スーパー耐久シリーズ2005  第6戦

OKAYAMA 400km Race


9月10日(土)〜11日(日) 岡山国際サーキット

Photo by T-eM san!!



 
1990年にオープンして以来、1994年〜1995年のF1パシフィックGPを頂点に、数々のビッグレースを開催してきたTIサーキット英田は、2004年初めのコース改修を皮切りに、2005年からはその名を岡山国際サーキットと変え、新たな体制下で再スタートを切りました。いつしかその所在地も、流行りの市町村大合併の結果、これまで慣れ親しんだ英田町から美作市へと変わっています。
 もちろん、起伏に富みとびきりテクニカルな国際級のサーキットコースは健在です。



 バラエティ豊かなツーリングカーで争われるスーパー耐久シリーズは、今年も北海道の十勝スピードウェイから山口県のMINEサーキットまで、全国各地のサーキットを舞台に全8戦が開催され、毎戦毎戦、全5クラスでハイレベルな優勝争いが繰り広げられています。そして今年も、ここ岡山での400kmレースが、初秋の第6戦として組み込まれることになりました。

 今シーズンのS耐で、昨年までと様相が大きく違っているのが、排気量2000cc以下のマシンで争われる
ST4クラス。圧倒的な速さで常勝マシンとなっていたS2000が、シリーズ規則の変更で今年から1つ上のST3クラスに編入されてしまい、ST4クラスにはインテグラだけが残される結果となって、エントリー規模が毎レース5台前後と大幅に縮小しました。また、ウェイトハンデが降ろされたS2000も、勝ち目のないST3クラスからは殆んどのマシンが撤退することに。
 この結果、かつて50台近い台数を集めたS耐シリーズも参加台数が減少に転じ、2桁のエントリー台数を集めるクラスといえば、ST2クラスとST3クラスのみとなってしまいました。

 ST3クラスで戦う唯一のREマシン・
マツダRX−7は、岡部自動車チームが2台体制で今年も年間エントリー。速さと燃費に磨きをかけるライバル勢を相手に、今年も苦しい戦いが続いていますが、それでも開幕戦・仙台ハイランドでは決勝3位、前戦・富士では予選3位に入ったほか、レース序盤にはクラスTOPを快走するシーンがしばしば見られるなど、昨年と比べると元気を取り戻した印象があります。また、単発的ながらも各ラウンドでスポット参戦を果たすRX−7の姿があり、メーカー系サポートが得られないプライベーターチームにとっては、まだまだRX−7が魅力的なS耐参戦マシンであることを物語っています。



 今年もWW2は、第6戦・岡山のST3クラスに
#78・WW2 ダンロップ RX−7でスポット参戦するチームテスタスポーツへのサポート活動を通して、サーキットを疾走するMAZDAのマシンを力強く応援していきます。
 

 



<スタート進行>
 12:20〜12:40


 正午までのピットウォークが終了すると、華やいでいたサーキットの雰囲気も一変し、PITレーンやバドックにはどこからとなく緊張感が漂ってきます。

 今回の第6戦・岡山400kmレースに集結したS耐マシンは、全5クラスで合わせて計36台。その全てのマシンが無事に決勝レースへ駒を進めてきました。昨年のTI戦よりも出走台数が10台ほど減っていますが、メインストレート上を埋め尽くすように居並ぶ個性豊かなマシン達の顔触れは相変わらずで、見る者を圧倒する迫力があります。
 総合ポールポジションはST1クラスの
#25・ADVAN ZENAG GT3。ST2クラスポールの#11・オーリンズ ランサーEVO\は5番手グリッド、ST3クラスポールの#29・PERSON'S elf YH NSX FABは8番手グリッドから、全109周の長い戦いに挑みます。

 スタート直前のダミーグリッド上の雰囲気はいつも通りで変わりはありませんが、S耐恒例のアトラクション「ミサイルボンバー」は今回は実施されず、その代わりに、国歌吹奏や美作市長挨拶が織り込まれるなど、スタート進行の内容も年々微妙に趣きを変えつつあるようです。

 スケジュールではこのあと12時40分から、マーシャルカー先導でのフォーメーションラップが始まることになっています。


■見据えるは前方のみ

 
#78・WW2 ダンロップ RX−7が今回獲得したグリッドは総合29番手で、全11台のST3クラス中では10位というポジションです。

 総合35番グリッドからスタートした
昨年のTI戦からは6グリッド分前進したことになりますが、全体の出走台数、とりわけST4クラスの台数が激減しているため、78号車の背後に控えるマシンは僅か7台しかいません。全体の中の相対位置としては確実に後退しているわけで、正直なところ、最後尾の位置もそう遠いものではありませんね・・・。



ダミーグリッド上の78号車を見守るチームスタッフ&ゲスト


 しかし今年のチームテスタスポーツには、昨年までとは違うチャレンジングで「前向きな」レース戦略があり、後方を気にしている暇はありませんでした。
 戦略担当の私
NukupeeCharles大作戦と勝手に名付けたそのチャレンジとは、岡山戦で初トライとなる1PIT作戦を採用し、かつ、初めて伊藤選手をスターティングドライバーに起用して、レース序盤での積極的なポジションアップを狙うというものでした。

