都市開発プロジェクトの成功と失敗            梅本幹郎

  <関連資料添付>
       目  次 

1 都市開発プロジェクトの類型 
2 都市開発プロジェクトの成功の指標 
3 転換型都市開発事例の分析 
4  成功/失敗の要因


 

1 都市開発プロジェクトの類型

 以下に示されるのは、全国の都市開発プロジェクト事例を対象に、計画段階から街区概成までの期間をひとつの評価点としてとらえ、これを軸に、事業成果の要因を分析する試みである。  
 ここに都市開発とは数ha以上の土地で都市的利用をめざした開発をいうものとする。 
 最初に、事例分析に先立ち類型分けを行う。 

 都市開発は大きく新規造成型と土地利用転換型に分かれ、新規造成型は山林田畑を切り拓くニュータウン造成と水面の埋立造成とに分かれる。いずれも都市における土地需要が旺盛な時代に展開された事業であり、開発規模は大きく、マストラを導入しつつ新しい住宅都市や複合都市の建設をめざしている。 

 土地利用転換型は工場跡地、貨物ヤード跡地等を商業や業務等の都市的利用に転換・開発するものである。これまでの実績としては造成型ほど規模は大きくなく、都市部を中心に1970年代以降、産業構造の転換、市街地の拡大とともに急速に増えてきた開発パターンである。 
 このほかに厳密には、更新型再開発というべき型があるが、数haに及ぶ規模の例は少ないため、以下では転換型に含めている。 
 また複合的な類型もあり、みなとみない21は造船所からの転換型と埋立造成との合併手法によっている。 
  
  新規造成型 
    ニュータウン造成  例)千里ニュータウン、多摩ニュータウン、港北ニュータウン 
                   筑波研究学園都市、関西文化学術研究都市 
    埋立造成      例)神戸ポートアイランド 
                  大阪南港、幕張新都心 
  土地利用転換型 
    業務地    例)新宿副都心、OBP、横浜ビジネスパ―ク、天王洲開発 
    商業開発   例)つかしん、マイカル本牧 
    複合開発   例)神戸ハーバーランド、アークヒルズ 
    研究業務   例)かながわサイエンスパ―ク、京都リサーチパ―ク 
    住宅開発   例)光が丘、高見フローラルタウン、大川端 
    更新型    例)ららぽーと 
    
 
 

2 都市開発プロジェクトの成功の指標

 都市開発プロジェクトが成功するとは、どういうことを意味するのであろうか。難しい問題であるが、成功の要因ではなく結果だけに着目するとして、定量的に測りうる側面と定性的にしか評価できない側面からこの問題を検討する。 

 不動産の開発に関わる事業は期間が長期にわたることと、大規模な開発事業は複数の事業が重なり合う形で全体が進行すること(インフラ整備の個々の事業と施設整備の個々の事業など)、これらのために全体としての事業をとらえること自体が難しく、したがって何をもって成功したといえるのか、ということも一義的には定義しにくい。むしろ、失敗の意味を問う方が早いかもしれない。 

 この問題は一般的にいえば、投資(費用)に対して、これに見合う利益(便益・効果)が得られるか否か、という形に集約される。これは公共事業であれば費用便益分析(費用効果分析ともいわれる)によって、収益事業であれば事業採算分析によって、あらかじめ見通すことができ、したがって事前に評価できる。着手された事業は、すべて計画段階で、こうしたチェックを受けている。しかし、完了した事業についてその成否を問おうとしても、少なくともわが国の場合、これらの分析に必要な財務情報等が公開されていないことが多いため、はたして所期の見込み通りに進んでいるのかどうか、進んでいないとすれば、その実態と原因は何か、予想以上の成功を収めたとすれば、その事実と理由は何か、を知るための手がかりとなる材料が不足している(決算情報が公表されている事例は、成功した事業であるとみていい)。 

 計画構想段階で行う事例分析は本来、先行事例について、このような本格的な財務分析を含めて、事実から教訓を学ぶべきものである。しかし、それが困難であるとすれば部外の者が、財務情報なしに、定量的に事業の成否をみるための指標が問題となる。 

<定量的> 
 まず、定量的な指標として(公的な)計画着手からプロジェクトの完成もしくは概成までの期間(年数)に着目することを提案する。そして、この概成期間ができるだけ短期間であることをプラスに評価する。 
 概成期間が短いほどよいとするのは、以下のような理由による。 

