スーパー耐久シリーズ2004  第6戦

TI 400km Race


9月11日(土)〜12日(日) TIサーキット英田(岡山県)




 
2004年のスーパー耐久シリーズは、もてぎで3月に開幕、4月の仙台ハイランド、5月の鈴鹿を経て、6月のMINEで前半戦を終了し、7月の十勝24時間レースを挟み、再び西日本にその戦いの場を移してきました。
 ここTIサーキットで開催される400kmレースは、例年は決まって激しい残暑との戦いとなるのですが、決勝日を迎えた英田町には朝から爽やかな風が吹いており、今回ばかりは幾分涼しい気候の中で、いつも通りの熱いバトルが繰り広げられることになりそうです。

 2003年一杯でスカイラインGT−Rが撤退し、スーパー耐久シリーズはポルシェ911GT3という新たな看板マシンを擁し、今年も全国各地のサーキットを舞台にして、5つのクラスに分かれた激しいチャンピオン争いを展開しています。

 昨年のTI戦でデビューした期待のREマシン・RX−8が2004年シリーズへの参戦を取り止めたため、再びスーパー耐久レースに参戦する唯一のMAZDA車となったRX−7。しかし、2004年のシリーズを年間エントリーで追い掛けるチームは、3台体制の岡部自動車・1チームのみとなり、クラス3の強力なライバルであるフェアレディZやNSXを相手に苦戦を強いられています。
 N1規定を想定した改良が施された最新の市販ベース車を持つライバル勢に対し、既に生産終了から2年以上が経過しているRX−7の劣勢は傍目にも明らかですが、20世紀に誕生したマシンが未だに最前線で戦えるのはS耐独自のレギュレーションの妙であり、それと同時に、コーナリングマシン・RX−7(FD3S)のポテンシャルの高さも示しているともいえます。開幕5連勝と無敵の強さを誇るZ33に対して、一矢を報いる走りをぜひ見せてもらいたいところです。

 今年もWW2は、クラス3にRX−7でスポット参戦するチームテスタスポーツをサポート。サーキットを疾走するMAZDAのマシンを力強く応援していきます。

 

 



<スタート進行>
 12:40〜13:00


 秋晴れを思わせる快晴の中、スーパー耐久・第6戦のスターティンググリッドに並んだ車両は全46台。ポールポジションの
#1・ADVAN KONDO エンドレス ポルシェから、45番グリッドの#18・コスモソニック21 FK インテグラまで、色彩り豊かなレーシングマシン達とそのスタッフがメインストレート上で一同に会し、レース前の華やかな雰囲気は最高潮に達しています。予選でアクシデントに見舞われた#14・エンドレス UEMATSU RX−7もグリッド最後尾からの出走を許され、クラス3は全11台のエントリー車両が全て出揃いました。


■グリッド上の風景■

 
TIのダミーグリッドに、チームテスタスポーツとゼッケン78番のRX−7が並ぶのはこれで4回目。総合35位グリッドからの周囲の風景も毎年見慣れたもので、私達は過去のいろんな出来事を思い浮かべながら、落ち着いた気持ちでスタート進行を見守ります。

 徹夜続きの製作で辛うじてグリッドに辿り着いた2001年、新しいエアロを得るもエンジン不調に泣かされた2002年、そしてDIREZZAカラーと有木選手が加わった2003年。レギュラー参戦チームと比べて遥かに見劣りするチーム体制にもかかわらず、スポット出場ながら3年連続完走という離れ業をやってのけられたのは、皆でレースをエンジョイしたいという強い信念を持つチームオーナーの元に集まる、気心知れたチームスタッフの存在があってのことでしょう。私達WW2も、そんなチームの雰囲気作りに一役買えればと、精一杯頑張ってきたつもりです。

 チームテスタスポーツのS耐参戦ヒストリーに、この2004年がどう刻まれていくのか、私達も興味深々であり、期待も膨らんでいきます。



ダミーグリッド上の78号車とチームスタッフ


 しかし、78号車を取り巻く現状に目を向けると、昨今クラス3でのRX−7勢の凋落ぶりが際立っていること、そして、昨年のTI戦以上のパフォーマンスを求めるチームの期待に78号車が今一歩応えていないことから、ベストリザルトの獲得に向けては、明るい材料に乏しいと言わざるを得ません。
 とはいえ、約1年ぶりのレース参戦ながら、ここまでのところトラブルは皆無で、心持ち低めの気温がマシンとドライバーの負担を軽減してくれることを考えれば、自分達のペースで淡々と走り抜くというストーリーは成立しやすい環境にあります。ややスピード不足の感が否めない今回の78号車にあっては、トラブルで後退したチームを確実に食って、少しでも這い上がっていく戦法を採るしかありません。


 克ちゃんと有木選手がPIT裏で作ったミサイルボンバーには、DUNLOPのステッカーやノベルティグッズらと共に、WW2の活動を紹介する手作りカードも同梱済み(^^)v。場内アナウンスの掛け声に合わせて、WW2メンバー(&ゲスト1名)でスタンドに向けて投げ込み終わると、いよいよローリングスタート開始3分前を告げるサイレンがコース上に響き渡りました。