 これまでずっと78号車のスタートドライバーを務めてきた新宅選手にとって、その座を譲るカタチとなった今回はやや勝手が違うようで、手持ち無沙汰な感じのダミーグリッド上になりましたが、スタート進行からのローリングスタートが初体験となる伊藤選手に対し、最後まで細かいアドバイスを与えている姿が印象的でした。

親切にアドバイスを送る新宅選手 スタート前に集中力を高める伊藤選手



 まもなく長い戦いの場へと旅立つマシン&ドライバーの傍らで、チームスタッフやゲストが最後の瞬間まで見送ろうとするこのシーンは、何度見ても自然と気持ちが昂ぶるものです。金・土・日のセッションは言うに及ばず、前週やその前週、ともすれば1年も前からこの日のために積み重ねてきた努力が、いよいよ実を結ぶ瞬間を迎えるわけですから、そんな感傷に浸るのも無理はありません。


 その頃私は、ほぼ全員が出払ったPITガレージ内に一人居残り、電卓片手に自分のノートと睨めっこを続けていました。突発的なマシントラブル発生やセーフティーカー介入のケースを想定して、いろんな切り口で生データを加工しながら、思い付く限りのケーススタディ(悪あがきともいう)をしていたのです。
 日曜の午前中、悩みに悩んで決勝レースの戦略を決断した後も、スタートが近付くにつれてますます不安や懸念が増大していくのですから、戦略担当も決して楽な役割ではありません(笑)。




 やがて3分前のボードが提示され、コース上からチーム関係者はすべて退去。時間通りのスタート進行でフォーメーションラップが開始され、12時44分にはいよいよ決勝レースがスタートを切りました。





≪決勝レース≫

<スタート直後>
 〜12:55

 レースはクリーンなスタートを切り、オープニングLAPを終えたところで、ポールポジションからスタートした
#25・ADVAN ZENAG GT3が総合TOPの座をそのまま堅持。#1・FALKEN☆PORSCHEが背後に付け、この2台から少し離れて#3・エンドレスアドバンZが3位で続くという展開です。以下に各クラスのマシンが隊列を成すように連なっていきますが、幸いなことにスピンやコースアウトで脱落するマシンはありません。


 ST3クラスでは、クラスポールからスタートした
#29・PERSON’S elf NSX YH FAB#15・岡部自動車 ハーツ RX−7が激しくチャージし、バックストレートで豪快にパス。早くも1周目でクラスTOPが入れ替わりました。今シーズン何度か見てきた、序盤でのRX−7のTOP快走が、ここ岡山国際でも見られることになりそうです。
 クラス8番手からスタートした
#83・BP ADVAN NSXも大きなポジションアップを果たします。先行するZ33勢の3台をオープニングLAPで一気にかわし、クラス5番手でメインストレートに帰ってきたのです。・・・とはいえ、ST3クラスの中段はいつものように縦一列に僅差で連なるという激しい展開で、気の抜けない周回が続いていきます。
 そんな中で、予選時のトラブルで最後列からのスタートとなったものの、徐々に順位を挽回しつつあった初参戦の
#16・バウフェリス 速人7が、3周目に入るところで突如PITイン。どうやらマシントラブルが発生した模様で、そのままPITガレージの中へ直行する結果となりました。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 #78・WW2 ダンロップ RX−7は、スタート直後の混乱をうまく切り抜け、順調に周回を開始しました。伊藤選手は初めて任されることになったS耐のスタートを無事こなし、オープニングLAPでは、自らのポジションを失わなかっただけでなく、5グリッドも前からスタートしたST3クラスのライバル・#46・realstyle.jp S2000を見事にパスし、#46を背後に従えたままメインストレートに戻ってきました。
 78号車は早くも1台をコース上でパスし、総合28位へポジションアップしたのです。

 このいきなりの展開に、私達チームテスタスポーツのPITは俄然活気づきました。超・接近戦の中、ただでさえ気が抜けないスタート直後ですが、PITから見守る私達の心配をよそに、78号車の力強いポジションアップが見られたわけですから、無理もありません。
 ガレージ内でモニターを見ていたメンバー&ゲストは皆、PITレーン付近に押しかけ、身を乗り出すようにしてメインストレートを駆け抜けていくマシン達を必死に追い掛け始めました。独りPITガレージ前のモニター前に残った私からは、PITレーン越しの視界が殆んど遮られてしまったくらい、まさに「全員総立ち」の状態でした。
 いつもであれば、78号車が順調に周回を始める姿を確認したチームメンバーが、ガレージ内やテント内でホッと一息ついている時間帯なのですが・・・(笑)。



炎のオーバーテイク

 マシンはフルタンクの厳しい状態ながらも、伊藤選手は序盤から
1分46秒台のLAPタイムペースをキープして快走を続けていました。これは私達が想像していた以上のハイペースであり、このまま50周近く、マシンとドライバーがもつのか心配になるくらいでした。
 やはり、視界の中の前後関係がそのまま総合順位を表している序盤のバトル環境が、伊藤選手の闘争心に火をつけているものと思われます(^^)。