第1。 予想以上に期間が長引くことは、それだけ投下資金を寝かせることになり、コスト高を招くことを意味する。着手された事業がいつまでも完成または概成しないことは事業者からみて最大のリスクである。したがって、何よりも完成または概成すること、次いで計画に沿いつつ実現までの期間ができるだけ短いことが求められる。 

第2。 期間があまりに長引くと、計画内容が時代の変化や社会需要の変化についていけなくなり、計画の見直しを迫られるなどして、ますます事業期間が長引くことになる。 

第3。 何らかの事情が障害になっているとしても、本来的には計画段階で障害要因を見越し、対策をとっておくのが実効性のある良い計画だとすれば、やはり結果的にせよ事業期間は短いほどよいことになる。 

第4。 インフラ整備を伴う面的開発では、土地区画整理事業のような手法はあくまでインフラ整備までであり、建物の建ち上がることを担保していない。しかし、本来は土地の高度利用が目的の開発でああるから、開発の完成は建物が建ち並び、概成したといえる程度までになることが重要なポイントといえる。また、インフラ整備と建物の建築とは、主体・手法が異なることが多いため、これらを一貫してとらえる尺度としては概成期間しかないことになる。 

第5。 概成期間以外に定量的な指標としてあげられるのは、住宅であれば一定期間での完売率や応募倍率、貸しオフィスであれば契約率(空室率)などがあり、商業施設であれば入込数や売上額等がある。しかし、これらの指標は事業内容によって異なり、貸オフィスや商業施設等の個々の事業単位を対象としており、かつある時点でのみとらえられているにすぎない。不動産事業は長期にあたることが普通であること、さらに面的開発は複合開発であることが多いため、種々の類型の事業を同じ尺度で比較するとすれば概成期間が最も客観的で把握しやすい指標であると考えられる。以下ではこれを軸とし、それ以外の指標は事業内容に応じて補足的に参照することにする。 

第6。 転換型再開発事業の事業成果はまず第一に、例えば索漠とした駅裏イメージの土地が開発により、超高層ビルやにぎやかな商業地へと一新されて、周辺を含め地域の活性化と土地利用の増進を高めることにある。従前と従後のこのような差の大きいことが成果のひとつである。端的には、従前と従後の地価の差に現れ、開発後も街区の熟成につれ、効果はより拡がることになる。このような意味での地価の動向分析が指標のひとつになることは確かである。ただし、これについては、別項で扱うことにする。 

<定性的> 
 プロジェクトの完成後の評判が非常に高いなど、社会的な関心を呼び寄せ、強いインパクトを与えたという例にみられるような成果は、定量的に示しうることとは別に考慮すべき実質があるものと考えられる。 
  このような成功例には、およそ以下のような意味がある。 

 それまでだれも形に表せなかったような社会的な新しい需要を受けとめ、創造的に新しい開発パターンを生み、したがて時代を画し、以後この種の開発パターンに追随する者が続出するような事業であること。一口でいえば、需要創造型であり、業態開発型または開発パターン開発型である。これらは先行者としてリスクも大きいが、成功したときの利得も大きい。あるいは利得は小さくとも、社会に与えた波及効果の大きさかが測りしれないために評価されることになる。 

 以上から、とりあえず都市開発プロジェクトが成功したか否かは、それが概成的にせよ実現していることと、その概成期間、そして社会的な需要を背景とした需要創造型ないし業態開発型の開発か否かで決まることになる。 

