スーパー耐久シリーズ2004 第6戦
TI 400km Race
9月11日(土)〜12日(日) TIサーキット英田(岡山県)
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2004年のスーパー耐久シリーズは、もてぎで3月に開幕、4月の仙台ハイランド、5月の鈴鹿を経て、6月のMINEで前半戦を終了し、7月の十勝24時間レースを挟み、再び西日本にその戦いの場を移してきました。 ここTIサーキットで開催される400kmレースは、例年は決まって激しい残暑との戦いとなるのですが、決勝日を迎えた英田町には朝から爽やかな風が吹いており、今回ばかりは幾分涼しい気候の中で、いつも通りの熱いバトルが繰り広げられることになりそうです。 2003年一杯でスカイラインGT−Rが撤退し、スーパー耐久シリーズはポルシェ911GT3という新たな看板マシンを擁し、今年も全国各地のサーキットを舞台にして、5つのクラスに分かれた激しいチャンピオン争いを展開しています。 昨年のTI戦でデビューした期待のREマシン・RX−8が2004年シリーズへの参戦を取り止めたため、再びスーパー耐久レースに参戦する唯一のMAZDA車となったRX−7。しかし、2004年のシリーズを年間エントリーで追い掛けるチームは、3台体制の岡部自動車・1チームのみとなり、クラス3の強力なライバルであるフェアレディZやNSXを相手に苦戦を強いられています。 N1規定を想定した改良が施された最新の市販ベース車を持つライバル勢に対し、既に生産終了から2年以上が経過しているRX−7の劣勢は傍目にも明らかですが、20世紀に誕生したマシンが未だに最前線で戦えるのはS耐独自のレギュレーションの妙であり、それと同時に、コーナリングマシン・RX−7(FD3S)のポテンシャルの高さも示しているともいえます。開幕5連勝と無敵の強さを誇るZ33に対して、一矢を報いる走りをぜひ見せてもらいたいところです。 今年もWW2は、クラス3にRX−7でスポット参戦するチームテスタスポーツをサポート。サーキットを疾走するMAZDAのマシンを力強く応援していきます。 |
■グリッド上の風景■
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大きな波乱もなくオープニングLAPを終えたグリッド上位勢でしたが、同じADVANカラーのポルシェ同士で激しい先陣争いが勃発、2周目には#25・ADVAN DGゼナリンGT3が総合TOPの座を奪い取っていきます。 注目のクラス3では、中段付近で早くも順位変動が起こりました。 まずは#7・MAKERS hart RX−7がオープニングLAPで他車の追突を受け、マフラーにダメージを追ったため、PITでの修復作業を余儀なくされました。その接触の相手は、私達のPITのすぐ右隣りの#57・グラムライツ G・キッスランサーだった模様で、マシンはレース開始直後に私達のPIT前を横切ってガレージ内へ直行。フロント部分のダメージが酷く、修復作業の甲斐もなくリタイヤとなってしまいました。 また、ローリングスタートに出遅れて最後尾スタートとなった#19・TC−KOBE・MAX・Z33と、アクシデントから復活し決勝出走が認められた#14・エンドレス UEMATSU RX−7が、隊列の最後方から必死の追い上げを見せ、次々に順位を挽回していきます。 総合35番手からスタートした#78・WW2 ダンロップ RX−7は、スターティングドライバーの新宅選手が巧みにオープニングLAPの混乱を切り抜け、アクシデントに遭うこともなく、無傷のまま予選順位をキープしてメインストレートへ戻ってきました。しかし、マシンのスピード不足が足を引っ張っているのか、レース序盤には少しずつ順位を落としていきました。 45秒台のLAPタイムで猛追を開始した#14・エンドレス UEMATSU RX−7の前に、49秒台で周回する78号車は成す術もなくパスされ、暫くは我慢の周回が続きそうな展開が予想されました。
クラス3の上位勢には順位の変動はなく、戦いはひとまず降着状態に入っているように見えます。その中で、クラス3のチャンピオン決定阻止に燃える#23・C−WEST
アドバン Z33が唯一、43秒台の速いLAPタイムでクラス3首位を快走しています。その後方、クラス2位の#83・BP ADVAN NSXから、クラス6位の#79・TAITEC ADVAN NSXまでは、いずれも44〜45秒台のLAPタイムで拮抗した周回を重ねています。
■序盤の走り■
■1回目のPITイン■
■目に見えない戦い■