 そして4周目に大きな見せ場が訪れます。


 前を行く獲物達に狙いを定め、着実にその差を詰めていた78号車は、ST3クラスの最大勢力であるフェアレディZの一角、
#48・フィールズT&GアドバンZをメインストレートで堂々とパス!!
 #48のヒロミ選手は序盤のダンゴ状態の中で思うようにペースが上がらず、ST5クラス勢に次々とパスされてややペースを乱していたようですが、伊藤選手はこの流れに乗じて見事にパスし、クラス順位を8位まで上げたわけです。
 とにかく、これまで後塵を拝する一方だった
Z33をレーシングスピードで捉えた78号車の姿に、我々チームメンバーの興奮のボルテージが一段と上昇したことは言うまでもありません。

 さらに伊藤選手の快進撃は続き、その周のバックストレートでは、スタート以来ずっとマークしていた
#10・ADVANTAGE ベルノ東海 YHを、狙いすましたように見事にオーバーテイクし、総合順位を25位に上げました。名手・渡辺選手のドライブでST4クラスのTOPを独走する#10も、この時ばかりは、勢い付いた#78と伊藤選手に黙って道を譲るしかありませんでした。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 
これまでの殻を破った積極的なレースを目指し、新しい戦略を提案した私にとって、眼前で展開される78号車の快進撃は、思い描いたストーリーの一部が早くも現実のものとなったことを意味しており、戦略担当として不安だらけのスタートを迎えた中で、大いに勇気を与えてくれるものでした。
 もちろん、私達のチャレンジはまだ始まったばかりで、この先100周近くを消化していく中で次々に難関が待ち受けていますが、まずは幸先良く素晴らしい滑り出しを見せることができたといえるでしょう。

 と同時に、PITウォークで私達を激励してくれたあの親父さん達をはじめとして、いつも78号車にアツい声援を送ってくれる方々に対しても、この序盤の走りをもって、まずはその期待に「見える形で」応えることができたと私は確信しました。
 レース全体から見れば、後方集団の中での目立たない順位変動のひとつに過ぎませんが、「マシンのパフォーマンスでどうにか皆の応援に報いたい・・・」という私達の積年の思いが、伊藤選手のオーバーテイクシーンのおかげで、少しは解消できたような気がしました。



◆ST3クラス順位◆

経過時間: 0H 10M  (周回:  5LAPS)
      
総合12位 #15  岡部自動車 ハーツ RX−7 5LAPS
総合13位 #29  PERSON’S elf YH NSX FAB 5LAPS
総合16位 #27  FINA BMW M3 5LAPS
総合17位 #83  BP ADVAN NSX 5LAPS
総合18位 #23  C−WEST ORC アドバンZ 5LAPS
総合19位 #7   メーカーズ ゼナドリン RX−7 5LAPS
総合20位 #19  EBBRO☆Z☆TC−KOBE 5LAPS
総合25位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 5LAPS
総合27位 #48  フィールズT&GアドバンZ 5LAPS
総合28位 #46  realstyle.jp S2000 5LAPS
       
総合36位 #16  バウフェリス 速人7 3LAPS






<35分経過時点>
 〜13:20〜


 レースが10周を過ぎ、そろそろ各クラスのポジション争いが落ち着きを見せ始める頃になっても、ST3クラスの順位変動はなおも続いていました。

 まずは、ペースが上がらずポジションを大きく落とした
#48・フィールズT&GアドバンZが早くも6周目でPITイン。マシンチェックのためPITガレージ内に5分前後止まり、4周遅れの総合34位まで後退しました。
 その#48のPITインとほぼ時を同じくして、ST3クラスのTOPを快走していた
#15・岡部自動車 ハーツ RX−7が、最終コーナーでまさかのコースアウト。このシーンは私達のサインガードからもハッキリと見えましたが、マシンは後ろ向きにサンドトラップ中に深く埋まり、自力での脱出が不可能なことは一目瞭然でした。結局、#15はコース復帰まで3分近く要し、一気にクラス9位まで後退。
 MAZDAの本拠地・広島に程近いここ岡山を舞台に、久々に展開されるかに思えたRX−7のTOP快走劇も、あっけなくその幕を下ろしてしまいました。クラスTOPには
#29・PERSON’S elf NSX YH FABが返り咲き、27・FINA BMW M3が僅差で追いすがります。