<実例> 
 このような尺度で、これまでの事例から代表的な成功例をあげるとすれば以下のとおりである。 

千里ニュータウン 

・ 社会背景として、大都市への人口流入世帯の旺盛な住宅需要 
・ 1000haをこえる事業でありながら概成まで13年という圧倒的な短期間での達成 
・ 大阪への至近距離
・ マストラ導入を可能とさせる立地とタイミング 
・ 用地買収方式が可能な時期。新住法適用第1号。 
・ 万博による社会基盤整備と千里開発により、北大阪地域の整備水準が一段と高まる。 
・ 以後、1000haをこすニュータウン開発が続出するも、千里ほどの成功は収めていない。 
・ 千里では分譲土地価格と周辺地の相場との落差が大(このため逆に以後、地主の売り惜しみが常態化することになる)
神戸ポートアイランド 
・ 「山、海を行く」の神戸ならではのユニークな手法 
・ 神戸の中心市街地・三宮との至近距離 
・ 計画の確かさ。コンベンション都市、ファッション都市 
・ 概成まで16年 
・ 博覧会による仕上げ 
・ このような方式の成功は、第2のポーアイとして六甲アイランドやポーアイU期へと引き継がれるが、最初ほどうまくいくかどうかは疑問であり、少なくとも事業期間はポーアイ1期より長期化している。
大阪ビジネスパ―ク 
・ 民間による転換型の再開発である。 
・ 戦後荒廃した地区を超高層ビル街に変貌させ、都市開発の実例により、その間の変化の大きさを示した。 
・ 概成期間は長かったが、期が熟すのを待ったあと、一気に開発を進めた。 
・ 当時の先端産業の拡大にあわせ、KDD,NEC、富士通などの進出を迎えインテリジェントビルとしてのオフィス需要が予想外にあることを示した。 
・ 具体的には、ツイン21ビルの家賃は当時としては最高水準にあり、以後の新築オフィス賃料の水準を決定づけることになった。
神戸ハーバーランド 
・ 行政主導の転換型でかつ民活型(事業コンペ方式)開発の典型例 
・ 昭和57年の貨物駅廃止から平成4年の街びらきまでの10年間の超短期達成 
・ 神戸市と公団、各種の手法の組み合わせなど、役割分担のいきとどいた実行力 
・ 短期間の完成は、バブル崩壊にさしかかることも免れた。 
・ 神戸市としては成功したといえるが、進出した企業(商業者)にとっての営業成績は一部を除き予想を下回るなど、当初苦戦したところが多い。 
・ 市のねらいは都心が東へ寄りつつあるため、空洞化する当地の活性化にあったが、今や神戸の新拠点となり、この目的は達せられた。
天王洲地区再開発 
・ 民間22社による共同開発 
・ 区画整理によらない減歩方式(地区計画と都との個別協定による) 
・ 三菱商事のリーダーシップによる短期間の概成 
・ ウォータフロントとはいえ、倉庫街を超高層ビル街とし、このような需要が都市縁辺部に及ぶことを示した。 
・ ただし、完成のはやかったモノレール東側はバブル崩壊前に間に合い、富士通や外資系金融機関の拠点となるなど、41,000円/uの高家賃を達成したが、わずかに遅 
れた西側のビルはバブル崩壊に直面して苦戦し、結局先行組も家賃を下げることになった。 
アークヒルズ 
・ 地権者42人の組合による市街地再開発事業で、駅前再開発でない新しいタイプを実現した。 
・ 森ビルのリーダーシップ、森ビルによる保留床取得 
・ 家賃40万円の外資系従業員向けワンルームマンションや高水準のオフィス賃料(月坪3万円)が評判となる。
ららぽーと 
・ 米国型の2店の大型店(アンカー)をモールで結ぶ典型的な郊外型ショッピングセンターを実現 
・ 以後も、地の利をえて屋内スキー場、ドライブイン・シアター(ともにわが国初)、ホテル、第2期店舗と発展 
・ もともとヘルスセンターからの更新型再開発であるが、大成功といっていい。
つかしん 
・ オープン時は街づくり型SCとして評判となる。 
・ しかし、アクセス条件もあり、現在は当初ほどの商圏の広がりをみていない。
聖路加国際病院 
・ 更新型で、病院の改築のための資金を、定期借地契約による複数デベロッパーとの 
共同開発とし、かつ容積移転を行う。 
・ 街路をこえる容積移転等の規制緩和 
・ これらの複雑に組みあわされた手法面で注目されるプロジェクト。
恵比寿ガーデンシティ及びキャナルシティ博多 
・ 不況下でのオープン 
・ 1社体制による開発 
・ 開発期間の短い異業種進出(サッポロ)を達成 
・ 開発期間は長いがデザインとテナント集めで国際的な展開を果たす(博多) 
・ ただし、これら商業施設はオープン時の評判通りに推移するかどうか見守る必要がある。例えば、テナントの出入りが多い場合は売上が高家賃に耐えられない水準にあ 
るものと推測される。
<評価について> 
 プロジェクトの評価については、ともすればオープン直後の人気や評判に左右されがちであるが、プロジェクト自体はある意味でオープンしたところから始まる。また、商業施設の場合、時間が経過するにつれ、オープン直後の華やかさや営業実績が色あせてしまうケースもあるので、これらをトータルにとらえて評価することは意外に難しい。 
 また、どの立場で評価するのか、ということもある。事業者、一般市民、行政的立場、進出テナント、これらすべての者にとって高く評価されるような例は稀であろう。 