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コースイン直後から、#7とほぼ同等か、時にはそれを上回るLAPタイムで応戦した伊藤選手は、それまで縮まる一方だった両車のGapを暫し押し留めることに成功したのです。コース上で直接見ることはできない孤独な戦いですが、伊藤選手のこの踏ん張りは、僅かな望みに賭けていた敵の戦意を萎えさせるには十分でした。その後#7はややペースを落とし、明らかにポジションキープを狙った走りに切り替わりました。 スタート時点からタイムチャートを凝視し続けていた私にとって、78号車に襲い掛かる唯一の脅威が退き、不安が完全払拭された瞬間でした。 |
![]() #7 MAKERS hart RX-7 |
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スタートから約1時間半が経過して、400kmのレースが折り返し地点を迎えると、1PIT作戦を採る全チームは、ほぼ例外なくこの時間帯に最初で最後のPITインを済ませていきます。 |
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#45・グースネック・アドバンポルシェが、私達のすぐ隣りのPITに滑り込んできたのは14時40分頃のこと。さすがはクラス1のレギュラー参戦チームだけあって、PITクルーが練習通りの無駄のない動きを見せ、給油作業とタイヤ交換を早業で済ませていきます。その時、そのすぐ隣のPITに、クラス4のTOPを快走する#96・FORWARD
スプーン EDが同じタイミングでPITインしてきたのです。 |
やがて、#45のPIT作業が先に終わり、ジャッキダウン。いよいよPITアウトかと思わせたその瞬間、私達は信じられないシーンを目撃します。ドライバーが発進ギアをエンゲージし損ねたのか、その白いポルシェは勇ましい排気音を響かせながら、一瞬PITレーンを逆方向に進んだのです!!・・・この意表をついた動きには、「寸止め」で後ろに待機していた#96のPITクルーも大混乱。私の見ていた位置からは、#96のマシン前方でエアーバルブのコックを握っていたクルーが挟まれたようにも見えました。
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109周のレースも残り約20周となった頃、TIサーキットの上空は俄かに厚い雲に覆われ始めます。ただ、予報では雨の確率は低く、各チームのPITがざわつく気配は全くありません。灼熱の終盤戦となる例年のTI戦とは幾分違った趣きで、約30分後のゴールに向け、静かに周回は進んでいきます。
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PITインの指示がうまく伝わらず、78号車が姿を現すのをやや待ち侘びることになったチームテスタスポーツですが、PITクルーは順調に2回目のPIT作業をこなしていきます。コクピットには最後のパートを担当する有木選手が乗り込み、約30LAPの戦いへ向けてPITを後にしていきます。 この時点で78号車は#88のリタイヤによりクラス6位に浮上。岡部自動車の2台のRX−7の間に割って入った位置となりますが、前を行く#14とは3LAP差、後ろの#7とは4LAP差と、もはや深刻なアクシデントでも起こらない限りは、順位変動の可能性がない状況でした。 |
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その頃、チームテスタスポーツのPITでは、ドライブを終えたばかりの伊藤選手が、スポットクーラーを独占してクールダウンを図りつつ、マシンの状況を事細かにスタッフにレポートする光景がしばらく続いていました。 |
![]() 有木選手の最後の走りを見守るPIT |
![]() 残り数周となったサインガード |
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![]() ファイナルLAPに向かう有木選手と78号車 |
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昨年のTI戦はファイナルLAPでのマシン炎上によって赤旗終了となりましたが、今年は2年ぶりに感動のチェッカーフラッグを拝むことができました。レース開始直後にTOPに躍り出て以来、ずっとそのポジションを守り続けた#25・ADVAN
DGゼナリンGT3が総合TOPで堂々ゴールラインを通過。今年の400kmレースは大きなアクシデントの発生もなく、所要時間は約3時間という異例の速さで幕を下ろすことになりました。出走46台中、完走は32台となっています。 |
