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■前進の中段グリッド■
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全109周にわたって争われる400kmレースは13時13分にスタートが切られ、ポールポジションからスタートした#8・ニコカット GT3が総合TOPの堅持し、2番手の#1・ARTA DONAG GT3、3番手の#3・エンドレス アドバンZが続いていきます。 ST‐3クラスの動きに注目すると、岡部自動車からエントリーしている3台のRX−7が、お互いにポジションを入れ替えながらもクラス1−2−3をキープ。予選3番手だった#7・MAKERS ISHIHARA MARINE RX−7が先頭に踊り出て、堂々のTOPランを開始しています。一方のZ33勢は、#23・C−WEST ADVAN Zと#19・バーディクラブTC神戸Z33がクラス4位・6位で続きますが、#33・eeiA−ings Zと#9・ハウスコンサルタントADVAN Zが1周目の終わりに相次いでPITインをし後退。#33はオープニングラップで他車と接触してダメージを追ってしまったようで、PITガレージでの応急修理が開始されます。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
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14時00分、チームテスタスポーツのPITでは給油スタッフと新宅選手がすでに臨戦態勢に入り、いつでも伊藤選手を迎え入れる体制が整っていました。全員がほぼ1年ぶりのPITストップ作業となりますが、前日に軽く練習し記憶を呼び起こしているので、とくに不安要素はありません。 |
次第にPITの私達の緊張感が高まっていく中、伊藤選手はなぜか次周PITウォールの向こうを勇壮に通過(笑)。1周ほどオマケの周回をし、31周を消化して14時08分にPITロードへ進入してきました。誰もいない静かなPITレーンをゆっくりと進んでくる78号車。しかし、N平監督が高く掲げたPITストップボードが降ろされた瞬間、伊藤選手が12‐Cピット前に向けてスパッとステアリングを切り込む・・・・はずが、マシンは そのままPITロードを直進!?!? 訳が判らず呆然とする私達と、驚いたような伊藤選手のバイザー越しの視線がピッタリ合った瞬間、DIREZZAカラーのマシンはまさにチームテスタスポーツの真正面のPITロード上を通過しようとしていました。 78号車は私達のPIT前を5mほど行き過ぎて緊急停止。PITエリアにいたチームスタッフが我こそはとマシンに駆け寄り、正規の停止位置まで78号車を押し戻し、なんとかリカバリーを果たします。この間、すっかり冷静さを取り戻した伊藤選手は、元F1の○ンセル選手のようにバックギアに叩き込むような過ちは犯しません(笑)。 |
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こうして予定外のタイムロスを15秒ほど喫しましたが、ここからあらためて仕切り直し。チームは早速、予定していたガソリン給油作業を開始します。第2スティントは40周の長丁場となるため、給油量の細かい数字を気にする必要はありません。フルタンクになるまでひたすら給油リグを差し込み続けます。 |
![]() 1回目のガソリン給油中の78号車 |
予期せぬハプニングの発生に混乱した私達のPITが、マシンのピットアウトを見届けやっと平静を取り戻しかけた時、追討ちをかけるように担当のオフィシャル氏がチームオーナーに何やら告げに来ます。どうやら、マシンを押し戻すために走リ寄ったPITスタッフの人数を問題視しているらしく、ペナルティの審議に入っている様子です。・・・たしかに、S耐ではチーム間の格差をなくす目的から、PIT作業にあたる要員の数が厳しく制限されており、些細な違反がたびたびペナルティ対象となってきています。 自分自身の思わぬミスに、汗を拭くのも忘れて悔しい表情を浮かる伊藤選手を中心に、私達のPIT内は暫し不穏な空気に包まれます。・・・が、やがて担当オフィシャル氏が再びPITに姿を現すと、PITレーンでの安全確保に努めるよう厳重注意を行ない、今回は「御咎めなし」と告げて去っていきました。 「・・・ふぅ!」 一時はペナルティを覚悟したチーム全員の顔にたちまちいつもの笑みが戻ったのは言うまでもありません。伊藤選手は心から安堵の表情を浮かべ、突然思い出したように水分補給を再開します。私達もその姿を見ながら序盤の素晴らしい走りをあらためて称え、労ったのでした。 このようにして、絶体絶命の危機をなんとか乗り切ったと思えたチームテスタスポーツでしたが、この1回目のPITインのドタバタ劇が、その後の78号車のレース展開に思わぬ陰を落とすことになるのでした・・・。 |
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109周のレースも45周を過ぎ、そろそろ折り返し地点が近付いてきましたが、スタート直後の曇り空はどこへやら、サーキット全体はすでに強い日差しに包まれています。
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40周の予定だった第2スティントを28周で打ち切らざるを得なくなったことで、78号車のPITスケジュールは修正を余儀なくされます。 |
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規定周回数オーバーは即失格となり、今回のレースリザルトから抹消されてしまうことを意味します。レースマネジメントの至らなさのせいで、この1年間のチーム関係者の苦労が水泡に帰すということにもなり兼ねません。この段階で、チームテスタスポーツは3ストップ作戦への変更が決定的となりました。 |
![]() 酷暑と戦い続けるサインガード部隊 |
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さて、決勝レース中は大変貴重な情報源として重宝するタイミングモニターですが、これをきっちりと有効活用するには、数々の人知れない苦労があります。 |
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![]() タイミングモニターの表示例(予選時) |
その苦労の原因の最たるものがこの定番の表示スタイル。総合10位までの上位勢は常に画面の中央部に固定表示されますが、総合11位以降となると、画面の下半分の残りスペースを使い、下から上へスクロール表示されていくので、その一瞬一瞬が勝負となってきます。 |
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さらに、クラスの前後マシンとのGapとなると、簡単に読み取れるのは直前・直後に続くケースのみで、間にマシンが数台挟まった瞬間に、次々にスクロールする表示を追いかけながら、瞬時に足し算をしていく必要が生じるので難易度が倍増します。もしも読み間違えようものなら、一巡して次回に表示されてくるまで暫らく指を咥えて待つ必要がありますが、その間にもレースはどんどん動いていってしまうのです。当然ながら、マークすべきライバル車がある場合は、このGapはもちろんのこと、相手側のLAPタイムの推移にも常に注意しておかなければなりません。 チームテスタスポーツがゲスト用に設けているチームテントには2つのモニターが設置されています。一方のモニターでは生中継風のレース映像が随時流されており、PITに居ながらにして楽しくレースを観戦できるのですが、常にタイミングモニターの方を凝視せざるを得なかった私は、結局最後まで、1度もその楽しげな中継映像に目をやる余裕がありませんでした・・・。 このように骨の折れる戦況把握の作業は、別にチームの誰から指示されたわけでもなく、WW2サポート隊の私が数年前から自発的に始めたものですが、生データからチームにとって有益な情報を引き出していく作業は、レースの戦略判断のためには不可欠であり、時としてチームの順位を大きく左右することもあります。このため、私が収集・分析したデータは常にチーム首脳陣と共有化できるよう、常にPIT内を行き来して情報展開に努めているわけなのです。もちろん、こうしてレース中に記録したデータは、後でWW2レポート作成用のネタとして大活躍するわけですから、まさに一挙両得ですね(^.^)。
■3回目のPITイン■
13時13分のレーススタートから約3時間。400kmのレースは途中でアクシデントによる中断もなく淡々と進み、いよいよチェッカーの時を迎えようとしています。
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