室堂〜上高地

<1997.4.26〜30>



山行日 :1997年4月25日(金)夜発、4月26日−4月30日
山 域 :北アルプス
ルート :室堂−五色ヶ原−太郎平−双六岳−槍ケ岳−上高地
メンバー:大渕(IACアルパイン)、長谷川 (どんぐり山の会)
※使用スキーは大渕:アルペン山スキー、長谷川:テレマークスキー



【4/25】
<新宿発>
私は、軽量化のためアプローチシューズを省略し、家からテレマーク靴を履いて駅
へ。22:00JR新宿駅のホームに集合。大渕さんは軽量化のためサンダルだった。
あまり混んでいないので、臨時のアルプスはやめて23:50発急行アルプスに変更
した。



【4/26】晴れ、ほとんど風なし
<信濃大町=扇沢=室堂−一ノ越−獅子岳−五色ヶ原山荘(泊)>


5時ころ、信濃大町駅着。タクシーで扇沢へ。トロリーの始発は7:30であった。
10時まえに室堂に到着。スキーにシールを貼り、10時すぎに出発。
今日のルート、五色ヶ原までは、昨年経験しているし、天気もよいので、気楽にス
タートした。一ノ越でシールをはがし、御山谷へ向けて滑降。鬼岳への登り返しを
できるだけ少なくするために標高2530mあたりをトラバースした。
鬼岳のピークは東側をまき(ガイド本では、西側をまくとあるけれど)、そのまま
東面の急斜面をトラバースして獅子岳へ。われわれの後のパーティーのうち数人は、
トラバース中に滑り落ちていた。雪が柔らかいので、途中で止まり、大丈夫そうで
あったが。

獅子岳からザラ峠への下りは、重い雪の急斜面。大渕さんは見事にターンをきめて
あっという間に鞍部までおりたが、わたしは斜滑降・キックターンでゆっくり下降
した。
五色ヶ原山荘はこの時期は、例年通り自炊のみ。私はスープ・お茶セットを忘れて
ちょっとガッカリ。大渕さんからココアをめぐんでもらった。
五色ヶ原ではテント泊もふくめて6〜7パーティーはいたようだ 。われわれと、
おなじく槍を目指すパーティーもあるようだった。



【4/27】朝のうち雲あり、のち晴れ。稜線上は風あり。
<五色ヶ原−薬師岳−太郎平小屋(泊)>
五色ヶ原

この日は長いので3時起床、5時出発とした。
まず、鳶山へ向けて出発。ちょうど日の出で、朝焼けと月がなかなか幻想的。
鳶山のトラバースはクラストしているので少々緊張する。安全のためにピークに
近い、傾斜の緩い部分を巻いた。鳶山から下った鞍部にツェルトが1張あった。
初日にここまで入っておくのは、なかなか良いアイディアかもしれません。

越中沢岳から下りのヤセ尾根も岩稜・雪壁・いやらしいトラバースなどがあって
変化のある雪山歩きが楽しめます。
このあと、2431mピークに登り、滑降となったが、ここで大失態。
クラストした急斜面を滑りだしたが、ターン失敗で転倒・滑落。運よくダメージ
はなかったものの、このあとは、慎重になってヤバイ斜面はアイゼンで歩いて降り
ることにした。大渕さんはジャンプターンもおり混ぜて余裕で降りた。

スゴ乗越小屋に到着が10時。30分の大休止。先に着いている単独のテレマークの
人と雑談。われわれより、かなり遅く出ているのに追い抜かれてしまった。
これでやっと今日のルートのほぼ半分を踏破した。

北薬師岳

薬師への登りは、やっぱり長かった。単独テレマーカーは快調に進み、はるか
かなたの北薬師を登るのがみえた。信じられないペース、かれは何者!とおもう。
薬師山頂へ着いたのは15時過ぎ。風は強いが素晴しい展望でした。

薬師からの下りは、視界がよくルートファインディングはまったく問題ないが、
脚のほうはへろへろ。バランスを崩してもリカバリーができず、転倒しまくった。
大渕さんに大きく離されて、ぼろぼろになって太郎平小屋に到着した。
出発前の連絡では小屋の営業は未定だったが、ちゃんと営業している。暖房も十
分で、疲れたからだに心地よい。食事も用意できるとのことだったが、荷を減ら
すために予定通り自炊とした。
五色ヶ原を同時に出発した7人組みは、ついに小屋にたどり着けなかったようだ。



【4/28】曇りのちみぞれまたは雪、稜線上は風あり。
<太郎平−黒部五郎岳−双六岳−双六小屋(泊)>
南岸低気圧が北上し、天気は崩れる予報。しかし、朝は薄曇りで、遠くの山まで良
く見える。ルート途中には黒部五郎冬期小屋もあるので、とにかく行けるところまで
行ってみることにした。6時過ぎに小屋を出発。北ノ俣山頂ではまだ展望が楽しめた。
北ノ俣から赤木岳の大トラバースでは脚がつりそうになった。
黒部五郎への急斜面登りはスキーをはずしてアイゼンで登った。少しもぐるところ
もあって疲れる。大渕さんはスキーのまま、スキーアイゼンで調子がよいようだ。
黒部五郎岳からは北東の小ピークへまわり若干傾斜が緩くなったところから降りる。
しかし、それでもクラストして危なそうなので、長谷川は歩いて100mほど下降、
大渕さんはスキーのまま滑降。ときおりガスが晴れて、遠くの黒部五郎小屋が見えた。