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◆クラス3 最終順位 & ベストラップ◆ 所要時間: 3H 03M (総周回: 109LAPS) |
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総合8位 | #23 C−WEST アドバン Z33 | 105LAPS | 1'42.721 |
総合9位 | #245 モバイルキャスト ADVAN Z | 105LAPS | 1'42.796 |
総合14位 | #83 BP ADVAN NSX | 104LAPS | 1'42.927 |
総合17位 | #79 TAITEC ADVAN NSX | 104LAPS | 1'44.178 |
総合23位 | #14 エンドレス UEMATSU RX−7 | 102LAPS | 1'44.019 |
総合30位 | #78 WW2 ダンロップ RX−7 | 98LAPS | 1'45.974 |
総合31位 | #7 MAKERS hart RX−7 | 94LAPS | 1'45.363 |
リタイヤ | #88 ings アドバン コムセント Z | 77LAPS | 1'43.859 |
リタイヤ | #27 FINA BMW M3 | 53LAPS | 1'43.509 |
リタイヤ | #19 TC−KOBE・MAX・Z33 | 29LAPS | 1'46.441 |
リタイヤ | #15 レーシングスパルコディクセルRX−7 | 24LAPS | 1'45.279 |
■完走の瞬間■
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![]() 健闘を称えるスタッフと・・・ |
![]() 破顔一笑(?)の有木選手 |
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上の表は、チームの過去4年間のTIラウンド戦績から、総周回数とベストラップを抜き出して比較したものです。完走32台中の30位、周回数は98LAP止まりという今回のリザルトを訝しがる向きには、ぜひ見てもらいたいデータです。 現実問題として、自車の総周回数に関しては、総合TOPのマシン(多くの場合はクラス1の車両)とのマシン性能差が支配的であり、クラス内の順位に関しては、S耐独自のレギュレーションが狙った(はずの)性能平準化の帰結状況に大きく左右されてしまいます。 ここではそうした外的要因を取り除くために、同じマシン(FD3S)同士でのリザルト比較を試みています。2003年と2004年で比較してみても、78号車はRX−7勢TOPのマシンに対し、総周回数で2LAP、ベストラップで1.4秒、Gapを縮めていることがわかります。2001年の満身創痍の完走を基点とすれば、その成長の跡は一層浮き彫りとなるわけです。 当然この間にRX−7勢の顔触れの移り変わりはありますが、それを加味しても、チームテスタスポーツと78号車は決して停滞することなく、常に前進を続けているといえるでしょう。 ■来期に向けて■ 7戦連続の完走に沸く一方で、参加した全チームで唯一となった2PIT作戦の採用が象徴するように、チーム旧来の戦い方がS耐の現状にはそぐわないものとなりつつあることも事実です。このことは、78号車が特に大きなタイムロスなく完走を果たしたにも拘らず、クラス3のライバル勢のみならず4クラス中位勢の後塵まで拝する結果しか得られなかったことで明らかです。スポット参戦の立場のチームが、PIT1回分のハンデを献上してしまっては、上位完走など夢のまた夢と言わざるを得ないでしょう。 また、昨今のクラス3でのRX−7の不振は、新興勢力に対する相対戦力の低下を如実に示したものです。特認参加車両も交えたスーパー耐久の見応えあるバトルは、絶妙なレギュレーションづくりが演出する戦力均衡の上に初めて成立しているものです。かつてのクラス3最強マシン・RX−7に対しても、最新SPECのライバル勢と伍して戦えるように、何らかの救済措置が必要な時期に来ていることは明らかであり、その処置の結果如何では、来シーズンのRX−7陣営がさらに縮小してしまうことも懸念されます。 純粋な速さの追求という点で、78号車にはまだまだ課題が山積している状態ですが、RX−7が少数派となりつつあるスーパー耐久のカテゴリーにおいて、私達WW2が求めてやまない「サーキットで戦うMAZDAのマシン」の姿を維持していくためには、少なくともチームとして「戦うスタンス」への転換を図ることが重要になってきます。 ここ数年間でチームテスタスポーツと築いてきた素晴らしい協力関係の中で、そのためにWW2ができることをしっかりと探っていきたいと思います。 (おわり) |