに追い込まれています。当初の目標としていた102周は、PITストップ回数が増えた段階で達成困難となりましたが、せめて周回数を3桁に乗せて締め括りたいというのが私達全員に共通する思いでした。


◆ST‐3クラス順位◆

経過時間: 2H 55M  (周回:  100/109LAPS)
      
総合10位 # 7   MAKERS ISHIHARA MARINE RX-7 96LAPS
総合12位 #15  岡部自動車アドバン洗剤革命RX-7 96LAPS
総合13位 #23  C-WEST ADVAN Z 96LAPS
総合14位 # 9   ハウスコンサルタントADVAN Z 96LAPS
総合15位 #27  FINA SUNBEAM ADVAN M3 96LAPS
総合16位 #19  バーディクラブTC神戸Z33 96LAPS
総合17位 #83  BP ADVAN NSX 95LAPS
総合23位 #16  H!NT. 7 94LAPS
総合27位 #78  WW2ダンロップRX-7 93LAPS
総合29位 #43  ゼナドリン ディクセル MJ M3 92LAPS
総合30位 #14  岡部自動車ディクセル洗剤革命RX-7 91LAPS
総合32位 #33  eeiA-ings Z 86LAPS
総合33位 #70  マジック kg/mm RX-7 86LAPS

 



<ゴール>
 〜16:17〜

 13時13分のレーススタートから約3時間。400kmのレースは途中でアクシデントによる中断もなく淡々と進み、いよいよチェッカーの時を迎えようとしています。
 レース後半に
#8・ニコカット GT3を逆転し、総合TOPに躍り出た#1・ARTA DENAG GT3が、そのままのポジションでゴール。無敵の開幕5連勝を飾り、2戦を残して早々とST‐1クラスのシリーズチャンピオンを獲得しました。

 ST‐3クラスは、終始攻めの走りを披露した
#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX−7が嬉しい初優勝を飾りました。一方、終盤まで2位をキープしていた15 ・岡部自動車アドバン洗剤革命RX−7は、残り数周でガス欠によりまさかのPITイン。さらに、エンジンが始動せずコース復帰に手間取ったため、一気にクラス7位まで転落してしまいました。これと入れ替って表彰台の左右を占めたのが#23・C−WEST ORC アドバンZ#9・ハウスコンサルタントADVAN Zの2台。終始しぶとい走りを見せた#27・FINA SUNBEAM ADVAN M3が、#19・バーディクラブTC神戸Z33をかわしてクラス4位で続きます。唯一のNSXである#83・BP ADVAN NSXがクラス6位。以下、#16・H!NT 7#78・WW2ダンロップRX−7#43・ゼナドリンディクセルMJ M3までがポイントを獲得しました。



 16時18分、#1・ARTA GT3に遅れること30秒、ハチマキとRrウィングのイエローのアクセントカラーがひときわ目立つ私達の78号車にも、栄光のチェッカーフラッグが振り下ろされました。チームメンバー総出でゴールを迎えるこの瞬間、プラットフォーム上はメンバーの笑顔が交錯して特別な雰囲気に包まれます。誰彼となく喜びを分かち合い、苦労をねぎらい合うこのシーン、何度経験しても本当に素晴らしく、毎回感動を新たにします。
 6年連続の完走を達成した78号車とチームテスタスポーツに、ゴール直後もうひとつ御褒美が用意されていました。タイミングモニターに刻まれた
「100」の数字。そうです、私達はここ岡山での400kmレース挑戦6年目にして、初めて3桁完走を果たしたのです。元々は102周という強気の目標を持っていただけに、悔しさも少し残りますが、何とか大台に乗せることができました。


ゴール直後、車両保管中の78号車



 結局、78号車は
目の前のライバルだった#16・H!NT 7を射程圏内に捉えることはできませんでしたが、リザルト上での両車の差は1周半程度であり、途中の余分なPITストップを除いて考えれば、私達の78号車は、少なくともコース上の速さという点では、十分に戦いを挑めるだけのポテンシャルを持っていたと言えるでしょう。あとは、ミスのない作業とエラーのないマシンさえあれば、必ずやライバルに勝利できるに違いありません。