 
私は華やかなダミーグリッドを一足早く去り、チームのPITへと向かいました。最終コーナーに近い78号車のグリッド位置からは結構な距離がありましたが、ダミーグリッドから締め出された関係者でPITレーンがごった返す前に、余裕をもって帰還することができました。PIT裏のテントに設置されたモニター前に陣取り、スタートの瞬間を待ち受けます。
 
1周のフォーメーションラップを経て、13時04分過ぎ、凄まじい轟音を響かせて全46台のマシンが一斉にメインストレートを通過。400km先のゴールを目指し、レースがいよいよスタートを切りました。





≪決勝≫

<スタート直後>
 〜13:15

 大きな波乱もなくオープニングLAPを終えたグリッド上位勢でしたが、同じADVANカラーのポルシェ同士で激しい先陣争いが勃発、2周目には
#25・ADVAN DGゼナリンGT3が総合TOPの座を奪い取っていきます。

 注目のクラス3では、中段付近で早くも順位変動が起こりました。
 まずは
#7・MAKERS hart RX−7がオープニングLAPで他車の追突を受け、マフラーにダメージを追ったため、PITでの修復作業を余儀なくされました。その接触の相手は、私達のPITのすぐ右隣りの#57・グラムライツ G・キッスランサーだった模様で、マシンはレース開始直後に私達のPIT前を横切ってガレージ内へ直行。フロント部分のダメージが酷く、修復作業の甲斐もなくリタイヤとなってしまいました。
 また、ローリングスタートに出遅れて最後尾スタートとなった
#19・TC−KOBE・MAX・Z33と、アクシデントから復活し決勝出走が認められた#14・エンドレス UEMATSU RX−7が、隊列の最後方から必死の追い上げを見せ、次々に順位を挽回していきます。



 総合35番手からスタートした#78・WW2 ダンロップ RX−7は、スターティングドライバーの新宅選手が巧みにオープニングLAPの混乱を切り抜け、アクシデントに遭うこともなく、無傷のまま予選順位をキープしてメインストレートへ戻ってきました。しかし、マシンのスピード不足が足を引っ張っているのか、レース序盤には少しずつ順位を落としていきました。
 45秒台のLAPタイムで猛追を開始した
#14・エンドレス UEMATSU RX−7の前に、49秒台で周回する78号車は成す術もなくパスされ、暫くは我慢の周回が続きそうな展開が予想されました。


◆クラス3順位◆
経過時間: 0H 10M 
(周回:  6LAPS)
      
総合9位 #23  C−WEST アドバン Z33 6LAPS
総合13位 #83  BP ADVAN NSX 6LAPS
総合15位 #27  FINA BMW M3 6LAPS
総合16位 #245 モバイルキャスト ADVAN Z 6LAPS
総合19位 #88  ings アドバン コムセント Z 6LAPS
総合20位 #79  TAITEC ADVAN NSX 6LAPS
総合24位 #15  レーシングスパルコディクセルRX−7 6LAPS
     
総合32位 #14  エンドレス UEMATSU RX−7 6LAPS
総合37位 #19  TC−KOBE・MAX・Z33 6LAPS
総合41位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 6LAPS
       
総合46位 #7   MAKERS hart RX−7 1LAPS




<30分経過時点>
 〜13:35

 クラス3の上位勢には順位の変動はなく、戦いはひとまず降着状態に入っているように見えます。その中で、クラス3のチャンピオン決定阻止に燃える23・C−WEST アドバン Z33が唯一、43秒台の速いLAPタイムでクラス3首位を快走しています。その後方、クラス2位の#83・BP ADVAN NSXから、クラス6位の#79・TAITEC ADVAN NSXまでは、いずれも44〜45秒台のLAPタイムで拮抗した周回を重ねています。

 RX−7勢に目を転じると、
#14・エンドレス UEMATSU RX−7の猛追が続いており、ついにチームメイトの#15・レーシングスパルコディクセルRX−7の20秒後方にまで迫っています。ただ、#15はそれまで45秒台だったLAPタイムを47秒台にまで落としており、何らかのトラブルを抱えていることは明らかです。
 一方、同じように最後方からの追い上げを図っていた
#19・TC−KOBE・MAX・Z33はトラブル発生でPITイン、折角挽回した順位を失ってしまう結果となりました。#7・MAKERS hart RX−7は約20分の長い修復作業を終え、総合TOPから8周遅れで戦線に復帰しました。


◆クラス3順位◆
経過時間: 0H 30M 
( 周回:  18LAPS)
       
総合10位 #23  C−WEST アドバン Z33 18LAPS
総合14位 #83  BP ADVAN NSX 17LAPS
総合15位 #27  FINA BMW M3 17LAPS
総合17位 #245 モバイルキャスト ADVAN Z 17LAPS
総合18位 #88  ings アドバン コムセント Z 17LAPS
総合19位 #79  TAITEC ADVAN NSX 17LAPS
総合24位 #15  レーシングスパルコディクセルRX−7 17LAPS
     