 またこの間、予選ではやや鳴りを潜めていたZ33勢がじわじわと上位進出を始め、年間チャンピオン獲得に王手をかけている
#23・C−WEST ORC アドバンZが、ポイントリーダーの貫禄を見せクラス3位まで浮上。
 その一方で、RX−7勢にはさらに災禍が降り掛かります。コースアウトした#15がようやく本コースに戻ったまさにその瞬間、あろうことか岡部自動車のもう1台、
#7・メーカーズ ゼナドリン RX−7がパドック裏ストレートにつながるPIPERコーナー先でスピン! タイヤバリアにヒットしてリアバンパーを小破させてしまいます。
 #7はオープニングLAPをクラス3位で終えた後、徐々にポジションを下げていましたが、このスピンによるタイムロスで、接近戦を続けるST3クラスの上位集団から完全に脱落。さらにその数周後に、リアバンパーの破損に対してオレンジボールが提示されたため、無念のPITイン。#15とともに、ST3クラスの上位集団から大きく水を開けられる残念な展開となってしまいました。


 この結果、RX−7勢の最上位はスポット参戦の
#78・WW2 ダンロップ RX−7となり、テールtoノーズでクラス4位争いを展開する83・BP ADVAN NSX#19・EBBRO☆Z☆TC−KOBEから30秒ほど遅れて、クラス6位で周回を重ねています。



 

◆ST3クラス順位◆

経過時間: 0H 35M  (周回:  21LAPS)
      
総合14位 #29  PERSON’S elf YH NSX FAB 21LAPS
総合15位 #27  FINA BMW M3 21LAPS
総合16位 #23  C−WEST ORC アドバンZ 21LAPS
総合17位 #83  BP ADVAN NSX 20LAPS
総合18位 #19  EBBRO☆Z☆TC−KOBE 20LAPS
総合22位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 20LAPS
総合29位 #7   メーカーズ ゼナドリン RX−7 20LAPS
総合30位 #46  realstyle.jp S2000 20LAPS
総合33位 #15  岡部自動車 ハーツ RX−7 20LAPS
       
総合34位 #48  フィールズT&GアドバンZ 17LAPS
       
総合36位 #16  バウフェリス 速人7 10LAPS

 




<55分経過時点>
 〜13:40〜


快進撃は続く■


 ST3クラス勢が慌しくポジションを入れ替えていく中、スタートドライバー伊藤選手のアグレッシブな走りで、序盤にしてST3クラス6位にまで登り詰めた78号車は、1分46秒台の安定したLAPペースで周回を続け、スタートから50分が経過した時点で、全36台中、
総合20位のポジションまで浮上していました。
 ST4クラスの全車を後ろに従えつつ、ST5クラスのTOP争いのやや後方という絶好のポジションは、序盤としては私達にはこれ以上望めないほどのものでした。

 
じつは一般には殆んど知られていませんが(笑)、私達チームテスタスポーツの78号車は、S耐参戦3戦目となった2002年の開幕戦・MINEで、数周にわたってクラスTOPを快走したことがあります。
 この「春の珍事(?)」は、3クラスの上位陣が揃いも揃ってトラブルに見舞われ脱落したことで実現したわけですが
(結果的には、78号車もハブボルト折れのトラブルで無念の後退・・・)、今回の78号車のここまでのポジションアップは、通常のレース展開の中での出来事であり、チームが事前に思い描いていた戦略通りの進展に、まさに胸のすく思いがしていました。
 決勝レース中にこんな爽快感を得たのは、私の記憶では、参戦2戦目にして総合20位フィニッシュを果たした、2001年の富士戦以来のことでしょう。あれから4年、途中様々な紆余曲折を挟んで再び辿り着いた分、今回の78号車の快走によってもたらされたメンバーの胸中に去来する思いは、より大きく、重く、そして格別なものだったといえるでしょう。



2001年の富士戦

2002年の開幕戦・MINE


 また、伊藤選手の頑張りもあって、この時点で#78は総合TOPのポルシェ(30周消化)からようやく2LAPダウンとなったばかり。予定では3LAPダウンのはずだったので、このペースでいけば過去4年の実績を上回る、3桁の周回数走破も夢ではありません・・・。

 

◆ST3クラス順位◆

経過時間: 0H 55M  (周回: 30LAPS)
      
総合12位 #29  PERSON’S elf YH NSX FAB 29LAPS
総合13位 #27  FINA BMW M3 29LAPS
総合14位 #23  C−WEST ORC アドバンZ 29LAPS
総合15位 #83  BP ADVAN NSX 29LAPS
総合16位 #19  EBBRO☆Z☆TC−KOBE 29LAPS
総合20位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 28LAPS
総合27位 #7   メーカーズ ゼナドリン RX−7 28LAPS
総合28位 #46  realstyle.jp S2000 28LAPS
総合31位 #15  岡部自動車 ハーツ RX−7 28LAPS
       
総合32位 #48  フィールズT&GアドバンZ 25LAPS
       
総合35位 #16  バウフェリス 速人7 18LAPS

 


 久々のExcitingなレース展開にPIT内が沸き返る中、戦略担当の私の心配は、この後48周目に予定しているPITストップの時まで、マシンコンディションとドライバーの体力が持ちこたえるかという点でした。