 しかし、ともあれ成功例から何を学ぶべきか、ということが最も重要である。往々にして、事例研究は表面をなぞるだけであり、先例のパターンを安易に、かつ無意識に追随し、模倣することが多く、特殊な成功要因やそのために費やされたエネルギー等は忘れられてしまうのが普通である。 
 

3 転換型都市開発事例の分析

(1) 概成期間 
  1000haをこえる大規模なニュータウン開発の概成期間はおよそ20〜30年を要しているが、大規模ニュータウンの先駆となった千里は13年という短期間で事業を終了している。 

 埋立造成もおよそ20年以上を要しているが、神戸ポートアイランドだけは概成まで16年間の短期の事業完了を果たしている。 
 転換型の都市開発では、全平均で13年であるが、開発類型別にみると、業務系13.8年、商業系が12.1年、住宅系が15.8年となり、住宅、業務、商業の順で期間が長くなっている。 

 転換型では、10年以上かかるのは普通であるが、20年をこえるような例は少ないといえる。5年内外で事業が完了しているのは、規制緩和の手続きが不要な場合(ニッケ、KSP、ららぽーと等)であり、これも例外的といえる。 

 概成期間が短いほど成功しているとすれば、この点では天王洲、KSP,ららぽーと、ニッケコルトン、恵比寿、神戸ハーバーランド、新梅田シティ、ベルパーク、桜之宮が平均より短い。 
 逆に、長引いているのは新宿,OBP、キャナル、アークヒルズ、アクトシティ浜松、聖路加、光が丘、リバーシティなどとなる。 

 しかし、このうちすでに触れた規制緩和の手続きの有無や規模の大きさなど、各々に事情があり、これらを勘案して真に期間が短いと評価できるのは、地権者が22名と多い天王洲、民間主導でリサーチパ―クを手がけたKSP,規模の大きい神戸ハーバーランド、民間の住宅開発であるベルパークなどである。 
 概成期間は、規模のほか、事業内容、規制の有無、時期、立地、手法と主体等の要因が複雑にからむ結果と考えられる。 
  転換型都市開発プロジェクトの概成年数
  開発類型別概成年数

(2)開発規模 
 ここでは、転換型の概成済事例のみをとりあげる。この意味での事例は全国的にみてもそれほど多くない。以下では26例をとりあげる。 

 これら事例を規模の大きい順からみると、最大は光が丘パ―クタウンの186haであるので、今のところ200ha以上の転換型再開発で概成した例はないことになる。 
 光が丘に次ぐ規模は新宿副都心の56haであり、50〜99haの規模では、これに高見フローラルタウンが加わって2件しかない。次いで、35.6haの淀川リバーサイドであり、30ha以上は4件となる。 

 20ha台は3件,10ha台は4件と、規模が小さくなるにつれ事例数は多くなる(把握済みでない事例を考えるとさらに増えるはずである)。5〜9haで8件、5ha以下6件で、1ケタ台で14件となる。 
 規模の大きい転換は、立地特性にもよるが、住宅系の開発が多く、次いで業務系となる。 

 これらの例の中では186haの光が丘が突出した規模であるが、内陸部でこれだけの規模の転換例は例外的といえる。そうだとすると、これまでの例では、20〜30ha程度が比較的イメージしやすい転換型再開発の規模となる。規模と概成期間の間に、はっきりした相関関係は認められないが、転換型都市開発の単位としては30ha以下が中心となっている。ただし、現在進行中の例の中には、臨海部及び鉄鋼関係を中心に100haをこえる大型事業がいくつかある(みなとみらい21、八幡東田地区、此花西部臨海、神戸東部新都心、堺臨海、京浜臨海等)。これらの大規模ベイエリア開発については、従来型の開発事例をそのままあてはめても意味をなさないようなスケール上の相違点があり、考え方の転換を求められるような側面があると思われれる。これについては別途考えてみたい。
  転換型都市開発事例の開発規模