総合29位 #14  エンドレス UEMATSU RX−7 17LAPS
     
総合39位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 16LAPS
     
総合43位 #19  TC−KOBE・MAX・Z33 13LAPS
        
総合45位 #7   MAKERS hart RX−7  9LAPS

 

■序盤の走り■

 
#78・ WW2 ダンロップ RX−7はその後も淡々と周回を重ね、当初の筋書き通りに、早々にトラブルに見舞われた#19と#7の2台をパスしてクラス3の9位へと浮上。少し気になるのは、ライバル勢の3〜4秒台落ちというLAPタイムが精一杯であり、スタートから順調に周回を続けるマシンの中では最後尾に近い位置に沈んでいることでした。78号車は今回のレースもタイヤ無交換作戦のため、序盤からタイヤに負担をかけないように新宅選手が意図していることは十分に想像できるので、見守るPIT側としては、予想外のマシントラブルを抱え込んでいないことを祈るのみです。



■チーム戦略■

 今回のTI戦も、チームテスタスポーツは従来通りの
2PIT作戦を予定していました。
 チームは78号車の総周回数をほぼ昨年並みの100LAP(総合TOPから9周遅れ)と想定し、その上で各ドライバーの担当周回数を、新宅選手と伊藤選手が35LAPずつ、有木選手が30LAPとしています。参戦2年目を迎えた有木選手の実績、伊藤選手の前に出現したクールスーツという強い味方を考慮して、3人の周回数をほぼ均等に配分した結果です。
 エンジニアリング的には、78号車が今回のエンジンセッティングの条件下で1.9km/L弱の燃費をマークしているため、他チームと同様の1PIT作戦にチャレンジできるレベルにはあるのですが、チームは上位進出を求めて燃欠のリスクを冒すことよりも、3名の参加ドライバーに等しく出場機会を与えることを優先させたのでした。
 従い、2PIT前提で採れる戦法としては、PITストップごとの給油量は昨年並みとしながら、燃料のイニシャル搭載量を少なめにして、マシンやタイヤへの負担軽減を図ることくらいでした。




<1時間経過時点>
 〜14:10

■1回目のPITイン■

 レース開始からほぼ1時間が経過しようとする14時前、チームテスタスポーツは1回目のPITストップに向けた準備に取り掛かります。
 2番手でステアリングを握る伊藤選手はもちろん、給油担当2名と消火器担当1名も揃ってレーシングスーツ&ヘルメット&グローブで完全武装し、伊藤選手は昨年から採用した秘密兵器・クールスーツを装着します。同時に、スーツに循環させる氷水の入替え作業もスタンバイが進められます。

 WW2メンバーでは、給油リグのオーバーフロー側を克ちゃんが担当します。彼はこの作業の担当歴がとても長く、今回耐火スーツがキツめとなってしまったことを除き(笑)、不安材料は全くありません。そして、決勝のPITに応援に駆け付けてくれたぬまさんが急遽、給油ホースの支持サポート役を仰せ付かりました。昨年のTIでは克ちゃんの代役でリグ担当を経験したぬまさんなので、一連の給油作業の手順はすでに熟知しています。
 私は消火器担当として暫しPITモニター前を離れ、急いで頭を切り換えます。その一方で、サインガードで働き詰めのKojiさんには、束の間の休憩時間がやってくることになります(^^)。


私は左足のみ写っています(爆)
PITストップで給油作業中の78号車
(画像提供:Kojiさん)


 完全に作業準備が整った14時08分、予定通りの35LAP時点で、新宅選手がPITロードにマシンを滑り込ませます。
 すぐさまマシンに給油ホースが繋がれ、予定量のガソリンが流れ込むのをスタッフ全員がまんじりともせずに待ちます。シーズンオフに給油装置をメンテナンスした結果、リグ周辺から漏れ出る燃料はごく微量で、手持ちのウエスで処置できる程度でした。大量のガソリンが滴り落ちた昨年のような緊張感からはひとたび解放されますが、トランスミッションからのオイル漏れが懸念されていたため、私は時折りマシン下部を覗き込みながら、緊張して消火器のノズルを構えます。
 給油作業中はドライバー交代以外の作業が一切禁止されるため、給油リグがマシンから外されたのを合図に、ながつ氏がサポートスタッフと2人で助手席側クーラーBOXの氷の入替え作業を手際良く進めていきます。チームはこの時間を利用して、4本のタイヤの空気圧チェックとボルトの増し締めを行ないます。
 チームは予定のPIT作業を全て消化し、戦闘態勢の整った伊藤選手は、レブリミッターの音ももどかしげにPITロードを進んでいきました。



◆クラス3順位◆
経過時間: 1H 05M 
( 周回:  40LAPS)
       