 昼過ぎにレースがスタートして早1時間、天気はずっと曇りながら、時折り陽が差し、PITガレージ内にいても、涼しさよりも蒸し暑さが目立つという状況でした。コクピットの伊藤選手は、クールスーツを味方につけてはいても、序盤から続いた緊張感とアグレッシブな走りの連続の結果、もはや決して楽なドライブ環境でないことには違いありません。・・・本来ならば、スタートドライバーの負担を少しでも減らすために、第1スティントはできるだけ短めに設定したかったのですが、78号車の今回の想定燃費では1PIT作戦がギリギリ成立する計算となるため、総周回数99周をほぼ半々で割らざるを得ず、このことが今回の戦略上で最大の懸念ポイントとなっていたのです。
 

 チームテスタスポーツは今回、この400kmレース参戦5回目にして初めて1PIT作戦を採ったわけですから、これから先に待ち受ける周回は、1スティントの連続周回としてはマシン&ドライバーともに未体験ゾーンとなり、PIT内の誰もが予測不可能な、未知の領域に足を踏み入れていくことになります。


 私達はタイミングモニターに映し出される78号車のLAPタイムの推移に注目しつつ、トラブルが何も起こらないことを祈りながら、残りの周回数と所要時間を指折りカウントダウンする状態が続きます。

◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 ST3クラスの順位争いも一旦は落ち着き、ようやく降着状態となりました。早々とPITインを強いられた
#16・バウフェリス 速人7#48・フィールズT&GアドバンZ#7・メーカーズ ゼナドリン RX−7もすでに戦線に復帰し、後方からの追い上げを開始していました。




事魔多し…

 総合20位までの進出を喜んだのも束の間、ついに私達の心配が現実のものとなる時が来ました。

 レースが1時間を経過した
13時44分、コース上の伊藤選手から突然PITに連絡が入りました。
 チームメンバー全員が顔を見合わせ、PITに不穏な空気が漂う中、伊藤選手からの報告を受けたながつ氏によると、マシンに
燃欠症状が発生し始めているとのこと。どうやらコーナーの立ち上がりで頻発しているようです。
 この時、78号車はようやく31周目に入ったところ。予定周回数の60%を消化したに過ぎず、燃料はまだ半分近く残っています。過去にも何度か経験のあるこの燃欠トラブル、おそらくは燃料系統全体の温度上昇によってパーコレーション等の熱害が発生して、燃料供給に支障が出ているものと思われます。

 そのことを裏付けるかのように、追って詳細状況の報告を受けたチームオーナーから
「あぁ〜〜っ!」と大きな嘆声がPIT内に響き渡りました。

 じつはオーナー、昨年のここTI戦の決勝でも同様のトラブル兆候が見られたことを受けて、すぐにその対策案を固めていたのですが、悲しいことにその実施をついに1年後の今日まで完全に忘れてしまっていたらしいのです。まさにあとの祭りとはこのことですが、寄せ集めのチーム体制による年1回の参戦では計画的なマシンメンテナンスは容易ではなく、誰もオーナーを責めることはできません。加えて、この手のトラブルは決まって酷暑の条件下で発生していたため、昨夜から今朝方までの降雨によって、暑さ対策が無意識のうちに私達のチェック項目から落ち、そのまま決勝スタートの瞬間を迎えてしまっていたのでした。


 チームは当初、予定周回数まで様子を見ながら走らせることも考えましたが、伊藤選手がドライビングを少々変えたところで症状は収まる気配がなく、むしろ悪化傾向にあることが判明しました。当然ながらエンジンへのダメージも懸念されます。気候条件は酷暑とは程遠いものでしたが、過去に経験のないペースでの連続周回が、図らずも酷暑の条件を再現させてしまったということでしょう。

 ここでやむなく、チームは予定を早めて
36周目で伊藤選手をPITインさせることを決定。給油作業とドライバー交代を行なうことにしました。
 この瞬間、今回の新戦略の目玉だった「1PIT作戦へのチャレンジ」は呆気なく終わりを告げました。私にとっても苦渋の決断ではありましたが、主役のマシンを傷めてしまっては元も子もありません・・・。


 こうして、伊藤選手がPITロードへ78号車を滑り込ませてきたのが14時47分。予定よりも12周、時間にして20分も早いタイミングでのPITストップとなりましたが、PITクルーはすでに準備万端で、予定通りに作業をこなしていきます。ガソリン給油量はあえてアジャストせず満タンまで給油。これは、大量のフレッシュガソリンの注入による燃料ラインのせめてもの冷却と、決勝レース燃費のデータ採りとを狙ったものでした。
 新宅選手がコクピットに収まり、私のGoサインを合図に、まだあまり動きのない静かなPITレーンを独り進んでいきました。

 すぐ後に計算したところでは、注目の1スティント目の平均燃費は
2.11km/Lだったことが判明。私は戦略立案上1.85km/Lという辛目の燃費を設定しつつも、その裏では1.95km/L位の実力を期待していたのですが、それをも大幅に上回る好燃費でした。ここであらためて、当初の1PIT作戦の妥当性を証明するデータが得られたというのは、なんとも皮肉としか言いようがありません。

 


 

