スーパー耐久シリーズ2003 第6戦
TI 400km Race
9月6日(土)〜7日(日) TIサーキット英田(岡山県)
(画像提供:にゃおにゃおさん)
お盆過ぎになってから本格的な暑さが到来した感のある2003年。今年もスーパー耐久シリーズ・TIラウンドの季節がやって来ました。 毎年、残暑厳しい9月初旬に開催されるこの400kmレースでは、シーズン終盤戦に向けての熾烈なポイント戦いが繰り広げられるは当然のこと、ドライバー、マシン、そしてPITクルー達が、強烈な暑さとのバトルを強いられるのが恒例となっています。 そんな例年通りの風景の中で、昨年とは違った勢力争いを演じているクラスがあります。 そのひとつが最速の1クラス。今年からポルシェ(911GT3)の参入が認められたことで、王者スカイラインGT−Rは開幕から4連勝を飾ったものの、昨年までのGT−R同士での身内バトルから一変、大挙してやってきた市販レーシングマシンの脅威にさらされる展開となっています。速さと脆さが同居するGT−Rは、ついに第5戦・十勝で911の1−2−3フィニッシュを許し、シーズンの流れはもはやポルシェ勢に傾きつつあるという情勢です。 そしてもうひとつが3クラス。ここ数年にわたってチャンピオン争いの中心的存在はRX−7でしたが、今年は開幕以来BMW M3の優勢が続き、7月の十勝までの計5戦で4勝を挙げる強さを発揮。他の1勝はNSXが鈴鹿で挙げたもので、ディフェンディングチャンピオンのRX−7は未だに勝利がありません。M3は従来から定評のあった好燃費に加え、速さと信頼性にも磨きをかけており、最速マシンながらも綱渡りのレース展開を強いられるRX−7勢を尻目に、初のシリーズ優勝に早くも王手をかけています。 ここTIでも、RX−7がM3を圧倒する予選グリッドを獲得していますが、PIT回数の多いハンデを速さでリカバーし、シーズンの初勝利をGetできるかが、今回のレースの最大のポイントといえるでしょう。 そしてもうひとつ、今回のTI戦では見逃せないポイントがありました。シーズン6戦目にして新たに4クラスに参戦してきた「マツダRX−8」の存在です。4月に発売されたばかりのMAZDA期待のスポーツカー・RX−8が、新世代REのRENESISと卓越したハンドリング性能を武器に、S2000の牙城にどんな戦いを挑むかにも注目が集まります。 |
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ チームテスタスポーツは、2001年、2002年に続けて3度目のTI戦出場を果たしました。#78・WW2ダンロップRX−7は、総合31位のグリッドから決勝レースへ臨みます。
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最初の数周、有利なポジションからのスタートを利して総合TOPの座を死守した#1・エンドレスアドバンGT−Rでしたが、ほどなく#25・ADVAN PORSCHEの執拗なチャージを受け、早々と2位に後退。純粋な速さで勝っているはずの重戦車・GT−Rが、序盤にあっさりとオーバーテイクされたのは意外なシーンであり、やはり序盤から暑さの影響が見え隠れしているようでした。エンジン、ブレーキ、タイヤ、ドライバー・・・全てに対して、真夏並みの暑さが容赦なく襲い掛かっていることは想像に難くありません。一方、もう1台の#19・JMCダンロップGT−R EDは早くもトラブルで緊急PITインしており、GT−R勢にとって苦しい序盤の展開となりました。 序盤の混乱の中で、#13・KS−AUTO LANCERにスタート違反のドライブスルーペナルティが課されるなど、PITの方でも若干の動きが見られました。 総合31番手からスタートした78号車は、他車との接触等に巻き込まれることなくオープニングLAPを終え、メインストレートへ帰ってきました。ただし順位は35番手と、ややポジションダウンしています。 じつは32番手以降には4クラス勢の3番手から10番手までのマシンがコンマ数秒差でひしめいており、決勝日の朝のフリー走行の様子を見ても、タイミングモニター上でこれらのマシンが一塊で連なる展開となっており、かなり激しい先陣争いが予想されていました。 従って、新宅選手も集団の中で無理にポジションを守ることはせず、迫り来る後続車の息遣いを感じ取りながら、巧みに自らのポジション取りをしたわけでした。
注目の3クラスの序盤の戦いに目を転じると、予想通り#15・ORCアドバンRX−7がクラスTOPを守り、やや抜け出して総合10位で周回を続けています。その6秒後方には、クラス2番手の#77・TRUST
ADVAN RX7が続いていますが、こちらはすぐ背後に#83・BP
ADVAN NSXを従えての走行です。上位2台のRX−7は、他の3クラス上位勢を1秒ほど上回る、1分44秒台での周回ですが、従来のレースのように圧倒的な速さを見せつけるには至っていません。どうやら日曜午後の容赦ない暑さが、序盤から逃げを打ちたいRX−7勢にとって、重い足枷となっている感じです。
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チームテスタスポーツの今回のTI戦のPITスケジュールは、他のRX−7勢と同様、2PITをベースにして組み立てられていました。 その周回数の振り分けは、スターティングドライバーの新宅選手が38LAP、次に新人の有木選手が同じく38LAP、そして最後に伊藤選手が残り24LAP前後を走り切るというもので、トータルの周回数は、総合TOPの車両から9LAP遅れとなる100周付近を想定していました。 ただし、これは明らかに控えめな計算結果であり、マシンがトラブルなく順調に走行し、ミスのないPIT作業をこなしさえすれば、最終スティント分は数周分をプラスできるのでは、という密かな期待がありました。 |
![]() 今回のPIT計画 |
レース開始から50分が経過し、78号車が30周目の周回を終えた辺りから、チームは1回目のPITインに向けて準備を開始しました。給油や消火器の担当クルーはヘルメットとグローブを装着して持ち場へ移動し、クールスーツ用の新しい氷がクーラーBOXから取り出されます。そして、2番手ドライバーの有木選手も、いよいよ臨戦態勢に入っていきます。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ チームテスタスポーツでは、タイミングよくPITインの準備に入っていたのですが、残念ながら、この千載一遇のチャンスを十分に生かすことはできませんでした。