総合10位 #23  C−WEST アドバン Z33 39LAPS
総合13位 #83  BP ADVAN NSX 39LAPS
総合15位 #245 モバイルキャスト ADVAN Z 38LAPS
総合16位 #88  ings アドバン コムセント Z 38LAPS
総合17位 #79  TAITEC ADVAN NSX 38LAPS
総合18位 #27  FINA BMW M3 38LAPS
総合24位 #14  エンドレス UEMATSU RX−7 38LAPS
     
総合35位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 35LAPS
     
総合39位 #7   MAKERS hart RX−7 30LAPS
        
総合41位 #15  レーシングスパルコディクセルRX−7 24LAPS
総合44位 #19  TC−KOBE・MAX・Z33 16LAPS



 チームテスタスポーツが、全クラスを通じて最も早いタイミングで給油PITストップを済ませた頃、クラス3の順位にはまたも変動が起きていました。

 スタート直後にZ33とNSXの先行こそ許したものの、クラス3位の好位置をキープしていた
#27・FINA BMW M3が、1コーナーで他車との接触によりスピン、大きく順位を落としてしまいます。また、この接触の際に傷めたリアバンパーが大きく捲れてしまう結果となり、その後のオレンジボール提示によって、チームは14時13分に予定外の早めのPITインを強いられることになります。
 そして、RX−7勢TOPの予選位置から健闘していた
#15・レーシングスパルコディクセルRX−7が、13時55分に突如PITイン。エンジントラブルによりそのままリタイヤとなってしまいました。#19・TC−KOBE・MAX・Z33もすでに戦線を離脱しており、コース上を周回するクラス3車両はこの時点で9台にまで減っています。




<1時間30分経過時点>
 〜14:35〜

■目に見えない戦い■

 新宅選手に代わってコースインした伊藤選手は、1分45秒〜46秒台のハイペースで力強いドライビングを開始します。この時点でクラス3の上位勢のLAPタイムは依然43秒〜44秒台でしたが、残り3台になったRX−7勢に限っていえば44秒〜46秒台で周回しており、ライバルと遜色ないタイムを叩き出していることになります。例年アグレッシブな走りで私達を勇気付けてくれる伊藤選手ですが、今年もその走りは健在といったところです。スタンドから応援するファンにとっても「魅せ場」のスティントとなったわけですが、別の意味でも非常に重要なポイントとなっていたのです。

 それは、同じクラス3で遥か後方からひたひたと迫り来る
#7・MAKERS hart RX−7を相手にした、目に見えない戦いでした。

 #7はオープニングLAPのアクシデントの影響で完調とはいえない状態ながら、レギュラー参戦組の意地を見せ、45秒〜46秒台のLAPタイムで追い上げを開始していました。最大で8LAP離れていた78号車との周回差も徐々に縮まり、78号車の1回目のPITインにより、レースの3分の2を残した時点で、その差は一気に5LAPまで縮まっていたのです。当然ながら、シリーズポイントを少しでも多く稼ぎたい岡部自動車チームは、唯一手が届く可能性のある78号車に照準を絞っていたことは想像に難くありません。そこに敢然と立ちはだかったのが伊藤選手だったわけです。

 コースイン直後から、#7とほぼ同等か、時にはそれを上回るLAPタイムで応戦した伊藤選手は、それまで縮まる一方だった両車のGapを暫し押し留めることに成功したのです。コース上で直接見ることはできない孤独な戦いですが、伊藤選手のこの踏ん張りは、僅かな望みに賭けていた敵の戦意を萎えさせるには十分でした。その後#7はややペースを落とし、明らかにポジションキープを狙った走りに切り替わりました。

 スタート時点からタイムチャートを凝視し続けていた私にとって、78号車に襲い掛かる唯一の脅威が退き、不安が完全払拭された瞬間でした。


思わぬ戦いを演じることに・・・
#7 MAKERS hart RX-7


<1時間55分経過時点>
 〜15:00〜

 スタートから約1時間半が経過して、400kmのレースが折り返し地点を迎えると、1PIT作戦を採る全チームは、ほぼ例外なくこの時間帯に最初で最後のPITインを済ませていきます。
 クラス3では、2台のNSXが共にPITストップのタイミングを遅らせ、一時的な1−2体制を確立してみせますが、やがてZ33にTOPの座を明け渡すのは時間の問題でした。接触により後退した
#27・ FINA BMW M3には続いてミッショントラブルが発生、14時42分に2度目の緊急PITインをした後、リタイヤとなりました。これで、クラス3は全11台中3台が戦列を去っています。



■緊張に包まれたPIT■


 全チームの中でおそらく唯一の(笑)2PIT作戦を採ったチームテスタスポーツ。私達にとっては、PITレーンに数多くのマシンがひしめくこの時間帯もまさに他人事で、極めて平穏に時間が過ぎていきます。しかし、ここで私達は思わず目が覚めるようなスリリングな場面に直面します。