11時ころ、黒部五郎小屋に到着。一足先に着いていた単独テレマーカーと、太郎平
で部屋が一緒だった山スキー2人組みと雑談しながら大休止。山スキー組みの一人は
黒部五郎の急斜面で滑落し、腕を擦りむいていた。やはり、無理はしてはならない。
山スキー2人組みは今日の行動は中止し、翌日は、槍の肩までをめざすとのこと、
単独テレマーカーも、行動をやめて、翌日は双六経由で新穂高温泉に降りるらしい。
われわれも、迷ったがまだ少し天気がもつと判断して、この日のうちに双六小屋を目
指すことにした。

黒部五郎小屋を出て三俣蓮華への登り、まもなくみぞれが降りだし、ガスもでてきた。
途中、視界が悪いのに不用意に滑って、北側斜面に滑り落ちてしまった。幸い斜面も
緩かったので、もとの地点まで登り返して、そのまま登高をつづけた。
三俣蓮華の山頂付近でピークの棒を発見し、位置を確認。視界が悪いためこのあとは、
双六岳へ稜線をたどり山頂から双六小屋へ下るルートを辿ることにした。
ほとんどルートが見えないものの、コンパスと高度計でかなり正確に現状位置を把握
しながら双六岳へいくことができた。双六岳の下りも広い尾根で難しいルートファイ
ンディングだが、大渕さんのすばらしいリードで、ピタリと小屋に到着した。
17時前に小屋に到着。安堵。この日は小屋の食事を食べた。かなり元気が出た。



【4/29】晴れ、稜線上は風あり。
<双六小屋−樅沢岳−西鎌尾根−槍ケ岳の肩−槍沢−横尾山荘(泊)>

槍ヶ岳・西鎌尾根

朝から素晴しい快晴。天気がよいとやっぱりやる気が出る。
5時出発の予定だったが、かなりおくれて6:20出発。
スキーにシールを貼ったものの、やはり樅沢岳登りは急で雪が少ないのでスキーは
担ぐ。はじめからアイゼンをつけて歩いて登った。
樅沢岳の下りはナイフリッジのすばらしい雪稜になっていた。ピッケルとストック
を両手に、慎重に下る。雪の状態はよいので、ロープの必要なし。

槍への西鎌尾根はぼくにとっては未知のルートだが、大渕さんは昨年秋に歩いてい
るので、ルートの状況を聞きながら歩く。気温が上がり雪が腐るのが心配だったが、
ツボ足でもはほとんどもぐらないので、調子がよい。思ったよりも槍が遠くに見える
が、確実に近づいてくる。以前登った北鎌の全貌がよく見えた。硫黄尾根なども観察
しながら槍へ向かう。岩稜帯は特に問題なく通りすぎた。雪の状態が良いせいか、お
もったよりもやさしかった。最後の雪壁も難しくはないが疲れた。肩へ登りきるとこ
ろではあせって、急いで、息が切れた。13:00ころ、ついに槍の肩に着いた。
これで登りは終わり、すごくうれしい、ちょっと感動した。

槍ヶ岳・槍沢

大渕さんの槍のピークは登らなくてよいということばに、同じ気持だったのですぐに
合意した。このときは、(今回のスキールートでは)槍の頂上は意味のない寄り道だ
と、思った。もちろん、余力がないし、時間もないというのも大きな理由ではあった
が...。
小屋でしばし休息のあと、槍沢の大滑降。少々重い雪、なんとかターンをつなげたが、
とても疲れる。だんだん脚に疲労がたまり、転びまくる。写真撮影も忙しい。
昨日の雪崩だろうか、新しいデブリもたくさんある。天候によっては雪崩注意です。
しかし、槍沢はなんと解放的なことか。体は重いが心はとても軽くなった。
槍沢ロッジまで滑って、そのあとは歩きで、横尾へ。
予備日が1日あったので、この日は横尾で行動を終了としました。



【4/30】曇りのち雨。
<横尾−上高地=東京>
今にも降りだしそうな空模様のなかを上高地へ。
河童橋のあたりで、ついに本降りになってしまった。
工事中の河童橋を背景に記念撮影をしてから、だらだらとバスターミナルヘ。
午前10時、登山終了。



<参考タイム>
【4/26】
10:10 室堂
10:50 一ノ越
13:00 獅子岳
14:20 ザレ峠
16:00 五色ヶ原山荘

【4/27】
5:00 五色ヶ原
6:00 <2356m>コル
8:15 <2431m>ピーク
10:00 スゴ乗越小屋
15:15 薬師岳
17:00 太郎平小屋

【4/28】
6:10 太郎平
7:40 北ノ俣岳
11:00 黒部五郎小屋
14:10 三俣蓮華岳
16:50 双六小屋

【4/29】
6:20 双六小屋
7:00 樅沢岳
11:30 西鎌尾根・千丈沢乗越
13:00 槍ケ岳の肩
15:40 槍沢ロッジ
17:10 横尾山荘

【4/30】
8:00 横尾
10:00 上高地バスターミナル