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この時、本コースに最も近いサインガードのメンバーは、いち早くこのコース上の「異変」を察知できる立場にいましたが、彼らも、PIT側の準備状況は正確に把握できないため、PITイン指示を出す否かの判断を下す材料に乏しく、結局はPIT側の指示を待つしか術がなかったのです。 この結果、運悪くセーフティーカーの数台後ろの位置でスロー走行の隊列に加わっていた78号車は、ドライバーの新宅選手が明確なPIT指示を受けることができないまま、無情にも1回目のストレート通過をしてしまいました。 |
![]() 情報不足が混乱を招いて・・・ |
無論、サインボードが唯一のコミュニケーション手段である我がチームのドライバーに、PITの状況を的確に予測して、自らPITイン判断を下すことを期待するのは酷というものです。
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結局、いつもの数倍もの時間をかけて、ようやく70Lのガソリンがタンクへと流れ込みました。両サイドの給油担当の手がマシンから離れるや否や、すぐに氷の入替え作業が開始され、ながつ氏とヘルパーさんの2名により、初めてとは思えないほど息の合った作業が行なわれました。 こうして、78号車は予定外の長い長いPITストップを強いられましたが、14時15分、クールスーツを着込んだ有木選手は、灼熱のPITロードを跡にしていきました。 今回の有木選手のパートは全37周の予定です。デビュー2戦目にして初のロングラン担当となりますが、抜群に冷えた氷水が彼をサポートしてくれています(^^) |
![]() クールスーツ装着中の図 |
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スタートから2時間が経過した頃には、TOPは68周を消化し、400kmのレースはすでに折り返し地点を過ぎていました。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
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15時25分、有木選手は予定通り37周を走り切って、PITロードへとマシンを進入させてきます。今回はPITクルーも落ち着いて最後のルーチンPITストップを待ち受けます。
ほんの1時間前に突然発生した給油リグの不調。この予期せぬトラブルが短時間で解消するはずもなく、チームは2回目の給油作業にもかなり手を焼く結果となりました。ただし1回目と比べると、給油量が少なかった分、タイムロスも少なく済んだのですが・・・。
3クラスの6位・総合33位で再びコースに戻った78号車。総合TOPを走る#33・FALKEN
PORSCHEからは7周遅れで、ゴールまでの残り周回は27LAP前後になる見込みです。
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今年もまた厳しい暑さとの戦いになったTI戦。400kmのレースもいよいよゴールの時を迎え、いつものようにプラットフォームにはその瞬間を待ちわびるチーム関係者が押し寄せています。・・・ところが、優勝に向けてひた走る#33・FALKEN
PORSCHEがファイナルLAPに突入した直後、レースは予想外のアクシデントで幕を閉じることになりました。
このアクシデントのため、赤旗が提示されてレースは中断。そのままレース終了となり、PITウォールに身を乗り出してゴールの瞬間を待ち受けていたチーム関係者にとっては、あっけない幕切れとなりました。私達も感動のチェッカーシーンを味わえなかったのはとても残念でしたが、激しいアクシデントながらもドライバーに大きな怪我がなかったのは不幸中の幸いでした。 |
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赤旗の提示により、ファイナルLAPを走り終えたマシン達は、一旦メインストレート入口で停止させられることに。 襲い掛かる暑さに耐えながら何とかゴールまで辿り着いたドライバー達はさすがに疲労困憊といった様子です。数名のドライバーは暑さに耐え兼ね、マシンを置き去りにしてPITへと歩き始めていたのですが、程なくマシンはストレート脇を通り、車両保管場所となるメインスタンド前への移動を開始。件のドライバー達もオフィシャルに促されて慌ててマシンへ戻ります。 レースは赤旗終了により周回数が2周ほど減算され、107周時点での順位でリザルトが確定しました。
78号車も暫くその集団の中にいましたが、すぐに移動を開始し、チームテスタスポーツのメンバーが見守るPITウォール前を颯爽と通り過ぎていきました。レース終盤に立て続けに好タイムを連発していたわりに、伊藤選手は余裕綽々の表情で、まさに「涼しい顔」という形容がピッタリでした(^^)。 |
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3クラス
最終結果(含ベストラップ) (レース時間 3h 08min. / 107LAPS) |
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総合8位 | #27・FINA BMW M3 | 104LAPS | 1'44.378 |
総合10位 | #15・ORCアドバンRX−7 | 104LAPS | 1'43.524 |
総合11位 | #83・BP ADVAN NSX | 103LAPS | 1'44.029 |
総合13位 | #77・TRUST ADVAN RX7 | 103LAPS | 1'43.711 |
総合19位 | #39・DELPHI ADVAN NSX | 102LAPS | 1'45.765 |
総合30位 | #78・WW2 ダンロップRX−7 | 98LAPS | 1'46.864 |
総合35位 | #23・C−WEST アドバン Z33 | 90LAPS | 1'44.406 |
リタイヤ | #14・REDLINEダイトウRX−7 | 61LAPS | 1'45.516 |
TI 400km Race
決勝正式結果は→こちら
◆チームテスタスポーツのTI戦績ヒストリー◆
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