 これで78号車はS耐デビュー以来の連続完走&ポイント獲得記録を「9」に伸ばしました。


撤収作業お疲れさまでした(^<^)
チームメンバー&ゲストの皆さんで記念撮影

 



■いざ戦いの土俵へ■

 チームテスタスポーツと78号車は、2001年の初参戦レースから数えて6年連続となる岡山での400kmレースを、またも完走で終えることができました。

 この6年を振り返ってみると、私達は2年ごとに着実にステップアップしてきたといえます。自身の完走だけで精一杯で、ライバルを気にする余裕すらなかった手探りの1年目&2年目。依然として速さで劣りながらも落ち着いてレースに臨めるようになり、トラブルで自滅したマシンを確実に食っていった3年目&4年目。そして5年目&6年目では、時折りクラス中段の争いに絡める速さを発揮し始め、そこそこのポジションから、戦況を読みつつライバルに戦いを挑んでいけるようになりました。と同時に、ここ2年は、タイヤ無交換&2PITという従来の消極的なレース戦略を改め、他の常連チームと同レベルの戦略の実現に努めてきました。スキルの未熟さが災いして、チーム全体の動きは決して洗練されたものではありませんが、少なくともメンバーの意識改革という点では、徐々に実を結びつつあると思います。

 今年のレースでは、私達が戦うべき土俵が現実のものとしてハッキリと認識できました。次回は、その土俵の中でどうレースを戦い切るべきか、そして、そのためにはどんな戦術・戦略が必要となるのかを、より真剣に考えていくことになるでしょう。目標としては、スポット参戦組のTOPを取るのはもちろん、常連チームにも正々堂々と戦いを挑み、そのうちの何台かを喰えたら本当に最高だと思います。

 岡山に78号車あり、と言われるくらいの健闘をしてみたいですね(^・^)

◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 私達WW2は、チームの中での存在感を年々高めてきたと感じています。今年のレースだけを例にとっても、チームの初レースから準・皆勤賞を続け、チームから絶大の信頼を得ている
克ちゃん、サポート3年目にしてすっかりチームに溶け込み、大活躍してくれたT−eMさんをはじめ、サポート隊以外でも、スペアパーツ集めに奔走したkshintaniさん323GTさん、土壇場まで要員確保に走ってくれたKojiさん、現地まで応援に駆け付けてくれたしゅんさんFAMILIA09さん、遠方から応援メッセージを送ってくれたおくさんこーぢさんなど、レースウィークの3日間のみならず、じつに様々な場面で、多くのWW2メンバーがチームの活動と関わっています。

 来年はWW2のサポートをより強力なものとしたうえで、マシンやPITワークにもさらに改善を加え、マシンおよびチームメンバーが持てる力を遺憾なく発揮できる状態をぜひ作り上げたいと思います。そうすれば、予選・決勝ともにチーム新記録に湧いた今年をさらに上回る好リザルトをきっと手に入れることができるでしょう。


(おまけ)あとがき

 私
Nukupeeは昨年、突如チーム監督代理としての重責を担ったため、貴重な体験をさせて頂いた反面、本業の(?)WW2レポート書きとしては十分な取材活動をすることができませんでした。今回はその反省を踏まえ、チームの監督補佐的な立場へ一歩退かせて頂き、レースの戦況把握とWW2取材活動という二つの使命を、何とか納得できるレベルでこなすことができました。
 しかし、この2つの両立のためには少なからず妥協を強いられています。いつかの日か、その何れかに100%勢力集中して取り組んでみたいとの思いが私にはあって、そのためには今後のWW2サポート隊の人材育成がカギとなりそうです・・・(笑)。マツダのモータースポーツ復帰を強く待ち焦がれる同志の方で、文才のある人、写真が得意な人、データ分析に長けた人、誰よりもレース好きな人、分野はどれでも構いませんので、そんな方々の出現を気長にお待ちしておりますm(__)m。


(おわり)