#45 グースネック・アドバンポルシェ

 #45・グースネック・アドバンポルシェが、私達のすぐ隣りのPITに滑り込んできたのは14時40分頃のこと。さすがはクラス1のレギュラー参戦チームだけあって、PITクルーが練習通りの無駄のない動きを見せ、給油作業とタイヤ交換を早業で済ませていきます。その時、そのすぐ隣のPITに、クラス4のTOPを快走する#96・FORWARD スプーン EDが同じタイミングでPITインしてきたのです。
 #45の真後ろに縦列駐車するカタチとなった#96ですが、その間隔は僅か数十cmというキワドイもので、思わず追突したかと思ったほどでした。

 やがて、#45のPIT作業が先に終わり、ジャッキダウン。いよいよPITアウトかと思わせたその瞬間、私達は信じられないシーンを目撃します。ドライバーが発進ギアをエンゲージし損ねたのか、その白いポルシェは勇ましい排気音を響かせながら、一瞬PITレーンを逆方向に進んだのです!!・・・この意表をついた動きには、「寸止め」で後ろに待機していた#96のPITクルーも大混乱。私の見ていた位置からは、#96のマシン前方でエアーバルブのコックを握っていたクルーが挟まれたようにも見えました。
 凄まじい怒号が飛び交う中で、#45は逃げ去るようにPITアウト。しかし混乱はさらに続き、すっかり平常心を乱された#96のチームはその直後、PITアウトの際にマシンにエアホースを引っ掛けてしまうのです。パァンという破裂音と共にエアガンが宙を舞い、サインガードの方向へ飛んで行きます。周囲の人間全員に戦慄が走った瞬間でした。しかも悪いことに、#96が異変を察知して停止した場所は、総合TOPを争うADVANポルシェのPITの真正面でした。その時、PITロードを進んで来るADVANカラーのマシンに、さらなる緊張が走ったことは言うまでもありません。


 
これだけのハプニングの連続で、怪我人が出なかったのは本当に不幸中の幸いというほかありません。スポット参戦の私達でさえ過去に何度も出くわした危険なシーンの繰り返しに、軽災害の積み重ねが重大災害を招く「ハインリッヒの法則」を思い浮かべたのは私だけでしょうか・・・。今後ともS耐の関係者に災禍が降り掛からないことを祈るのみです。




◆クラス3順位◆
経過時間: 1H 55M 
( 周回:  68LAPS)
       
総合7位 #79  TAITEC ADVAN NSX 65LAPS
総合9位 #23  C−WEST アドバン Z33 65LAPS
総合11位 #245 モバイルキャスト ADVAN Z 65LAPS
総合14位 #88  ings アドバン コムセント Z 65LAPS
総合15位 #83  BP ADVAN NSX 65LAPS
総合25位 #14  エンドレス UEMATSU RX−7 64LAPS
     
総合32位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 62LAPS
     
総合36位 #7   MAKERS hart RX−7 56LAPS
        
リタイヤ #27  FINA BMW M3 53LAPS
リタイヤ #15  レーシングスパルコディクセルRX−7 24LAPS
リタイヤ #19  TC−KOBE・MAX・Z33 16LAPS



■秘密兵器の効果■

 隣り合うPITを舞台にした衝撃のシーンを見せ付けられたチームテスタスポーツ。伊藤選手のドライブによって順調な周回を重ねているように見えた78号車でしたが、実はちょっとしたハプニングが起こっていました。

 
伊藤選手による2スティント目の走行が残り30分を切ってきた頃、それまでPIT内で静かに戦局を見つめていた中平氏が突然、携帯電話を手に取って通話をし始めました・・・その相手は他でもないコース上の伊藤選手。どうやら78号車はコーナリング途中で発生したミスファイアが原因で姿勢を乱してスピン、コースアウトを喫してしまったらしいのです。

 
こんな生きた情報が即時にチームPITにもたらされること自体、従来では絶対にあり得なかったことで、今回から新しい通信システムを導入したながつ氏のお手柄なのですが、この秘密兵器はさらに如何なく効果を発揮していきます。
 中平氏との交信の中で、伊藤選手がコースアウトした際のマシンダメージを心配していることをキャッチしたチームは、サインガードのスタッフへマシンの外観チェックを指示。とくに問題を抱えていないことが判明すると、周回を続ける伊藤選手にすぐさまフィードバック。孤独なコクピットで戦うドライバーの不安材料を完全に取り去ったのです。
 昨年までのケースであれば、不安を感じた伊藤選手はPITインして状況を伝えるしか術はありません。また、チームは突然のPITインを予見できるはずもなく、ひとまず状況把握に努めた後で対応を決定せざるを得ず、ドライバー交代と給油作業の準備に膨大な時間を費やしたに違いありません。


 
もちろん、トラブルが起きないに越したことはありませんが、そこは先の読めない耐久レース、突然のアクシデントにいかに適切に対処できるかが勝負の鍵です。今回の場合は、タイムリーな情報によりチームが的確に状況把握をしたことで、78号車は無駄なPITインを防ぎ、コースアウトによる直接のタイムロスだけに留めることができたわけです。
 昨年のTI戦でイヤというほど痛感した情報マネジメントの重要性を、チーム全員があらためて再認識した一件でした。

