<旧車シリーズ 839>


MAZDA GDZA型


 
1950年、東洋工業はインダストリアルデザイナーが手掛けたスタイリッシュなフロントカバーを装着するニューモデル・CT型を発売し、バーハンドル三輪の旧来のスタイルからの脱皮を図り始めた。'50年代前半は幌屋根や2灯式ヘッドランプなどの新装備を主要モデルで次々に採用していくが、1954年9月から、いよいよ東洋工業は「55年型」と称して、750kg積みクラスから2トン積みクラスに至るまでの全機種のデザインを統一した。曲面を多用したフロントカウルに涙滴型のヘッドランプベゼルとグリルを埋め込み、マツダ定番のマルーン&グレーの2トーンカラーを施した新デザインは個性的なもので、街行くオート3輪の中でもマツダの存在を一層際立たせた。
 これを機に、単気筒エンジンを搭載する750kg積み車はGCZ型からGDZA型へモデルチェンジした。2灯式ヘッドランプとフラッシャータイプの方向指示器が初めて採用され、始動方式もキック式からセルモーター式へと進化している。シャシーは基本的にGCZ型を踏襲しており、排気量701ccのOHVエンジンの最高出力は17psだった。


 
鋼製密閉キャビンを持つ丸ハンドル車が1957年に登場するまで、マツダのオート3輪は基本的にこの55年型の統一デザインを踏襲しており、GDZA型後継のGLTB型もその仲間の1台です。ただ、デザインの細かなリファインを受けたGLTB型と比較すると、このGDZA型は初期型ゆえの素朴な味わいのようなものがあります。キャビン周りの密閉度もまだ低かったらしく、運転席の足元を覗くと、やたらと隙間が多いのに気付かされました。通気性は悪くはなさそうですが、雨降りの日は完全防備が必要かもしれませんね。

推定年式:1955
撮影時期:2005年2月
撮影場所:広島県三次市吉舎町にて