<1時間25分経過時点>
 〜14:10〜

 109周のレースも早50周を終了。400kmレースも折り返し地点に差し掛かってきました。殆んどのチームが1PIT作戦をとっていますが、そのタイミングは各マシンによって様々であり、早めのストップを計画しているチームでは、そろそろPITにも動きが出始めていました。

 ST3クラスではまだルーチンのPITストップの動きはありませんが、コース上では
#27・FINA BMW M3がズルズルとクラス5位まで後退。堅実な走りが身の上のこのマシンだけに、何かトラブルが発生したのか気になるところです。これとは対照的に、チャンピオン獲得に向けてひた走る#23・C−WEST ORC アドバンZが、ついにクラス2位まで浮上してきました。


◆ST3クラス順位◆

経過時間: 1H 25M  (周回: 50LAPS)
      
総合11位 #29  PERSON’S elf YH NSX FAB 48LAPS
総合12位 #23  C−WEST ORC アドバンZ 48LAPS
総合13位 #83  BP ADVAN NSX 48LAPS
総合14位 #19  EBBRO☆Z☆TC−KOBE 48LAPS
総合15位 #27  FINA BMW M3 47LAPS
総合18位 #7   メーカーズ ゼナドリン RX−7 47LAPS
総合21位 #15  岡部自動車 ハーツ RX−7 47LAPS
     
総合29位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 46LAPS
総合30位 #46  realstyle.jp S2000 46LAPS
総合32位 #48  フィールズT&GアドバンZ 45LAPS
       
総合34位 #16  バウフェリス 速人7 35LAPS

 


■戦略の変更

 新宅選手を慌しくコースに送り出したあとで、PITではいよいよ本格的にレース戦略の立て直しを図ります。最大のポイントは、来たる2回目のPITストップをいつ実施するかに尽きるのですが、これは即ち、
残りの周回数「63」をどこで割るかを意味します。

 現在78号車に発生している燃料系トラブルは、その性格上、走行中に自然解消することは期待できないので、ハードウェア的側面からいえば、残りの2スティントの所要時間を均等になるように割り、燃料系の温度上昇をミニマムに抑えるのが妥当な策だといえます。

 しかしその一方で、コース上の新宅選手のLAPタイムが予想外の低迷を見せているという厳しい現実がありました。当初は、新品タイヤで臨んだ1スティント目の2秒落ち程度のタイムでのポジションキープを目論んでいたのですが、タイミングモニター上の表示は
1分51〜52秒台から始まり、交代して暫くの間は50秒切りが困難な状況でした。
 マシンが別のトラブルを併発したのか、新宅選手がドライビングに苦慮しているのか、PITからは即断できませんが、少なくとも私達はマシンの足廻りのセットアップには懸念を持っていました。元々ドライビングスタイルが大きく異なる2人ゆえに、その落とし所には毎回苦慮しているのですが、今回は伊藤選手がリードしてセットアップを進めていたことと、ドタバタの予選通過劇から検証の時間が十分とれなかったことで、結果的に、極端なほど新宅選手に不利な方向に出ている可能性があったのです。新宅選手は結果的には
1分49秒フラットまでタイムを詰めてくるのですが、タイムの上がり方の鈍さから、いつも以上にドライビングに苦戦していることは明らかでした。

 こうなると、ST3クラスのライバル勢の動向も俄然気になってきます。レース序盤にPITインやコースアウトで予定外のタイムロスを喫し、遥か後方から戦線復帰した
#48・フィールズT&GアドバンZ#15・岡部自動車 ハーツ RX−7は、概ね1分42〜43秒のハイペースで追い上げを開始しており、私達の#78とは数周分のクッションを挟んではいるものの、今のペース差をもってすれば、僅か15周ほどで1周分の遅れを取り戻してくる計算になります。


 こうした状況から、#78のポジション堅持のためには、2スティント目の周回数をできるだけセーブし、後方のライバル勢の接近を少しでも押し留めた方が得策と考えられました。「攻め」の新戦略から一転、後続を気にする展開に逆戻りです。


 ここでクローズアップされるのは新宅選手がクリアすべき最低周回数であり、チームメンバーも幾度となく私にそのことを尋ねてきます。
 しかし、今回はレギュレーション上、1人のドライバーの最大周回数が
72周と定められているだけで、最低周回数そのものの規定はありません。無論、#78の予定周回数(99周)から逆算すれば自ずと27周と決まるのですが、この数字は、総合TOPの#25がこのままのペースで109周を走破するという仮定上での話です。この先、ST1クラスの上位陣にトラブルが発生しないとも限らないし、大きなアクシデントの発生で長時間にわたってセーフティーカーランが続く可能性だってあります。しかも、序盤の伊藤選手の健闘で、この「99周」という前提も崩れかけているのです。(そのこと自体は喜ぶべきことなんですが・・・)