(3)事業内容 
 住宅中心の開発、商業開発、商業と業務中心の複合開発といった事業内容は、立地特性と規模に相関している。
  転換型都市開発も事業内容

(4)立地条件 
 立地条件について、基幹交通の利便性、母都市の市場性、母都市への近接性の3点でみてみる(二重丸、丸、三角の簡易評価)と、3つとも二重丸となるのは、新宿副都心、新梅田シティ、サンシャインと数は少ない。そして、これらのなかに必ずしも成功したとはいえない例があることが注目される。 

 成功要因は立地だけでなく、規模や時期等の要因と複雑な関係にある。新宿副都心は立地条件がよいにもかかわらず概成期間が長引いているが、これは規模と関係がある。サンシャインは着手の時期がわるかった。 
むしろ成功例が多く含まれるのは母都市との関係が2つとも二重丸で、基幹交通利便性が丸の場合である。 
 立地条件がよくないにもかかわらず、それなりの成果をあげている例として、横浜ビジネスパ―クがある。これは野村グループあげての支援体制により、立地条件を克服したといえる。 
  都市開発事例の立地条件

(5)事業手法 
 事業手法は、ここでは基盤整備の手法、施設整備の手法ないし主体、そして従来の土地に規制がある場合、制度上の転換手法に分けて考えられる。 
 全体としての推進主体としては、大きく行政主導と民間主導に分かれ、前者は概ね全事業を行政及び公的機関で実施する場合と基盤だけを行政が整備し施設は民間が行う場合に分かれる。 
 開発の種地から最終的な開発地までには、権利の移動等が伴うことも多い。これら手法上の分析については省略する。 
  転換型都市開発事例の手法

(6)時代背景 
 転換型都市開発を着手した時点順に並べると、‘60年代の新宿副都心と池袋のサンシャインシティが最も古く、次いでOBP、アークヒルズ等になる。その後、70年代後半から、特に80年代に入ってから、プロジェクトが急速に増えてくる。完成時期がオイルショック時の不況にかかった新宿と池袋(サンシャイン)は、このために概成期間が長引いた。新宿では昭和49年に3つのビルが完成したが、その後のビルの建ち上がりはかな遅れている。サンシャインでは、オイルショックのため工費がかさみ、さらに政府の指導もあり工事を中断するなどの影響を受け、これがあとあとまで経営上の重荷になったといわれている。 

 その後のプロジェクトでは、バブル崩壊にかかるかどうかで明暗を分けることになった。まず、事業期間が石油危機とバブル崩壊の間の期間におさまった事業は幸運といえる。 
 マイカル本牧、横浜ビジネスパ―ク、神戸ハーバーランド、ベルパークなどがこれに相当する。天王洲は一部が間に合い、一部が間に合わない結果となった。新梅田シティなどはバブル期の事業で崩壊に直面している。 

 しかし、一方でバブル崩壊後のオープンでありながら、充分それに対処したプロジェクトもある。キャナルシティ、恵比寿、大阪アメニティパ―クなどがそれで、むしろ不況を逆手にとって、工費を安くすることができるなどのメリットを受けている。 
  転換型都市開発プロジェクトと時代背景

(7)事業成果 
 転換型都市開発の事業目的は未利用ないし利用度の低い土地となってしまった物流基地や工場跡地を都市基盤を整備し、都市的な土地利用に供することで、地域に活力を取り戻すことにある。土地利用の内容は別にして、高度利用の尺度は、まず建物の延床面積の大きさに求められる。また、このような成果をどのようなスピードで達成したか、という点では概成までの年数で床面積を除した数値で比べてみることができる。この点では、神戸ハーバーランド、新宿副都心が上位にあげられる。 

 開発土地面積に対する延床面積の大きさの割合(開発の密度)でいうと、サンシャイン、キャナルタウン、聖路加ガーデン、アークヒルズ等が並ぶ。なかでも、サンシャインシティの高密度がひときわ目立つ。 

 また、不動産価値として賃料等でみると、OBPやアークヒルズは、これまでにない賃料水準を開発により設定できたということで注目された。 
 しかし、バブル崩壊期にオープンが重なったプロジェクトでは一部苦戦を強いられているところもある。
  事業成果としての延床面積
  転換型都市開発プロジェクトの賃料等

