トリビュートの基本装備については直4・2000ccモデル試乗時にある程度述べたので、ここではV6・3000ccモデルの特徴を中心にします。
V6搭載車のトップグレード、このGL−Xの外観上の特徴といえばオーバーフェンダー。これによって全幅は35ミリほど増加しますが、もともとビッグな全幅を誇るトリビュートですから、その影響は微々たるものと言い切れます。だいたい、試乗するコースは広い郊外道路なのでその影響は感じないですし、さりとてわざわざ狭いショッピングモールの地下駐車場などにピカピカの新車を乗り入れる勇気もありませんでした(^^)。でもただひとつ言えるのは、高い着座位置から生まれる高いアイポイントは、幅広ボディを扱う際に絶大なアドバンテージとなり得るということです。とくにこのトリビュートは運転席からボンネットの両端がよく見えるので、意外と不安なく走れるのです。
それよりも、このオーバーフェンダーを境界として利用するカタチで、GL−Xグレードには全6種類のツートーンのボディカラーが専用に設定されていることも見逃せません。したがって、TV−CMやカタログにさかんに登場しているパッションレッド/ムーンライトグレーのツートーンのクルマも必然的に、V6・4WDのGL−Xであるということになります。私はこのツートーンは結構好きなのですが、せっかくの粋なボディカラーが特定のグレード(しかも最高グレード)でしか選択できないとは、至極残念な設定ですね。私はせめてイメージカラーは複数のグレード(できれば全グレード)で選択可能にしておくべきだと思うのですが・・・。

V6エンジンについては「とてもパワフルで頼もしい」印象を受けました。直4では必要にして十分というごくノーマルな性能でしたが、こちらはプラスαを感じさせるとても刺激的なエンジンでした。交差点を左折して前方が開けたので試しにアクセル全開をしたところ、全く予期していなかった強烈な加速Gが訪れ、軽々と巨体を引っ張っていき、あっという間に車速がはね上がりました。今までマツダのRV車に試乗して一度も感じたことがなかった素晴らしい加速性能はホントに特筆モノでした。これまでこのテのクルマのハンドルを握る時に無意識のうちに諦めていた「動力性能」をしっかりと思い出させてくれるクルマですね。おそらくフル乗車しても大きなストレスを感じずに済むはずです。惜しむらくは、高速道路の合流レーンとか、ごく限られた場所でしか合法的にこの豪快な加速感を味わえる場所がないですね・・・。
エンジンについて難点を挙げるとすればそれは「騒音」でしょう。ひとたび加速モードに入った瞬間にV6の静かさはどこへやら、直4の場合と同様、「ワイルド」とも形容し難い大きなノイズが容赦なく侵入してきます。ま、V6の場合はそれに見合うだけのパワー&トルクが伴なう分、許容できる気もしますが、低速で加減速を繰り返す状況や、ワインディングを楽しむ時などにマイナスポイントとなるかもしれません。
さて、このクルマの一番のウリであるハンドリングの良さに関しては、直4・2000ccの試乗時にも感じた「イイ雰囲気」が、このV6・3リッターモデルではよりダイレクトな主張として明確に伝わってきます。ステアリング操作に対する反応にダルさはなく、旋回時に発生するロールも節度感や安心感を伴なうものなので、少なくともステアリングを右に左に操作している間は、クルマの絶対的なサイズや重心高など一切忘れさせてくれる、そんな俊敏な身のこなしを見せてくれます。
巷の自動車雑誌のトリビュート試乗記では、そのハンドリングの良さが必ずと言っていいほど述べられていますが、これは決してライターがメーカー側の謳い文句に同調し美辞麗句を並べたものではなく、紛れもない事実であることがよく理解できます。
カタログ記載上は全く同じ仕様の足廻りを持つ直4でこれほどまでの好印象が得られなかったのは、タイヤサイズの細さが車重の軽さをも相殺してしまっていることと、相対的に非力なエンジンでありドライバーのアクセルオンに対する出力レスポンスで劣る分、「操る楽しさ」をスポイルしていたということでしょう。
その他気になった点について。直4への試乗時も感じたのですが、トリビュートではコラムATのシフトインジケータが、最近のマツダAT車と異なり非・独立タイプで、速度計の下方に設置された小窓の中に、トリップメータ表示とともにシフトポジションが横並びで表示されます。この表示がとても見難く、シフトポジションが瞬時に把握できません。とくに私のように、ATでも頻繁にシフトチェンジやHOLDスイッチのオン・オフを繰り返す人間にとっては、ほんの10分〜20分のドライブでもかなり不便に感じました。仮に、ある程度慣れたとしても、シフトレバーのストローク方向(上下方向)と、ATインジケータ表示方向(左右方向)が直交する現象は決して気持ちの良いものではありません。せっかくワインディング走行が楽しそうなSUVなのに、ちょっとしたシフトポジションの把握し辛さがその美点をスポイルしてしまいかねませんね。ここは是非、縦方向で大きく表示するカタチに統一してもらいたいと思います。
じつは車内の使い勝手についてさらに細かくチェックしたかったのですが、私がたっぷりと時間をかけてトリビュートのドライブを堪能したものですから、ディーラーへ戻ると試乗待ちのお客さんが待機していて、早々にクルマを明け渡すこととなったのでした。(^^ゞ
最後にまとめの一言。V6に乗らずしてトリビュートを語ってはいけません(笑)。
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