 



 

<2時間30分経過時点>
 〜15:35〜

 109周のレースも残り約20周となった頃、TIサーキットの上空は俄かに厚い雲に覆われ始めます。ただ、予報では雨の確率は低く、各チームのPITがざわつく気配は全くありません。灼熱の終盤戦となる例年のTI戦とは幾分違った趣きで、約30分後のゴールに向け、静かに周回は進んでいきます。
 しかし、クラス3のTOP争いだけは事情が異なり、シリーズチャンピオンに王手をかけている
#245 モバイルキャスト ADVAN Zが、レース中盤から猛チャージを見せており、時折り42秒台のLAPタイムを叩き出してTOPとの差を削り取っていきます。従って、王座決定を自らの優勝で阻止するしかない#23・C−WEST アドバン Z33は、レース終盤に突入してもクルージングに入る余裕は全くありません。
 
一方、クラス中段では、常に5番手以内の好位置をキープしていた#88・ings アドバン コムセント Zが、駆動系のトラブルにより、残り35分でリタイヤとなりました。代わってクラス5位まで浮上してきたのが、最後尾スタートから猛追を見せている#14・エンドレス UEMATSU RX−7。ただし、クラス4位のNSXとは1周以上の差があるため、46秒前後のLAPタイムでポジションキープに移行した模様です。

 

◆クラス3順位◆
経過時間: 2H 30M 
( 周回:  88LAPS)
       
総合8位 #23  C−WEST アドバン Z33 85LAPS
総合9位 #245 モバイルキャスト ADVAN Z 84LAPS
総合13位 #83  BP ADVAN NSX 84LAPS
総合16位 #79  TAITEC ADVAN NSX 84LAPS
総合23位 #14  エンドレス UEMATSU RX−7 83LAPS
     
総合32位 #78  WW2 ダンロップ RX−7 79LAPS
総合34位 #7   MAKERS hart RX−7 75LAPS
        
リタイヤ #88  ings アドバン コムセント Z 75LAPS
リタイヤ #27  FINA BMW M3 53LAPS
リタイヤ #19  TC−KOBE・MAX・Z33 29LAPS
リタイヤ #15  レーシングスパルコディクセルRX−7 24LAPS


■最終スティントへ■

 ゴールまで残り約1時間となった15時15分頃、伊藤選手は予定より3周遅く、38LAPを周回した時点でPITイン。

 PITインの指示がうまく伝わらず、78号車が姿を現すのをやや待ち侘びることになったチームテスタスポーツですが、PITクルーは順調に2回目のPIT作業をこなしていきます。コクピットには最後のパートを担当する有木選手が乗り込み、約30LAPの戦いへ向けてPITを後にしていきます。

 
この時点で78号車は#88のリタイヤによりクラス6位に浮上。岡部自動車の2台のRX−7の間に割って入った位置となりますが、前を行く#14とは3LAP差、後ろの#7とは4LAP差と、もはや深刻なアクシデントでも起こらない限りは、順位変動の可能性がない状況でした。


伊藤選手を笑顔で囲む
チームスタッフ

 その頃、チームテスタスポーツのPITでは、ドライブを終えたばかりの伊藤選手が、スポットクーラーを独占してクールダウンを図りつつ、マシンの状況を事細かにスタッフにレポートする光景がしばらく続いていました。
 やがてその人垣の輪も解けて、ゴールを間近に控えていよいよPIT裏にも安堵の雰囲気が漂い始めた頃、久々にトーンを荒げた場内アナウンスが私達の耳へ飛び込んできました。


 
「ゼッケン78番がヘアピンでスピィーン!!」(@_@)

 
一瞬私達はテント内で顔を見合わせますが、すぐさまコース復帰の様子がアナウンスされ、皆一様にホッと胸を撫で下ろしました。
 タイヤカスで汚れきったコース上に、限界まで消耗の進んだタイヤで挑まざるを得ない有木選手には、たしかに気の毒な面もあります。ここは、緩みかけた緊張の糸を再びピンと張り直してくれた有木選手に感謝することにしましょう。じつは後で本人の自白により判明したことですが、有木選手はさらにもう1回スピンを喫していたとのこと(笑)。大事に至らなくてホントに良かった・・・。


 
有木選手は49秒〜50秒台のLAPタイムで慎重にゴールを目指します。


有木選手の最後の走りを見守るPIT

残り数周となったサインガード


ファイナルLAPに向かう有木選手と78号車




<ゴール>
 〜16:08〜

 昨年のTI戦はファイナルLAPでのマシン炎上によって赤旗終了となりましたが、今年は2年ぶりに感動のチェッカーフラッグを拝むことができました。レース開始直後にTOPに躍り出て以来、ずっとそのポジションを守り続けた#25・ADVAN DGゼナリンGT3が総合TOPで堂々ゴールラインを通過。今年の400kmレースは大きなアクシデントの発生もなく、所要時間は約3時間という異例の速さで幕を下ろすことになりました。出走46台中、完走は32台となっています。