4 成功/失敗の要因 
 ひとまず完成ないし概成したプロジェクトは成功したといえるが、実際にはオープン時のテナント入居率が異常に低いなど、その時点でみる限り明らかに成功したとはいいにくい例もある。よく知られた例としてサンシャインシティがあり、これはオイルショックのため工事が中断するなど建設期間が長引き当初から赤字額が大きく、その上地元の要望で非採算的な文化施設を抱え、さらにテナント入居率が20%とか40%といわれたプロジェクトである。近年ではこうした極端な例はまずないといってよい。現在からみるとサンシャインの場合は、わが国ではじめて本格的な再開発を民間で行うことになり、もともとが国有地ということもあり、財界あげての支援となったが、それまでにノウハウの蓄積もなく、寄合いの新会社が試行を重ねながらの事業であったようである。 
 その後、これほど極端な失敗例はないといっていいが、それもこのような例があったからであろう。 

<成功の主要因> 
 概成期間と需要創造または開発方式の開発という観点から、成功例をあげるとすれば、先に触れたようにOBP、天王洲、神戸ハーバーランド、アークヒルズ、ららぽーと、つかしん、聖路加国際病院、恵比寿ガーデンプレイス、キャナルシティ博多、等がある。 
 これらから成功の要因を抽出するとすれば、以下の2点となる。 

第1。 立地条件とタイミング(需要の見極め) 
 機が熟していることが重要であり、それはロケーションからも時機からもいえる。つまり、空間的、時間的に需要が見極められていることである。 

 OBPとキャナルシティはともに平均を大きく上回る概成期間となり、この意味では成功しているとはいえないが、事業着手のタイミングをみながら、着手するとなると一気に時流の需要を取り込む開発内容となっている。 

 転換型の事例は多くの場合、旧市街の周縁部に位置していた浄水場、刑務所、鉄道貨物ヤード、明治期等古くからの工場、米軍キャンプ等が、市街地の拡大にあわせて都市的利用へと転換されるもので、転換の熟度が周囲から迫ってきており、少なくとも潜在的にはそのような周辺環境であり時機をとらえているということが最も重要である。 

 ここで、成功例の多くは潜在的な需要をみているという点にある。成功例を追随する場合は、逆にこの点が甘いため必ずしも先行の成功例のようにいかないことが多い。 

 具体的に需要を見極めるためには、着工時にある程度のテナントをおさえておくなどのことも必要となる。そのためには、需要が見渡せる程度の開発規模であることも重要であるかもしれない。次に、立地条件が重要であり、主たる市場(母都市)への近接性、連絡利便性がポイントとなる。 

第2。 プロジェクトをまとめて推進する実行力 
 一般に、転換型の開発は造成型の開発より実現が困難であり、このことは容易に推察できる。通常、既得権益があったり、権利者間で開発の熟度が揃っていなかったり、開発規制があるため一定の公的手順を踏む必要があるなど、軌道にのるまでに外部から見えないところで様々なことを処理する必要がある。また、新しい用途に必要な都市基盤が整備されていないことが多いため、更地化して利用に供するまでのコストが予想以上にかかる。 

 これを100%開発者が負担するのか、一部を公共事業として整備することができないのか、といった手法上の問題もあるが、これらすべてのことを関係者間において調整しながら、事業を前進させるためには、いうまでもなく強力な実行力、リーダーシップ、調整能力が求められることになる。 

 先に成功例にあげたところでいえば、神戸市、三菱商事、森ビル、三井不動産などがこのような意味での実行力があるものとみなされる。そして恵比寿ガーデンプレイスとキャナルシティ博多の実質的な一社体制もこのなかに含めて考えていいであろう。サッポロでは、この種の開発の経験をもっていなかったが、大幅な権限委譲により短期完成を実現している。これらは内部的に余分な調整に手間取らない一社体制のよさを反映したものである。 

<失敗または行き詰まりの要因> 
 他方、失敗または行き詰まりの要因は何であろうか。 
 ごくかいつまんで成功要因の裏返しでいえば、需要やタイミングの見極めが甘い、また責任ある体制がとれていないから判断が甘くなる、ということになる。しかし、なぜそうなるのか、ということをもう少し詳しくみておこう。 

第1。動機の甘さ、判断の甘さ、体制の甘さ 
 まずあげられるのが、構想や計画への取組の安易さ、動機づけの甘さである。 
 これにも種々あり、思惑先行型、もしくは理念先行型があり、安易な先行事例の追随型もこれに含まれる。理念先行型といえるのは官民合体の第3セクタ―方式によくみられるパターンである。 