 こうした理由で、もし総合TOPからのLAPダウン数に大きな計算違いが生じてしまうと、最悪の場合、レース終了直前になってもう1回、レギュレーション違反回避のためだけのドライバー交代が必要になってしまいます。レース戦略担当としてはこんな醜態だけは絶対に晒したくないわけで、プラス何周かのマージンは確保したいと思うのは当然です。でも、そのマージンとして何周が妥当なのかは、残念ながら誰も明確な答えを持ち合わせてはいないのです。
 私は答えを必死に探りながら、
「基本的には27周あたりですが・・・」と歯切れの悪い説明を繰り返しますが、チームメンバーはなおも執拗に、「だから、レギュレーションでは最低何周と決められているんですか?」との問いかけを代わる代わる浴びせてきます・・・(▼▼)。楽しい週末を通じて唯一、私がチームの仲間に対して軽い憤りを覚えた瞬間でした。
 しかし、それもこれも皆が本気になって、それぞれの立場から今後のPIT戦略を気に掛けてくれている証拠であり、昨年まではあまり見られなかった光景です。私は気を取り直し、そのマージンを「
5周」と決めました。大した論理的根拠はありませんが、即断もときとして重要です。結果的に、半分に割ったと等しくなったのはご愛嬌でしょうか(笑)。

 

◆     ◆     ◆     ◆     ◆

 こうして14時49分、新宅選手がピッタリ32周を走破したところで、#78は2度目のPITストップを敢行しました。燃料給油とドライバー交代は1回目と同じ作業メニューですが、これに加え、クールスーツ用の氷の交換と、リアタイヤ空気圧のアジャスト作業が追加されています。
 今回の給油量は、燃費計算上は50Lでも十分過ぎるほどでしたが、燃料系のクーリングの意味も兼ね、やや多めの60Lに設定しました。本来ならば、最低限の給油量として停車時間をセーブするのが常套手段ですが、すでに#78はこのPITストップを行なう前の段階で、後続の#15にコース上で先行されていたうえに、僅か1周差で追いすがる#48もドライバー交代完了済みだったため、実質的に#78は直接にクラス順位を争うライバルを失ったも同然でした。ここは時間よりも確実な作業を優先させます。

 新宅選手のサポートで再びコクピットに収まった伊藤選手は、おNewの氷と共に、14時52分、私達のPITを後にし、78号車にとって69周目となる新たな周回を刻み始めました。マシン誘導係としての私の任務も、これにて終了(となる予定)です。
(伊藤選手のエンジン始動タイミングが思いのほか早くて焦りましたが・・・)

 やはりというべきか、いつもならマシンを降りても飄々としているはずのタフな新宅選手が、すっかり表情を憔悴させ、疲労の色を隠せないのが印象的でした。自身のドライビングスタイルと合わないマシンに手を焼き、相当に神経を擦り減らしてしまったようです。マシンの熱害とともに、大きな課題が露呈しました・・・。



<2時間25分経過時点>
 〜15:10〜

 
ST3クラスでは14時15分から30分にかけて、殆んどのマシンがPITストップを行いました。唯一、クラスTOPを走る#29・PERSON’S elf NSX YH FABが70周目近くまでPITのタイミングを延ばし、その脅威の燃費で私達を驚かせましたが、いざコース復帰を果たすと、真後ろに2番手の#23・C−WEST ORC アドバンZが控えるという苦しい展開に。数周のテールtoノーズのバトルの後についに攻略を許し、レースが残り3分の1となったところで初めて、ST3クラス・ポイントリーダーの#23・C−WEST ORC アドバンZがTOPに立ちました。
 一方で、ペースの落ちていた
#27・FINA BMW M3は、14時13分にPITストップを行いますが、結局マシンはコースに戻ることなく、そのままリタイヤとなりました。



■ゴールに向けて■

 再び#78のマシンに乗り込み、レースの終盤戦に向けてコース復帰していった伊藤選手でしたが、さすがに消耗の進んだタイヤでは1スティント目ほどの勢いは見られず、
1分47秒〜48秒台のLAPが精一杯という状況でした。

 スタートから2時間半が経過し、260km以上を走破したマシンでは、各部の疲労や劣化もかなり進行していると思われますが、比較的マシンが軽めの状態でのこのLAPタイム差は、今更ながら、私達にタイヤ交換の重要性をあらためて認識させる結果となりました。仮に、慣れないタイヤ交換作業で50秒の時間を費やしたとしても、20周から25周分で軽くペイできる計算ですから、レース終盤で路面の荒れたコース上にマシンを留めるグリップマージンが増えることを考え併せると、チームとしてタイヤ交換を拒み続ける理由はないでしょう。・・・あとは練習あるのみ、ですね。

 

◆ST3クラス順位◆

経過時間: 2H 25M  (周回: 76LAPS)
      
総合 9位 #23  C−WEST ORC アドバンZ 74LAPS
総合10位 #29  PERSON’S elf YH NSX FAB 74LAPS
総合11位 #83  BP ADVAN NSX 74LAPS
総合14位 #19  EBBRO☆Z☆TC−KOBE 73LAPS
総合20位 #15  岡部自動車 ハーツ RX−7 72LAPS
     
総合22位 #46  realstyle.jp S2000 71LAPS
総合23位 #7   メーカーズ ゼナドリン RX−7 71LAPS
     
総合28位 #48  フィールズT&GアドバンZ 70LAPS
総合31位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 70LAPS
     