 
クラス3は結局、#23・C−WEST アドバン Z33が辛くも4秒差で逃げ切り、今シーズン2回目の優勝を飾りました。これでZ33は開幕から6戦全勝となっています。ワン・ツーを決めたZ33勢以下、3位〜4位がNSX勢、5位〜7位がRX−7勢と、今シーズンの勢力分布状況をそのまま反映した結果となりました。

 
3クラスのシリーズポイント争いは、数字の上では#23にも逆転チャンピオンの可能性が残されてはいますが、すでに4勝を挙げている#245が圧倒的に優勢であり、次戦SUGOでの王座決定がかなり濃厚となっています。RX−7勢では岡部自動車の3台が、偶然にも37ポイント、36ポイント、35ポイントと僅差で続き、シリーズ6位〜8位につける結果となりましたが、ライバルのBMWやNSX勢にやや水を空けられている状況です。




◆クラス3 最終順位 & ベストラップ◆

所要時間: 3H 03M  (総周回:  109LAPS)
         
総合8位 #23  C−WEST アドバン Z33 105LAPS 1'42.721
総合9位 #245 モバイルキャスト ADVAN Z 105LAPS 1'42.796
総合14位 #83  BP ADVAN NSX 104LAPS 1'42.927
総合17位 #79  TAITEC ADVAN NSX 104LAPS 1'44.178
総合23位 #14  エンドレス UEMATSU RX−7 102LAPS 1'44.019
総合30位 #78  WW2 ダンロップ RX−7  98LAPS 1'45.974
総合31位 #7   MAKERS hart RX−7  94LAPS 1'45.363
          
リタイヤ #88  ings アドバン コムセント Z  77LAPS 1'43.859
リタイヤ #27  FINA BMW M3  53LAPS 1'43.509
リタイヤ #19  TC−KOBE・MAX・Z33  29LAPS 1'46.441
リタイヤ #15  レーシングスパルコディクセルRX−7  24LAPS 1'45.279

 

 

■完走の瞬間■

 レースが残り数周となった時点で、チームテスタスポーツのメンバーはサインガードエリアへと移動し、感動のゴールシーンを待ち受けます。こうしてメインストレートで最後の頑張りを見せるS耐マシン達を眺めていると、敵味方の区別なく全てのマシンを称えてあげたい心境になります。これこそ耐久レースのゴールシーン特有の風韻であり、何度味わっても格別のものなのです。スポット参戦のチームテスタスポーツのメンバーは、換言すれば、この瞬間に立ち合い、皆で達成感や喜びを分かち合うために集結して来ているのです。

 
そんな中で、シャイな有木選手は派手なガッツポースを見せることもなく、16時08分過ぎにコントロールラインを通過。自身初めてとなるS耐のチェッカーフラッグを体験しました。新宅選手、伊藤選手、有木選手の3名のドライバーの手によって#78・WW2 ダンロップ RX−7は98周(約363km)を走破してこのレースを完走、総合30位、クラス3の6位という結果を獲得しました。
 偶然にも98周という総周回数は、TI戦では3年連続の同じ数字となりました。当初想定していた100LAPには2周ほど足りない計算ですが、レース中に喫した3回のスピン・コースアウトによる予定外のロスタイムを考慮すれば、概ね計画通りの結果だったといえます。

 チェッカーを受けたマシン達が再びメインストレートに戻ってくると、次々にコース脇に並べられて、車両保管へ移行していきます。78号車から降り立った有木選手は全く疲れた素振りを見せることなく、スピンのことが頭から離れないのか、ずっと照れ笑いを浮かべていました。暫し、PITウォールを挟んでチームスタッフと有木選手が談笑する光景が続きました。



メインストレートにマシンを停めた有木選手


健闘を称えるスタッフと・・・

破顔一笑(?)の有木選手





■明るい記念撮影■

 
昨年のTI戦では突然の赤旗終了により、レース終了後に暫定結果を巡る混乱がいつまでも続きましたが、今年は幸いなことに、日没前のかなり早い段階で、メインストレート上での車両保管が解除されました。すぐにスタッフ+関係者でマシンの引き取りに向かいます。

 無事に連続完走を果たしたその余韻に浸るのも程々に、PITの片付け作業に着手したチームは、78号車がPITに帰還してくる頃にはほぼ機材の撤収作業を終えていました。ここで、ガランとしたPIT前に78号車とスタッフ全員が集まり、夕闇迫る中で記念撮影を行いました。もちろん、パドックに応援に掛け付け、撤収作業にも協力してくれたチーム関係者の方々も一緒です。

 例年は薄暗いPIT内での撮影で、私のデジカメが不得手とする条件続きだったのですが、今回ばかりは「明るい」場所でキレイに撮ることができました(^^)。


撤収作業のサポートもありがとうございましたm(__)m<関係諸氏
7戦連続で完走した78号車を囲んで記念撮影(^^)