 なぜそうなるのか。責任体制がない。経営体として取り組む組織体制ができていない。地価上昇等の景気にあおられた安易な取組姿勢で、甘い期待だけが先走る。 
 冷静に考えると、都市開発はそれほど華やかな事業ではない。長期間取り組まねばならない息の長い、きわめて地味な仕事である。産業規模からいっても、決して大きくはない。専門の業者もいない。にもかかわらず、異業種からの新規参入があとを絶たず、判断が甘くなるのは、ひとつには時代の潮流ということがあった。 

第2。時代の潮流 
 時代背景の項でみたように、都市開発の底を流れていたのは、高度成長期の70年代頃からの過剰流動性であり、それに続く石油危機であり、また85年(昭和60年)のプラザ合意にはじまる円高基調の時代、それに続く平成のバブルとその崩壊であって、その間およそ四半世紀にすぎない。 

 直接的には、経済の成長とともに既成市街地が拡大し、従来都市の周縁部で都市活動の裏方をつとめていた物流基地等が、周辺の地価上昇とともににわかに脚光を浴びることになったのであるが、もう少しよく見ると、過剰流動性と呼ばれる金あまりの事情があった。それも国際的な政治経済を背景としており、不動産事業だからといって国内問題に限られるわけではない。 

 都市開発はおよそ20年はかかるプロジェクトであり、ということは石油危機か平成のバブルかのいずれかの影響を受けなかった事業はないし、何よりもその動機面で2度のバブルのいずれにも全く関係がなかったといえるプロジェクトはないように思われる。したがって本来は、20年もの長期の事業を行うからには、何らかの浮沈があることは折り込み済みでなければならない。しかし、行き詰まりの多くの例は、期待だけが先行するという片手落ちをしてきたわけである。 

 これらの、批判的ないし反省的な事柄のすべては、「今にして」いえることである。しかし、今にしていえることに過ぎないから無意味だ、とは断言できないだろう。 

第3。適正さを欠く規模 
 成功した事例には結果として適正規模といえるあるまとまりのある規模がある。そして、適正規模は立地条件、計画内容、想定される事業期間に最も関連づけられる。しかし、転換型の場合、開発規模はそもそも外的に与件として与えられているものであり、立地や需要にあわせて決められているのではないという事情がある。 
 規模だけに焦点をあわせて計画をつめることはできない。実質的に計画内容に最も影響するのは立地条件である。逆に、規模が直接影響するのは、開発期間や投資規模であるので、規模が需要に対して適正さを欠き、過大となるときは、事業面での足をひっぱることになる。 

 多くの転換型再開発は20ha程度以下であるが、これを大きく越える臨海型の再開発は、これらの先例とは全く性格を異にするプロジェクトであると割り切った方がよいのではないかという気がする。 
 

<リスクと挑戦> 
 最後に、今まで暗黙に前提されていた経済成長や地価の右肩上がりの時代は、もはや期待できないいま、今後はリスクまたは責任をどうとるか、という観点から事業計画や構想を評価し、あるいは見直すことが求められる。 

 計画段階における立地条件の評価・診断、事業成立性の判断については、可能な限り冷静、客観的でなければならない。そして、構想段階から計画段階のタイミングで、成功事例と失敗事例を鏡とし、これを徹底的に分析してみることをおすすめする。 

 ただリスクをおそれるあまりに新しい挑戦や創造的な要素のまったくないプロジェクトになってしまっては意味がない。なぜなら、長期間にわたる事業なので時代の変化の方が早く、先例の模倣はそれだけ早くプロジェクトの陳腐化を促すことになるからである。成功事例から学ぶべき点は、ここにある。新たに加えられるべき創造的要素とリスクとのバランスをどうとりつつ、成功に導くか、ということである。 

 以上、都市開発プロジェクトの成功とは何か、ということを中心に、事例分析から汲みとれるところを述べてきた。何回も繰り返すように、プロジェクトのサイクルは長い。したがって、これに対する評価自体も、実は超長期スパンでみなければならないとすれば、少なくともいえることは、完結して社会に受け入れられているプロジェクトは、とりあえず成功したといえるという単純な事実である。(1997/1998) 
 

  

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