総合33位 #16  バウフェリス 速人7 62LAPS
       
総合35位 #27  FINA BMW M3 49LAPS

 


 伊藤選手の担当する3スティント目は、ゴールまでの約31周の予定ですが、半分を経過したあたりで、またも伊藤選手から
燃欠症状発生の連絡がPITに入ります。新宅選手のドライブ中は最後まで鳴りを潜めていたようですが、ここへきて症状が再発です。
 またもPITには緊張が走りますが、もはやマシンに抜本的な対策が施せない中で、私達にできることといえば、もう一度#78をPITに呼び寄せ、冷却目的で燃料を加えることくらいしかありません。残り周回が十数周という中で、マシンが致命的なダメージを被る恐れさえなければ、ペースを落としてでもそのまま走り切った方が得策なのは明白でした。
 私達は伊藤選手にペースダウンを指示し、マシンを労わりながら騙し騙しゴールを目指すことにします。



<ゴール>
 〜15:45

 スタートから終始レースをリードし続けた#25・ADVAN ZENAG GT3が、危なげない走りで栄光のTOPチェッカーを受け、約3時間に及んだ400kmの戦いも終わりを告げました。例年ほどクラッシュやスピンアウトが見られない、とてもクリーンなレース展開でした。
 ST3クラスは
#23・C−WEST ORC アドバンZがシーズン5勝目を挙げ年間チャンピオンを決定。ST4クラスでは#10・ADVANTAGE ベルノ東海 YH、ST5クラスでは#37・ARTA F.O.Sアルテッツァがいずれも貫禄の勝利。一方、ST2クラスでは#13・シーケンシャルエンドレスアドバン座間が見事に初勝利を挙げています。



 15時47分、伊藤選手のドライブする#78・WW2 ダンロップ RX−7にもチェッカーが振り下ろされました。サインガードにはチームテスタスポーツのメンバー&ゲストが総出となり、感動のゴールシーンを迎えました。総合30位ST3クラス9位(※)での完走です。私もこの時ばかりはPIT内に留まることなく、皆とその瞬間を分かち合いました。

 今回#78が走破した周回数は
99周。結果的には当初のプラン通りの数字になったわけですが、これは昨年までの最高98周というリザルトを1周上回り、大変地味ですが、5回目の岡山戦にしてチームの新記録樹立となりました。

 そして、2001年のS耐初出場から続く#78の連続完走記録も、これで「8」に伸びました。5年越しの大記録(?)ですが、チームメンバー全員の頑張りによって、またも次回につなげることができました。


 (※…正式結果では総合28位、ST3クラス8位まで昇格)

またも車両保管解除まで待たされましたね〜〜
最後にチームのみんなで記念撮影

 



■チャレンジの意味■

 リザルトだけを見れば、従来と同じ2PIT作戦をとったカタチとなった私達の成績は、昨年と全く変わり映えしないものでした。背後に数台のマシンを従えてはいるものの、トラブルフリーで周回した車両の中では間違いなくビリであり、ST4クラスの全車にも先を越されてしまいました。

 しかし、今回のリザルトの意味するところが大きく違うのは、私達が新しい作戦にチャレンジし、夢破れた無念の結果であるということです。私が”Charles大作戦”と名付けた新しい1PIT戦略に沿って、レース途中までは筋書き通りに事が運んで大躍進をしたものの、マシンのマイナートラブルに足を引張られ、最終的に計画を完遂できなかったものなのです。しかも、その新戦略の妥当性はレース中に得られた様々なデータによって実証されています。
 スタートからゴールまで首尾一貫、淡々と走るしかなかった昨年までとは全く異なり、チーム全員がフレッシュなモチベーションに燃えたのが今年のレースでした。とくに、レース序盤のPITの盛り上がりを通じ、チームテスタスポーツの全員が忘れかけていた「戦う気持ち」を呼び覚ますとともに、大きな自信をつけたことは、今回のCharles大作戦の一番の収穫だったといえるでしょう。

 来年もまたここ岡山の地に来ることがあれば、今回のように半信半疑で浮き足立った状態ではなく、きっと、しっかり地に足をつけたチャレンジができるものと私は確信しています。


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 最後に、私Nukupeeは今回、戦略担当からレース監督の代理役までを初めて担当させてもらいました。とても責任重大な任務ばかりで、終始緊張を強いられましたが、とても楽しく、やり甲斐のあるものでした。あくまでチームサポートの立場であるWW2の人間に、こんな貴重な経験をさせてくれたチームオーナー、そして、全面的に協力してくれたチームのメンバーには本当に感謝の気持ちで一杯です。

 その分、今までとは違う視点からこのレースレポートが書けたことは大変良かったのですが、気持ちにあまり余裕がなかったのか、レースウィークを通じて撮影画像が極端に少なかったのは大きな痛手で、レポートの構成にはいつも以上に苦労してしまいました(言い訳)。
 最後まで文字だらけの拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。



(おわり)