 8月のエントリー決定から、慌しく過ぎ去っていった準備期間。レース直前に中国地方を直撃した台風21号の影響が随所に残る中で、徹夜作業も交えて必死に準備を進めた1年ぶりの本番レースでしたが、チームテスタスポーツは大勢の人々の理解と支援に支えられて、通算4度目となったTIラウンドへの挑戦を、チーム全員の「明るい」笑顔で締めくくることができました。この結果を、現地に居合わせたメンバーだけでなく、その家族、同僚、友人・・・全ての協力者と分かち合いたいと思います。




■4年間の足跡■

 
今回の結果により、チームテスタスポーツは、2001年のS耐初出場以来続けている連続完走&連続ポイント獲得記録を7戦まで延ばすことに成功しました。また、今回のレースでは、チームが一丸となって1年間のブランクを乗り越えただけでなく、レース中のマシン状況を的確に掴んでベストな判断を下すことにも成功し、従来からの課題だったレースマネジメント面においても、確実な進歩の跡を印すことができました。


◆#78の2001年〜2004年のTI戦リザルト推移◆
【レース完走周回数編】
#78 リザルト RX−7
最上位マシン
クラス3
優勝マシン
RX−7
最上位マシン
とのGap
2001 85LAPS 106LAPS
(#15 C-WEST)
−21LAPS
2002 98LAPS 107LAPS
(#9 FORTUNE)
107LAPS
(#27 FINA M3)
−9LAPS
2003 98LAPS 104LAPS
(#15 ORCアドバン)
104LAPS
(#27 FINA M3)
−6LAPS
2004 98LAPS 102LAPS
(#14 エンドレス)
105LAPS
(#23 C-WEST Z)
−4LAPS


◆#78の2001年〜2004年のTI戦リザルト推移◆
【レース中のベストLAP編】
#78 リザルト RX−7
最速マシン
クラス3
最速マシン
RX−7
最速マシン
とのGap
2001 1’48.416 1’43.044
(#33 BP Visco)
+5.362
2002 1’49.760 1’43.228
(#9 FORTUNE)
+6.537
2003 1’46.864 1’43.524
(#15 ORCアドバン)
+3.340
2004 1’45.974 1’44.019
(#14 エンドレス)
1’42.721
(#23 C-WEST Z)
+1.955


 
上の表は、チームの過去4年間のTIラウンド戦績から、総周回数とベストラップを抜き出して比較したものです。完走32台中の30位、周回数は98LAP止まりという今回のリザルトを訝しがる向きには、ぜひ見てもらいたいデータです。

 
現実問題として、自車の総周回数に関しては、総合TOPのマシン(多くの場合はクラス1の車両)とのマシン性能差が支配的であり、クラス内の順位に関しては、S耐独自のレギュレーションが狙った(はずの)性能平準化の帰結状況に大きく左右されてしまいます。
 ここではそうした外的要因を取り除くために、同じマシン(FD3S)同士でのリザルト比較を試みています。2003年と2004年で比較してみても、78号車はRX−7勢TOPのマシンに対し、総周回数で2LAP、ベストラップで1.4秒、Gapを縮めていることがわかります。2001年の満身創痍の完走を基点とすれば、その成長の跡は一層浮き彫りとなるわけです。
 当然この間にRX−7勢の顔触れの移り変わりはありますが、それを加味しても、チームテスタスポーツと78号車は決して停滞することなく、常に前進を続けているといえるでしょう。

 


■来期に向けて■

 7戦連続の完走に沸く一方で、参加した全チームで唯一となった2PIT作戦の採用が象徴するように、チーム旧来の戦い方がS耐の現状にはそぐわないものとなりつつあることも事実です。このことは、78号車が特に大きなタイムロスなく完走を果たしたにも拘らず、クラス3のライバル勢のみならず4クラス中位勢の後塵まで拝する結果しか得られなかったことで明らかです。スポット参戦の立場のチームが、PIT1回分のハンデを献上してしまっては、上位完走など夢のまた夢と言わざるを得ないでしょう。

 また、昨今のクラス3でのRX−7の不振は、新興勢力に対する相対戦力の低下を如実に示したものです。特認参加車両も交えたスーパー耐久の見応えあるバトルは、絶妙なレギュレーションづくりが演出する戦力均衡の上に初めて成立しているものです。かつてのクラス3最強マシン・RX−7に対しても、最新SPECのライバル勢と伍して戦えるように、何らかの救済措置が必要な時期に来ていることは明らかであり、その処置の結果如何では、来シーズンのRX−7陣営がさらに縮小してしまうことも懸念されます。

 純粋な速さの追求という点で、78号車にはまだまだ課題が山積している状態ですが、RX−7が少数派となりつつあるスーパー耐久のカテゴリーにおいて、私達WW2が求めてやまない「サーキットで戦うMAZDAのマシン」の姿を維持していくためには、少なくともチームとして「戦うスタンス」への転換を図ることが重要になってきます。
 
 ここ数年間でチームテスタスポーツと築いてきた素晴らしい協力関係の中で、そのためにWW2ができることをしっかりと探っていきたいと思います。


(おわり)